Googleは、新たに直接買い物ができる広告機能を提供し、ユーザーにとってのデジタルショッピングカタログの役割を果たしたいと考えているようだ。

Googleは2019年3月5日、限定した小売事業者のわずかなトラフィックを対象に、この新広告フォーマットをテスト中と発表。事業者はGoogleの画像検索結果に表示されるスポンサー広告内で購入可能な複数の商品をハイライト表示することができる。

Googleは「ホームオフィス アイディア」、「シャワータイル デザイン」、「抽象美術」といった検索の広範なクエリにおいて、この広告アプローチをテストしているという。これは、検索結果からショッピングを促進するInstagramやPinterestの戦略と同様である。

Google画像検索結果に表示される特定の広告には、値札アイコンが表示。このアイコンをタップすると、価格やブランド、その他の商品情報などの詳細が表示される。消費者はこの値札をタップして、商品ウェブサイトをチェックし、直接注文することが可能となる。

 

 

この新機能が一般的に公開される時期については、まだ発表されていない。しかしGoogleによると、今後数カ月のうちに、より多くのカテゴリや小売事業者を対象に展開される予定とのこと。

GoogleがShopping Actionsを導入してから1年近く経過し、今回、検索結果から直接パートナー小売業者をリンクさせる新ショッピング機能が発表された。このショッピング可能な画像機能は、Googleショーケースショッピング広告において、さらなるメリットを広告主に提供する最新の取り組みである。

Googleの商品管理およびショッピング担当バイスプレジデントであるSurojit Chatterjee氏によると、「今回の新機能追加により、買い物客により豊かでインスピレーションを与える視覚的なエクスペリエンス提供することが可能になる」という。

Solid Marketingの戦略ディレクターであるRuba Aramouny氏は「Googleによるショッピング可能な広告の導入は、eコマース競争全般に大きな影響を与えるだろう」と言及。現在ソーシャルメディアとGoogleは、ディスカバリー・プラットフォームとして機能しているからだ。

「今後数年間のうちに、商品の発見や選択、購入は、すべて同じプラットフォーム上で行われるようになるだろう。これは、小売業者が買い手のショッピングエクスペリエンスを管理することができなくなってしまうことを意味する。しかし、小売業者はこの変化に適応する必要がある」と、Aramouny氏は語った。

 

Googleのプラス面

Aramouny氏によると、Googleと小売業者の双方が今回の新しいショッピング可能な画像広告機能の恩恵を受けるという。Googleは広告主に対し、広告プレースメントを売るための新たな手法を確立することになる。

「今回の機能追加によってGoogleは、全く広告を見ないGoogle画像検索へのトラフィックをすべて収益化できる」と同氏。「Google広告とマーチャントセンターの全機能を活用するノウハウを持っている小売業者が、今回の機能追加により最も恩恵を受けるだろう」。

最終的には、ショッピング可能な広告導入により、Googleやその広告主、そして消費者にとって、より関連性と満足度が高い検索エクスペリエンスが提供されることになるだろう。小売業者向けプラットフォームを提供するCuralateのCEOであるApu Gupta氏も、今回のGoogleの機能追加は大きな変化をもたらすと述べている。この新しいフォーマットの中心にあるのは、Googleでは一般的には見られないコンテンツタイプ、つまりライフスタイルコンテンツである。

「従来のGoogleの商品リスティング広告は、特定の商品を念頭に置いている消費者向けに最適化されていた。その結果、広告画像はシンプルな背景に商品一つ一つの画像が単独で使用され、ユーザーは目的の商品かどうかをすぐに確認することができた」と、Gupta氏は語った。

しかし買い物は、意図的に行うものだけではない。新たな商品を見つけ購入に至る場合もある。Googleは、インスピレーションを与えるライフスタイルコンテンツを検索結果に表示し、そのコンテンツをショッピング可能にすることで、消費者に全く必要だと思っていなかった商品を購入してもらうことができるようにする。

 

競合する戦略

米国デジタルエージェンシー、Digital OperativeのCEOであるBJ Cook氏によると、GoogleとInstagramの双方で、事業者が各プラットフォームに商品カタログ全体を簡単にアップロードできるようすることにより、各プラットフォーム内でコントロール広告(最も効果的な広告)を商品化することを目指している。両社とも商品フィード経由で、マーチャントセンターを通して実行している。

「Googleは、正しい方向への第一歩を踏み出したところだ。しかし、Pinterestはすでにショッピング可能な画像機能テストを実施している。そして、現時点でPinterestのプラットフォーム上には、ブランドのストアフロントやeコマースポップアップストアを設置することができ、ブランド毎の買い物を可能にしている。Pinterestは次の進んでいる」と、Cook氏は語った。

しかし、GoogleとInstagramのディスカバリー(商品の発見)フェーズに対するアプローチは全く異なるとCuralateのGupta氏は指摘。Instagramは、依然として、フィード主導のディスカバリー体験を提供する。Googleは、よりユーザーからの検索をベースとする。

「Instagramユーザーは、特に意図せずにスクロールしながら閲覧する中で、関心を引くモノを偶然見つけている」と、Gupta氏は説明。一方Googleでは、原則的に消費者が答えを求めている”質問”が(購入までの)出発点となっている。

「その”質問”は、非常に具体的な場合もあるし、より広範である場合もある。InstagramとGoogle、両方のプラットフォームは、ショッピング可能なライフスタイルのコンテンツを活用しようとしており、他のアドテック企業もそれに追従するだろう。しかし、そのコンテンツが表示されるトリガーは大きく異なる」と、Gupta氏は述べた。

 

eコマース戦略への影響

小売業者の課題は、顧客がソーシャルメディアやGoogleから最初に購入した後、繰り返し購入させ、ブランドロイヤルティを高められるかどうかだとAramouny氏。それが、似たような商品を販売する競合店とは一線を画すことが出来る唯一の方法であるからだ。

eコマース業者にとってのさらに重要な課題は、存在することすら全く知らなかった商品を消費者に提示する方法を考えつかなければならないことである。「これは、eコマースの継続的な成長にとって不可欠である」とGupta氏は付け加えている。

「実質的には、今日のオンライン販売を行っているほぼすべての企業が、素晴らしいライフスタイルコンテンツを豊富に持っている。問題は、これらの企業の圧倒的多数が、所有するコンテンツを活用し、売上を増加させる方法を検討していないことである。彼らは主に、ライフスタイルコンテンツをブランディングに使用しているだけである」。

「コンテンツのさらなる活用方法を理解している企業は、ショッピング可能なフォーマットを利用して、コンテンツの販売促進における役割によりフォーカスすることで、成功を収めるだろう」とGupta氏は予測している。

「Google、Pinterest、Instagramはすべて、画像検索からのショッピング可能な広告をテストするための巨大なユーザーベースを持っているが、Googleのユーザーベースは、他の2社と比較してはるかに大きく、最も多様である」と、A/Bテストソリューションを提供するApptimize のCTO、Nancy Hua氏は指摘。eコマース全般に及ぼすGoogleの影響力の可能性について言及した。

「Googleはその優位性によって、異なるデモグラフィックにおいてより効果的にテスト及びターゲットを設定し、多様なユーザーが異なるコンテキストでどのように行動するかについて、詳細に把握することができる」とHua氏。「Googleにとって、ショッピング可能な広告は有益なチャネルになるだろう。しかし、取り組む価値があるほど、十分に利益を産むかどうかはテストする必要があるだろう」。

 

ケースバイケース

Googleのショッピング可能な広告がどれだけ成功するかは、いくつかの要因に左右される。事実、他のソーシャルメディアの同様の機能はGoogleより数歩先を行っているため、Googleがさらに優れた機能を導入できるとは限らない。

オンライン販売ソフトウェア会社、ProductsupのCMOであるMarcel Hollerbach氏は、「Googleのショッピング可能な広告は、新しく無名のブランドや小売業者が、新規買い物客に販売商品をプロモーションする絶好の機会を提供するだろう」と語った。

「PinterestとInstagramのショッピング機能は成功している。そして今回、ブランドと小売業者は、Googleの新広告商品をどのように活用するのか、とても楽しみにしている」。

「Googleが検索の最適化に優れているのに対し、Instagramユーザーは、フォローするブランドと密接な関係を持っている傾向があるため、今後のGoogleとInstagramを比較するのは非常に興味深い」と、Hollerbach氏は述べた。

 

広告における変化

「Googleにとっての課題は、ユーザーが新機能の使用を完全にやめてしまう前に、ユーザーにとって煩わしくなく、画像内のオブジェクトを十分に認識できる正確なインターフェースを提供できるかどうかだろう」と語るのは、AI検索サービスを提供するConstructor.ioのCEO、Eli Finkelshteyn氏。

「Googleは一般的な画像検索を独占しており、ユーザーは画像検索において他の選択肢を持っていない。そのことは、Googleに多大なメリット与え、同社は様々なテストを行うことが出来る。しかし、Googleは最初に、ユーザーに悪い印象を与えないように気を付けなければならない。将来的に機能が改良されたとしても、最初の印象を払拭することは難しいからだ」。

Googleが実行していることは興味深く、必然的で、かつ、コンテクスチュアル・コマース(購入がネットショップ以外のSNSなどあらゆる場所で行われること)に向かう業界の流れに非常にフィットしている。

eコマースソフトウェア会社、Elastic PathのCMOであるDarin Archer氏は、「未来の広告は、商品画像といった何か価値のあるものに対し、消費者の関心が向いている瞬間にフォーカスするようになるだろう」と述べている。

「ブランドはGoogleの画像検索に広告を出稿し、購買ジャーニーの最初の段階にいる消費者にリーチすることが可能になる。そしてGoogleは、広告を見ることと購入することの間のフリクションを軽減することにより、ブランドの既存のチャネル外でのコマース・エクスペリエンスの合理化を実現するのだ」と同氏は語った。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の3/7公開の記事を翻訳・補足したものです。