AIマーケティングが役立つ3つの領域:マーケティングデータ管理、顧客のインテント、ビジネスチャンスと購買予測。

 

消費者があらゆることにスピードと超パーソナライゼーションを求める今、マーケティング担当者は要求に応え、予算を最大限に活用する革新的な方法を見つけなければならない。

そのために、マーケターは人工知能や機械学習に目を向けている。実際、このための用語として「AIマーケティング」という新しい言葉がある。

 

顧客の期待はかつてないほど高まっている。AmazonやNetflix、そしてGoogle は、顧客がテクノロジーとマーケティングに期待するものの基準を設定した。Amazonは、ワンクリックで注文を受け、翌日に配送する。Netflixは、顧客が選んだエンターテイメントの中から、次に見たい番組を瞬時に提案する。Googleはスペルを訂正し、AlexaはAmazonの荷物がいつ届くかを知らせ、最も曖昧なバーベット(バーなどお酒を提供する店で行われるお金を賭けたゲーム)の答えを即座に出してくれる。

 

AIマーケティングは、これらの例に見られるように、テクノロジーを活用してデータを収集し、顧客インサイトを開発し、次の最適なアクションを予測し、マーケティング活動に関する意思決定を自動化するものだ。マーケターとしての目標が、収益を上げること、効率化によるコスト削減の支援、顧客エンゲージメントと満足度の向上であれば、AIマーケティングはそのすべてを実現するために有効なツールとなる。

 

ここでは、AIマーケティングが役立つ3つの分野と、プロジェクトを始める前に各分野について知っておくべきことを紹介する。

 

各プロジェクトについて、その内容、マーケティングへの活用方法、適用する際に注意すべき技術的・文化的な落とし穴などを簡単に説明しよう。

 

1. マーケティングデータ管理

内容紹介

マーケティングデータ管理は、マーケティングデータ、競合情報、市場調査情報を収集し、取り扱うプロセスである。この機能はIT部門にあるべきではない。これは、マーケティングが行う核心となるものだ。製品やサービスにとって最適な買い手は誰かを見極めることは、明らかにマーケティング機能である。購買者に関連するデータを収集し、管理することは、マーケティングの最初の課題となる。顧客について何を知っているか?顧客は何人いるか?顧客をどのように説明するか?誰がどの製品やサービスを買ってくれるか?自社の製品やサービスの市場全体の規模はどの程度か?これらの重要なマーケティング上の問題はすべて、マーケティングデータ管理によって解決される。

 

活用方法

この分野でのAIや機械学習の活用は、マクロレベルでもミクロレベルでも応用が可能だ。

マクロレベルでは、AIや機械学習モデルを導入することで、顧客層全体が特定の購買グループにどのようにセグメントされているかを理解することができる。ミクロレベルでは、製品のライフタイムバリューを予測し、個々の顧客と関連付けることができる。このミクロレベルのデータ分析により、どの顧客や見込み客にどの製品でアプローチするのがベストなのかを判断することができる。こうした取り組みからデータを蓄積することが、より強く、より正確なモデルの構築につながる。

 

また、データを蓄積するには、収集したデータの品質を管理する必要がある。機械学習を大規模なデータセットに対して導入することで、レコードの重複を排除したり、郵便番号や住所などのフィールドを標準化するための調整を行うことが可能になる。また、機械学習は、他のAIアプリケーションで使用するデータセットの整理にも有効である。

 

機械学習の他の利用法としては、ウェブスクレイピング(ウェブサイトから任意の情報を抽出、整形、解析する技術)のような技術がある。このプロセスは、競合他社を理解しようとするときに便利だ。競合他社のウェブサイトには、通常、新製品や顧客紹介、特別企画など、この方法で蓄積できる情報がある。これはすべて公開情報であり、適切なアルゴリズムを用いれば、データサイエンティストは既存の競合他社だけでなく、新興の競合他社に関する基本情報を得ることができる。

 

注意点

市場には、マーケティングデータ管理を支援するツールやコンサルティング会社が山ほどある。ツールは、Google AnalyticsからSAS(米国SAS Institute社のサービス。データ解析や統計分析、解析結果の可視化などを行うパッケージソフト)まで幅広く、それぞれが特定の機能を提供している。達成したいこと(たとえば市場セグメンテーションや競合分析など)を明確にすることが、サポートしてくれるツールや代理店を決定するのに役立つだろう。マーケティング・オペレーションのリーダーを参加させるのも良いアイデアだ。

マーケティングデータ管理プロジェクトを開始する際には、まずデータを管理する目的を考え、そのうえでその特定された作業を行うのに最適なツールを探すようにすることが重要だ。コンサルティング会社を利用する場合、自社のニーズに合った分野で実績のある会社を探そう。

 

2. カスタマーインテント

内容紹介

顧客のインテントデータは、オンラインコンテンツへのアクセス、競合他社の調査、イベントへの登録、アナリストへの連絡、Web検索からLinkedInへの投稿まで、あらゆるソーシャルメディア活動時の顧客の行動を観察して得られた営業およびマーケティング情報だ。現在、ほぼすべてのマーケティング組織がこの種のデータにある程度頼っているが、すべてのマーケティング担当者に有効とはいえないことが多い。

 

活用方法

統計学者やデータサイエンティストは、顧客のブランド、ウェブサイト、社員とのインタラクションについて収集したデータから、顧客の興味や、顧客が企業と関わり、購買する意向などを推測することができる。これらの推測は、適切なタイミングで適切な製品を顧客に提供するための判断材料になる。

 

顧客を特定するためのアルゴリズムが開発されたら、その情報を利用する営業チームや、オンラインキャンペーンに適用するマーケティング担当者から、AIモデルのアウトプットに関する情報を収集することが不可欠だ。モデルのアウトプットをテストするだけでなく、営業やマーケティング担当者がそれをどのように使っているかもテストしてみよう。

 

注意点 

意図の決定には、データソースが最も重要だ。すでに、顧客が何を、いつ、誰から、どのような企業や個人が購入するのかについて、十分な情報を持っているはずだ。しかし、インテントデータは、顧客や見込み客が実際に購入する前に行う可能性のある行動にも依存している。

 

例えば、競合他社のサイトへの問い合わせと、自社の見込み客や顧客リストとをAIアルゴリズムで結びつけることが必要かもしれない。実際にアクションを起こしている人を特定するコンタクトレベルのインテントデータを提供できる企業がある。これらの情報は有用だが、「不快感」を与えないよう、慎重に使用する必要がある。

 

また、インテントデータを利用する際には、あくまで方向性を示すものであり、具体的なものでも、実際のものでもないことを忘れてはならない。営業チームがインテントデータを利用する場合、その情報が実際に何を意味するのかについてのトレーニングが必要だ。例えば、これから30日以内にERP(統合基幹業務)システムを購入する可能性のあるCIO(最高情報責任者)を特定することは、そのCIOが1年掛けてシステムを特定するプロセスを開始したことを意味するに過ぎないかもしれない。これを説明なしにリーダーとしてそのまま営業に渡すと、マーケティング部門にとって打撃となりかねない。

 

3.ビジネスチャンスと購買予測

内容紹介

予測とは、将来起こるであろうことを前もって予想する方法だ。例えば、製品やサービスの売上がある期間にどのように推移するかを予測することができる。

 

売上予測は、経営陣が経費やビジネスの成長、あるいは景気後退に備えるための計画を立てるのに役立つ。それは、営業担当者が目標を達成できるかどうかを予測するときに使う水晶玉のようなものだ。売上予測は、過去の売上取引から将来の売上を予測するため、一般的にかなり精度が高い。

 

活用方法

マーケティングでも予測を業務に活用することができる。例えば、ノルウェーの観光局では、AIの方法論を使って、何人の観光客が自国を訪れるかを予測している。売上高ではないが、ノルウェー観光の重要なKPIとなっている。また、AIや高度な統計解析は、イベントの来場者数、Webサイトで行った特別オファーに応じる人の数、購入まで至る適格なリードの数などを予測するのにも有効だ。

 

注意点

予測は非常にやりがいのあるものだが、それが正確であると実証された場合に限り有効である。ここでは、そのヒントをいくつか紹介しよう。

 

  • 前四半期の数字だけでなく、それ以上のものを検討しよう。

優れた売上予測には、少なくとも18カ月から24カ月分の会社の業績データが必要である。それだけのデータを使って作業すれば、より正確な予測が可能になる。データが入手できない場合は、予測を避けておこう。

 

  • ビジネス全体の変化を考慮しよう。

優れた予測は、同じ製品やサービスが長期間にわたって販売されることを考慮したものだ。販売する新製品の入荷、製品の売却、価格設定や戦略の変更などはすべて、売上を正確に予測する能力に影響を与える。また、他のマーケティング・イベントを予測する場合、往々にして重要になるのが、ある活動に割り当てられた予算という変数だ。それが四半期ごと、あるいは年ごとに大きく異なる場合、予測はより困難になったり、あるいはモデル内でこれらの差異を許容する必要が出てきたりするかもしれない。

 

  • 新規顧客による新規市場への売上を予測しようとしないこと。

どんなに魅力的でも、売上を予測するには実績データが必要だ。この予測は、営業チームに任せてしまおう。営業チームは、顧客が購入するかどうかを判断する方法を知っている。 マーケターにとってそれは、営業チームから情報を収集し、優良顧客のプロファイルを作成し、他の見込み客に「ルックアライク(既存の顧客に似た好みや行動様式をもつ消費者のこと)」分析を適用することである。

 

これらは、AIと機械学習の技術を適用するためのマーケティングの重要な領域のほんの一部に過ぎない。この分野をさらに掘り下げていくと、とりわけマーケティングで日々行われている無数の意思決定の合理化に役立つ機会が豊富にあることがわかるはずだ。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の6/27公開の記事を翻訳・補足したものです。