新型コロナウイルスのパンデミックに多大な影響を受けた消費者行動の変化に対応できるモバイルメッセージング戦略はどのように考えていけばいいのか。

 

米国に本社を持つグローバルモバイルエンゲージメントプロバイダ、mGageのマーケティングディレクターPinder Takhar氏の意見を参考に考えていく。

2020年は、ビジネスメッセージングの活用が増加傾向となる重要な年となった。ブランドにとって、ビジネスメッセージングは、瞬く間に消費者を惹きつけ、情報を提供するためのつながりを維持する不可欠なコミュニケーションチャネルとなった。

 

また、多くの企業が消費者の望むモバイルチャットサービスや自動化を導入し始めたことから、カスタマーサポートにおいても重要な役割を果たした。そして、企業がオーディエンスに重要で関連性の高いメッセージを送信し、より良いカスタマーエクスペリエンスを提供することが不可欠であることを証明した。

 

可能性は無限大

消費者の期待に沿うべく、新たなモバイルテクノロジーは開発され続け、モバイルメッセージングへの欲求はさらに強まるだろう。今日、人々は頻繁にスマートフォンを使い、オンラインでのエンゲージメントに慣れている。その結果、ブランドは消費者の期待に応えるため、徐々にRich Communication Services(RCS/リッチコミュニケーションサービス)や米国の無料メッセージアプリWhatsApp、AppleのBtoCメッセージサービスApple Business Chatのようなプラットフォームを利用するようになるだろう。

 

ブランドは、オーディエンスとのコミュニケーションにおいて、今まで以上にSMSを利用している。コロナ禍以降、その利用率は30~40%増加している。米国の調査会社Research and Marketsは、世界のA2P(アプリから個人への)メッセージジング市場が、2026年までに771億ドルに達すると予想している。そして、パーソナライズされ、双方向の会話や、関連性の高いメッセージをタイムリーに送信することが可能となるモバイルコミュニケーションは、受け手にとって非常に重要なものとなる。

 

今日の消費者

ビジネスコミュニケーションと消費者行動の変化の双方から学習したことから、2021年も継続する可能性が高く、すべての企業が考慮すべき3つの重要な変化があることがわかる。

 

1点目は、よく知られていることだが、2020年はオンラインショッピングへの顕著なシフトが見られ、eコマースが10倍に成長した。残念ながら、多くの愛されてきた有名ブランドが高級店街から消え、代わりに大手オンライン企業による運営に移行しつつある。そして、この変化は今後も続く可能性が高い。

 

消費者のコスト意識はより高くなり、必要なものだけを購入する。つまり、必需品は買うが贅沢品は買わない、ということだ。

 

商品発見はデジタル化され、今後もその傾向が続くことは確実である。しかし、商品発見のデジタル化はパンデミック前からすでに始まっていたことを忘れてはならない。昨年、その傾向がエスカレートしただけなのだ。これは、ブランドが消費者との関わりを再構築し、商品発見フェーズをよりシンプルにかつスムーズにするチャンスである。

 

2021年にブランドは何を考えるべきか

消費者行動の変化に伴い、ブランドはカスタマーエクスペリエンスとコミュニケーション戦略について再検討すべきだ。

 

マルチチャネル・アプローチ

モバイルが必需品となり、消費者はさまざまなチャネルを使ってブラウジングし、購入するようになった。そこで、ブランドにとって、これらの異なるタッチポイントに存在することが重要となる。RCS、WhatsApp、Apple Business Chatなど、顧客が利用しやすいようにブランドが展開できるチャネルは他にもある。

 

カスタマーサービス・メッセージング

英国に本社を置くグローバルオンライン市場調査会社YouGov調査によると、消費者はブランドとシンプルな方法で関わりたいと考えており、69%が「従来の電話」より「モバイルメッセージング」を好むことが明らかとなった。昨年、多くの企業は対応を余儀なくされ、モバイルチャットサービスを採用した。しかしこれは、カスタマーサポートでは、まだほとんど活用されていない分野だ。さまざまなモバイルメッセージングチャネルを持つことで消費者は、製品サポートや情報提供のリクエスト、問題の解決といった、複数のルートでブランドと簡単につながることができる。そうすることにより、モバイルユーザーは、簡単にブランドと会話を始めることができ、ブランドは顧客ファーストのアプローチを提供できる。

 

リーチ:消費者とつながる最適なタイミング

消費者の日常生活は大きく変化し、1年前とはまったく異なるものとなった。勤務時間は大幅に変化し、社交的な付き合いはオンラインへと移行した。そして今や多くの人が通勤しなくなった。コロナ禍以前は、通勤時間帯やランチタイムがエンゲージメント獲得に最適な時間帯であった。しかし最近の調査では、午前9時頃と昼食後の午後2時から6時にエンゲージメントが急増し、その後翌日までに減少することがわかっている。まだこの時間帯に対応していないのならば、自社データを見直し、タイミングを変更してみることが重要だ。

 

利便性と透明性

ブランドは、自社顧客が、より簡単に、ブランドと関わり、サイトを見て回り、情報を見つけられるようにしなければならない。例えば、商品を注文した場合、受取場所について明確な指示や案内を提供しなければならない。見込みを設定することで透明性を確保できる。もし配送が遅れる場合は、正直に明示し、予定や配達時間を変更しやすくしよう。今日の顧客は、問い合わせに迅速かつタイムリーに回答してほしいと考えている。そして、回答の遅れがネガティブなレビューやサービスのキャンセルにつながる場合もある。米国の調査およびコンサルティング企業、Forrester Researchのレポートによると、顧客の63%は、たった1回の残念な体験で、その企業を利用しなくなり、約3分の2は問い合わせる際に2分以上待たない、という。

 

新しい道を切り拓く

ブランドにとって、モバイルメッセージングは大きな可能性を秘めており、収益や顧客エンゲージメントを向上するさまざまな新しい機会を提供する。例えば、ワンタイムパスワードのリマインダーや、モバイルバンキングの取引認証、アカウント変更の確認用のシンプルなSMSメッセージから、新しく革新的なチャネルが提供するよりリッチでインタラクティブなエクスペリエンスなどである。

 

 

RCSメッセージングは、SMSの次の段階であり、他のメッセージアプリと同じエクスペリエンスの提供を可能にする。送信者やブランドの認証、リッチメディアコンテンツ、回答例やアクションボタンなどの機能はすべて、顧客との対話を改善するのに役立つ。消費者がバーチャルでの予約や、バーチャルクーポンの送信、注文に関する更新情報を受け取ることができるなど、RCSメッセージングによってさらなる可能性が生まれている。また、チャリティ団体が寄付を増やすために展開している、新たなモバイル決済の組み合わせ例もある。Apple Business ChatやFacebook Messenger、WhatsAppも、フィードバックの送信だけではなく、ユーザーが注文に関する問い合わせや配送状況の確認などのサポートを即座に受けることができるチャット機能を装備し、カスタマーサービスを強化している。これらのチャネルは、既存のコミュニケーション戦略を補完し、ブランドの認知度や消費者の信頼を高めるべく設計されている。

 

最近登場したVerified SMS(Googleのサービスで、企業から送信されたことが認証済のメッセージを送信するSMS)は、ブランドと消費者双方の保護をさらに強化し、ワンタイムパスワード、PIN認証、銀行からのアラートのような極めて重要かつ緊急なメッセージを送信するのに最適だ。

 

メッセージングチャネルでのモバイル課金も出現した。現在、Instagramなどのソーシャルメディアチャネルには、すでにこの機能が組み込まれており、モバイルメッセージングにも導入されるだろう。消費者は、別のウェブサイトやアプリを使って決済ジャーニーを行うのではなく、ボタンをクリックするだけの非常にシンプルかつ簡単な操作で、新しいサービスへの加入や、シームレスな注文が可能となる。

 

今後の展望

ブランドからのより良いエクスペリエンスの提供を期待する消費者が増えている今、モバイルメッセージングは、非常に重要な役割を果たすと考えられる。2021年には、さらに多くの企業が、より満足度の高い充実した顧客サービスを提供するため、既存のSMSプラットフォームに加えて、RCS、Apple Business Chat、WhatsAppのようなチャネルを使用したリッチメッセージングに注目し始めるだろう。

 

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の3/18公開の記事を翻訳・補足したものです。