米国のコンピュータ・ソフトウェア・テクノロジー・カンパニーAdobeが10月10日に発表したレポートによると、今年のホリデーシーズンにおける米国のオンライン売上高は2,097億米ドルに達し、2021年比で2.5%増加する見込みだという。

 

同レポートは、2022年11月1日から12月31日までの売上を予測するもので、米国の小売店のウェブサイトへの1兆回以上のアクセスと18の製品カテゴリーにおける1億SKU(在庫保管単位)から収集した分析結果に基づいて作成されている。

 

「オンライン販売は2020年と2021年に大幅に急増した」と、シカゴの投資リサーチ企業Morningstar Research Servicesの消費者株式調査アナリストであるDavid Swartz氏は説明した。

 

「2.5%というのは並大抵の数字ではないかもしれないが、それでも印象的だ」と同氏は語る。「オンラインは2年連続で好調であったため、オンライン売上が伸びているという事実は、その強さを物語っている。店舗が再開されても、eコマースが持ちこたえていることがわかる」。

 

Adobeは、10月11日と12日に開催されるAmazonの2022年第2回Prime Dayイベントを皮切りに、消費者が今年のホリデーギフトに費やす時期が早まると予想している。

 

同レポートは、早めの購入が今年後半のサイバーウィークの売上に影響する可能性があると指摘している。さらに、年末年始の消費を抑制するその他の要因として、食料品、ガソリン、住宅などの必需品の価格上昇と金利の上昇を挙げている。

 

Adobeのグロースマーケティング&インサイト担当副社長のPatrick Brown氏は、「今年のホリデーシーズンの形は、10月の早期割引によって、サイバーウィーク前後に発生するはずだった支出が引き上げられるため、これまでとは異なるものになるだろう」と述べている。

 

「今シーズンのオンラインショッピングは1桁台の成長を見込んでいるが、注目すべきは、消費者が今年すでに5,900億ドル以上をオンラインで消費し、8.9%の伸びを示していることで、eコマースの需要の回復力を強調している」と、同氏は語る。

 

楽観的すぎる?

Adobeの成長予測は楽観的すぎるかもしれない、とオレゴン州ベンドにあるアドバイザリーサービス会社Enderle Groupの社長兼主任アナリストのRob Enderle氏は指摘する。 「人災であれ何であれ、年末までに世界的な影響を及ぼす大惨事が起こる可能性を考えると、この見積もりは楽観的だと思う」と同氏は話す。

 

「何事もなければ、予想は的中するだろうが、他に大きな出来事が起こらない確率はかなり高い」。

 

「金利だけが急激に上昇すれば、意図したとおりに支出が大幅に減少するはずだ」と同氏は付け加えた。

 

「選挙、戦争、金利上昇、インフレ、経済報告、株式市場の動き、災害など、これだけ不確定要素があると、予測は良くてもあやふやで、今回はかなりのダウンサイドリスクを抱えている」とEnderle氏は言及する。

 

しかし、Adobeの予測は、他のいくつかの企業と比較して保守的である。たとえば、監査・税務・コンサルティングサービスをグローバルに展開するDeloitteは、2022年のeコマース・ホリデー売上は前年比で12.8%から14.3%成長し、2,600億から2,640億ドルに達すると予測している。2021年の同時期の成長率が15.1%であることと比較すると、その差は歴然としている。

 

Deloitteの経済予測担当者Daniel Bachman氏は声明で、「2022年のホリデーシーズンの成長予測が低いのは、今年の経済の減速を反映している」と述べている。

 

「小売売上高は、パンデミック支出の中心であった耐久消費財の需要の減少により、さらに影響を受ける可能性が高い」と同氏は説明した。

「ただし、パンデミックの影響が薄れるにつれて、レストランなどの消費者サービスに対する支出は増えると予想している」と続けた。

 

また、インフレはドル売上高の上昇に寄与するが、小売業者の販売数量の伸びは少なくなると付け加えた。

 

サイバーウィークの大きな消費

また、Adobeは、感謝祭からサイバーマンデーまでのサイバーウィークの売上高は348億ドルで、2021年より2.8%増加すると予測している。これは、同シーズンの全オンライン売上高の16.3%に相当し、2021年の16.6%から減少している。

 

Adobeは、サイバーマンデーが今年最大のショッピングデーとなり、買い物客は2021年比5.1%増の112億ドルを費やすと予想している。

 

Adobeによると、他のプライムショッピングデーはそれほどうまくいかないだろう。ブラックフライデーの売上は2021年比でわずか1%増の90億ドル、感謝祭の売上は前年比1%減の51億ドルになると予測している。

 

このレポートでは、eコマースが日常的に行われるようになり、消費者がシーズンを通して割引が続くと考えるようになったため、こうした重要なショッピングデーは目立たなくなりつつあると指摘している。

 

「従来のカレンダーは、もうそれほど重要ではないと思う」とSwartz氏は述べている。「人々は、いつでもどこでもオンラインで買い物をする」。と続けた。

 

「昔は感謝祭の翌日にデパートに行ってお買い得品を探したものだが、今は違う」と同氏は続けた。「今は、クリスマスシーズン中、ずっとお買い得なものがあることを知っている」。

 

「感謝祭に店が開いているかどうかという話は、重要ではない」と同氏は付け加えた。「感謝祭にはいつでもオンラインで買い物ができるのだから」と。

 

割引についてのシニシズム

IT分野を中心に調査・助言を行うGartnerの小売アナリストであるKassi Socha 氏は、同社が最近実施した調査の結果を引用し、消費者の16%がホリデーギフトのために通年で買い物をする、と述べている。そのため、小売業者は年間を通したギフト戦略に向かっていると同氏は話す。

 

「小売業者は、『オールウェイズ・オン』のギフト戦略を持つことで、従来の冬のホリデーシーズンを成功に導くことができる」と、同氏は語っている。「私たちは、小売業者が年中ウェブサイトに雪の結晶やクリスマスツリーを掲載することを推奨しているわけではない。私たちが推奨しているのは、年間を通じてギフトのアイデアを提供するギフト・ハブを設置することである」。

 

「ブラックフライデーやサイバーウィークのような従来のホリデーシーズンのプロモーションは依然として価値があるが、消費者は40%以上のディスカウントを期待している」と同氏は述べている。「彼らは大きな価値を求めている。驚きと喜びのある体験を求めている。彼らは、その年の別の時期にその小売業者から得られるような単なる割引以上のものを求めているのだ」。

 

Adobeはさらに、今年のホリデーシーズンには割引が「大規模」になると予測した。パソコンの割引率は2021年の10%から32%に達する見込みで、家電製品の割引率は8%から27%、おもちゃの割引率は19%から22%に達すると指摘した。

 

その他の割引カテゴリーとしては、テレビが2021年の11%から19%に、アパレルが13%から19%に、家電製品が4%から18%に、スポーツ用品が6%から17%に、家具・寝具が2%から11%になるとしている。

 

Adobeの割引予測は、消費者には伝わっていないようだ。Gartnerの調査によると、消費者の75%が今年は昨年より割引が少ないか、同じ割引率になると予想している。

 

「今は一年中お得なキャンペーンが行われているので、消費者は警戒している」とSocha氏は話す。「消費者は冷笑的な態度だが、それは彼らが経験する現実ではない」。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の10/11公開の記事を翻訳・補足したものです。