マーケティングにおける「インフルエンサー」という用語は、ソーシャルメディアでの膨大なリーチを利用して製品やサービスの宣伝内容について知りたがっているオーディエンスに宣伝活動を行う人々の総称を指す。インフルエンサーは、支持する製品の種類やオーディエンスの規模に応じて、階層に分類される。

 

調査によると、現在、小売企業の17%以上がインフルエンサーのチャネルにマーケティング予算を投じることに注力しており、また消費者の90%が週単位でインフルエンサーとやり取りしていることが分かっている。Influencer Marketing Hubのレポートによると、このトレンドは成長を続けており、2022年末にはインフルエンサーマーケティング業界は164億ドルを突破する可能性が高いとされている。

 

顧客エンゲージメントの選択肢を増やしたいマーケティング担当者は、インフルエンサーを利用することで未開拓の機会を得られる可能性がある。このような集団は、顧客中心のマーケティングキャンペーンを成功させるために必要不可欠である可能性があるからだ。

 

インフルエンサー・コミュニティ

SourceKnowledge(オンラインマーケティングキャンペーンの最適化を目的としたデータ分析サービスプロバイダー)の共同設立者兼CRO(最高リスク管理責任者)であるHector Pantazopoulos氏によると、インフルエンサーは、特別な割引や取引を利用するために、彼らが宣伝する製品の購入に興味を持つオーディエンスを作り上げるという。

 

インフルエンサーは、独立して活動することも、特定のブランドと提携することもできる。インフルエンサー・コミュニティの中には、特定のオーディエンスを取り込もうとするマーケターとつながるネットワークで結束する者もいる。それが、Pantazopoulos氏がSourceKnowledgeのパブリッシャーネットワークで提供しているものだ。

 

これまでは、新規インフルエンサー会員の獲得は、招待による紹介制で運営していた。9月下旬には、小売業者からの需要の高まりに応えるため、認定された、ディール・セントリック(取引重視)のインフルエンサーの新規受け入れを開始した。

 

「消費者の購買は、ソーシャルメディアのフィードで見たものに影響されることが証明されている」とPantazopoulos氏。

「コンテンツ・クリエーターの収益を最大化するための支援は、当社の価値観の中核をなすものだ。そのため、SourceKnowledge Influencer Networkへ参加する機会を、より多くのソーシャルメディアアカウントに提供できることを嬉しく思っている」と続けた。

 

影響範囲の拡大

インフレが過去最高となり、不況が迫りつつある、あるいはすでに不況が到来しているという説もある中、オーディエンスは積極的にお買い得品を探している。また、ブランドにとって、お得な情報を提供するインフルエンサーとの提携は、広告費の削減を検討している消費者の目に留まり続けるための優れた方法であるとPantazopoulos氏は述べている。

 

このオープンなウェブ広告ネットワークは、小売業者にはリーチの拡大を、パブリッシャーには収益性の向上をもたらす。また、インフルエンサーがビジネスを拡大し、そのフォロワーがお気に入りのブランドや製品のお得な情報を見つけることができるよう、本格的なディール・セントリックのコンテンツを促進する。

 

インフルエンサーのネットワーキングは、ブランドが適切な候補者と連携するのに役立つ。SourceKnowledgeのような企業は、この広告手法のためのクリアリングハウス(様々なデータをインターネット上で交換する取引所)を提供している。

 

インフルエンサーは、登録することで、トップメディアの小売業者の予算に即座にアクセスすることができる。インフルエンサーは、お気に入りの小売業者の収益化可能なリンクを迅速に生成し、プレミアム・クリック単価(CPC)レートを獲得することができる。 SourceKnowledge Influencer Networkでは、小売業者は目標ベースのパラメータを使用して、ナノインフルエンサーおよびマイクロインフルエンサーをメディアミックスに追加することができる。

 

「大手ECブランドやDTC(直接販売、ダイレクト・トゥ・コンシューマー)事業者が、ターゲットオーディエンスにリーチするマイクロインフルエンサーを特定し、直接契約を固めることは、リソースの浪費になりかねない」。同氏は、この点がSourceKnowledgeのような企業にとって重要な利益をもたらすと語っている。

 

インフルエンサーの階層

インフルエンサーマーケティングは、今や大手ブランドや小規模な小売業者が顧客を引きつけるために利用する、重要なビジネス要素となっている。しかし、そのプロセスは、必ずしも売上を伸ばすための即効性のあるものではない。

 

インフルエンサーが忠実なフォロワーとの絆を築くには、時間がかかる。しかし、インフルエンサーの適切な組み合わせにより、ブランドは顧客の注目を大幅に高めることができる。

 

ナノインフルエンサーは、マクロインフルエンサーと呼ばれる従来の有償インフルエンサーマーケティングの代替となる存在だ。ナノインフルエンサーは、通常、ほとんど報酬を受け取らない。その代わり、彼らは自分のスタイルでソーシャルメディアに投稿することを条件に、無料の製品やサービスを受け取る。

 

一方、マクロインフルエンサーは、50万から100万人のフォロワーを擁する。彼らのソーシャルメディア上の存在感と、重要なブランドからのトップクラスの報酬が、通常彼らの収入のすべてとなっている。

 

マイクロインフルエンサーは、非常に細分化されたオーディエンスに製品を勧め、多くの場合、最も直接的な影響力を与える。Pantazopoulos氏によると、彼らはマクロインフルエンサーと比較して、ブランドとのエンゲージメント率が60%も高くなる可能性があるという。

 

同氏は、今のインフルエンサーはある意味、ソーシャルメディアにトレンドが来る前の人々が行っていたことの延長線上にあるのではないかと指摘した。

 

「その昔、小売業では紹介がつきものだった。郵便でチラシが届いたり、近所のスーパーで特売品を見つけたりした。そして、友人にそのことを伝えるのだ。今のeコマースのインフルエンサーも、これとよく似ている」と、Pantazopoulos氏は言う。

 

仕組み

SourceKnowledgeの事業拡大の一環として、インフルエンサービジネスに携わる他のエージェンシーを取り込むことがある。例えば、Facebookでアクティブなアフィリエイト広告プログラムMyDealAddictionは、Amazon Associates Programの参加者でもある。

 

SourceKnowledge Influencer Network に参加して以来、MyDealAddictionはWine.com(米国のオンラインワイン小売業者)、Wayfair(米国のオンライン家具小売業者)、Chewy(米国のペット製品のオンライン小売業者)、Michael KorsMacy’sWomanizer(米国のライフスタイル製品販売業者)などの小売業者と連携している。その関係は、すでに成果を上げている。

 

MyDealAdditionのMichelle St.Pierre氏はネットワーク拡大の発表の中で、「SourceKnowledgeは、尊敬すべきさまざまな小売業者とつながる手助けをしてくれ、非常に公平でわかりやすい支払いモデルを提供してくれた」と述べている。

 

SourceKnowledgeのネットワークは、サイト上のディスプレイ広告を訪問者がクリックした回数に応じてウェブサイトが広告主に請求するクリック課金型の広告収入モデルで運営されていると、Pantazopoulos氏は説明した。

 

このモデルでは、参加するインフルエンサーは、コミッションだけでなく、有効なクリックごとに報酬を受け取る。また、小売業者やeコマースブランドがインフルエンサーマーケティングの力を簡単に活用するのに役立つと同氏は説明した。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の11/10公開の記事を翻訳・補足したものです。