BtoB ECシステムを基幹システムと連携する上で盲点となることが多い4つのポイント

 

BtoBのECシステムを導入する企業は増えてきているが、業務を効率化するために避けて通れないポイントが基幹システムとの連携だ。BtoB ECシステムを導入しても基幹システムと連携しないと、多くの手動対応が残り続けるために業務の効率化は十分には行えない。そこで今回は、BtoB ECシステムを導入する際に、基幹システムと連携する上で重要な考え方を整理し、盲点となることが多い4つのポイントについて見ていく。

 

※この記事は、BtoB向けECサイト構築システム「アラジンEC」を展開するアイル社から情報提供を得て作成した、BtoB ECシステムと基幹システム連携の考え方を紹介した記事である。ここで紹介する事例を含むBtoB ECに関する資料は以下からダウンロード下さい。

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そもそも基幹システムとはどのようなものか

 

まず、この議論を行う前に、基幹システムとはどのようなものかを簡単に整理していこう。基幹システムとは企業が企業活動を行うために必須となるシステムを指す。そのため業態によって微妙に基幹システムの範囲が異なるケースもある。商品を作って売るというメーカー系や、商品を仕入れて売るという卸系の企業においては、基幹システムの範囲は商品を作るため・仕入れるために必要なシステムと、販売するために必要なシステム、さらにはそのために労働している従業員を管理するためのシステムがそれに該当する。具体的には、仕入れ管理、生産管理、在庫管理、受発注管理、顧客管理、人事管理、会計管理などのシステムを指すことが多い。

 

 

BtoB ECシステムが基幹システムと連携しないといけない理由

 

そもそもなぜ、BtoB ECシステムなどの多くのシステムは、基幹システムと連携しなければならないのか。企業活動においては多くの「データ」が活用されている。商品情報、在庫情報、顧客情報、従業員情報、受発注情報などだ。それらは現在はほとんどの企業においてシステムで管理されており、それを管理するものが上述した基幹システムということになる。この「データ」にはマスタデータとトランザクションデータという概念があり、端的にいうと企業活動において根幹となる固定的なデータがマスタデータと言われ、受発注データなどのやり取りが履歴として蓄積していく形のデータをトランザクションデータと言う。

そのマスタデータにしても、トランザクションデータにしても管理上大元は1つに統合しておく必要があるという考え方が鉄則だ。そうでないと、各所で更新されたものがバラバラに管理されており、最新のデータはどれなのか、という問題が多発する。そのため、基幹システム以外にも、今回のテーマであるBtoB ECシステムなどのシステムが多く使われているが、常にそれらのシステムで更新されたデータは、その大元となる基幹システムと整合を取るために連携する必要があるのだ。

そのため、このBtoB ECシステムにおいても、基幹システムとの連携と言うものは避けて通れない非常に重要なものとなっている。仮に基幹システムとデータ連携を行わない場合は、BtoB ECシステム上の商品情報や在庫情報の登録・更新を全て人が対応することになり、人為的な入力ミスの発生や余計な手間や情報のタイムラグが発生することになる。そのため、BtoB ECシステムを導入して効果的に運用するためには、基幹システムとデータ連携をすることで業務効率化の実現が可能となり、本来のシステム構築のメリットが出てくるのだ。

 

 

BtoB ECシステムが基幹システムと連携しなければならないデータ

 

それでは、BtoB ECシステムはその基幹システムとどのようなデータを連携しなければならないのだろうか。業態によっても差異はあるが、一般的には以下の4種のデータの連携が必須となってくるだろう。

 

商品情報

メーカーや卸においては、取り扱っている商品情報は最も重要なマスタデータと言ってもいいだろう。商品マスタには商品名、型番、各種商品コードから、価格、サイズ、カラーバリエーション、その他詳細な商品仕様などが登録されている。BtoB ECシステム側から商品マスタへの登録は基本的には発生しないが、常にBtoB ECシステムで掲載されている商品情報が最新のものとなるように、定期的に商品情報のアップデートを反映する必要がある。

 

在庫情報

商品毎の最新の在庫情報はトランザクションデータに分類されるが、この情報はまさにBtoB ECシステムで頻繁に更新されるものとなる。BtoB ECシステム側で受注された場合、もしくは取り置きなどの在庫確保が行われた場合、可能な限り迅速に在庫情報の更新を基幹システム側と行う必要がある。一般的にはある程度の在庫量をBtoB ECシステム側で便宜上確保しておき、そこの数字を減らしていくことで対応するが、実際には他では在庫があるのに欠品となったり、逆に他の流通の在庫を確保してしまい機会損失を発生させてしまうなどの問題が発生する。そのため、在庫情報の更新リードタイムは短ければ短いほど、機会損失は減ることになるため、在庫情報の連携は非常に重要なケースが多くなっている。

 

顧客情報

BtoBでビジネスを行っている企業では顧客情報も非常に重要なデータとなる。一般的には顧客マスタといわれマスタデータに分類されることも多いが、その派生的なものも含めると、トランザクションデータ的な側面も多く持つ。顧客名、住所、電話番号、担当者名、メールアドレスなどの基本情報から、顧客ランク、割引率や、最終購入日付や平均購入金額などの情報も持っていることもある。そのため、BtoB ECシステムでの更新も発生し、逆に最新情報を基幹システムから入手する必要もあるため、頻繁にやり取りが発生するデータと言えるだろう。

 

受発注情報

商品の受発注に関わる情報は基本的にはBtoB ECシステム側で発生したものを基幹システムに更新する形となる。この情報をしっかりタイムリーに連携することで、物流側への連携だけでなく、デイリーの売上高などの経営に関わる情報も最新状態で確認することが出来るようになる。

 

このように、BtoB ECシステムは基幹システムと多くの情報を、出来るだけ人的作業ではなくシステムで間違いなく連携することが非常に重要なこととなっている。

 

 

基幹システムと連携する上で盲点となることが多い4つのポイント

 

一般的に、BtoB ECシステムと基幹システムとのデータ連携は苦労するケースが非常に多い。そのシステム的な原因は企業によっても異なるが、多くのケースにおいて、基幹システムとBtoB ECシステムの双方をしっかり理解せずに連携システムを構築してしまうことに起因している。

それでは、この重要な基幹システムとの連携において盲点となることが多い、気を付けなければならない重要な4つのポイントを見ていこう。

 

連携タイミング

BtoB ECシステムと基幹システムはデータ連携が必要であるが、その連携頻度やタイミングは事業内容や規模、連携の目的などによって各社とも千差万別だ。理想を言えばリアルタイムに連携出来るに越したことはない。ただ、リアルタイムの連携にはシステム構築の負荷が大きく、エラーも発生しやすくなる。そのため、現実的に各データをどのタイミングでどの頻度で連携していくべきか、現実的な落しどころを決める必要がある。基幹システム、BtoB ECシステムの両方のシステムの癖や全貌を理解した上で、適切な連携タイミングを決め、実現していく必要がある。

 

データ取込・抽出の受け口の有無

BtoB ECシステムと基幹システムを連携するテーマで議論してきているが、そもそも、その両システムが連携するための「口」となる取込や抽出のための受け口(CSV等)が準備されているかは大前提となる。最近のシステムではそれらの受け口が準備されていることも多いが、かなり古いシステムではそのような受け口が存在しないことも多く、データ連携以前に、基幹システム自体の見直しから行わなければならないこともある。また、受け口がある場合には、どのような連携方法が可能かをしっかり理解していく必要があるだろう。

 

役割分担と責任所在の明確化

BtoB ECシステムと基幹システムを連携する場合の多くは、BtoB ECシステムと基幹システムの提供・実装企業が同一ではないため、データ連携について関連するステークホルダーが導入企業を含め3社以上になる。そのため、各社の役割を明確にし、データ連携に関わるトラブルが発生した時の責任範囲の明確化は重要だ。うまく連携が進めばそれほど問題はないが、大なり小なり役割分担の曖昧さから問題が大きくなることが多い。責任範囲の明確化と共に、トラブル時の情報共有方法やルールを事前に決定し関係各社で周知徹底した方がいいだろう。

 

システム連携ノウハウ・実績

BtoB ECシステムと基幹システムを提供しているシステム会社に連携のノウハウや実績があるか、という点は分かりやすい確認点となる。過去事例の確認や、システム連携をどのように進めて行くかを質問し、その回答内容を確認することである程度は判断が可能だ。具体的な資料や進め方に関する回答が明確で信頼の高い内容かどうかを確認していくことが重要になってくるだろう。その回答内容が運用や業務の流れを意識したデータ連携を提案してくるシステム会社は確実にノウハウを持っていると言えるので、見極めの参考にしてもらいたい。

 

 

BtoB ECシステムを基幹システムと連携し効果を永続的に創出していくために

 

BtoB ECシステムと基幹システムを連携し、業務効率化の効果を永続的に創出していくためには、ここで見てきたように初期の検討が非常に重要になってくる。上述した盲点の2点目のデータ取込・抽出の受け口の有無と4点目のシステム連携ノウハウ・実績については、BtoB ECシステム選定段階で確認出来るポイントとなり、3点目の役割分担と責任所在の明確化についてはプロジェクト初期での忘れられがちな重要な論点であり、1点目の連携タイミングについては検討初期フェーズで行われる要件定義の際の重要な論点となる。そのため、プロジェクト進めながら検討してくのではなく、BtoB ECシステム選定前からしっかりと検討を行い、プロジェクト序盤戦で適切に盲点を潰していくことでBtoB ECシステムの導入効果を享受できるようになっていくのではないだろうか。