アパレルを購入するとき、多くの消費者は実際に店舗へ行き、ディスプレイされている商品を見て歩き、試着したいと考える傾向は依然として根強い。結局のところアパレル商品の良さは、本質的に触ってわかるものであり、パーソナルなものなのではないだろうか。

一方で、人々がアパレルを購入する方法は、徐々に変わりつつある。デジタル技術によってアパレルECは変化してきており、アパレルのサイズ設定やデザイン方法から、在庫の管理方法までのすべてが、新しい技術と手法によって変化しているのだ。

 

パーソナルタッチ

eコマースにおけるアパレル販売の成功のカギの1つは、パーソナライゼーションである。アパレルというものは、直接肌に触れる数少ない商品であり、顧客は、実際に気に入って身につけられるアパレルを、オンラインで確実に購入できるより優れた方法を、以前にも増して求めているのだ。

 

「マーケットは、成長し続けており、業界のD2C(消費者直結)ブランドは増加している。ブランドは、先進技術を活用し“おすすめ商品”を提示するといったパーソナライゼーションに注力し、記憶に残るほど優れた顧客サービスを確実に提供する必要があるだろう」と、英国のeコマースコンサルティング企業Ecommerce Growth Co.の創業者Ian Rhodes氏は語る。

さらに「返品は、ファッションブランドに損害を与えるものである。どうすれば、サイズをより明確に表示できるか、商品のイメージをより適切に商品説明に織り込むことができるかをさらに検討することは、顧客とファッションブランドの双方にさらなるメリットを生み出す」と加える。

 

オンラインファッション販売のパーソナライゼーションの大部分は、新しく進歩した分析に基づいている。

米国の企業経営コンサルタントAvionosの戦略実践ディレクターであるMousumi Behari氏は「例えば、適切な分析レポートを作成することで、小売業者はスマートにアップセリングとクロスセリングを実行できるようになり、平均注文額(AOV)を上げることができる」と語った。

「さらに、小売業者は、購入後のエクスペリエンスについて考えなければならない。返品は、簡単に、そして問題なく処理されているか。顧客が商品の仕様について質問がある場合、顧客サービス担当者に簡単に連絡できるか。小売業者は二歩先を考え、顧客が望むシームレスな購入体験を可能にし、買い手に購入過程が重要視されていると感じさせる必要がある」とも述べている。

 

強力なPIM(商品情報管理)戦略を持つことは、顧客が欲しい時に欲しい服を確実に入手するためにも不可欠である。

「特に、アパレルを販売するブランドと小売業者は、PCやモバイルアプリ、さらに音声デバイスのような複数のプラットフォームにまたがって展開する可能性が高いため、強固なPIM戦略から受ける恩恵が非常に大きい」と語るのは、オーストリアのソフトウェア会社PimcoreのCEO、Dietmar Rietsch氏。

「顧客は、アパレル商品にこだわり、そのフィット感にこだわる。そして、過去の購入履歴から好みに合うとおすすめされた商品から購入するようだ」と語った。

「優れたPIM戦略によって、より正確なおすすめ商品を提示し、商品詳細を常にアップデートすることが可能となる。そして、顧客は常に、適切なコンテンツが提供され、実際に欲しいと思うおすすめ商品が提示されることを認識し、ブランドに対する信頼とロイヤルティが構築されるのだ」と続けた。

 

オフラインに展開

他のどんな商品よりもアパレルの販売においては、顧客が実際に見て、手に取って触れることができるメリットは大きい。そのため、多くのアパレルブランドが、顧客のオンラインとオフライン両方のエクスペリエンスをブレンドする方法を探している。

 

AvionosのBehari氏によると「オンラインでのアパレル購入体験は、小売業者とブランドが分析に基づいて消費者のニーズをより深く知るにつれて、さらにパーソナライズされ続けている」とのこと。

また、「オンラインとオフラインエクスペリエンスの融合は増えていると思う。アパレル小売業者は、店舗に顧客を呼び込むことに依然として価値があることを認識し、店内体験をユニークで魅力的なものにする必要がある」とも。

 

オンラインでのアパレルショッピングは、実店舗来店によって補完することができ、最終的に完結することができる。

同氏は「Canada Goose(カナダのファッションダウンブランド)は現在、顧客がコートを試着して、その保温性を確認できるように、店内にマイナス4度の部屋を設置している」と言う。「この種のユニークな体験は、顧客の来店を促し、実際にその商品の高い機能性とブランドの信頼性を認識した上での購入を促進する」と語った。

 

ジャストフィットを見つける

オンラインでアパレルを買うことの難しさの一つは、そのアパレルが自分にフィットするかわからないことだ。eコマース小売業者は、顧客がオンラインで購入したアパレルに満足してもらうべく、革新的な方法を開発している。

 

1つのアプローチは、カスタマイズ可能な独自のサイズ展開のアパレルを提供することである。

米国の女性ファッションブランドMeasure & Madeの社長、Beatrice Purdy氏は「Measure & Madeでは、個性や違いを受け入れることで、女性を応援したい」と語った。

「パンツやジーンズは、Fitlogic技術を採用している。Fitlogicが行なった研究によると、女性の94.8%が、ストレート型、砂時計型、極端なくびれ型という3つの体型のどれかに分類される。同社の特許技術により、快適、かつ、自信を着こなせるパーソナライズされたフィット感を提供することが可能となった」と語る。

 

パーソナライズされ、カスタマイズ可能なサイズ設定をすることで、顧客は安心してオンラインでアパレルを購入できる。

Purdy氏は「女性のサイズ設定は、アメリカ国立標準技術研究所が誤った研究を発表した1958年から変わっていない。その研究のせいで、長年、砂時計型を『理想的』とする虚栄的なサイズ設定が行われてきた」と指摘した。

「同じ体形の女性は二人といない。結果、古風な典型的な女性体型に合わないことを気に病む必要はないのである」と彼女は強調する。

 

さらに「Fitlogicは、すべての女性のショッピング体験を改善することを最終目標として、15年以上にわたり、科学的に開発され、テストされた」とのこと。「サイズだけでなく体型に注目し、Fitlogic特許技術と独自の2桁の十進法システムにより、女性は数問の簡単な質問に答えることで、優れたフィット感を体験できる」とのことだ。

 

このビジネスモデルの成功のカギとなるのは、大規模な在庫を持つことである。そうすることで、顧客が、特定のサイズや組み合わせを、必要な時に注文できるようなる。

「当社ブランドは、すべてのサイズと形状の在庫を維持するために、他の小売業者の3倍の在庫量を保有している点が特色である」と、Purdy氏。

「その結果、十分検討した上で新製品展開をしている。当社は、ボトムス商品によって他者との差別化を図っているため、デニムやキャリアパンツのオプションはすでに拡大している。しかし、将来のラインアップに、今後ドレスも追加したいと考えている」と同氏。さらに「丈のオプションも意識しており、長いものや短いものを追加し続けている。一つの例として、ストレートジーンズは100以上のサイズと形の組み合わせがある。同じことができる他社ブランドはあまり多くないだろう」と加えた。

 

未来を着る

自動化と人工知能は、アパレル販売において検討すべき2つの要素だ。

 

ビジュアル技術ベンダーCatchoomのCEO、David Marimon氏は「アパレルECの未来に、自動化とAIが関係するのは確かだろう」と語る。

同氏は「ブランド、小売業者やマーケットプレイスは、技術を活用し、パーソナライズされた関連商品を、リアルタイムでオンラインショップの訪問者に表示するようになるだろう。個人の好み、コンテキスト、行動パターンなど、さまざまな側面を考慮して、サイト訪問者個々に対しより適切にカスタマイズされたエクスペリエンスを提供できるようになる」と述べた。

 

他のすべてのeコマース販売と同様に、将来のアパレルECは、最終的に企業が顧客にユニークな体験を提供できるかどうか次第だろう。

 

Behari氏は「将来の小売エクスペリエンスは、オンラインでも実店舗でもその間にいても、顧客が商品を欲しいと思った瞬間に、顧客がいる場所で、使いやすいサービスを提供することがすべてとなるだろう」と語っている。

そして「Amazonのようなマーケットプレイスとの競争も激化するだろう。マーケットプレイス事業者は、ユニークな商品を販売し、より多くのデジタルトラフィックをプラットフォームに送る他社小売業者と提携するだろう。これにより、他社よりさらにユニークなエクスペリエンスを提供する小売業者を求める買い物客のニーズが高まる」と語った。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の10/15公開の記事を翻訳・補足したものです。