意思決定を一元化し、コンテキストに基づいてアクションを実行することは、顧客に真の価値を提供するための鍵となる。

 

最善を尽くしているマーケターにとっては受け入れがたい事実かもしれないが、顧客の3分の2は、マーケターが自分たちのニーズに無関心だと思っている。

これは、米国のトップソフトウェアプロバイダーPEGAによる5,000人の個人を対象とした調査によるものである。そして、マーケターが何に直面しているかを知ると、どうやってそのような感情が根付いたのかが容易にわかるだろう。

 

「自社のビジネススケールを考えよう」と、Pegasystemsのシニア製品マーケティングマネージャーであるAndrewLeClair氏。「あなたたちは、何十ものチャネルで、何百ものプログラムにわたって、数百万の顧客と、文字通り数十億のやり取りを管理しようとしている。これは非常に複雑だ。そして残念ながら、その複雑さは私たちを矢面に立たせる。正しく実行できるチャンスは少なく、何かがうまくいかない可能性は無数にある。そして、一度、満足度の低いエクスペリエンスを提供しただけで、顧客は離れて行くのである」。

 

これは多くのマーケターにとって繰り返されるサイクルであり、コンバージョンの要求と、次々に生み出される自由に使えるテクノロジーによって、顧客にとってマーケターは無関心であるという考えを固めてしまうのだ。

一方LeClair氏によると、より共感的なアプローチは、顧客との信頼関係を高めるだけでなく、ビジネスにも役立つ可能性があるという。

「共感を持って行動するということは、他人の気持ちや考え方、感情、コンテキストや状況を理解し、特定の会話の中でそれに適応できるということだ」と、最近のMarTechカンファレンスで語ったLeClair氏。「そしてそれは、他の人間と関わっている人間にとっては簡単なことのようだが、これを大規模に行おうとしているブランドの場合、非常に困難である」。

そこで、これを好転させる方法がここにある。

 

決定を一元化

マーケターが知っているように、マーテックの世界は大幅に拡大しており、現在8,000を超えるソリューションが利用可能である。しかし、そのテクノロジーはすべて、顧客と関わるためのさまざまな方法を生み出すが、過剰に行うべきではない。

 

「これは、8,000の切り離され、サイロ化したアプリケーションであり、それぞれに独自の頭脳、独自のルール、データモデル、および顧客を理解し、対話し、関与する独自の方法がある」とLeClair氏。「そして、それらが同じベンダーのものであっても、連携するように構築されているものはないことは誰もが知っている。それらは、それぞれ企業が大規模なセグメントで大量に顧客に製品を販売するために構築された。これらは機敏に対応するようには設計されておらず、今のような時期に顧客の問題を解決するのに役立たない」と続けた。

 

代わりにLeClair氏は、使用可能なすべてのエンゲージメントチャネルの中心に位置する、データを収集および分析する中央決定機関を設置することが重要であると言及。これは、8,000の「切り離された頭脳」を扱うことと、たった1つだけを扱うことの違いである。

 

「この1つの頭脳が行うことは、収集されたすべてのデータに基づき、各顧客をそれぞれの特定の瞬間に見て、彼らのコンテキストや状況を判断することだ。そして、付加価値をもたらすためにマーケターにできることはあるだろうか、 また、マーケターが取るべき次善の行動はあるだろうか、ということを検討する。そして、AIや適応モデル、機械学習などを使用して、これらすべてにリアルタイムで答えを見つけ出し、あらゆるチャネルのいずれかで次善のアクションを提供する」と語った。

 

統一された顧客エンゲージメントスタック

1つの頭脳がカスタマーエクスペリエンスにリアルタイムで適応

 

P x V x L

次善の策を実行するという考えは、組織が顧客により共感的であると同時に、ビジネスに大規模に機能するマーケティング戦略を提供することを目指す場合、非常に重要である。

LeClair氏によると、そこでの鍵は、顧客がオファーを受け入れる傾向、つまり、特定の状況下のコンテキストで顧客をビジネスに惹きつける価値を理解することである。

 

「次善の策は、単純ににP [傾向]×V [値]×L [レバー]の合計が最も高いものだ」と続けた。

LeClair氏は、「昼休みに、自社アプリで一連のページをクリックした顧客」の例を示した。これらのクリックは、その集中化された頭脳である意思決定ハブに直接ストリーミングされる。意思決定ハブは、プロファイルをリアルタイムで再スコアリングして、そのアクティビティが顧客の現在の状態への変化を示唆しているか、例えば、それらがリテンションリスクにつながるかどうかを確認する。

 

「次にできることは、次善のリテンションオファーを即座に推奨し、その顧客がオンラインであるときにモバイルチャネルでそれを表示することだ」と同氏。

しかし、その同じ顧客が少し後で何かを購入するかもしれない。その場合、マーケターは、その購入と組み合わせられる何かを提案する新しい機会を得る。

「購入データが入ってきたら、同顧客に対し2度目の再スコアリングをする。 そして、P×V×Lの結果、現段階での次善のアクションは、リテンションプランではないだろう。その代わり、リワードオファーに切り替えるのだ」。

「マーケターが共感を得つつ対応するのであれば、何をすべきかを考えるだけでは不十分だ。必要なときにその決定を顧客に伝え、提供するエクスペリエンスをリアルタイムで適応およびシフトし、顧客の現在の状況に常に関連性が高いものにする必要がある」。

 

関心を示す

一元化された意思決定機関を構築し、それを活用して顧客に関連性の高い次善のアクションを実行することは、マーケターとしてより共感を示すのに大いに役立つだろう。しかし、その関係において実際に”主導権を持っているのは誰か”を覚えておくことが重要な場合がある。

「私たちがしなければならないのは、顧客の立場に立って対応することだ」とLeClair氏。

「彼らがコントロールしているのだ。私たちがいつ彼らと話したいか、ということではない。常に顧客に耳を傾け、常に顧客のコンテキストを分析し、彼らに必要とされる瞬間、つまり、付加価値を提供できる場合にのみ関与することだ」と語る。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の11/16公開の記事を翻訳・補足したものです。