同社は、オンラインで注文した商品を店内で受け取るサービス(BOPIS)や駐車場で受け取るサービス(カーブサイドピックアップ)のオプションを強化。

 

おなじみの米国大手書店チェーンであるBarnes & Nobleのカスタマーエクスペリエンス担当シニアディレクターJosh Zelman氏は、Movable Ink(米国のメールマーケティング企業)が先日開催した(Re)Thinkカンファレンスのバーチャルステージに上がり、同社がどのようにテクノロジーを活用し、店内、オンライン、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store / オンラインで注文した商品を店内で受け取るサービス))、そしてカーブサイドピックアップ(オンラインで注文した商品を駐車場で受け取るサービス)体験間の重要なバランスを取っているかについて説明した。

 

約1年前に就任したZelman氏は、当初、メールマーケティングとCRM(Customer Relationship Management / 顧客管理)を担当する予定であった。しかし、同氏によると、「すぐに、ソーシャルチャネルだけでなく、会社全体に関わるソーシャル、メンバーシップやクリエイティブを含む、他のいくつかの分野がすぐに私の下に統合された」という。

 

BOPIS vs. 宅配便

Barnes & Nobleは、かなり前からeコマースのウェブサイトを有しており、注文した書籍は店頭での受け取りだけでなく、宅配便で受け取ることもできた。Zelman氏によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴い、顧客の行動に大きな変化が生じており、顧客は実店舗を避けてオンラインショッポングへと移行したものの、商品の受け取りは店頭で行っているという。顧客が宅配便での配送を希望しない理由は何だろうか。

 

「パンデミックが始まったとき、宅配便は影響を受けた。我々は、通常は、顧客に対し注文受付や商品発想を通知するだけのサービスメール全般を強化したが、基本的には自社の納期に余裕を持たせるためのものであった。オンライン事業者全体でトラフィックと注文量が増加し、我々の配送能力に波及的に影響を及ぼした。配送センターでも問題が発生した。新たなソーシャルディスタンスの感染防止対策にうまく対応しようとしながらも、注文量は典型的なホリデーシーズンのような量に近づいていたのだ。あらゆることが複雑になり、対応するのが難しかった」とZelman氏は話している。

 

州の規制により多くの店舗が強制的に閉鎖を余儀なくされる中、最初の変化は、カーブサイドピックアップの概念を初めて導入したことであった。「実際に店舗を再オープンさせる前に、カービングサイドピックアップのロジスティクスがどのように機能するのか、顧客対応についての情報を得ることができたことは、大きなメリットだった」という。 Zelman氏によると、再開にあたっては店内のトラフィック量が制限されており、カーブサイドピックアップとBOPISは依然として魅力的な選択肢であるという。

 

成功した戦略

2018年の導入時、BOPISは注文の約23%を占めていたが、2019年には20%に減少した。パンデミックの影響により、Barnes & NobleのBOPISの売上高は、約230%増加(今年の1月と2月と比較)し、11月と12月は前年比109%の成長が予測されている。これは新型コロナウイルス感染症から回復していない場合の数字である。

 

ダイナミックメッセージング

Barnes & Nobleは、顧客がより全面的にBOPISやカーブサイドピックアップを利用できるよう支援するため、Movable Inkのダイナミックメッセージングソフトウェアを活用した。このソリューションは当初はメール用に開発されたものであり、メールの開封時や閲覧時に最新の情報を提供するメッセージを作成する。

 

ブランドの主要なコミュニケーションチャネルであるメールでは、ジロロケーションデータを活用したMovable Inkのダイナミックストアロケーターモジュールが、店舗の場所と営業時間だけでなく、その店舗が現在営業中であるか、BOPISとカーブサイドピックアップが提供可能かも表示される。eコマースサイトが更新され、BOPISとカーブサイドピックアップがより目立つようになり、プロモーション用の検索結果には、これらのオプションサービスが表示されるようになった。

 

サイト上では、説明ページに加えて、カーブサイドピックアップのビジュアルデモストレーションが提供された。また、顧客を支援するための店内看板が、メールとウェブメッセージングと統一されたクリエイティブを使用して開発された。

 

冬に向けた準備

Zelman氏は次のように話している。「ホリデーシーズンに向けた準備進めているが、いくつかのファクターが存在している。1つは、店舗に戻ってきた時に顧客が感じる快適さのレベル、新型コロナウイルス感染症の感染数の増加と相まって、店舗への入店人数の制限が再び厳しくなったり、顧客を店舗に入店させることができなくなる可能性がある」。

 

Movable Inkの創設者兼CEOであるVivek Sharma氏は、この季節最後のある暖かい日に、ニューヨークにあるマンションのバルコニーから語ってくれた。「Josh(Zelman氏)は長年の間、Movable Inkにとっての顧客であり、パートナーであり、当社の顧客諮問委員会のメンバーでもある。BOPISは今年みなが話題にしているもので、BOPISとQRコードが重要だ」。

 

Sharma氏は、より広範な社会的状況を背景に、パンデミックがマーケターにとって何を意味しているのかを振り返った。「大きな選挙を控えているが、DNC( Democratic National Committee / 民主党全国大会)との提携で、この選挙サイクルにおける成功に貢献してきた。冬の間は新型コロナウイルス感染症に対する不安があり、それによって状況が変わるだろう。初夏に見られた購買行動やマーケティング行動をもっと目にすることができると思う」。

 

Sharma氏はまた、 eコマースやデジタルマーケティングに十分投資していないブランドに対しても、次のようにアドバイスを述べた。「賢いマーケターであれば、これ以上待つことはない。今が最後の機会だ。これらのことを優先していないと、遅れを取ることになる。実店舗の戦略だけでやっていくことはできないのだ。そして、BOPISなどに見られるように、実店舗の戦略では、デジタルを階層化して戦略を強化する必要がある」。

 

成功の秘訣は何か。「顧客データのプラットフォームを導入してすべてを一元化すること、優れたメッセージ配信エンジン(ESP(メールサービスプロバイダー)やマーケティングクラウド)を利用することである。そして、非常に優れたクリエイティブパーソナライゼーションテクノロジーを採用し、顧客データを入手して取り込み、パーソナライズされたクリエイティブに変換して、顧客とつながっているあらゆるチャネルを通じて配信することができるようにすることだろう」。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の11/2公開の記事を翻訳・補足したものです。