新型コロナウイルスパンデミックの発生前から消費者は、ピックアップまたは宅配にかかわらず、オンラインで食品を注文するという考えに慣れ親しんできていた。そして今、より多くの買い物客がオンラインでの食料品ショッピングに初めて目を向けている。

「人々は何年もの間、ピザなどの食品デリバリーサービスを利用してきた」と、eコマース・ソリューションを提供するCommercetoolsの南北アメリカ・マーケティング担当VP、Margaret Rea氏は語る。

Grubhubのようなフードデリバリー企業は、食事のデリバリーサービスで注文可能な商品について、人々の考えを広げ、選択肢を増やしてきた。人々はお気に入りのレストランから、食事や、自宅調理用のミールキットサービスを注文してみようと考えるようになった。過去の食品デリバリーでのポジティブな経験に基づいて、さらに積極的にこれらを試してみようと考えるようになっている」と、同氏は語る。

 

<参考>

世界の9事例、国内5事例から見る、生鮮食品デリバリーサービス成功の要諦

 

食品ソリューション

多くの人々にとって、食品の調達はストレスポイントであり、オンライン注文と創造的なフルフィルメント戦略は、時間を節約し、不安を和らげるソリューションとなり得る。

 

「オンラインショッピングは、主に、よりバランスのとれた生活を求める人々によって、単独のアクティビティではなくライフスタイルになった」と、Rea氏。「帰宅途中に車中からピックアップできるように、オフィスまたは車中から注文することを可能にしたことは、忙しいライフスタイルを管理するのに役立つテクノロジー(特に、オンラインコマース)の一例である」。

 

新しい技術と戦略の登場によって、食品オンラインショッピングは、便利でストレスのないものとなり、楽しみにさえなる可能性がある。

「カスタマーエクスペリエンスは、食品と食料品の両方の分野で進歩している」とRea氏。「たとえば、ドイツの大手食品会社であるREWEは、顧客が、料理しているレシピや、料理を振る舞うゲストの数に基づいて、正確な量の材料をショッピングカートに追加できる機能を持つモバイルアプリを提供している。このようなポジティブなカスタマーエクスペリエンスによって、食料品オンラインショッピングがシームレスになるだけでなく、楽しくソーシャルな生活の一部となっているのだ」。

 

迅速で信頼性の高い配送オプションの提供も、eコマースの食品販売の成長を促進するもう1つの要因である。

 

「オンライン食料品の購入が増加した主な理由の1つは、その利便性と、探している商品をすばやく簡単に見つけることができる点である」と、スマート食料品検索アプリを提供するSpoon GuruのCEO、Markus Stripf氏は指摘する。

「配送時間の大幅な短縮は、当然、大きな利点となる」と同氏は語った。

 

テクノロジーを活用した配送

こうしたサービスを背後で支える数々の新しい技術も、オンラインの食品および食料品販売、ピックアップ、配達のブームを後押ししている。たとえばWalmartは、食料品のピックアップおよび配送サービスをサポートするテクノロジーに多額の投資を行っている。

 

「Walmartは、サービスの舞台裏で、堅牢なeコマースエンジンと新しい運用プロセスを構築しており、それらはすべて、顧客データとインサイトに基づいている」とマーケティング会社Kobieのコンサルティング担当シニアバイスプレジデント、Bobby Greenbergは語る。

「Walmartは、同社サービスのユーザーに、テキストメッセージを介して食料品を注文する機能を提供することにより、いわば、人間とロボットを結婚させることに成功した。注文エクスペリエンスに、パーソナルなタッチを与え、可能な限りシームレスにしたのだ」。

これは最終的に、消費者と特定のブランドおよび小売業者との間に、永続的な絆を築くことができる戦略である。

「多くの消費者は、利便性と使いやすさによって、感情的にブランドを選択しようとする」と、Greenberg氏。「宅配サービスによって、食料品購入エクスペリエンスは、いくつかのボタンを操作するだけのものに変化し、Walmartを長期的に利用する新たな習慣が生まれることになる」。

 

ターゲットを絞ったおすすめ機能と連動したキュレートされた食料品ショッピングエクスペリエンスの提供は、消費者に商品を売るオンライン食品ショッピングの価値における重要な要素となり得る。

「Spoon Guruは、商品検索と発見プロセスにおけるフリクションをなくし、買い物客の好みと購入傾向に基づいて高度にカスタマイズされたおすすめ商品を提供する。それにより買い物客は、自分の特定のニーズと健康志向に適した食品を簡単に見つけることができる」とStripf氏。「小売業者にとっての利点は、2倍になる。つまり、顧客価値とロイヤルティを高めることができるのだ」。

 

在庫管理から配送まで、オンライン食品小売業の多くの側面を組み合わせるテクノロジーを利用することで、消費者のエンゲージメントと信頼を獲得することができる。

「eコマース・ソリューションを提供するCommercetoolsのAPIソリューションによって、カート、チェックアウト、製品カタログなどのコマース機能を、在庫やフルフィルメントなどのあらゆるフロントエンドシステムやバックエンドシステムに接続することができる」と、Rea氏は述べている。

「各APIは、特定のタスク用に設計されているため、古いモノリシックコマースプラットフォームの約4倍のスピードで、ITチームは、構築、作成、実験、反復することができる」と同氏は説明。たとえば顧客が、Facebookなどのソーシャルメディアチャネルや、店舗内のIoTベースのキオスク端末を介して食品デリバリーを注文したい場合、ITチームはCommercetoolsのAPIを使用し、その機能を迅速に構築することができるのだ」。

 

消費者が最終的にどのように食品を入手するか、そして、そのプロセスを彼らにとっていかに簡単なものにできるかということは、食品およびeコマース戦略を成功させるための重要な要素である。

ソフトウェア開発会社のScienceSoftのeコマース業界アナリストのTanya Yablonskaya氏は、次のように述べている。「食品eコマース企業は、配送の重要性を理解し、消費者に便利な配送シナリオを選択させるようになってきている」。

 

「買い物客に最も人気のある選択肢には、当日配送、時間指定宅配、クリックアンドピック(オンラインで購入し商品をピックアップ)、エクスプレス配送、サブスクリプションなどがある」と同氏は述べた。

 

未来の食品業界

食品およびeコマース業界は急速に拡大および進化しており、レストランから食料品店まで、あらゆるものに対する人々の考え方が変化している。

「何十年もの間、食品流通およびフルフィルメント業界は、ほとんどイノベーションを生むことなく停滞し、消費者は、変わらない古い方法で食品を買わざるを得なかった」とRea氏。

「嬉しいことに、未来は明るい。eコマース技術の進歩とともに、オンライン食品購入、配送、革新的なピックアップ・オプションは、積極的に受け入れられており、消費者は、かつてないほど、多くの選択肢をもつことになるだろう。それは、食品の購入、受け取り方法だけでなく、果物、野菜、乳製品、卵、さらには小麦粉などの地元産の食品の供給事業者を選択することも可能となる」と同氏は指摘する。

「地方および都市の消費者は、季節ごとに旬の収穫物を提供する地元の生産者から、オンラインショップまたはモバイルアプリを通じて、配送、もしくは、ピックアップを選択し、より多くの食料を購入できるようになるだろう」。

モバイル技術のイノベーションと、人々を購入したい食品とマッチングさせるクリエイティブな方法によって、業界は変革され続けるだろう。

「大都市圏では、モバイルアプリ、ショッピングサイト、さらには車内で利用するマーケットプレイスにおける、リアルタイム更新、限定商品のフラッシュセール、ロイヤルティプログラムなどのカスタマーエクスペリエンスの向上により、オンライン食品購入の利用が増加し、食品流通業界全体を変革させ続けるだろう」と、Rea氏。

 

最終的には、市場および消費者の需要に合わせて進化することが、食品小売業者の存続の鍵となる。

 

「現在、アメリカ人の3人に1人以上がオンラインで食料品を購入している。そして、小売業者は、より多くのシェアを獲得しようと競い合っている。今後数年間で、小規模プレーヤーだけでなく大手プレーヤーも大きな発展を遂げるであろう」と、Stripf氏。「革新する事業者は成功し、現状に甘んじる事業者は、将来的に競い合うことはできなくなるのである」。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の3/16公開の記事を翻訳・補足したものです。