選択肢が飛躍的に増加している11カテゴリ全64のEC決済サービスとその選び方

 

オンラインで消費者が商品の注文を行う際に必要不可欠なファンクションとなるEC決済サービス。ここ数年、EC決済サービスのバリエーションは飛躍的に増加している。また、それと同時にどの決済サービスがどのような特徴を持ち、何が違うのかが非常に分かりにくくなってきている。そこで今回はこのEC決済サービスの今を読み解き、11カテゴリ全64サービスをピックアップし、それぞれの特徴を整理し、サービスの選び方について考えていく。

 

EC決済サービスに関わる用語の定義

 

EC決済業界も業界特有の用語が使われているケースが多く、サービスの本質の理解がなかなか進まない時も多い。ここでは、まず知っておきたいEC決済業界用語を解説していく。

 

決済取引(トランザクション)

ECシステムから、クレジットカード会社や、様々な決済サービス会社に対して、与信を取得したり、売上データを送信したりする決済情報の送受信のことをトランザクションと呼んでいる。送信トランザクションと受信トランザクションがある。

 

決済手数料/手数料率

クレジットカードや、その他の決済サービスを利用できる事業者(加盟店)が、クレジットカード会社や決済サービス提供会社に支払う手数料のことで、加盟店の事業の種類や売上規模などによって差がある。一般的にECの場合は、売上金額の3~4%程度を支払うことになる。

また、決済代行会社を利用する場合は、決済代行会社に対して、1トランザクション〇〇円などといった形で、トランザクション手数料が発生する場合もあるので、導入の際にはよく注意しておきたい。

 

 

EC決済の2つの新潮流、「ID決済」「アプリ決済」

 

ここ数年、EC決済に大きな潮目の変化をもたらしているものは、「ID決済」と「アプリ決済」の2つだ。

 

ID決済

ID決済とは、元々は、大手モールなどが、自社ユーザー向けのサービスとして、購入の度に決済情報を入力することなく、登録済みのIDとパスワードで決済を可能にした、利便性を高めるための機能だった。しかし、ここ数年、外部向けにAPIを提供することで、他社サイトでも利用できるようになったものである。Amazon Pay、Apple Pay、Google Payといった、そのサイトでのアカウント=IDに決済を紐付けたもので、ユーザー数が多い大手サービスプロバイダーがしのぎを削る領域だ。利用者としては、自社ECサイトなど、モール以外のサイトで、個別に決済情報を入力することなく、大手サービスプロバイダーのIDを入力するだけで決済が利用できるため、安心してショッピングを行うことができる。事業者としては、サイトでのコンバージョンが上がるだけでなく、決済情報を保持しなくてもよいという利点がある。その結果、比較的短期間で売上アップに繋がるので、導入する事業者も右肩上がりで増えてきている。今のところはオンラインでの決済手段としての面が強いが、今後、リアル決済に進出するのではないかと予想されている。

 

アプリ決済

一方で、TV CMを打ち、大々的にキャンペーンを行い一気に認知度を高めたPayPayに代表されるのがアプリ決済である。店頭での支払いの際に、アプリを立ち上げ、バーコードやQRコードをスキャンすることで、チャージされた金額から決済が行われるものだ。元々は中国でAlipay、Wechat Payなどのサービスが一気に浸透したのを受けて、徐々に国内にもサービスを提供する事業者が増えてきたものだ。LINE Payなど、ID決済の色合いの強いサービスもあり、ID決済とアプリ決済の線引きは難しい。2019年6月3日よりYahoo!で「PayPay」のオンライン決済が利用できるようになったように、今後は、オンラインにも進出していくことは間違いない。スマホとアプリは相性が非常に良いため、ますますEC決済サービスで利用されていく可能性が高い。

 

 

EC決済サービスのカテゴリ

 

EC決済サービスは、様々なサービス形態が混在しており分かりにくい部分が非常に多い。eccLabではEC決済サービスを以下のように11カテゴリに分けて整理し、それぞれについて解説をしていく。なお、各カテゴリ内のサービスについては、近年複数のカテゴリの特色を併せ持つものも増えてきているが、eccLabが独自にカテゴリ分けを行っている。

※このサービスカテゴリ資料(高解像度画像ファイル)のダウンロードは一括ダウンロード、もしくはサービスマッピング資料ダウンロードから行えます。

 

1)先払い系サービス

先払いとは、ECサイトで商品を注文した際に、商品が配送される前(ほとんどの場合が注文完了時)に、支払いを完了するものを指している。クレジットカードの場合は、実際に支払いが発生するのは、所定の引き落とし日になるのだが、注文手続きの時点で、与信枠に対して注文金額を押さえるので、事業者から見れば先に支払いが行われた形になる。

 

●クレジットカード決済

オンラインショッピングでの決済として一番メジャーな手段であるのがクレジットカード決済である。基本的には、注文手続きする際に、クレジットカード情報を直接入力し、(大部分のケースで)決済代行会社等を経由して、クレジットカード会社に通信を行い、承認を取得し決済が完了するというものである。利用者としては、一番分かりやすいオンライン決済だが、実際には上述したように、入力したクレジットカード情報は、EC決済に関わる複数のサービス事業者を経由しているケースが多い。

 

●現金決済

現金決済とは決済の手続きとしてはサイト上で完結するものの、その後の入金の手続きとして、現金の払い込みを行うものだ。主な現金決済サービスとしてコンビニ払いがある。これは、コンビニエンスストアにて、代金を支払うための支払番号のようなものが発行され、注文者は、その支払い番号で、所定のコンビニにてお支払いが可能なサービスだ。注文者が指定したコンビニエンスストアにて支払いが完了すると、その通知が事業者に届く仕組みとなっている。事業者はその入金を確認したことで、実際に商品を発送するので、代金を回収できないというリスクを回避できる。銀行口座への振り込みと違い、24時間365日支払いが可能である点が大きな特徴である。

また、Payeasy(ペイジー)も現金決済の一種だが、ネットバンキングの口座と直結した決済方法で、基本的にはサイト上で手続きがすべて完結するが、ペイジーに対応している実際の銀行口座から必要な金額が引き落とされる。こちらもサイト上ですべて手続きが完結し、事業者宛に入金通知が届くという運用は、コンビニ決済と同じ形となる。

 

●チャージ決済

チャージ決済とは、従来から鉄道に乗る際や、店頭での支払いで多く使われてきた予めカードに任意の金額をチャージしておき、そのカードの認識番号を元にそのチャージ額の範囲で決済するサービスだ。既にかなり多くの利用者がいるSUICAなどの交通系のカードに代表され、ここ数年でカードがアプリに切り替わってきていることもあり、アプリ決済との境界が難しくなってきているものも多い。

 

●海外決済

海外決済とはPayPalや、Union Pay(銀聨/ユニオンペイ)など、海外で普及し、日本国内でも一般的になった決済サービスだ。PayPalは、電子メールアカウントとインターネットを利用した決済サービスで、PayPal口座間やクレジットカードでの送金や入金を行える。ID決済としての特色も併せ持つ。Union Payは、クレジットカードがあまり流通していない中国発の、銀行のキャッシュカードとデビットカードを兼用した決済サービスである。クレジットカードと違い、決済と同時に口座からお金が引き落とされる=預金残高以上は利用できないという意味では、チャージ系決済サービスと似ている。

 

●リアル決済

リアル決済は、リアル店舗での決済に主に利用されることを前提に作られた決済方法のことで、飲食店や小規模店舗のPOSレジとして利用されていることが多い。この領域のサービスも、ECサイトでの買い物でも利用できるサービスも出てきており、今後オンラインへ進出拡大が予想されている。

 

●モール・カート独自決済

モール・カート独自決済とは、ヤフオクにおける「Yahooかんたん決済」や、インスタントECの代表であるBASEにおける「BASEかんたん決済」や、カナダ発のECプラットフォームShopifyにおける「Shopifyペイメント」等、利用するモールやカートシステムが独自に提供する決済サービスのこと。ECサイト構築を進めるのと同じように、管理画面から申し込むことが可能で、短期間で導入可能な点が大きなメリットと言える。ただし、これらはヤフオクやBASEやShopifyを利用していない個人・事業者の利用は行うことが出来ない。

 

●決済代行

決済代行とは、ECシステム側から見て、複数のクレジットカード会社に対する与信/売上/取消などの取引(トランザクション)の窓口を一本化してくれるサービスを提供しているサービスのこと。その後、クレジットカードだけでなく、様々な決済サービスが登場するにつれて、取扱いできる決済サービスの種類が増えていった。一般的には取引を管理できる管理画面が提供され、オンライントランザクションを一覧で確認できたり、マニュアル操作で決済処理を操作することができるようになっていることが多い。2019年現在、多くの会社が存在するが、各社の大きな違いは「手数料率」「取扱決済サービス種類」と言っていいであろう。

 

 

2)代引系サービス

代引き決済とは、主に配送会社が商品を配送し、商品を受け渡しする際に、現金またはクレジットカード決済を、対面で行う決済のこと。現金主義の根強い日本では一般的な決済方法だが、海外ではあまりなじみがない。日本の配送会社に信用があるからこそ実現できていると言って良いだろう。EC事業者側としては、長期不在や受け取り拒否といった形で、商品も受け取られず支払いもされないようなケースや、単純にいたずら注文などもある為、リスクがある決済方法と考えられる為、採用していない事業者もある。

 

 

3)後払い系サービス

後払い決済とは、消費者がオンラインで商品を購入して、商品を受け取った後に支払う形態のものを指す。後払い決済サービス提供会社が債権を引き受け、EC事業者には必ず支払いは行われるので、事業者にとってのリスクはほぼないサービスと言ってよい。後払い決済サービス提供会社は、上限金額を設けたり、未成年者の場合は事前に保護者の承諾を取るような形でリスクをヘッジしてる。消費者には、支払票が商品と一緒に届けられるパターンと、別途郵送されるパターンがある。

 

 

EC決済サービスの比較

 

市場にはEC決済サービスが11カテゴリ64サービス存在している。しかしそれぞれのサービスの違いや特徴が分かりにくいのも事実だ。

そこで、ここではeccLabオリジナルの、全64サービスの価格・特徴などを網羅的に一覧化した「サービス概要の一覧比較」ファイルと、全サービスをカテゴリ毎にマッピングした「サービスマッピング」ファイルの2種類を用いて、どのような特徴があるのかを説明していく。

 

サービス概要の一覧比較

おすすめポイント

  • EC決済サービスを全て網羅
  • 全サービスを価格、機能などの項目毎に比較
  • エクセルでの提供のため、並び替えや項目の削除などカスタマイズが可能

 

サービスマッピング

おすすめポイント

  • 11カテゴリ別でマッピングしサービスの特徴把握が可能(※eccLab編集部による独自の判断による)
  • 全サービスを一目で把握


※サービス概要の一覧比較資料(エクセル版)とサービスマッピング資料(高解像度画像ファイル)のダウンロードはこちらから行えます。
比較資料をダウンロード

 

 

EC決済サービスの紹介

 

それでは、EC決済サービスを個別に見ていこう。

 

1)決済代行サービス

 

ソニーペイメントサービス

ソニーペイメントサービス株式会社

ソニーペイメントサービス

ソニーペイメントサービスは、事業規模や業種を問わない豊富な導入実績のあるEC決済代行サービスだ。連携できるショッピングカートは、オープンソースのEC CUBEやショッピングカートASPではWISE CART、侍カートなど合計9種類となっている。

また、ソニーペイメントサービスの契約は、加盟店との契約の代行・資金決済・システム設定や運用をトータルでサポートする「加盟代行型」と、システム面のみをサポートする「情報処理契約」の2形態で、事業形態やニーズに沿って併用も可能だ。自身の事業の規模や予算なども視野に入れて適切なサービスを選ぶことが出来る。
ソニーペイメントサービスの資料をダウンロード

 

PGマルチペイメントサービス

GMOペイメントゲートウェイ株式会社

GMOペイメントゲートウェイ

GMOペイメントゲートウェイの「PGマルチペイメントサービス」は、133,199店舗への導入実績(GMO-PGグループ 2019年3月末現在)を持つGMOペイメントゲートウェイが提供する、クレジットカード決済やコンビニ決済など20種類以上の決済手段を一括導入できるECサイトの総合決済サービスである。業種ごとの専門スタッフが、EC事業者の状況をヒアリングした上で最適な提案を行うのが特徴である。導入に要する日数は平均3~4週間で、ネットショップなどのオンライン事業者の他、NHK、国税庁や東京都等の公的機関など、規模や業態関わらず幅広く導入されている。

「PGマルチペイメントサービス」の強みとして、決済手段以外にも、EC事業者の成長を支援する様々サービスを搭載していることが挙げられる。例えば、資金面でのサポートとして、業界最多・最短の締め回数と入金でEC事業者の資金繰りニーズに対応する「早期入金サービス」、ECサイトでのキャンセルや返金などで生じる煩雑な返金・送金業務を素早くかつ簡単に行える「GMO-PG 送金サービス」、また成長資金を融資する「GMO-PGトランザクションレンディング(スピード融資)」などがある。また、BtoB EC事業者向けに、売上債権をGMOペイメントゲートウェイに譲渡して最短3~5営業日で資金化する「GMO BtoB早払い」といったサービスもリリースしている。
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ベリトランス

ベリトランス株式会社

Commerce21

ベリトランスは、通常のEC決済代行サービスだけでなく、越境ECや実店舗の端末設置サービスにも力を入れている。利用可能な決済手段はクレジットカードやコンビニなど15種類をそろえており、他サービスと比べても充実している。また越境ECを支援するために銀聯ネット決済、アリペイ国際決済、ペイパル決済に対応している。また、システム導入から運用まで、充実なサポート体制を敷いており、初心者でも安心の仕様となっている。
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その他サービス

決済代行

モール・カート独自決済

ID決済

チャージ決済

現金決済

アプリ決済

リアル決済

後払い決済

代引き決済

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選ぶ際のポイント

 

EC決済サービスはここ数年で非常に多くのキーワードが市場を賑やかし、いくつもの選択肢が登場し、その違いの見極めが以前よりも難しくなってきている。導入に際しては、違いが分かりにくいということからコスト(料率)を重視した選択をしがちだが、各サービスごとに対応可能な決済手段、導入までの日数やサポート体制、そして入金サイクルも異なる。ここでは、EC決済サービスを選ぶ際に気を付けるべきポイントを見ていこう。

 

どのサービスカテゴリと契約するべきか

まず運営しているオンラインショップのプラットフォームの形態によって契約できるサービスカテゴリはある程度絞られてくる。主にEC事業者が契約を直接結ぶべきサービスカテゴリは、独自ドメイン店舗の場合は、決済代行、後払い決済、カート独自決済。モール店舗の場合は、ID決済、モール独自決済が候補として上がる。また、それぞれのサービスによっては、別途、海外決済、代引き決済などのサービスとの契約も必要になってくるだろう。

 

対応決済サービス数と契約の手間

「なるべく早く導入したいけれど、決済手段も多く取り揃えたい」ということであれば、やはり決済代行サービスを導入するほうが手間が少なく済むのでおススメだ。クレジットカード決済だけでなく、ID決済やキャリア決済など、対応している決済サービス数は多ければ多いほど、ユーザーにとっての利便性が上がるので取り揃えたいが、個別に契約するのは非常に大変となる。決済代行サービスは、対応している決済サービスの種類が多い為、初期の契約だけでなく、追加する場合でも手続きの手間はかなり少ない。

 

手数料率

決済サービスでは初期費用・月額料金がともに0円で、売り上げの一部を手数料として徴収するというものが多い。しかしサービスによっては、取引ごとに請求書発行費用などが別に発生するケースもある(だいたい取引当たり150円~200円)。初期費用と月額費用を徴収するサービスでは、それぞれ3~10万円、5,000~2万円とかなりばらつきが大きい。一方、手数料は、多くのサービスが3%台に集中している。初期費用を抑えるか、多少の月額費用を払ってでも比較的低い手数料のサービスを選ぶかは、売上と費用のバランスを見て慎重に検討するようにしたい。また、決済代行サービスを利用する場合は、その店舗の売上規模に応じて、個別での見積りになるケースが多いので、まずは相談しながら決めていく必要があるだろう。

 

入金サイクル

0.1%の手数料率よりも実は重要なポイントは売上の入金サイクルだ。言うまでもなくEC事業者は、商品を仕入れてそれを販売してそのマージンを利益として得るという構造のため、常にキャッシュフローについては頭を悩ませる必要がある。現在取引している仕入先や原材料の調達先への支払いサイクルと、オンラインショップでの売上の入金サイクルがキャッシュフローに負担のかからない形となっているかは確認したい。最近では入金を複数回行うことが出来るサービスや、入金タイミングを指定できるサービスも増えてきている。

 

※ここで紹介したサービスの選び方を丁寧に解説した資料のダウンロードはこちらから行えます。

 

 

EC決済サービスの未来

 

中国で圧倒的な影響力を持つAlipayの日本国内への進出や、2度に渡る「100億円還元サービス」を実施したPayPayの台頭など、注目すべき点が非常に多く、Apple PayやGoogle Payなどスマートフォンを介した決済も広がりを見せており、EC決済サービスを巡る環境は日々変わり続けている。

ここまで種類が増えているEC決済サービスであるが、全てのサービスカテゴリのサービスプロバイダーに共通して言える方向性が存在している。それはどのサービス事業者もオンライン・オフライン(リアル店頭)での総合的なサービス提供を目指しているという点だ。

今後、リアル店舗での決済は、利便性を重視すると、クレジットカード、ID、チャージ/アプリ系などが中心となる、いわゆる「キャッシュレス」の方向に進んでいくことは間違いない。消費税率が引き上げられる際に、キャッシュレス決済の場合には一定の還付があるという議論もあり、また2020年の東京オリンピックに向けて、キャッシュレス文化に慣れている外国人も多く来日することが予想されるため、それまでに導入する事業者も多くなるだろう。

このリアル店舗のキャッシュレス化の流れは、オンラインショッピングの決済のトレンドにも無関係ではない。オンライン・オフラインの両方を運営している事業者からすると、オンライン・オフラインの決済情報をデータで一元的に管理できるようになり、部分的にマーケティング施策にも活用することが出来るようになる可能性もある。

その結果、EC決済サービスは現状よりも各サービスの特徴が見えにくくなる時代が到来して来るだろう。どのサービスを選択しても、オンライン・オフラインで似たようなサービスを受けることが出来るという状態だ。そうなると、乱立するEC決済サービスは統廃合を繰り返す淘汰の時代を迎えるかもしれない。