新型コロナウイルスへの対応疲れは現実だが、パンデミックはまだ終わっていない。

新型コロナウイルスは収束にはまだ程遠いが、コロナ疲れは散見されている。米国でも4月下旬には、やや緩みが出ており、ウィスコンシン州ではバーが混雑したり、メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日、5月25日)の週末にはアラバマフロリダのビーチに人が詰めかけたりした。顧客はアウトブレイクの終息を待ちきれず、その思いはブランドのコンテンツにも広がっている。

 

増加するコロナ疲れの兆候

州がロックダウンされてからおよそ3週間が経過した4月中旬には、各社が収集したデータにコロナ疲れの傾向が見られた。例えば、米国のコンテンツインテリジェンスプラットフォームのChartbeat発表したオーディエンスエンゲージメントデータや、米国の広告会社のTaboolaデータ、それに米国の市場調査およびコンサルティング会社のHarris Poll(米国の統合医療通信機関のGCI Health向け)とスイスのオムニチャネル通信プロバイダMittoデータなどにである。Harris Pollの調査によると、回答者の93%がコロナではないニュースを聞きたいと考えており、66%がコロナウイルスの報道全てに圧倒されストレスを感じていることがわかった。およそ40%は、コロナの現状よりも「希望や激励の話」を見たいと答えた。

 

Mittoは、米国、中国、オーストラリア、スペイン、その他の複数の国々の7,000人を調査したところ、それまでの新型コロナウイルスに関するブランドのコミュニケーションに対する一般的な評価がわかった。この調査では、「回答者の77%が、この数週間でブランドから受け取ったメッセージは、ブランドが自分の健康を気遣ってくれていると感じた」とのこと。しかし、4月中旬には、41%は、新型コロナウイルスと関係のないトピックについて、ブランドからのメッセージを聞きたいと回答した。

 

ひっきりなしに届くCEOからの「重要なお知らせ」や「ニューノーマル(新しい日常)」に対応するためのヒント、そして早すぎる「再生」への励ましなど、一般的に聞こえるものの不快感を与えるコンテンツが作られてきた。そして、私は4月の初めに、大量に生み出される新型コロナウイルス関連コンテンツと、自社の取り組みどのようにマーケティング担当者やブランドが差別化できるかについて、記事を書いた。

 

複雑なオーディエンスの状況にうまく対応する

新たな課題は、流行が完全に終息したように思わせないようにしながら、いかに新型コロナウイルスに関するコミュニケーションを超えていくかということだ。業種固有の問題(歯科医とレストランの違い)や地域差、政治、オーディエンスの年齢の違いという課題もある。これらすべての要因は変わりやすく、ブランドコミュニケーションは、ロックダウンするときよりも解除時がより難しい。

 

(2020年5月25日にミネアポリスで発生した、警官による黒人男性George Floyd氏に対する暴行死事件は、ブランドにとって現在、新たに対処しなければならない非常に難しい問題である。これは重要だが、また別のトピックだ。)

 

コロナ疲れとコンテンツへの今後の対応について、米国のマーケティング会社CultivativeのオーナーのAmy Bishop氏と、米国のデジタル広告代理店Clix Marketing のクライアントサービスディレクターのMichelle Morgan氏、そして米国のコンテンツマーケティング会社のContent Marketing InstituteソーシャルメディアおよびコミュニティマネージャーであるMonina Wagner氏に実用的見地を聞いた。

 

Michelle Morgan氏

私の(現時点での)一般的な規則は、顧客が企業とどう関わるかを考えることだ。自社が提供する顧客エクスペリエンスに影響がある場合にのみ、新型コロナウイルスに関する情報を知りたい、そして、知る必要がある。レストランの場合、ガイドラインが設定されているので、それに沿って新型コロナウイルスに対処する必要があり、対面であろうがピックアップであろうが、常連客のエクスペリエンスは通常とは異なる。強引である必要はないが、ある程度の期待値の設定が必要だ。

 

それに対して、電子機器を直接消費者に出荷するオンライン小売業者の場合、顧客のエクスペリエンスはおそらくコロナ前と同じなので、「普段通りの」メッセージに戻し、通常の感覚に戻るべきだ。

 

Amy Bishop氏

ブランドによって対応は異なると思う。ソーシャルディスタンスを取る、という対応をするブランドもあり、市場の価値によってはそれが理にかなっていることもある。しかしそれは、リスクを伴う可能性もある。新型コロナウイルスが終息したように行動するようアドバイスするつもりはないが、メッセージに新型コロナウイルスに言及することを避けるやり方もあると考えている。

 

ソーシャルディスタンスを取る(そして、必要な場所ではマスクを着ける)ことにこだわるべきだ。ソーシャルディスタンスを取らない企業は、ソリューション中心のメッセージに留めるのが最善策だ。というのも、それは常に関連があるからだ。

 

Monina Wagner氏

「前例のない時代」という言葉を二度と聞かないようにしたい。コロナ疲れは、現実だ。コロナ疲れを感じていても、いなくても、パンデミックはまだ終わっていない。マーケティング担当者は、現在の危機に敏感でなければならない。消費者がどこにいて何を必要としているかについて憶測してはいけない。マーケティング担当者は、自分達はオーディエンスではないことを忘れてはいけない。

 

コンテンツマーケティングは、価値あるコンテンツを作成し、配信することだ。そのためには、消費者に一定のレベルの共感を示すことが重要だ。そして、それは、我々の仕事にとって、不可欠なことだ。オーディエンスにどのような手助けが必要か尋ねてほしい。そして落ち着いたら、顧客に合わせればいい。日常に戻れるように励まそう。この機会に、コンテンツでオーディエンスを元気づけよう。

 

これはコロナ関連のトピックを避けなければならない、という意味ではない。ただ注意深くアプローチしなければならない。パンデミック前のコンテンツを破棄する、という意味ではない。今保有しているコンテンツの内容を分析し、監査し、意図が確実に伝わるようにしなければならない。また、オーディエンスが新しいコンテンツを望んでいる場合は、責任を持って作成しなければならない。

 

多くのマーケティング担当者は、短期間にピボットを実行し前進しなければならないプレッシャーを感じている。一方で、新しい状況をナビゲートする長期的な戦略を立てるべきだ。新型コロナウイルスの影響は、我々全てに対し、続いていく。しかし、マーケティング担当者は立ち直る強さがある。評価し、適応できる。そして邁進するのだ。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の6/1公開の記事を翻訳・補足したものです。