新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生して以来、消費者の購買行動は劇的に変化し、eコマースは活況を呈している。2020年のホリデーシーズンだけでも、オンライン売上は前年比で49%も増加した。一方で、昨年6月、eMarketer(米国の市場調査会社)は、2020年の従来型小売実店舗の売上が10%以上減少すると予測した。

 

このeコマースの急増のグローバルでの核となっているのが、Amazonだ。

 

今や、消費者の60%以上が、オンラインショッピングの検索をAmazonから始めている。消費者はデジタル購買のニューノーマルに慣れてきているため、この傾向は変わりそうにない。シニア層の習慣でさえ変化しており、今後数年間でeコマースの成長への大きな原動力になると予測されている。

 

ブランドにとって重要な結果がそれを物語っている。Amazonマーケットプレイスのセラーの2020年の収益は、前年比で50%以上増加したのだ。

 

2021年以降に向けて、ブランドが知っておくべきAmazonのeコマースエコシステムで何が起きるかを紹介しよう。

 

 

成功しているブランドは、Amazonを自社の上位2チャネルの一つとして採用するだろう

明らかに、Amazonは、巨大な市場機会として傑出している。しかし、従来、ブランドはeコマースを付属的なものとして、つまり、実店舗や自社のウェブプレゼンスに次ぐ、パートナーやリセラーと同様の第二のチャネルとして扱ってきたのだ。

 

一部の小売業者は、自社にとって非常に重要である、自社の提供するブランド体験や顧客との直接的な関係をコントロールできなくなることを恐れている。また、自社のウェブサイトや既存のeコマースチャネルへのトラフィックが減ることも懸念している。しかし、今やeコマース売上の大部分がAmazon経由となっているため、そのつながりを維持したいと考えるブランドは、もはやAmazonを無視することはできない。

 

2021年、Amazonをトップチャネルとして認識するだけでなく、自社のウェブサイトの延長線上にあるものとして完全に受け入れるブランドが最も成功するだろう。Amazonがeコマースのトラフィックの大部分を占めている現在では、他のプラットフォームがブランドのチャネルラインナップに残るためには、ブランドに対して明確な価値を示す必要がある。

 

 

基本的な事柄を正しく行うことが重要

オンラインで勝つためには、ブランドは基本的な事に対する答えを見つけることからスタートし、全く新しい戦略と実行計画を立てる必要がある。その基本的な事柄とは、例えば、誰がAmazonのプレゼンスを管理するのか、全く新しいビジネスのやり方に対応するために、どのようにオペレーションを最適化するのか、既存の実店舗パートナーとの関係に何か影響は生じるか、どのようにして自社ブランドを守り、Amazonでの体験をコントロールするのか、といったことだ。

 

 

ロジスティクスとサプライチェーンは、ブランドとAmazonの双方で注目される

Amazonでの販売、特に大規模な販売には、時間、ノウハウ、そしてリソースが必要だ。新型コロナウイルスのパンデミック渦では、適切に実行することの重要性が非常に高まっている。ブランドは、Amazonのストアフロントで生じる需要のスピードに、サプライチェーンが対応できるように投資を行う必要がある。これには、より的確な予測、需要計画、在庫追跡、返品管理や顧客サービスなどが含まれる。

 

Amazonは、物流における優位性を取り戻すだろう。翌日配送と当日配送の提供中止を余儀なくされたAmazonは、スピーディーに復活するだろう。2021年には、すべてのプライム会員の購入商品の翌日配送を迅速に実現し、当日配達、さらには1時間以内配達まで実現することが予想される。すべてのブランドが、こうした事に対しても準備を整えておく必要があるということだ。

 

 

データの力を活用する

2021年、マーケターは、「Amazonで見つけてもらう」という新たな目標にフォーカスする必要があるだろう。

 

世界中に970万のAmazonセラーがいる。その中で、マーケターは、自社が注目を集めるためのクリエイティブな方法を見つけ、ブランド認知度を高め、顧客を獲得していく必要がある。幸いなことは、Amazonがセラーに提供する豊富な消費者データを活用することができることである。

 

Amazonは、GoogleとFacebookに次ぐ三番目に大きなデジタルマーケティングチャネルであり、購買者のペルソナや行動に関する貴重なインサイトをブランドに提供している。これらのデータは、マーケターがターゲットとするマーケティングキャンペーンやコンテンツを開発し、ブランドの認知度を高めて市場シェアを獲得するのに役立つものであるが、マーケターは、このデータを活用してカスタマーエクスペリエンスを向上させ、それぞれのインタラクションを可能な限りシームレスにする方法についても考える必要がある。

 

 

ブランド保護が注目を浴びる

ブランドは、「Amazonで見つけてもらう」だけではなく、顧客が本物の商品を見つけていることを確認する必要がある。模倣品は、Amazonセラーにとって考慮すべき重要な事項だ。Amazonが模造品への対応を迅速に行わなかったために、いくつかの企業がAmazonから撤退した。

 

Amazonは、模倣品や非正規の販売者を排除するための管理施策を強化しているが、それでも違反者の監視や排除は企業側にかかっている。

 

ブランドは新たな戦略的パートナーを見つける必要がある

実店舗の世界では、ブランドは通常、小売業者や再販業者とチームを組み、彼らの目標達成を支援し、ビジネスの保護・サポートを行なっている。しかし、オムニチャネルの世界では、ブランドには新たな戦略的パートナーが必要となる。

 

しばしば見受けられるアプローチの一つ(理想的なものではないが)は、企業が、従来型ディストリビューターと提携し、Amazonへの進出を支援するというものである。これらのディストリビューターは、ブランド商品を卸売価格で購入し、それをAmazonでより高い価格で再販する。もう一つの中間業者の形態としては、「Amazonアカウントマネージャー」と言われるものがある。これらの独立した第三者の「ハンドラー」は、海外を拠点とすることが多く、値段は安いかもしれないが、ブランドにとって、それ相当の価値しかない。

 

こうした「パートナー」は収益を低下させるだけではなく、起用することでブランド品位の保護や非正規セラーの管理がより困難になる。ブランドは、自社で行うよりも効果的かつ効率的な方法で、基本的な事柄を正しく行えるように手助けしてくれるパートナーを求めるようになるだろう。

 

消費者は過去を振り返らない

小売業が、2020年より前の状態に戻ることは、決してないだろう。パンデミックによってeコマースへの大規模な移行が起こり、そのスピードは10年分加速した。米国小売業におけるeコマース普及率は、16%から、2021年第1四半期には30%を超えた。

 

より多くの消費者が、買い物の大半をデジタル小売体験へ移行するにつれて、企業はAmazonを一つのチャネルとして認めざる負えなくなった。

 

2021年に、増加するデジタルリテールやAmazonのような人気チャネルを利用できるブランドは、今日、そして明日も消費者のいる場所で彼らに対応できる有利なポジションにいるだろう。そして、そうではないブランドは、2022年以降には消滅しているかもしれない。

 

 

※当記事は米国メディア「Ecommerce Times」の3/16公開の記事を翻訳・補足したものです。