ConsumerAcquisition.com(モバイルアプリ向け広告会社)のCEOであるBrian Bowman氏による、今年のホリデーシーズン以降にキャンペーン効率を最大限向上させるためのアプリマーケティング担当者に向けたアドバイス。
毎年、ホリデーシーズンには、モバイルアプリ広告による熾烈なユーザー獲得競争が繰り広げられる。しかし、昨年、UA(ユーザー獲得)担当マネージャーは、信頼性の高いLTVモデルを構築し、ルックアライクオーディエンスターゲティング(既存の顧客に好みなどが似た消費者を対象に広告を配信し、新規顧客を獲得すること)を活用することによって収益性の高いiOS支出を拡大した。しかし、IDFA(iOS端末に振り当てられる広告識別子)の変更により、ブラックフライデーでの成功を目指すモバイル広告主は、ホリデーシーズン特有の厳しい状況に直面している。IDFA変更による悪影響とルックアライクオーディエンスターゲティング(既存の顧客に嗜好が似た消費者を対象に広告を配信し、新たな顧客を獲得する手法)の衰退は、モバイルアプリ業界全体の収益に壊滅的な打撃を与えており、ホリデーシーズンも厳しい状況が続くだろう。さらに、例年12月26日には、CPM(インプレッション単価)が低下するが、2020年はそうはならなかった。広告主が、当時懸案されていたIDFA変更に備えて広告支出を維持したことが主な要因である。
モバイル広告のエコシステムに関する見解
先日、The Wall Street Journalは、2021年第3四半期におけるIDFA変更がアドネットワークに与えた様々な影響に関する記事を掲載した。「第3四半期に、世界最大の売上高を誇るデジタル広告会社Googleは、10年以上ぶりとなる最高売上成長を記録した」。他のソーシャルアドネットワークは、IDFA変更、サプライチェーンの混乱、労働力不足などのマイナスの影響を受けた。WSJ(The Wall Street Journal)の取材に応じた12社のeコマース企業は、IDFA変更前と同じ売上を得るために、現在はより多くの広告費を費やさなければならないと回答している。購買促進に対し広告がどれだけの効果があるのかを知るための十分なデータがないため、多くのeコマース企業は広告費を削減した。オンライン販売事業者のコミュニティ団体であるeCommerceFuelが7月に実施した118のeコマースストアオーナーを対象とした調査では、62%がIDFA変更以降にFacebook広告の支出を削減したと回答している。
2021年ブラックフライデー以降のUAとクリエイティブのベスト・プラクティス
Consumer Acquisitionの「Facebook、Google、TikTok向けの第4四半期のクリエイティブ・ベスト・プラクティス」を補足するために、「ポストIDFAホリデーUAガイド」をお届けする。30億ドル以上のクリエイティブおよびソーシャル広告費を管理してきた同社の経験をもとに、ホリデーシーズンのパフォーマンスの浮き沈みを乗り越えて広告効率を維持するための、モバイル広告のトレンドに関するインサイトを紹介しよう。
2021年第4四半期のCPMの波に乗る
2019年以降、11月中旬の直前にCPM(インプレッション単価)の低下が見られる。eコマースやブランドの広告主がブラックフライデーに備えて予算支出を抑えるために、競合が少なく、ホリデーシーズン直前にはCPMが下がるのだ。さらに今年は、広告エコシステムがIDFA喪失の影響を受けているため、より極端に低下する可能性がある。
ブラックフライデーとクリスマスの間は、例年30~40%のCPM上昇が見られる。その後、クリスマス直後にCPMは低下し、通常は1月中旬まで低い水準で推移し、年間で最も低い時期となる。eコマースの広告主はホリデーシーズン小売販売に大きな予算を投じるが、eコマース以外の広告主の多くは、クリスマス後まで支出を抑え、1月にかけて加速することで効率を上げることができる。
プレゼントを交換した後、多くの消費者は新しい携帯電話の電源を入れ、モバイルゲームやアプリを読み込む。小売業やeコマースがマーケティング予算を削減する中、それら以外のモバイルアプリ広告主は、昨年私たちが「Q5」と名付けた期間を利用することができる。Q5とは、12月26日から1月10日頃までの10日間のことである。
我々は、ゲーム、エンターテインメント・ストリーミング・アプリ、メディテーションやフィットネス・アプリ、DTC事業者など対し、この時期のCPM低下を利用して十分な高パフォーマンスなアセットを保有するためのクリエイティブの制作とテストを強化することを推奨している。クリスマス後は、新しいデバイスを使用するユーザーをターゲットにするのに最適な時期であり、デバイスに特化したクリエイティブは結果的に関連性のさらなる向上につながる。eコマース企業以外で12月に支出するのであれば、年末の最後の週にすべきだ。
フットトラフィックに取って代わるモバイルトラフィック
COVID-19の影響で昨年は、店舗への客足が2019年と比べて33%減少した。これにより、ホリデーシーズンにおける小売ビジネスのオンライン広告への移行が加速した。ホリデーショッピングシーズンには、eコマースブランドが、店舗フットトラフィックの減少を補うために、FacebookやGoogleに、可能な限り長期間にわたって出稿する様子が見られた。
今年は、2020年よりも従来型実店舗に足を運ぶ人が増える可能性があるが、2019年よりも10~15%低いと予測されている。そのため当社は、モバイル広告への関心の高まりは、カテゴリーを問わず継続すると考えている。昨年のホリデーシーズンに初めてモバイル広告エコシステムへ参入し成功をおさめたeコマース広告主は、今年も参加するだろう。
Retail Facebook Business GroupのディレクターであるVincent DeSantis氏は、「モバイル・ソーシャルメディアが商品発見に不可欠であることはよく知られている。また、トップクラスの小売業者は、自社のオンラインショッピングエクスペリエンスが、いわゆる体験的でなければならないことを学んでいる。そして、彼らは店舗での『驚き』の要素を、顧客のモバイルフィードで実現している」と述べている。
世界最大の広告グループであるWPPは、第3四半期における広告主の需要が好調であったことから、今年3回目となる売上高予想の上方修正を行った。もう一つの堅調なホリデー広告シーズンの兆候は、広告主がパンデミックからの世界経済の回復を利用したいと考えていることである。この8月、WPPは、2019年のビジネスレベルまで計画より1年前倒しで回復したと報告した。最高経営責任者のMark Read氏は、パンデミックからの景気回復をはるかに超えた上昇であり、「ビジネスに勢いがあるという確信となった」と述べている。
ステイケーション
米国の旅行業界は回復の兆しをみせているが、米国の旅行者は、ホテルよりも家を、海外の目的地よりも地元での冒険を選択している。これは、モバイルアプリの広告主にとって、何百万人もの外出しない人や自宅で過ごす人にリーチできる新たな機会となる。ゲーム、エンターテインメント、健康、フィットネスなどはすべて、家で過ごす時間を充実させてくれる。同様に、家にいる人々は、Facebook、Google、Snap、TikTokなどのソーシャルサイトで体験を共有したいと考えている。友人や家族と一緒に遊んだり交流したりすることができるソーシャルプラットフォームは、今後も増加すると予測している。
バンドル化
CPMの上昇や、ターゲティングや測定方法の喪失により、ユーザーや顧客の獲得コストが上昇しているものの、広告主は、獲得したユーザーの価値を高めることで利益を確保することができる。バンドル、プレミアム機能、段階的な支出割引(何ドル使うと何パーセントか割引される)などは、すべて平均注文額の増加につながる。幸いなことに、このようなアクションは、Q4の消費者行動に完全にマッチしている。人々は、自分のためにも他人のためにも、すでに支出を増やしている。
Androidへの注力
我々は、IDFA変更前からAndroidでテストを行っていたが、それは低コストであることと、iOSへの移行が簡単であったからだ。iOSでのテストは、Androidアプリを持たない数少ないクライアントや、iOSユーザーのみをターゲットとするクライアントのためのものだった。IAP(In-app Purchases:アプリ内課金)とIAA(In-app Ads:アプリ内広告)の両方を対象としたクリエイティブテストは、引き続きAndroidで行うのが効果的である。
幸いなことに、FacebookのAAAアルゴリズムを使用していないAndroidアプリをもつ広告主は、当社のA/Bテストのベストプラクティスに従うことで、決定的な効率性を維持することが可能である。広告主は、A/Bテストの実行能力を保持しつつ、個々のアセットレベルで結果を確認することができる。そして、効果が高いクリエイティブを見つけたら、それをiOSや他のペイドソーシャルプラットフォームに移行することができる。
クリエイティブの向上
2021年第3四半期のGoogleの売上における成功は、ユーザーのインテントを知ることで実現した。検索ワードによってユーザーの興味や動機が明らかになるためである。アプリやウェブのトラッキングに依存している他のソーシャルネットワークは、決定論的なターゲティングと測定を失うことの複雑さに向き合っている。ペルソナ主導の広告クリエイティブによってユーザーのモチベーションに合わせて広告を調整するモバイル広告主は、コンテクスト広告のポジティブな属性に注目し、高品質なファネル最上位のインストール数を増加させながら、効率的かつ収益性の高いスケールアップが可能である。
重要なポイント
最後に、重要なポイントをまとめよう。
- ブラックフライデーからクリスマスにかけて、ソーシャルチャネルのCPMは30~40%上昇すると予想される。
- eコマース以外の広告主は、感謝祭から2021年12月26日までは支出を抑え、1月に入ってからのCPM低下を利用して加速することを検討すべきである。
- クリエイティブの制作とテストを強化し、12月後半の支出増加に備えて十分な高パフォーマンスのアセットを準備すべきである。
- ブラックフライデーとホリデーシーズンのモバイルアプリ広告のベストプラクティスとインサイトを熟知すべきである。
※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の11/23公開の記事を翻訳・補足したものです。