どのようにして、それらをメールマーケティングプログラムに適用するべきか。

 

「COVID-19」や「パンデミック」といった単語がマーケティング用語として使用されるようになってからの18ヶ月間、マーケターは、メールプログラムをどのように変更すべきか、顧客はどのような経験をしているのか、そして、未来バージョンの「ノーマル」に移行するまでにすべての状況がどの程度変化するのかについて考えてきた。

 

そして、すでにマーケティング年度のカレンダー1年間を経験した。次年の計画を立てる前に、今こそこれまでに学んだこと、調整したこと、変更したこと、そして、次のチャプターにおいても保持すべきことを振り返る時期である。

 

ここでは、これまでに得た5つの教訓を紹介したい。

 

1. 今まで以上に顧客に共感し、実行するマーケティングがどのように顧客のニーズを満たすことができるかを考える必要がある

企業と消費者向けの両方のマーケティングにおいて、顧客を中心としたアプローチである「ヘルプフル(役に立つ)マーケティング」が重要だ。企業が顧客の目標達成をサポートするマーケティング活動に注力すれば、顧客は企業の目標達成を支援してくれるだろう。

 

パンデミックが世界中で進行するなか、私たちは、大きな混乱を経験した。そして、共感を持って導くこと、顧客が何を経験しているかを考え、顧客を第一に考えてマーケティングを実行することがいかに重要であるかを実感した。

 

企業は、自社の人間らしさを共有し、顧客の人間性を認識した時、顧客からの反応を得ることができる。顧客を、第一に人として、第二に買い手として思い描くことで、パンデミック後の世界に移行しても、顧客とどのようにつながるかという点においてより良い選択ができるようになるだろう。

 

この考えは機能するか?

答えは、イエスである。

マーケターたちは、過度に宣伝的なメールをやめ、人々に関連性があると考えられる教育的コンテンツを含んだメッセージングに移行することで成功を収めている。今も宣伝はしているが人々がどのように、いつ、何を買いたいのかを理解するためのアプローチを変えているのだ。

 

2. アジリティの重要性

アジャイルマーケティングは、パンデミックのずっと前から存在していた。しかし、多くマーケターは、2020年に起きた経済や文化の急激な変化、逆転、停止によって、その年のマーケティング計画からメール配信の仕組みまで、すべてを作り直さなければならなかった。

 

それまで堅調に売れていた商品の中には、急に売れ筋となり、メールキャンペーン対象商品の有力候補となったものもあった。一方で、急に売れなくなった商品もある。企業のマーケティングは、このような製品関連の変化をどれだけ反映できただろうか?

 

今、成功しているマーケターは、製品の入れ替えから、あるキャンペーンを中止して別のキャンペーンに差し替えるなど迅速なギアチェンジに優れた人であろう。

 

そして、私たちは、まだ森から抜け出せていない。

 

サプライチェーンへの不安や突然の消費者の信頼感低下に加えて、新型ウイルスによるパンデミックによって、世界各地の公衆衛生が脅かされている。アジャイルマーケティングから学んだことは、このような変化により対応するために有効となる。

 

顧客関係管理ソリューションを提供するSalesforce の最近の調査によると、回答者の84%が、顧客の期待に対応してデジタル施策を変更していると回答し、34%がマーケティング技術、戦術、戦略のイノベーションが難しいと感じているという結果が出ている。

 

最後に、2020年にリモートワークへの突然のシフトが起こり、日々のメールワークフローの弱点が露呈した。同僚がオフィスではなくダイニングテーブルで仕事をしたり、仕事と同時に家庭生活や家族の問題に対応したりしなければならないことで、多くのメール業務が大混乱に陥った。

 

引き起こされた問題点は、メールキャンペーンが受信箱に到達するまでにかかる時間から、キャンペーンの企画、構築、送信、自動化の導入や調整に必要なデータへのアクセスまで、多岐にわたる。

 

売上データや在庫データ、顧客リストにアクセスするために何日も待たされるマーケターは、スピードと柔軟性を優先したプロセスを持つ企業に後れを取ることになるだろう。

 

3. 自動化は “セット(設定)&フォーゲット(放置) “ではない

初めてのことだが、2020年から2021年にかけて、私たちはこの教訓をなんども繰り返し学び直した。

真に有効なマーケティングとは、自社のマーケティングのセグメント化、パーソナライゼーション、メッセージングの自動化などに必要なあらゆるテクノロジーを組み込んだものである。顧客を支援する最も優れた方法の一つは、顧客データを反映した関連性の高いメッセージを提示することである。

 

標準的なメールメッセージでは、そのようなレベルで、個人を認識していることを伝えることはできない。

メッセージコンテンツにおける自動化は、実際にはよりパーソナライズされたメールを送信するのに有効である。データを利用して、メッセージをパーソナライズして強化するコンテンツを選択したり、コンテンツの特定の対象者を選択したりすることが可能になるからだ。だからこそ、週ごと、あるいは日ごとに状況が変化する環境において、アジャイル・マーケティングにおけるデータへの迅速かつ容易なアクセスは不可欠なのである。

 

そして自動化により、製品やサービスが提供できなくなったり、ある場所でのキャンペーンを中断したり、別の場所でのキャンペーンを強化したりする必要がある場合には、即座にキャンペーンをアップデートすることができる。

 

ここで重要なのは、顧客に見える自動化と、オーディエンスやコンテンツを選択するためのバックエンドの自動化の両方について、自社の自動化を常に把握しておくことだ。これは、パンデミック関連の問題においてだけではない。

 

大規模な火災、洪水、ハリケーン、政治的・社会的混乱、経済的混乱など、世界が次々と混乱に見舞われているときは、新しいメッセージ、顧客やビジネスのニーズや目標を反映して、自動化をアップデートする必要がある。

 

4. 可能な限り地理的位置を把握する

私たちは、個々の市場や場所に合わせて、可能な限りリアルタイムに近いマーケティングを行う必要があることを学んだ。つまり、顧客を不快にさせたり、ブランドにダメージを与えたりするような“画一的な”メッセージではなく、共感を呼ぶ関連性の高いマーケティングを提供する必要があるということだ。

 

ゾーン別、あるいは国別にマーケティングを行うことで、顧客が経験している状況に対応するようにプログラムを調整することができる。

 

英国と米国のビジネスにおける体験の違いを考えてみよう。英国では、ほぼ全面的にロックダウンされた。米国では、連邦政府ではなく、州政府が企業や学校の休校・開校を決定したため、50の各州において、ほぼ全面的にロックダウンされた状況、変化があったとしてもほぼロックダウンされない状態まで、さまざまな対応がみられた。

 

そのため、地域的な変化を考慮しないマーケティングメッセージは、効果がないばかりか、顧客との関係を悪化させる可能性もあった。

 

別の例を挙げよう。米国では、新種ウイルスや感染急増が個人消費に影響を与え始めている。これは、当初は2020年から回復傾向にあった旅行分野で起こったが、今では消費者の店頭やショッピングモールへの買い物への再開意欲にまで及んでいる。

 

PwCの新しい調査によると、デルタ株がピークに達した英国では、消費者の信頼感がパンデミック前のレベルに達しているという。

アジャイル・マーケティングと同様に、これらの教訓は、現在進行中のパンデミック状況下だけでなく、さまざまな集団に影響を与えるあらゆる出来事にも当てはまる。しかし、何が起きているのか、どう対応すべきなのかを理解するためには、常にニュースを把握し、業界団体と連絡を取り合う必要があるだろう。

 

5. 今起こっていることに注意を向ける

机をみて、目の前の仕事に集中するのは簡単だ。特に、状況の変化に合わせて計画やプログラムを変更し、更新し続けなければならない場合はなおさらである。

 

しかし、ここではMarTech寄稿者であるRyan Phelan氏の言葉を引用したい。「時事問題に目を向けよう。まだ終わっていないのだから」。

 

オンライン・ミーティング・スケジューラーで、毎日時間を確保し、どんなに困難なニュースでもキャッチアップしよう。多様な、または、国際的なコミュニティを反映するリーダーシップを持つ業界団体に参加しよう。自国の事情には精通しているかもしれないが、海外や大陸を超えてマーケティングを行う場合にはこうしたことが必須である。

 

多様な地域に住む顧客が、何を経験しているかを理解する。それが、顧客を中心とした顧客に役立つマーケティングの特徴である。このような現地に関する知識をもつことによって、メッセージが発信されるコンテクストに常に順応することができる。

 

また、会社の計画を立てる際にも、見えないチャンスを見つけたり、不注意によるミスを防いだりするために、現場のインサイトを活用することができる。

 

最後に

この1年半は、刻々と変化する状況を研究し、それに対応する最善の方法を見つけるための実験をしてきたようなものである。その中で、一つの教訓がはっきりと示された。顧客を第一に考え、彼らのニーズや目標を最優先に考えることは、私たちが経験した変化を乗り越えて適応する助けとなり、また、将来の課題に対してより良い準備をしておくために役立つだろう。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の8/17公開の記事を翻訳・補足したものです。