読者を第一に考えたWebサイトに最適なコンテンツレコメンデーション戦略の立て方を説明する。

すべてのコンテンツプロバイダーは、オンラインコンテンツのエンゲージメントを高めたいと考えている。効果的なコンテンツレコメンデーションは、それを実現する方法の1つではあるが、どの場面でも万能なアプローチというものはない。 

今回は、サイト、コンテンツ、オーディエンスに最適なレコメンデーション戦略を策定する方法を紹介しよう。既製のコンテンツレコメンデーションエンジンの多くは、ここで説明するすべての機能を備えているわけではないが、何が可能かを知ることは、あなたのビジネスに最適なソリューションを見つけるのに役立つだろう。


おすすめコンテンツとは? 

コンテンツレコメンデーションシステムとは、訪問者が興味を持ちそうな内容に基づき、追加コンテンツを提案するものである。

例:

  • YouTubeとNetflixは、コンテンツレコメンデーションを利用して、ユーザーの視聴履歴に基づく追加の動画やテレビ番組を提案する。
  • Spotifyは、音楽の好みのパターンを見つけて、類似する曲をお薦めする。
  • 私の娘によれば、TikTokは自分に関連するコンテンツを見つけるという点において驚くほど優れているという。 

これらすべてのケースにおける目標は、訪問者をプラットフォーム上のさらに別の魅力的なコンテンツに引き留めることである。しかし、この場合、以下2つの重要な疑問が生じる。 

  • システムは何をレコメンドするかをどのように判断するのか? 
  • レコメンデーションのコンテキストは何か? 


コンテンツレコメンデーションの仕組み

コンテンツレコメンデーションは、データ分析に依存して、ユーザーがエンゲージする可能性が高いコンテンツを正確に予測する。一般的には、アクセスしたページや、何をクリックしたか、各ページで費やした時間など、ユーザー行動に関するデータを収集。そして、以下のようなさまざまなタイプのレコメンデーションを生成することができる。 

  • 現在サイトで人気のある記事
  • 特定のカテゴリで人気のある記事
  • 特定の著者による人気のある記事
  • 現在の記事を読んだ訪問者が読んだ記事 
  • 似たような閲覧履歴を持つ訪問者が読んだ記事
  • 特定の職種の人に人気のある記事
  • 読者と似たような人が読んだ記事
  • 特定の地域の人々が読んだ記事 

各オプションは、さまざまなコンテンツやウェブサイトの異なる領域で、異なる用途を持つ場合がある。それらの一部 (「現在サイトで最も人気のある記事」など) は単純な分析に依存している一方、他の記事 (「あなたと同じような人がこの記事を気に入っている」など) は、類似モデルに基づくものもあることにお気づきだろう。


“ドライブバイ”の訪問者と定期的な訪問者 

あなたのサイトが、他の多くのサイトと同じであれば、多くの訪問者は1つの記事を読んでから去っていく。そのような“ドライブバイ”の訪問者に、ページをもう1ページ読んでもらうことができれば、サイトトラフィックに大きな違いが生じるだろう。適切なコンテンツレコメンデーションは、この問題に対処するための一つの方法である。 

問題は、ドライブバイの人々についてあまり知らないことだ。彼らはあなたのサイトでの履歴がないため、似たようなモデリングを行うのは難しい。しかし、オプションはいくつかある。 

  • サードパーティCookie/オーディエンスのデータは、有効期間中は使用できる
  • ジオロケーション(ユーザーの位置情報を扱う技術)やリファラー(ウェブサイトの訪問者が直前に閲覧していたページ)など、HTTPヘッダーのデータを使用できる
  • 他の読者からの一般的なサイト統計に依存できる

定期的な訪問者には、さらに多くのオプションが用意されている。ドライブバイの訪問者に関してできることすべてに加えて、その人独自の閲覧履歴に基づき予測を行うことができる。

例: 

  • 彼らがすでに閲覧したコンテンツに類似のコンテンツを表示する(同じカテゴリ、同じ作者、同じタグまたはキーワードなど)
  • 同じような閲覧履歴を持つユーザーと閲覧履歴を比較し、その大きなグループの中で最も人気のある記事を表示する
  • 通常の訪問者に関する人口統計データ(役職など)がある場合、その役職を持つ人々に最も人気のある記事を表示できる 

 


複数のオーディエンス

多くのサイトでは、無料ユーザーと有料ユーザー、またはB2BとB2Cの見込み客という2つ以上の異なるオーディエンスが存在する。あなたのサイトがそうである場合、それらを分けて考えることで、最も関連性の高いコンテンツレコメンデーションを確実に作成できる。 

理由は次のとおりだ。消費者と医師向けのコンテンツを含む、医薬品に関するサイトを考えてみよう。これらの統計を分離して、医師向けのコンテンツと消費者向けのコンテンツをレコメンデーションする。 


コンテンツの分類方法 

コンテンツレコメンデーションのマジックは、あなたと読者の目標に一致するように、コンテンツを分類することに依存している。コンテンツは、次のようなさまざまな方法で分類できる。

  • タイトルのワード
  • キーワードまたはタグ 
  • 記事内の単語密度
  • カテゴリ 
  • 著者
  • 長文記事と短文記事

コンテンツの分類方法は、ユースケースに影響を与える可能性がある。たとえば、サイトに長文記事と抜粋がある場合、抜粋を読むことを好む人に長文記事をお薦めしたくない場合がある。 


コンテンツレコメンデーションアルゴリズムの種類 

AIベースのコンテンツレコメンデーションアルゴリズムにはさまざまな種類があり、ウェブサイトを改善するために使用できる。最も一般的なものをいくつかご紹介しよう。 

協調フィルタリングは、類似するユーザーの行動や嗜好に基づき、コンテンツをレコメンドする。ユーザーの過去の行動を分析し、似たような嗜好を持つユーザーが関与したことのあるコンテンツを推奨する。

コンテンツベースのフィルタリングは、ユーザーが以前閲覧したコンテンツに類似のコンテンツをお薦めするもの。ユーザーが現在閲覧しているページのコンテンツを分析し、キーワード、タグ、その他の関連情報に基づき、類似のコンテンツをレコメンドする。

ハイブリッドレコメンデーションは、協調フィルタリングとコンテンツベースのフィルタリングを組み合わせて、より正確で多様なレコメンデーションを提供する。ユーザーの嗜好と、表示されているコンテンツの特性の両方を考慮し、より適切なレコメンデーションを実現する。

人気度ベースのフィルタリングは、人気度を基にコンテンツをレコメンドするもの。多くのユーザーが閲覧、シェア、やりとりした中で最も人気のあるコンテンツをお薦めする。例えば、「このコンテンツはこの職種の人に最も人気がある」など、人気度に基づくフィルタリングを他のタイプと組み合わせることは、非常に強力なツールとなる。 

ナレッジベースのフィルタリングは、ユーザーのプロファイルと嗜好に基づき、コンテンツをレコメンドする。ユーザーのデータとフィードバックに依存して、過去の購入履歴や評価、レビューなど、ユーザーの興味に合ったレコメンデーションを提供する。 

強化学習は、ユーザー行動とフィードバックに基づきコンテンツをレコメンドする。ユーザーとのやり取りとフィードバックから学習して、時間の経過とともにレコメンデーションの内容を改善する。 


コンテンツレコメンデーションエンジンの選択

前述のように、どのベンダーも、これらすべてのオプションを提供できるわけではない。オーディエンス、コンテンツ、そして可能なオプションの範囲を考慮して、コンテンツレコメンデーションをどのように自社サイトに展開したいのかを検討し、独自の状況に最も適した方法を決定する。そのリストを、候補となるベンダーに提示し、ベストマッチングを見つけよう。 


読者を第一に考える

成功するコンテンツレコメンデーション戦略を策定する際の課題の1つは、読者の目標を最優先にすることだ。しかし、自社のビジネスモデルを宣伝するために、読者に何をしてほしいかを考えるという罠に陥りがちだ。

そうではなく、読者の立場に立ち、読者が探しているコンテンツを見つけるのに何が役立つかを中心に、コンテンツレコメンデーション戦略を策定しよう。長期的には、それがあなたのビジネスにとって最良のものとなるだろう。読者のニーズに対応することで、第一目標であるエンゲージメントを高めることができるのだ。 


※当記事は米国メディア「MarTech」の4/4公開の記事を翻訳・補足したものです。