「返信先アドレス」処理を自動化することによる機会損失の可能性

 

最近、自社への返信メールを確認しているだろうか?

ここで言う「返信メール」とは、キャンペーンメールを送信した後に、自社の「返信先メールアドレス」に戻ってくる「reply-to」メールのことである。多くは、職場の不在連絡メールのようなオートレスポンダーによる定型文だが、なかには個人的な返信も含まれる。私が言いたいのは、これらのメールである。

 

ESP(メールサービスプロバイダー)を使った自動処理を行うreply-toメール処理システムを構築しているかもしれないが、このプロセスの管理方法を見直す時期に来ているかもしれない。

 

まずは、「変化」について考えてみよう

誰もが言っていることだが、真実なので、もう一度強調しておきたい。この1年間で、私たちの行動は変化した。マーケターや企業だけではなく、顧客行動も変化している。

 

2020年には、オンラインで買い物をしたことがなかった、あるいは、ほとんどしなかった顧客が、いつも利用していた実店舗が休業したため、オンラインソリューションに頼らなければならなくなった。

 

私もその一人である。私は、我が家では料理を担当するシェフであり、買う前に自分で野菜をチェックしたいため、かつて買い物代行サービスのInstacartや近所のスーパーのカーブサイドピックアップを利用したことがなかった。

 

しかし、今では、UPSやAmazon、Instacartのドライバーのファーストネームを知るほど頻繁に利用している。おそらく近所の人より高い頻度だろう。

 

1990年代の原点に立ち返ろう

消費者がどのようにオンラインショッピングへ移行したかに注目する一方で、どのように歴史が繰り返されているかという別の側面にも注目する必要がある。

 

20年前、マーケターの使命は、顧客にオンラインショッピングのやり方を教えることだった。顧客の手をとり、オンラインでの商品の購入方法を教えたのである。私たち自身が学びながら、同時に教えていた。

 

そして、その頃のように、再び、一部の顧客に対し、オンラインで買い物や交流の仕方を教えている。そして今では、メールを開いてクリックしたり、オンラインで閲覧したりする仕組みを教えるだけではなく、オンラインの可能性に対する理解を深めてもらう取り組みをしている。

 

今までとは異なる方法で顧客の声を聞く

そこで重要となるのが、reply-to処理である。最近、eメールマーケティング専門家であるJeanne Jennings氏が、業界のチャットグループでこのことを話題にしたとき、顧客のことをもっと知り、新しい方法で顧客とつながることを可能にするメールプログラムのこの側面について考えさせられた。

 

reply-to処理とは、自社の実施するメールキャンペーンへの返信を管理する自動化機能である。通常、マーケターはこの機能を設定して、メールの返信に含まれる「配信停止」や「このようなメールの送信はやめてください」、「あなたが嫌いです!」、「#$@$ %&*%#!」などのキーワードを探し、配信停止として処理している。

 

自社メールプラットフォームで上記を設定していない場合(多くはしていないだろう)、これらの返信メールへの対応を行なったことがないかもしれない。しかし、システムがどのように機能しているかを確認する価値はある。

 

キャンペーンメール送信後に受信する100通の返信メールのうち、95通を見る必要はないかもしれない。しかし、その残りの5通は、配信停止依頼やコメントである可能性がある。キャンペーンメールで紹介した商品についての質問や、自社に関するトラブルについてヘルプを求める返信であるかもしれない。

 

なぜか?それらの返信をする人たちは、オンラインショッピングの初心者である可能性が高いからである。

 

このように、メールキャンペーンに対する返信メールを確認することで、顧客が何を考えているのかを知ることができる。

 

reply-toメールの活用方法

すべての返信メールを一人で処理しようとするべきではない。ほとんどのマーケターには、大量の返信メールを処理する余力がない。しかし、返信されたメッセージを精査し、個人的な返信内容を見つけ、また、顧客が企業からのメールに対しどのように反応しているか考える必要がある。

 

そして、配信停止したい場合や、自社の誰かに連絡を取りたい場合に、企業から送信したメールに返信しても、問題は解決しないことを消費者に知らせる必要がある。

 

大量の一斉送信メールに対する個人的な返信メールによる購読解除リクエストや苦情の処理方法について、カスタマーサービスグループを再教育するべきである。顧客からのメールに返信するという仕事は、カスタマーサービスグループが担うものである。

 

さらに、自社のメール担当グループは、返信メールに含まれるインサイトにアクセスする必要がある。そして、返信メッセージを確認する担当者は、これらのメールから学んだことをチームメンバーと共有すべきである。

 

私は複数の会社でこれを実行したが、ここから学ぶことは、マーケティングの運用や戦略にとって貴重なものとなるだろう。意地悪なメールではなく、相手が「ありがとう!最高だ。でも、ひとつ質問したいことがあります。」と返信してくれたメールから学ぶのである。

 

カスタマーサービスグループを持たない小規模企業向けアドバイス

もし、1人か2人のメール担当チームで、毎月何百万通ものメールを送信している場合、返信メールを選別することは不可能である。すでに、手一杯のはずだ。自社のメールプラットフォームがどのように返信機能を管理しているか確認するだけで十分である。

 

しかし、この記事は最後まで読んで欲しい。なぜなら、今は一人のメール担当チームかもしれないが、小さな組織でも、常に一人のチームであり続けるとは限らないからである。

 

カスタマーサービス業務におけるreply-to機能の使い方

中規模または大規模なメールチームの場合、おそらく、返信用メールアドレスをモニタリングしたり、カスタマーサービス担当者と共有したりすることが可能だろう。

 

難しい流れのように見えるが、実はとても簡単である。配信停止プロセスのコントロールを誰かに任せれば、任意のメールアドレスを登録し配信停止する内部ウェブページを設定するだけでいい。

 

返信メール確認することで、顧客が自身のメールアドレスで企業からのメールに返信していることがわかるのが利点だ。彼らは、画面の向こう側に誰かがいて、自分のメッセージを確認していると思っているのである。

 

カスタマーサービスグループは、返信メールを見ることに前向きであるべきだ。そして、企業が個人的な質問、コメント、リクエストを返信してきた人たちをどのように手助けするか、そして、そのプロセスをいかに収益につなげるかを考えなければならない。

 

これが、返信メールに個人的に回答するもうひとつの利点である。このプロセスは、ヘルプや、より詳細な情報を求めて返信する人に対し、カスタマーサービス担当者が個人的に回答することで、彼らを購入に導くことができるため、収益源となる。

 

B2Bのメールには個人的な配慮が必要

B2Bでは、営業担当者でもマーケティング担当者であっても、すべての返信に目を通す必要がある。あるいは、営業担当者とマーケティング担当者がメールを確認するための共有受信箱を設定すべきである。

 

B2Bでは、販売レベルのメール送信を行う部署で働いていない限り、メールの量はずっと少ないだろう。私たちは、常に自動配信メッセージを送信しているが、できるだけパーソナルなメッセージを作成し、あたかも一人の人間から送られてきたように見せるために戦略的に取り組んでいる。しかし、エンドユーザーは、自動配信メールと1対1のメールを区別しない。B2Bでの、1対1のメールの価値は計り知れない。

 

「No-reply(配信専用)」という選択肢はない

しかし、返信メールを管理しない方法として、送信者名に「no-reply(配信専用)」を使用することがある(no-replyがだめな理由はこちら)。適切な戦略は、送信者名とメールアドレスでは自社ブランドを表現し、メール文中で、読者が購読リストから外れたい場合は配信停止リンクをクリックするよう指示し、顧客からの問い合わせ方法(電話番号、問い合わせフォーム、カスタマーサービスのメールアドレスなど)を表示するか、もしくは、その指示をオートレスポンダーに設定することである。「配信専用」は、自社ブランドの本質を表すものではない。

 

最後に:注意事項

本記事は、replay-toメール処理に関する包括的なガイドではない。replay-toメールの扱い方は、会社、チームの規模、メールの内容、送信頻度、カスタマーサービスチームのサポートを受けられるかどうかなどによって異なる。

 

完全に自動化された処理プロセスが悪いというわけではない。しかし、常に、顧客に有意義なやり取りをする方法を教える機会を探すべきである。返信先アドレスに送られてきた顧客からのメッセージに返信する手段がまったくない場合は、先に述べた方法で、顧客がどうすべきかを理解できるようにする必要がある。

 

顧客が企業に直接連絡を取り、個別の対話をすることができてこそ、メールが機能しているといえる。マーケターは、何千人、何百万人もの購読者に向けて、大量のマーケティングメッセージを送信していると考えているかもしれない。しかし、受信者は、私の母と同じように考える。つまり、「コストコは、私にメールを送ってくれた」と思うのであって、「コストコは、私とその他900万人の人々にメールを送ってくれた」とは思わない。

 

マーケターは、私の理論を試してみてほしい。自分の受信箱に入っているたくさんの自動送信メールやキャンペーンメールに返信してみてほしい。そして、企業から何がもどってくるのか確認してみよう。個人的な返答だろうか?登録解除を希望する場合や、個人的な返信が必要な場合の問い合わせ方法を教える自動返信メールだろうか?何の返信もないだろうか?

 

パーソナルな関係を求めている顧客の期待に目を向けるべきである。彼らからの返信を無視することは、自社の成長機会を失うことである。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の4/16公開の記事を翻訳・補足したものです。