新型コロナウイルスパンデミックによる長引く売り上げへの打撃の結果、Eメールがマーケティングツールとして重要であることが証明されている。それに続いて、ソーシャルメディアも重要視されている。
米国のEメールマーケティング会社、Litmusの「2020 State of Email, Fall Edition(2020年Eメールレポート、秋版)」によると、マーケティング担当者の77%が、Eメールは最も効果的なマーケティングチャネル2つのうちの1つだと回答している。さらに、マーケティングエグゼクティブの78%が、Eメールマーケティングが自社の総合的な成功に不可欠だと回答し、その割合は、昨年と比較して7%増となった。
2,000人以上のマーケティング担当者からの回答に基づき作成されたこのレポートでは、Eメールの可能性を活用するには、ROI(投資利益率)を適切に測定してレポートする必要がある、と書かれている。これが多くの組織にとって問題である。
「EメールマーケティングのROIを、適切に、または非常に適切に測定している」と回答したのは16%だけだった。この点に焦点を当てると、回答者の45%はEメールマーケティング施策に関するROI測定が「適切でない、極めて適切でない」もしくは「測定していない」と回答しているということである。
「このレポートは、Eメールを、すべてのマーケティングミックスそれぞれの中心に置くべき理由を示している」と語るのはLitmusのCMO(最高マーケティング責任者)、Melissa Sargeant氏。さらに「今日のマーケティング環境において、ブランドは、デジタル広告の溢れかえるノイズを、効率的でタイムリーな方法で突破しようと努力しており、パーソナライズやターゲットを絞ったメッセージを優先する必要がある」と語った。
完璧なパーソナライゼーション
多くの企業は、加入者データをベースにEメールキャンペーンを適切にパーソナライズし、メーリングリストを最新のものにアップデートすることができていないという。これは、マーケティングのベストプラクティスの一つを無視していることになるだろう。回答者の3分の1以上が、ユーザーがオプトアウトしない限り、アクティブではない登録者をメーリングリストから削除しない、と回答している。
古いメーリングリストは、ROIを下げ、Eメールをパーソナライズする目的を放棄し、セキュリティ問題にもつながる。送信前に問題なく配信されるかスパムフィルターテストを行うことはめったにない、という回答者は半数以上いた。
Litomusのレポートでは、マーケティング担当者がすべてのマーケティング施策において、Eメールファーストのアプローチを好むことを示している。5人に4人は、12か月間停止するならEメールマーケティングよりブランドのソーシャルメディアを選ぶと回答した。
Sargeant氏によると、Eメールは比類なきROIと最大の顧客エンゲージメントを生み出すマーケティングツールだ、とのこと。
同氏は、「Eメールが、利用可能で最も信頼できるチャネルである理由は、加入者のエンゲージメントデータと情報を収集して、ブランドのメッセージ全体に情報を提供できることである。それに加えて、コンテンツのパーソナライゼーションにも役立つ」と語っている。
回答者のほとんどすべて(94%)が、Eメールは最も効果のあるマーケティングチャネル3つのうちの1つだと答えた。54%が「2019年より2020年の方が、多くのEメールを送信する予定」と回答している。
マーケティングエグゼクティブの60%もまた、「2020年に前年より多くのEメールを送信する計画だ」と言う。回答者の90%近くが、Eメールに関するA/Bテストを実施している。4分の1以上が「しばしば」または「常に」A/Bテストを実施していると回答した。
Eメールキャンペーンにおいては、より高度なパーソナライゼーションの構築が、ますます一般的になっている。Sargeant氏は、「ブランドが実行しているパーソナライゼーションは、よりスマートになってきている」と述べた。
「受信者のファーストネームを挿入するだけでなく、従来の製品やEメールのやり取り、過去の購入履歴など、他の行動統計が以前より活用されていることに気付いた」と語る。
マルチチャネルアプローチ
Litmus社のレポートは、マーケティングの専門家を対象に、主に、事業者のEメールマーケティングキャンペーンの実行方法についてアンケート調査を実施した。Litmusは自社のEメールマーケティングプラットフォームを持っていることを考えると、理にかなっている。
しかしLitmusの担当者は、ソーシャルメディアは、Eメールキャンペーンを補完する効果的なプラットフォームになり得ると考えている。ブランドは、Eメールをさらに多用するようになり、それに伴ってEメールマーケティングへの依存性が高まることになる。このアプローチをすることで、効率的かつタイムリーな方法で、デジタル広告における混乱を突破することができる、とSargeant氏は説明した。
「(顧客)データに基づいて、パーソナライゼーションとターゲットを絞ったメッセージを作成することは、どの事業者にとっても優先度が高い。マーケティング担当者は、Eメールを活用することにより、ブランド体験をパーソナライズして、送信後およびパフォーマンスの分析ができる。それにより、マーケティングミックス全体に影響を与えることができるだろう」。
さらに、「その結果として、組織全体のメッセージングとマルチチャネルマーケティング戦略を進めることができる。Eメールは、ダークモード、グラフィックス、パーソナライズのような分野で継続的な技術革新が行われているため、再び注目されている」と続けた。
Eメールとソーシャルメディア
それでも、Eメールマーケティングとソーシャルメディアを連携させることができれば、両方のチャネルのエンゲージメントを向上させ、全体的なマーケティング戦略を改善することができる。ソーシャルに関連性のあるコンテンツやトピックがEメールコンテンツを促進できる。そして、逆もまた同様なのだ。
Sargeant氏は、「両方のチャネルのインサイトを活用すればするほど、より高い目標を達成できる。ソーシャルは瞬間的なものなので、マーケティングチームは、見込み客が何に興味を持っているのかというインサイトを瞬時に得ることができる。そして、同じくらい重要なのは、その興味が時間の経過とともにどのように変化するかをすぐに確認できることだ。Eメールと同様に、ソーシャルは適切に活用すれば、パーソナライズされたエンゲージメントを促進し、人と人のつながりを生み出すことができる」と言う。
ホームジム機器のレビューを提供するのマネージングディレクターのHealy Jones氏によると、広告キャンペーンにおいてEメールとソーシャルメディアの両方を使用することは、マーケティング担当者にとって堅実なツールセットとなる、とのこと。
同氏は「ブランドが、Eメールキャンペーンと併用してソーシャル(メディア)のターゲティングやリターゲティング機能を使うことで、大成功したのは事実だ。具体的には、マーケティング担当者は、FacebookやLinkedInのようなプラットフォームを利用することにより、メーリングリストをアップロードして、キャンペーン中に個人をターゲットにすることができる」と言う。
Jones氏は、Eメールとソーシャルメディアの両方で同じメッセージを配信する戦略だ。メールプロモーションの1週間ほど前に、ターゲットを絞ったソーシャルメディアを介してテコ入れし始めることで、Eメールキャンペーンのパフォーマンスを大幅に向上させることができる、と言う。「これにより、キャンペーンの効果が30%上がったことがある」。
ソーシャルのスイートスポット
しかし、多くの場合、広告プラットフォームとしてはソーシャルメディアの方が優れた選択肢となっている。ソーシャルの世界的なリーチは魅力だ、と米国のペット向け製品販売会社のHonest Pawsの共同創業者であるChelsea Hunt-Riveram氏は反論する。
「インターネットで見ることができないものはない。数回クリックするだけで、オーディエンスは相手と交流することができる。つまり、(ブランドが)認知される機会が増えるのだ」と同氏。
しかし、Hunt-Riveram氏は、「世界中の人と、現在もっとも便利な方法で取引するということはリスクでもある。一つ対応を間違えば、評判を台無しにする可能性がある」と警告した。
さらに「アクセスしやすさと効率性についていえば、ソーシャルメディアは企業にとってより大きなチャンスをもたらす。ソーシャルメディアでは、創造力は無限だ。ソーシャルにおいては、メール、調査、画像、動画、投稿、動画ブログ、ブログ、ツイートなどを使ったマーケティングなど、多様なことが実行可能となる。HDの動画を1本か2本しか挿入できないEメールとは違う」と語った。
スパムフィルタの回避
Eメール第一主義に頼るマーケティング担当者は、多く存在するスパムフィルタを克服しなければならない。スパムフィルタは、メールを振り分けるプロセスがランダムなことが多いため、厄介な場合がある、と米国の地図作成・販売会社GeoJango Mapsのマーケティング担当およびSEOスペシャリストのMichael Anderson氏は語った。
「しかし、実際の返信用メールアドレスを指定し、送信者として正式な企業名を入力することで、迷惑メールに振り分けられる可能性を減らすことができる」とのこと。
米国の検索エンジンマーケティング企業、Anvil Mediaの社長で創設者のKent Lewis氏によると、「いくつかの内部情報を適用することで、スパムフィルタの干渉を適切に処理することができる」とのこと。例えば、スパムフィルタに対抗するベストな方法は、多面的なアプローチを開発することだ。
同氏は「まず、受信者の混乱を減らし、コミットメントを最大にするためにダブルオプトインを推奨する。次に、メールをセーフセンダー(安全な送信者)に追加するよう受信者に伝えること。最後に、フィルタによる損失を最小限にするため、ホワイトリスト化され保証付きのESPを確保するために、必要に応じて追加料金を払う」と語っている。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の11/5公開の記事を翻訳・補足したものです。