季節ごとのeコマース活動を追跡しているAdobe AnalyticsAdobeが提供するアクセス解析ツール)が11月29日に発表した数字によると、インフレへの懸念と迫り来る景気後退がサイバーマンデーにおけるオンライン買い物客の購買意欲を下げることは、ほとんどなかったようだ。

 

Adobeは、オンラインの買い物客がサイバーマンデーに113億ドル(約1.54兆円)を消費したと推定しており、これは感謝祭後の月曜日の売上が107億ドルだった2021年に比べて5.8%増加している。

 

マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く全米市場調査会社Forrester ResearchのアナリストであるSucharita Kodali氏は、インフレや不景気、高金利に対する懸念は、高い雇用率と賃金によって相殺されていると主張する。

 

「この1年間、消費はインフレの影響をカバーしてきた」と同氏。

 

不景気に対する不安と、銀行口座に資金がないことは同じではない」と、同氏は説明する。

 

Kodali氏は、住宅ローンの金利や借入金は増えている一方で、人々は衣料品やレストランへの支出のための資金を借り入れているわけではないと付け加えた。

 

小売業者の適切な判断

Adobeは米国でのインフレ進行を認めたが、サイバーマンデーで小売業者があげた売上の多くは、価格上昇ではなく、需要によるものであった。18の製品カテゴリーの価格を追跡しデジタル経済におけるインフレを測定する「デジタル物価指数」においても、ここ数か月、価格が横ばい状態であることが示されていると同社は指摘する。

 

また、サイバーマンデーでは、大幅な値引きに加え、商品在庫が十分にあったことが好調な販売に貢献したとも付け加えられている。

 

マーケティングやeコマースに関する調査を行うAdobe Digital Insightsの主席アナリストであるVivek Pandya氏は、「供給過剰と個人消費環境の軟化により、小売業者は今シーズン、大幅な値引きによって需要を喚起するという適切な判断を下した」と声明で述べている

 

また、同氏は「これによってオンライン消費は予想を上回る水準に達し、eコマースはボリュームを増やし、消費者の関心を獲得する主要なチャネルとしての地位を確立した」とも述べている。

 

コネチカット州スタンフォードに本社を置く調査・アドバイザリー企業Gartnerの消費者・文化アナリストであるKassi Socha氏は、同社の消費者調査によると、今年のホリデーシーズンは「価格」と「価値」がギフトの贈り主にとっての最大の動機付けとなっていると述べる。

 

「消費者がインフレによる値上げの影響を感じている今、戦略的な割引はブランドにとって消費者の注目を集める有効な手段である」と同氏。

 

Adobeによると、電子機器の割引率は25%(昨年は8%)、玩具の割引率は34%と、大幅な値引きが行われたという。

 

異例の年からのリバウンド

シカゴにある調査会社Morningstar Research Servicesの株式アナリストであるDavid Swartz氏は、2021年が値引きにとって異例の年だったため、今年の割引率は昨年より高くなっていると説明する。

 

「昨年は個人消費が好調で、パンデミックによる出荷や発注の問題から在庫が少なかった」とSwartz氏。

 

「昨年は在庫が不足しており、また人々の消費意欲が旺盛だったため、小売業者は値引きをする必要がなかった。小売業者は、昨年は定価で大量に販売することができた」と、同氏は話す。

 

「インフレが一部の個人消費を圧迫しているため、今年は在庫が増え、個人消費がやや減速している」と、同氏は続ける。「しかし、人々が予想していたほど悪くはない。個人消費は持ちこたえており、それは政府の数字が示している通りだ」。

 

「景気は減速しているが、失業率が10%を超えていた2008年や、パンデミックが発生してインフレ率が15%にまで上昇した2020年とは状況が異なる」と同氏は述べる。「現在、インフレ率が高いが、それでも経済は比較的、堅調である」。

 

「今年のホリデーシーズンは昨年ほど好調ではないだろうが、不景気レベルのシーズンとはならないだろう」と同氏は付け加える。「かなりまっとうなホリデーシーズンになるだろう」。

 

先進的な小売業者

オレゴン州ベンドにあるアドバイザリー・サービス企業、Enderle Groupの社長兼主席アナリストであるRob Enderle氏は、小売業者がホリデーシーズンに向けて魅力的な割引を提供していると認める。

 

「小売業者は、全力を尽くして、熱狂状態の買い物客を惹きつけるような素晴らしいお買い得品を提供している」とEnderle氏。

 

「いくつかのカテゴリーでは、供給不足から供給過剰になっている」と同氏は説明する。「小売業者は新年を迎える前に倉庫の商品を大幅に減らしたいと考えている。来年は商品の移動が難しい年になるため、年明けに大量の在庫を抱えた状態になることは避けたい」。

 

「小売業者は積極的に在庫を減らしている。なぜなら、人々があまり多くのお金を持っていないような年には、たくさんの在庫を抱えたくはないからだ」と続ける同氏。「来年の大半は、在庫を帳簿に載せることになるだろう」。

 

「だからこそ、大幅な値下げが行われているのだ」。「値下げは、在庫を減らしたいという願望と、来年は購入に充てられる金額が大幅に減るだろうという認識の組み合わせによるものだ」と同氏は加えた。

 

2023年は二日酔いになる?

しかし、Enderle氏は、今年の消費景気が小売業者や買い物客に影響を与える可能性があると警告する。

 

「人々は、プレゼントに大金を使うことに抵抗はないようだ」と同氏。「むしろ不安を感じるのは、彼らの借金の額だ。特に金利の高さを考えると、その額は大きい」。

 

「インフレは人々の余裕資金を食い潰しており、彼らはそれを借金で穴埋めしている」と同氏は続ける。「その借金は返済しなければならないので、来年は問題になるだろう。これほど高い金利では、返済は難しくなるだろう」。

 

「今年の熱狂によって、来年はかなりひどい二日酔いになりそうだ」と同氏は予想する。

 

Adobeは、「Buy Now, Pay Later(後払い決済)」がサイバーマンデーよりもブラックフライデーの週末に多く利用されたものの、引き続き消費者に人気のある支払方法であると指摘する。「インフレによる家計への影響を懸念する消費者にとって、BNPLソリューション(後払い決済)はホリデーシーズンの出費を分散させる最適な方法だ」と、Socha氏は説明する。

 

Adobeによると、サイバーウィークエンドに後払い決済の人気が高まった理由の1つに、カートの(合計額の)サイズがあるという。ショッピングカートの合計金額が大きい場合、消費者は後払い決済を利用する可能性が高くなる。また、サイバーウィークにおける後払い決済の注文は、前の週と比べて85%増、売上は88%増となった。

 

「目下の大きな問題は、オンライン小売業者と買い物客によるこの動きが継続するのか、それとも、これは値引きによる特別な動きで、これが今後数日から数週間で落ち着くかどうかということだ」と、Adobeは考察を行っている。

 

また、同社は、「eコマース分野で見られる人員削減と、この分野の企業に対する評価の低下は、今後さらに厳しい時代が到来することを示す二つの指標だ」とも述べている。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の11/30公開の記事を翻訳・補足したものです。