多国籍eコマースプラットフォームShopifyと暗号通貨取引所Crypto.comの新たなパートナーシップにより、デジタルショップは暗号通貨による決済を採用することで簡単に現金化できるようになる。

 

Crypto.comは5月に、Shopifyのマーチャントがオンラインストアフロントで、Crypto.comの暗号通貨支払いプラットフォームを利用できるようになると発表した。この契約により、マーチャントは、CRO、ETH、BTC、DOT、およびDOGEを含む20以上のトークンで支払う機能を顧客に提供することでリーチの範囲を拡大できるようになる。

 

同社のパートナーシップの発表によると、この統合で、Crypto.com Payが暗号通貨の受け入れに熱心なオンラインマーチャントに好まれる暗号通貨決済アプリであることがより強調されたという。

 

Crypto.comは世界中で5,000万人を超えるユーザーにサービスを提供。そのオフチェーンサービスは、Crypto.comアプリを介してリアルタイムで消費者取引を処理する。

 

Crypto.com Payでは、マーチャントは取引手数料なしで暗号通貨を即座に受け取ることができる。このプロセスには、0.5%の決済手数料が含まれており、従来の支払いプロセッサーと比較すると手数料を80%削減できることとなる。マーチャントはセットアップ費用を負担することなく、統合は数分で完了するという。

 

ShopifyのブロックチェーンエコシステムリーダーであるJohn S. Lee氏によると、Crypto.comとの契約により、Shopifyのマーチャントは、顧客がオンライン注文の支払いを迅速かつ簡単に行うためのさらなる方法を提供できるようになるとのこと。

「当社のブロックチェーンエコシステムの拡大は、マーチャントの店頭で代替決済手段をサポートし、商取引の可能性をさらに拡大することに貢献するという当社のコミットメントを示している」と、Lee氏は発表の中で述べた。

Crypto.comの共同創設者兼CEOであるKris Marszalek氏は、「より多くの顧客とマーチャントに、暗号通貨を使った商取引に従事する能力を提供することが、Crypto.comの優先事項である」と付け加えた。

 

暗号通貨による決済手段の推進

マーチャントが暗号通貨決済を採用し始めると、通貨の選好が重要な要素となる。顧客とマーチャントの双方が、時価総額が最も高い通貨や、変動が少なくスケーラビリティ(データ処理能力)が向上したステーブルコイン(安定した価値を持つように設計された暗号通貨)で取引したいとの意向を示している。

Crypto.comと金融テクノロジーソリューション企業FIS(米国)が2月に発表したレポートでは、顧客とマーチャントの双方で、暗号通貨を使った取引をしたいとの要望が高まりつつあることが示された。

たとえば、Crypto.comの顧客の75%はこの先一年以内に、暗号通貨で商品やサービスを購入したいと考えており、Worldpay from FIS(米国大手決済サービス)のマーチャントの60%は、商品やサービスのために暗号通貨を喜んで受け入れたいと考えているという

顧客は、オンラインと店舗での支払いオプションの同等性を望んでいる。このレポートによると、マーチャントはeコマースのエクスペリエンスを優先しているとのこと(当記事掲載時点では登録なしで入手可能)。

 

暗号通貨による決済手段に対する消費者の関心を示す主な例の1つは、Crypto.comの暗号通貨デビットカードである。新規市場への参入にともない、2021年のユーザー1人あたりの支出額は前年比2桁の伸びを記録した。

 

こちらで入手可能な暗号通貨の3月の支出レポートは、このような消費者の傾向を浮き彫りにしている。

 

  • 食料品が主な支出カテゴリであり、日用品に費やされたすべての暗号通貨の51%を占める。
  • 店舗での購入は11%増加した。
  • 全体として、ファッション(衣料品および靴)のカテゴリでは、支出が50%と最も大きな伸びを記録。交通とレクリエーションへの支出は次いで46%となった。

 

暗号通貨のパートナーシップは理にかなっている

Shopifyは、サードパーティベンダー、ソフトウェア、およびサービスプロバイダーにクライアントの前に立つ機会を与えるマーケットプレイスモデルを運用している。したがって、このようなサードパーティアプリケーションは、Shopify自体の魅力を高め、エコシステムへのロックイン効果もサポートすると、Productsup(製品コンテンツを統合、最適化、および流通するためのSaaSを提供/ドイツ)の最高情報責任者であるMarcel Hollerbach氏は説明する。

 

「暗号通貨の普及がますます進んでいることを考えると、暗号通貨決済自体をサポートすることもまさに理にかなっている。一般的に、決済方法が多いほど、eコマースマーチャントのサイトでのコンバージョン率が高くなる」と同氏は語る。

 

暗号通貨決済の消費者への普及は、1990年代半ばのインターネットの普及そのものとよく似ているとHollerbach氏。Andreesen Horowitz(米国ベンチャーキャピタル企業)の最新レポートによると、暗号通貨の普及はまだ非常に初期の段階であるという。

「アクティブなウォレットアドレスを1996年当時のアクティブなインターネットユーザーと比較した場合、暗号通貨の普及は1996年当時のインターネットと同じような状況にある。つまり、まだ非常に初期の段階ということだ」とHollerbach氏は述べる。

 

暗号通貨の利用は、複数の要因によって推進されている。大手銀行やPayPalなどのフィンテック企業が市場に参入し、ユーザーにビットコインウォレットを提供している。各国はビットコインを導入し始め、Metaなどのソーシャルメディア大手はNFT(非代替性トークン)の市場に参入しているが、その基盤となる技術も暗号通貨に基づいているとHollerbach氏は述べた。

 

プロバイダを知る

暗号通貨が他のデジタル決済フォームと同様、消費者に気軽に使われるようになるためには、取引コストをさらに下げる必要がある。たとえば、多くの暗号通貨には、依然として取り組んでいるスケーリングの問題がある。

 

「暗号通貨の価格は安定している必要がある。現時点では、価格の変動が大きく、注文したシャツの価格が、ある日は20ドル、別の日は25ドルになる可能性がある」とHollerbach氏。

 

新規の暗号通貨ユーザーは、主に2つの注意点を守る必要があるとHollerbach氏は指摘。

まず、信頼できる銀行または取引所を選択して暗号通貨を購入する必要があるということだ。CoinbaseKraken、Crypto.com、またはPayPalが適切な選択肢になり得るだろう。

次に、多くの詐欺師が、経験の浅いユーザーを利用しようとすることに留意すること。暗号通貨ユーザーは、ソースまたはトランザクションに関与するベンダーを精査する必要がある。「怪しい」と感じた場合は関わらないようにしよう。

 

よりスムーズな国際取引

暗号通貨は、インターネットにネイティブ通貨をもたらす。それは非常にフレキシブルなものであるとHollerbach氏は述べている。

たとえば、米国にいる人が、通貨や為替レートの制約を受けることなく、エルサルバドルの消費者と同時に取引を行うことができる。暗号通貨での決済は、よりプライベートなものとなり得るのだ。

 

「暗号通貨にとって、国境は眼中にない。ある国の個人は、なんの問題もなく別の国の誰かにコインを送ることができる。従来の金融サービスでは、国境を越えて資金を調達するには長い時間がかかり、高額な手数料がかかる可能性もある」とHollerbach氏。

「場合によっては、規制、制裁、または特定の国同士の緊張関係のため、国境を超えた資金調達を行うことさえ不可能になることもありえる」と同氏は続けた。「MetaやPayPalのようなプレーヤーが現在、競争に参加していることを考えると、暗号は利用しやすくなっている」と語る。

 

考慮すべき懸念事項

暗号通貨には、複数の種類の通貨が含まれる。ビットコインやイーサリアム(ブロックチェーン・プラットフォーム)のほか、Circle(ブロックチェーンを利用してP2P決済アプリを運用する米国企業)の USDCや、Tether(ステーブルコイン発行企業/米国)のUSDTのようないわゆるステーブルコインも存在する。

 

これらのステーブルコインは、技術的には暗号通貨であり、ドルに対して1対1のペグであることを表している。つまり、暗号通貨で支払っているが、それは1ドルの価値で支払っているということになる。

「これは、暗号通貨による決済の非常に安定した計画的な方法を示すものであり、消費者とマーチャントにとって非常に興味深いものだ」とHollerbach氏。

 

マーチャントは、ビットコインとイーサリアムでの支払いを許可し、それらの価値が高まると推測することもできる。しかし、この投機はリスクが高く、特に現在のようなベアマーケット(下げ相場)では、暗号通貨の価値も大幅にマイナスになる可能性があると、同氏は警告する。

 

Shopifyは、暗号通貨を利用する前に、その地域で利用可能な決済方法であるかを確認するよう、ユーザーに注意を呼び掛けている。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の7/5公開の記事を翻訳・補足したものです。