顧客と従業員を支援するべくピボットしているマーケターの励みになる事例を見てみよう。

 

新型コロナウイルスによる大規模な混乱によって、多くのマーケターは、すべての活動を再考する必要に迫られている。マーケターのコミュニティでは、この抗いがたい状況をどうにか乗り切る方法についてのアイデアが議論されている。本記事は、現状に適応した事例の紹介となる(こちらこちらもお読みいただきたい)。

 

 

顧客の最大のニーズについてアウェアネス(意識・気づき)を高める(Jobviteの事例)

課題: Jobvite(ソーシャルリクルーティングに注力した採用管理システムを提供する米国企業)は、人材獲得パッケージソフトウェアを提供し、顧客が最高の人材を惹きつけ、採用し、えり抜きの従業員を雇用して引き留めておくための支援を行なっている。当社の顧客は、現在の膨大で緊急な雇用ニーズに圧倒されている(ヘルスケアやeコマースの顧客など)か、または、社内チームのリモート勤務へのピボットを実行、サポートし、変化するビジネスの役割にどのように用いることができるかを明らかにしなければならないかのいずれかの状態である。いずれも、これまでにない方法で当社の手助けを必要としている。

 

解決策: 同社は、緊急の雇用ニーズを有する顧客のために、提携企業やブログを閲覧したすべての人向けに定期的に求人情報を更新するブログを始めた。我々は、リモート環境にいる従業員と新たな社内モビリティへの取り組みにピボットしている顧客のために、リモートでの作業を支援するデジタルeカード(メール形式のグリーティングカード)と、新たな責任と機会に向けて、現従業員を育成し成長させるために必要な情報を送信している。

 

反響: 我々は当初、”Companies Hiring”ブログを週に一度更新する予定であったが、現在の顧客やブログの読者から非常に多くのリクエストを受け取り、今は毎日更新している。我々は、eカードの送信を始めているところであるが、顧客にギフトを準備させるための最初のメールは、企業の役に立ち、優秀な従業員を認識して報酬を与えることを目的とした社内モビリティ戦略の始動に関する非常に高い関心を集めている。

 

― Ashly Stewart氏は、Jobviteのコンテンツマーケティングマネージャーである。

 

 

新型コロナウイルスの渦中における報道の確保 (Fractlの事例)

課題:  Fractl(米国のコンテンツマーケティング代理店)のほぼすべてのクライアントは、同社に、何らかの形でデジタルPRに関する依頼をしている。新型コロナウイルスが一夜にしてニュースサイクルを独占し始め、どの分野でも報道枠を確保することは非常に困難となった。多くのパブリッシャーは、新型コロナウイルスのニュースを追いかけるために、レポーターを通常の担当エリア(オフィスが集中している中心業務地区など)から、期間も定めずに引き離していた。

 

解決策: 我々は、多面的なアプローチを取る必要があった。すでに制作されたキャンペーンについては、新型コロナウィルス関連の観点を重点的に取り込み、コンテンツがパブリッシャーにとってよりタイムリーに見えるようにした。キャンペーンが制作中であるか、またはブレインストーミング段階にある場合は、新型コロナウイルスとの具体的な関連性のあるコンセプトへ変更した(主に財務や健康などの分野)。最後に、最新の新型コロナウイルス関連のアイデアに基づくキャンペーン制作を促進し、クライアントが現在のニュースサイクルを活用できるよう支援した。

 

反響: 最後のアプローチを例にとると、我々は、大手パブリッシャー(米国Marketwatchなど)において、睡眠に関連する新型コロナウイルスキャンペーンについての報道を確保することができた。また、大手パブリッシャーで報道されるために、必ずしも大規模なキャンペーン実施が必要ではないことも再確認した。必要なのは、適時性なのだ。最後に、変わりゆくニュースの状況に適応するべく、当社チームが結集し、普段のコンテンツを制作し宣伝するやり方から完全に方向転換するのを目にするのは気持ちが奮い立たされるものだ。当社は、業務プロセスにおけるさらなる自由と、信頼し最初から最後まで任せることにより、よい結果を得ている。

 

― Ryan McGonagill氏は、Fractlのサービス部門のVPである。

 

 

トリビア、ハッピーアワーとゲームで会社の士気を高く保つ (Cognitivの事例)

課題: 新型コロナウイルスにより、Cognitiv(米国のマーケティングAI企業)では従業員の100%が在宅勤務をしており、これまで以上に分散している。全国にあるオフィスで勤務し、1つの団結したチームをまとめることすら困難であるのに、この状況ではつながりを保つことはさらに困難となっている。

 

また、企業が一歩退いて、マーケティング支出についてさらに深い見方をしていることも分かる。経済の不確実性ゆえに、現在の「いかなる」支出も正当化することは困難なのだ。だが、不況時に広告出稿を続けているブランドは、広告を停止しているブランドよりもすぐに立ち直り、回復が早いことが証明されている。

 

解決策: スタッフとのつながりを深めるために、我々はZoom(オンラインで音声と画像を使ったミーティングや会議ができるアプリ)上での朝食や昼食、そしてハッピーアワーも毎日開催している!我々は、同じ場所にいなくても、チームと緊密に連携するのに最適な時間が食事のときであると考えた。この時間を、仕事に集中するためではなく、全員が経験していることについて話すために使っている。これは、チームとしての絆を深め、つながりを保つのに役立っている。同社のCEOは週に一度、これらのバーチャル会合の際にトリビアクイズをしたり、ある種のインタラクティブなチームビルディング活動をしたりするのを楽しんでいる。

 

また、デジタルトリビアゲームやコンテストなど、全社の士気を高める楽しい活動も続けている。

 

毎月、全オフィスを強制的にピクショナリー(米国のボードゲーム)に参加せるのではなく、全従業員それぞれが4つある「寮」の1つに分けられる(ハリー・ポッターに登場するホグワーツ魔法魔術学校を思い浮かべてほしい)。CEO 兼共同創設者であるJeremy Fain氏は、Cognitivの「ダンブルドア」(ハリー・ポッターに登場するホグワーツ魔法魔術学校の校長)の役割を果たし、毎月チームがどのように競争するか、そして獲得ポイントを決定する。すべての「寮」は、名前(もちろんニューラルネットワークに関連するものだ)や特質を決め、紋章を設計する必要があった。これらの「寮」は数年前に設立されたが、当社は、バーチャル環境でも、このチームビルディングイニシアチブを継続することが特に重要であると感じた。

 

「寮」の名前と特質は以下の通り:

  • The Nodes of Ranvier (ランヴィエ絞輪) ― クリエイティブ、厳格、大胆
  • The House of Rage Against Machine Learning (機械学習の怒りの家) ― 自信、チームワーク、アグレッシブさ
  • The House of Backpropagate That AZZ Up (AZZアップのバックプロパゲーションの家) ― 探検家であり搾取者、バイモーダル(二峰性の)ディストリビューター、ディープエンベッダー
  • The Nodes of Gaussbusters (ガウスバスターズのノード) ― 神聖な、大胆不敵、人道主義

 

また、ウェビナー(オンラインセミナー)、学習機会や実践的なリソースの提供など、クライアントをより迅速に組織化し、動かすためのいくつかの新しい手助けを実施している。

 

反響: 我々のスタッフは非常にいい環境にいる。我々は全国に散らばっているが、皆、サポートを受け、つながっていると感じている。今も採用を行っており、これも我々のやる気を持続させてくれているのだ!シアトルに3名追加し、ニューヨークオフィスにさらに数名を新規雇用する予定だ。

 

我々のクライアントは、当社が行った「追加的な取り組み」のすべてを評価している。

 

― Justine Frostad氏は、CognitivのマーケティングVPである。

 

 

デジタルアジリティ(迅速な変化対応力)でコミュニティを維持(Benefitfocusの事例)

課題: Benefitfocus(米国のソフトウェア会社)のカンファレンス「One Place Conference」は、コミュニティにとって最高の瞬間である。我々は、顧客、パートナーやアソシエイトとして、企業価値からテクノロジーにいたるBenefitfocusの一部であることのすべてを体験するために集まっているのだ。毎年開催されるこのイベントは、オーディエンスに当社のソリューションについての情報を与えるだけではなく、業界のダイナミクスと革新的なソリューションについて全員で深い対話を行い、より良い従業員体験をもたらしている。

しかし、現在の状況では、3月にリアルイベントを行うことは不可能だとすぐに理解した。コミュニティの健康確保のために、One Place Conferenceイベントの精神を、バーチャル環境で実現する方法を考える必要があった。

 

解決策: 専門チームを組み、リアルイベントをデジタルイベントに移行した。わずか8営業日でデジタルイベント実施を可能にするべく、ON24(米国の仮想イベントのリーディング企業)と協力して迅速に作業を行った。

当社のチームは、協業し、迅速に動き、魅力的で刺激的なバーチャルカンファレンスを開催した。そして初めて、イベント中に作成されたすべてのコンテンツが、オンデマンドでオーディエンスに提供された。主要なセッションは、高品質動画で制作され、我々のメッセージとその配信が、安全な当社コミュニティの自宅オフィスからのみ配信されるライブイベントに、メッセージと配信がライブイベントに沿ったものになるように、高品質動画で制作。この経験は現在、年間を通じての継続的なアウェアネス、リードとデマンドの生成、そしてコンテンツ制作を促進する役割を果たしている。すべては、当社のOne Place Conferenceバーチャルイベントからもたらされているのだ。

 

反響: デジタルファーストのイベント戦略に転換したことで、当社のバーチャルカンファレンスでは、物理的なイベントへの登録と比較して、出席とエンゲージメントが200%増加した。ON24プラットフォームによって、顧客のデジタルボディランゲージとイベントへの全体的な没入感をしっかりと把握することができている。我々は、参加者の大多数が、バーチャルカンファレンス体験に高い評価を与えたと認識している。また、彼らがどのコンテンツを消費し、どのセッションで最も多くの人々がもっと詳しく知りたいとバーチャルで手を挙げたかも余すところなく把握している。

 

直接会うことはできなかったものの、イベントをバーチャル化することで、デジタル要素と戦略がオーディエンスの経験を向上させることが証明された。我々は、現在も将来においても、マーケティングとコミュニティが強化され続けるよう、統合されたイベント戦略の設計を継続するべく努力している。

 

― Hunter Smythe氏は、Benefitfocusのイベントマーケティングディレクターである。

 

 

週末に対応可能でいよう (Bright Valley Marketingの事例)

課題: 新型コロナウイルスの状況により、現在、Bright Valley Marketing(米国のインターネットマーケティング企業)のすべてのスケジュールに混乱が生じている。クライアントは参っており、誰を頼るべきか分からない。

 

解決策: クライアントに、「頼りにできる」と感じさせる必要がある。彼らから週末に、答えが必要な緊急の質問が出てくるかもしれない。土曜日と日曜日の1時間程度をクライアントの作業に割り当てることで、クライアントがあなたを最も必要とするときにあなたはそこにいることをクライアントに示せるのだ。

 

反響: 信頼を構築する素晴らしい機会だ。

 

― Gabriela Covay氏は、Bright Valley Marketingのオーナー兼CEOである。

 

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の4/14公開の記事を翻訳・補足したものです。