南欧地域のスペインとイタリアは、eコマースにおいて遅れをとっている。たとえば、小売全体に占めるオンライン販売の割合は、北欧諸国よりもはるかに低い。これはなぜだろうか?

 

南欧の人々はeコマースに対し抵抗感を持ち続けているようである。昨年を例にとると、ドイツ人の約80%がオンラインで買い物をしているのに対し、世界第8位の経済大国であるイタリアでは、わずか38%だった。

 

しかし、今年スペインイタリアはヨーロッパで最も厳しいロックダウンを2度経験することを余儀なくされた。その結果、初めてオンラインで購入する人々が急増した。一方、今問題なのは、オンラインに移行した消費者が、オンラインショッピングを継続するかどうである。それはオンライン小売業者にかかっていると言えよう。

 

経済的問題か

スペインのコンサルティングエージェンシーOutmanは、南欧のeコマースが、ヨーロッパの他のオンライン小売市場に依然として遅れをとっているいくつかの理由を挙げている。Outmanによると、イタリアとスペインの一人当たりの国内総生産は西欧市場と比較したかなり低いが、その理由は単に経済的問題だけではないとのことだ。

 

インターネットアクセス

次にインターネットアクセスを検証してみると、「この点は、過去には説得力のある説明だったかもしれないが、インターネット普及率の差はここ5年間で大幅に減少した。南欧ではブロードバンドアクセスが遅れているものの、モバイルデバイスの人気は非常に高いことからも、誰もがインターネットアクセスを使用していることを意味している」。

 

地理的相違

南欧と西/北欧の違いについて考えられるもう一つの原因は、スペインとイタリアが北側の隣国と地理的条件が異なっているという事実であろう。南欧は、山岳地帯で航行可能な水路が不足しているため、工業化が遅れ、鉄道やネットワークが未だ発達途上である。

 

「南欧は工業化で遅れをとっていた」

 

ロジスティックスがかなり劣っている

イベリア半島とイタリア半島は、山脈によってヨーロッパ本土から遮断されているため、クロスボーダー運輸も遅れている。南欧ではロジスティックスがかなり劣っているため、取引が遅延し、それによりコストも高くなる。「これは、南欧に提供されるeコマースの品質が低いことを意味している。たとえば、Amazon Spainがプライム翌日配達サービスを提供しているのは、スペインの上位3都市であるマドリッド、バルセロナ、バレンシアのみである」。

 

「南欧に提供されるeコマースは質が低い」

 

その風土もまた、ヨーロッパ南部が北部とは違ったeコマースのランドスケープをもたらす重要な要因である。スペインやイタリアでは、英語はあまり話されていない一方で、最もポピュラーなウェブサイトが英語であるという事実は、北側の市場に有利に働いている。

 

全体として、需要と供給の両方の要因が絡み合っている、とOutman氏は言う。「供給サイドでは、スペイン人とイタリア人は品質が劣る製品を提供している。配達にはより時間がかかり、コストもかかる。 これに加えてローカル言語の専用ページも十分ではない。さらによく晴れた日が多く、小売店舗がチェーン店や巨大メガストアに集中していないため、南欧ではショッピングがよりローカライズされた地域社会体験の場となっている。このように、店に行くこと自体が数時間過ごすのに快適な方法である場合、それに代わるもっと便利なショッピング手段であるeコマースに取って代わられる可能性は低いだろう」。

 

※当記事は英国メディア「E-Commerce News Europe」の11/12公開の記事を翻訳・補足したものです。