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公開日2020/09/03

eコマースとリアルの両輪で消費者に“Phygital(フィジタル)”な体験を

新型コロナウイルスのパンデミックは、一見すると矛盾しているように見える現実をもたらした。というのも、消費者はオンラインで買い物をするのが好きでも、対面での体験も強く望んでいる、ということである。

 

しかし、今の時代には「フィジカル(物理的)とデジタル両方の要素を兼ね備えたショッピング体験を提供する」という難問に対する答えがあることが明らかである。”Phygital(フィジタル)”体験としても知られているそれは、オンラインと対面の両方の利点の提供を目指すものだ。

 

「eコマースは、非常に素晴らしい。しかし、ユーザージャーニーや、小売業者による顧客の理解を細分化している」と語るのは、英国のeコマースパーソナライゼーションを提供するQubitの製品マーケティングディレクター、Sergio Iacobucci氏だ。「『フィジタル』体験は、フィジカルとデジタルの両方の世界を結びつけることを目的としている。複数のチャネルにまたがった、繋がりと一貫性のある体験の提供は、今の顧客が期待していることであり、その期待に応えれば、顧客のロイヤリティを得ることができるだろう」と続けた。

 

言い換えると、消費者は複数のチャネルの体験をブレンドしてほしいと考えているということだ。

 

米国のパーソナライゼーションソリューション、Formationの共同創業者およびCEOであるChristian Selchau-Hansen氏は「小売業者は、消費者の好みの変化に適応するために、すべてのチャネルにまたがるパーソナライズされた体験を築く必要がある。そして、フィジカルとデジタルを組み合わせることが、その実現に効果的な方法だ」と語った。

 

さらに「それらを正しく実行し、完全なオムニチャネル体験を提供することにより、消費者は満足し、興奮するだろう。そして、小売業者は、繰り返し利用したいと思う顧客を獲得することができるだろう」とのこと。

 

正確には、フィジタル体験は、新しいというよりも、顧客を魅了し、エンゲージメントをもたらし、維持するためにますます重要になっていると言える。

 

「顧客は、すでにデジタルとフィジカルのショッピングチャネルを行き来している。新型コロナウイルスの世界的なパンデミックはこの動きを加速したに過ぎない」と、米国のカスタマーエクスペリエンスサービス提供企業、Dynamic YieldのカスタマーサクセスマネージャーのKlaudia Karcz氏。また「小売業者は、安全に配慮し、来店客に対し、パーソナライズしたプレミアムなサービスに焦点を当てた、より魅力的な店内体験を構築できるように、ショップの運営方法を変えていかなければならない」とのこと。

 

フィジタルの成功

うまく設計され、消費者の実際の生活やニーズに溶け込んだフィジタル体験は、成功する可能性が極めて高い。

 

米国のデジタルコマースマーケティングソリューションQuotientのCEOで共同創業者のSteven Boal氏は「最も良い体験とは、迅速で、シームレスで、日常の生活に溶け込んでいるものである」と言う。

さらに、同氏は、「スマートフォンを取り出して、メールを送ったり、読んだり、アプリを利用したりするのが、ごく普通に感じられていることを考えてみてほしい。これは、すべてデジタルだが、スマートフォンを使ってレシートをスキャンしたり、コレクションしているものを注文したり、店内で支払いをしたりするのは、デジタルの世界がフィジカルな領域に溶け込んでいるのだ。そのアクションは素早く、簡単で、多くの消費者が使い慣れているものである。デジタルの要素は、フィジカルな体験に自然に入り込んでいる」と述べた。

 

フィジカルとデジタルの融合は、例えば、オンラインや対面で食料品を買う時にデジタルクーポンを配布するということである。

 

「米国の配送サービスShiptと、初めての食料品に特化したeコマース配送で提携できたことを嬉しく思う」とBoal氏は語った。「この提携によって、QuotientはShiptの90社以上の小売業者によるネットワークに向けて、デジタルクーポンを配信する。これによって、顧客は外出することなしに、好きなブランドで安く買い物ができる」とも。

 

さらに「顧客は必要な商品を閲覧しながら、クーポンを見つけることができる。該当するアイテムの製品ページにもクーポンが表示される。買い物客はそれ以上の別のアクションをすることなく、希望のクーポンを選ぶことができる。クーポンは、Shiptの買い物客がアイテムを購入して、配送を依頼すると自動的に引き換えられる。この機能は、従来の対面式の食料品ショッピングに代わるものを探している顧客が存在する現在のコロナ禍では、特に重要である」と語った。

 

ホログラフィック体験

フィジカルとデジタルの融合は、購入前に自宅で快適に製品を体験する方法として顧客に拡張現実(AR)体験を提供する、という形をとることもできる。

 

「拡張現実は、フィジカルとデジタルの世界を融合ために最適なソリューションだ」と語るのは、米国の拡張現実代理店、Rock Paper RealityのCEO兼共同創業者のPatrick Johnson氏。「例えば、特に家庭用品において我々が取り組んでいるオンライン・プロダクト・ビジュアライゼーション機能によって、顧客は、購入前に自宅で製品を見ることができる」と言う。

さらに同氏は「買おうとしているソファが自宅のリビングルームに合うかわからない場合でも、自宅に同サイズの3Dモデルを置いて、支払い前に確認することができる。ソファの色がカーペットや壁と合うか迷ったとする。ARによって、実際に置いてみなくても、具体的かつリアルに視覚化することができる。リアルタイムで、色や素材、サイズを変えて見ることもできる」と説明している。

 

米国のワイナリーSiduriは、消費者がSiduriのワインや理念を垣間見ることができるホログラフィーの拡張現実体験を提供している。

 

Siduriの創業者、Adam Lee氏は「ワイン業界はやや古めかしい。そこで、この新しいテクノロジーを採用することで、消費者と次世代のワイン愛好家がまったく新しい方法でSiduriと関わる体験を生み出すことを目的とした」と語った。

 

「ワイナリーについての拡張現実体験ができるSiduri Holographic Experienceのような『フィジタル』な“出会い”を提供することで、3つの興味深くインタラクティブなストーリー(ワイナリーのブドウ畑の場所によって異なるピノノワールの風味と特徴、スクリューキャップを使うこととその理由、各種ワイン評価で90点以上のワインが500種類以上)の中で、ワイナリーの信条を強調すると同時に、消費者のSiduriに対するエンゲージメントを向上させ、つながりを深めることができる。

 

フィジタルの未来

今回のパンデミックによって、フィジタル体験に光が当たったが、マーケティングやセールスへのこの革新的なアプローチは、コロナが終息した後でも続くだろう。消費者は、オンラインショッピングと、eコマースをフィジカルの世界に融合する独創的な方法を体験することの両方に慣れてきている。そして、企業はこのような体験を顧客に提供する多くの利点に気付いている。

 

米国の顧客エンゲージメントプラットフォームBrazeの社長兼最高顧客責任者(CCO)であるMyles Kleeger氏は以下のように語った。

 

「フィジタル体験の提供は、小売ブランドにとって酸素のようなものになるだろう。それが無ければ生きていけなくなる、という意味だ」。「オンラインとオフラインのスムーズな体験や正確な在庫データ、迅速な配送または商品の店頭受け取りのようなオプションへの消費者からの需要が増加するだろう。将来的には、スマートな小売事業者が、業界を変革し新しい体験を創造していくだろう」。

 

重要なことは、フィジカルとデジタルの世界の境目が、消費者にとって整合性が取れていて、シームレスであることを確認することである。

 

同氏は「人はまだ、人とのかかわりを必要としているが、そのかかわりによって、利便性が犠牲となってはいけない」と語った。さらに「その他に、小売事業者が、テクノロジーを活用して。店頭での体験を強化するためにできることがあるだろうか。どうすれば、顧客が店に入ってきたときに、彼らが誰であるかを認識し、ニーズを予想ことができるだろうか」と続けた。

 

「小売業者にとって、独自の価値提案を見つけ出す必要性があるというプレッシャーはこれまでになく高まっている。モバイル機能を活用する革新的なフィジタル体験の提供は、顧客ロイヤルティと長期的な存続を構築するための鍵となるだろう」。

 

最終的に、フィジカルとデジタルの体験は、相互に情報を共有していなければならない。

 

米国の仕事効率化とコラボレーション・ソリューションのプロバイダーMoxtra の最高ブランド責任者(CBO)のLeena Iyar氏は、「デジタル体験は、フィジカル体験の延長でなければならない」と語った。さらに「計画されたフィジカル体験に組み込んだブランドアイデンティティやペルソナに合致する必要がある」とのこと。

 

モバイル指向のコラボレーションやコミュニケーションプラットフォームを含むMoxtraの製品は、外部サービスと統合することができる。

 

「今やデジタルは重要で、これからも極めて重要であり続けるだろう。顧客のポケットの中のスマートフォンに、適切にバーチャル体験を提供し、使いたい時に使いたい方法で利用できるようにすれば、高い効果を発揮する」とIyar氏は述べた。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の8/20公開の記事を翻訳・補足したものです。

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