消費者は、常にソーシャルメディアにアクセスし、友人とブランドの両方からの投稿をスクロールしている。そして多くの消費者が、ブランド投稿をクリックして商品を購入し始めている。
「ブランドのソーシャルコマース人気は、ますます高まっている」と語るのは、Elastic Path(eコマースソフトウェア会社)の最高戦略責任者であるDarin Archer氏。
「トランザクション自体がアプリ外部で発生している場合でも、商品の発見と購入間のギャップは、はるかに縮小されている」と話す。
「買い物客が広告について考えている時には、その商品はすでに購入することができるということである」。
ソーシャルコマース戦略は、「買い物客が、後になって店舗で買い物をするときに、広告や商品を覚えていることに期待すること」よりも効果的と付け加える同氏。
「ブラウジングとトランザクションをさらに一体化させることで、消費者のショッピングプロセスを合理化することができる。そして、多くの場合、購入意思のピークからトランザクション完了までの時間を大幅に短縮できる」と、Archer氏は語る。
本質的に、ソーシャルメディアは人々の生活の場となっており、そこで買い物をすることにも比較的抵抗が小さくなっている。
「常に、ソーシャルメディアは、購入決定の重要な入り口となっている」とデジタルマーケティング会社Digitasのソーシャル戦略担当グループディレクター、Liz Cole氏は述べる。
「消費者の半数以上が、ソーシャルチャンネルでフォローしている人がある商品を推奨するポストを見た後に同じ製品を購入し、75%近くがブランドのソーシャルポストで最初に製品を見てから同じ製品を購入したことがあるということを調査結果は示している」と、同氏は語った。
消費者が、ソーシャルコマースのアイデアに慣れるにつれて、ソーシャルメディアプラットフォームも変化している。ソーシャルプラットフォームは、「ショッピング可能なタグ、商品カタログ機能を持つ広告、そして、トランザクションチャットボットといった、より多くの優れたコマース機能を構築している」と、Cole氏。
「ポストから購入までの過程が短縮されるに従い、人々は、ソーシャルチャネルで新製品を発見して直接購入することに、よりオープンになっている。以前は、通常オンラインで購入されることのなかった、マットレスや処方薬といった製品カテゴリにも拡大している」と指摘する。
成功するソーシャルコマース
ソーシャルコマースを成功させるには、消費者がブランドと交流するために使用するさまざまなチャネルすべてにわたる連続性を確立することが必要である。
Elastic PathのArcher氏は「ソーシャルメディアを通じての販売を成功させるためには、ブランドはソーシャルコマースエクスペリエンスを、モバイルやWebなどの既存のタッチポイントと効果的に統合する方法を見つけなければならない」と語る。
「また、アプリ内で提供するブランドエクスペリエンスが、そのタッチポイントに合わせて、個別に調整されていることを確認する必要がある。ソーシャルコマースのチェックアウトエクスペリエンスは、単に、デスクトップエクスペリエンスをソーシャルに再利用するのではなく、ソーシャルのコンテキストと高い関連性がなければならない」。
「顧客が購入ジャーニーを進める過程において、エクスペリエンスの違いに全く気づかないことが理想である」と指摘する。
Avionos(デジタルコマース・マーケティングソリューション企業)のデジタル戦略
プラクティスを率いるMousumi Behari氏によると、ソーシャルコマースは、ブランドと顧客の間で、時間をかけて築き上げられるロイヤルティにも依存しているため、ソーシャルメディアで販売する製品は、競争力のある価格かつ信頼性の高い品質であることが重要であるという。
「ソーシャルメディアの視覚的性質を考えると、ストーリーラインを作り上げ、インパクトのあるブランド訴求ができる、小型フォーマットの動画がますます人気となっている」と同氏は語った。
インフルエンサーは、ショッピングとソーシャルメディアの世界を結びつける、一種のパイプとしての機能を果たすため、ソーシャルメディアコマースの成功において、一般的に大きな役割を担う。
「インフルエンサーは、すでに一定の好感度を獲得しているので、顧客は、彼らが売ろうとするものを信頼するだろう」とBehari氏。「Nikeと元NBAレイカーズ選手であるKobe Bryantや、Pumaと米国の女優歌手Selena Gomezとの提携のように、ブランドは、このアプローチによって成功を収めている」。
そして最終的には、ソーシャルコマースにおいては、コミュニケーションが全てである。
「ソーシャルメディアで双方向の会話を構築することにより、顧客リテンション率も向上する。大手米国小売りチェーンであるTargetなどの巨大ブランドが、コメントセクションで顧客にサービスを提供し、ユーザーがいる場所で彼らに対応している」とBehari氏は説明。
「小売業者は、ソーシャルプラットフォームでの販売促進に予算を割り当てるべきだ」と提案する同氏。「ソーシャルメディアでのやり取りは、パーソナライズされたように感じられる。顧客は自分のフィードをキュレートできるため、既にフォローしている人々がポストしたものと類似した製品のスポンサー広告が表示される可能性があるからである」。
ソーシャルコマースの進化
ソーシャルコマースは、新しいプラットフォームと方法論を活用しているため、継続的に進化している。
Influencer Matchmaker(インフルエンサーマーケティングエージェンシー)のシニアマネージャーAmelia Neate氏は、「ソーシャルコマースは成長している。そして、『即座に』購入する方法が増加することは明らかである」と語る。
「より多くのソーシャルフィードがウェブサイトに統合されると予測している」と、同氏。「たとえば、DFS(ラグジュアリートラベルリテーラー)は、自社WebサイトにInstagramフィードを統合する機能を導入し始めた。これによって買い物客は、商品がどのようにスタイリングできるのか、自宅でどのように見え、感じられるのかを知ることができる。
ソーシャルメディアマネジメントソリューションを提供するSprout SocialのソーシャルメディアマネージャーRachael Samuels氏は、ソーシャルメディア経由で販売しているブランドは、顧客とつながる新しい方法を見つける必要があると述べている。
「ソーシャルコマースが成長し続けるにつれて、ブランドは、自社オーディエンスと関連性が高く、彼らが共感できるコンテンツを制作し、自社ブランドを人間化する必要が生じるだろう」と、同氏。「今年は、マイクロインフルエンサーとのパートナーシップを活用し、複数のプラットフォームでソーシャルショッピングエクスペリエンスを統合するブランドが増加すると予測している。同様に、正直な顧客からのフィードバックを配信可能なコンテンツに取り入れるといった、視聴者に販売を促進させる創造的な方法を見つけるeコマースブランドも増えるだろう」。
ソーシャルコマースは、消費者がソーシャルメディアフィードを介して商品を購入するという考えに慣れてくるにつれて、シンプルな商品販売を超えたより広範囲な商品販売へと徐々に拡大していく可能性がある。
コマースソリューションを提供するBloomreachの最高戦略責任者であるBrian Walker氏は、「Z世代が購買力を獲得し、ソーシャルプラットフォーム自体のコマース機能が向上することにより、ソーシャルコマースは成長を遂げるだろう」と予測した。
「ソーシャルプラットフォームは成長し、不動産といった購入までに熟考を要するカテゴリを含め、ショッピングや購入に影響を及ぼし続ける可能性が高いことは確かである」と、同氏。「たとえば、将来的には、SnapchatのSnap Map機能で、不動産物件リストが表示される可能性がある」と語る。
さらに、よりスムーズなチェックアウト機能が開発されるだろう。
「Apple PayやVenmoのようなモバイル決済サービスが、ソーシャルメディアアプリにダイレクトに統合され、フリクションを減少させるかもしれない」とWalker氏は言う。
また、アプリ内トランザクションは、ますます増加するだろう。
「アプリ内トランザクション・エクスペリエンスの実現が、ソーシャルコマースの次のステップだと考えている」と、Archer氏。「外部のeコマースサイトへのリンクによって、ブラウジングエクスペリエンスの収益化が始まったが、それは、そこまでシームレスではない。ブランドは、高い利便性を実現するために、実際のトランザクション機能をソーシャルアプリ内に移行する必要があるだろう。すでに、InstagramのCheckout機能で実現されており、アプリ内トランザクションをサポートする動きをしている他のブランドに波及効果をもたらしている」。
Archer氏によると、ソーシャルコマースの発展に伴い、消費者が外出先でクリックして購入している時でさえ完全なショッピングエクスペリエンスを提供する必要があるということを、ブランドが理解することが重要だという。
「将来的には、ブランド提供するソーシャルコマースエクスペリエンスは、シームレスなトランザクションを促進するために、Webストアなどの他のすべてのコマースタッチポイントとつながっている必要がある」。「そうでなければ、ブランドは、買い物客のエンゲージメントを失うだろう」と語る。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の1/13公開の記事を翻訳・補足したものです。