eコマースストアにおいて大きな意思決定を行うときは、感情を抑制することが必要となる。

「it’s not you, it’s me.(あなたのせいではなく、悪いのは私だ。)」

このセリフをどこかで聞いたことがあるだろう。もしくは、実際に言ったことがあるかもしれない。eコマースにおいてそのセリフは、別れの際のくだらない言訳ではなく、オンラインストアが成功できない真実の理由を示している可能性が高い。eコマースストアオーナーの自己感情や意識は日常の業務を行う際、常に影響を及ぼしている。重要な意思決定を行う瞬間に、感情を制御できるかどうかは、ビジネスを成功させるか、失敗させるかを決定する重要な要因になり得る。とても、シンプルなことなのだ。

 

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筆者(Mr. Jared Goetz)は、eコマースの教育プラットフォームであるeCom Hacks Academyの創設者であり、2017年に世界的ECプラットフォーム第2位まで急成長したオンラインストアShopifyのオーナーである。ここでは、eコマースの成功を妨げる重大な障壁の1つとなり得る“ストアオーナーの感情”を、3つの重要な状況においてどのようなネガティブな影響を与えるかを説明していく。

 

販売商品を決定するとき

オーナーは、実際に自分が購入したいと思う商品を販売すべきであると、固く信じている。しかし、販売商品の利益率については現実的に判断することが重要だ。最高級の洋服を販売したいかもしれないが、広告費と商品原価を差し引いた後、ごくわずかな利益しか残らないのであれば、その商品に時間とお金を投資するのは正しい選択ではないだろう。商品を何千も取り扱うのであれば話は別だが、オンラインストア初心者には現実的ではない。

 

では、何を売るべきなのか?ドロップシッピング(委託販売)モデルを利用している場合、AliExpressAlibabaの運営する海外向けECサイト)を通じて利用可能な無数の製品が存在する。しかし、全ての商品が、理想的な利益率を達成するわけではない。商品原価と広告費を差し引き後、少なくとも25%の利益率を確保する必要があると考えている。

 

この商品は売れるだろうという直感や感情ではなく、データを根拠とすべきなのだ。私のオンラインストアでは、特定のパラメータに基づいて、実質的に成功する可能性が高い製品を自動的に選別する独自のソフトウェアを実装している。ドロップシッピングモデル、もしくはその他のいかなる形態のeコマースにおいても、商品選定を手動で行う場合は、ソーシャルプルーフ(社会的証明)と、過去と予測されるトレンドの組み合わせを根拠とすることになる。

 

ソーシャルプルーフに基づく場合、特に委託販売者は、Facebook上で数万の「いいね!」や、常に一定のコメントが寄せられ続けている商品を探すだろう。通常このような商品は、シンプルだが面白く、60秒以内理解できるわかりやすいもので、検討中のバイヤーが「店舗で購入することはできない」と感じるようなユニークな特徴を持っている。

 

この点に言及すると、いつも競争についての質問を受ける。強調したいのは、 Facebookには22億3千万人以上のデイリーアクティブユーザーがいるという点だ。ある商品が、Facebookや他のソーシャルプラットフォームで大きな話題になっていたとしても、他の事業者にも、その商品を取り扱い合理的な利益を得る可能性は残っている。その成功例は、私がオンラインストアで販売していた「ミニプロジェクタ製品」である。その商品についての、「いいね!」やコメント、シェアの件数は、すでに数千件を超えていた。結果として、そのプロジェクタ商品の売り上げは好調で、利益率は約40%となった。

 

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トレンドについては、将来を予測することが必要ではあるが、歴史は繰り返されるということを忘れてはいけない。ちょうど数日前、私の講座の受講生と何を販売すべきかについて話し合った。そこで昨年の同時期および数ヶ月後までの期間、Amazonで売上が好調だった商品を特定するViral Launch社のMarket Intelligenceと呼ばれるソフトウェアを試してみた。

 

このソフトウェアは、販売期間と月別収益から商品を検索できる商品発見モジュールに加え、製品が生み出す収益データも提供している。その情報は、自店舗で販売する可能性がある特定の製品について活用することもできるし、希望する特定期間に何を販売するべきかを判断する指標としても利用することが可能だ。

 

一般的には、ドロップシッピングの初心者であれば、利益率の低い、もしくは、ソーシャルプルーフがない商品の選択は避けるべきであるというのが基本原則である。eコマースストアを始めることは非常に刺激的であるが、始めの“蜜月フェーズ”が終わると、「実際に売れる商品で十分な利益を確保し事業を軌道に乗せたい」と考えるはずである。繰り返しになるが、この際に具体的なデータよりも自身の直感を信じてはいけない。人に憶測させるような情報が溢れていることにも注意すべきである。

 

(Shopifyは、販売製品の選択に関する素晴らしいeブックを提供している。)

 

デジタル広告費用が増加しているとき

自店舗の販売商品のFacebook広告を制作したとしよう。多くのショップオーナーは、分析すべき指標を収集するのを心待ちにし、絶えずチェックするだろう。多くのeコマースストアオーナーは、広告出稿直後に残念ながら売上が増加していないのにも拘らず広告費を引き続き支払わなければならないという状態に陥った場合、パニックになる。出稿した広告がまだアクティブラーニングフェーズにある場合は、広告出稿が成功だったかどうかを判断して結論を出すのに時期尚早である可能性が高い。

 

Facebookのアルゴリズムは、より適切なユーザーに広告を配信するため、広告経由のコンバージョンを確認する必要がある。新キャンペーンや、既存キャンペーンで新しい広告を開始する場合、新規広告セットは、Facebookが言うところの「アクティブラーニングフェーズ」に移行する。これは、Facebookが、広告オーディエンスの安定化をもたらすために十分なデータを収集するために、アクティブラーニングフェーズ全体を通して一定の数のコンバージョン(少なくとも25から50件)を確認する必要があるということである。広告出稿費にもよるが、通常は1〜2日かかるラーニング期間に、広告セットに変更を加えると、持続的でスケーラブルなオーディエンス構築への弊害となる。

 

ラーニングフェーズでのオーディエンスを引き続きターゲットとするか、それとも損失を食い止め、他のオーディエンスや商品のテストに移行すべきかを判断するために用いるべき指標のいくつかを次に紹介しよう。

 

クリック率(CTR):十分なデータの獲得後、CTRが1%以下の場合、広告キャンペーンは効率的に実行されていないため、停止すべきである。反対に、CTRが2%を超える場合は効果的だと判断できる。利益を最大化するために1日の広告費を増やすことを検討する必要がある。

 

顧客獲得単価(CPA):CPAの目標値は、利益率の目標値を下回る必要がある。繰り返しになるが、目標とすべき適切な利益率は「約25%」である。つまり、商品を販売する際に、広告費用と商品原価を足した額は、最大でも商品の販売価格の75%以内に抑える必要があるということである。

 

クリック単価(CPC):CPCは、1ドル未満であるべきだ。広告が十分に閲覧された後に、繰り返し表示されているのであれば、広告を停止する必要がある。

 

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状況が厳しくなったとき

商品選択や広告出稿に失敗すると、やる気を削がれるかもしれない。しかし、私自身も、全く売れなかった商品を保管するための倉庫を持っている。落胆するのは簡単である。しかし実際のところ、「成功を収める商品」を見つけるためには、様々な商品を試す必要があり、時間がかがるものであり、最初から正しい選択ができないことは往々にしてあることだ。私が販売するガジェットやライフスタイル製品では、経験上、大まかにいうと10個の商品のうち約1個が「成功を収める商品」となる。

 

私が「成功を収めた商品」と考えるのは、適切な利益率(前述の通り約25%)の収益をもたらす商品である。最初のいくつかの広告セットがうまく機能しなかったとしても、失敗を容認せず、地道に取り組めば、最終的には何が効果的であるかを理解することができるだろう。そして、さらなる成功へつながる。

 

eコマースストアを少額の資金でスタートさせた場合、10個の商品を一度にテストすることは不可能かもしれない。しかし、忍耐強く、すべての失敗によって一歩づつ成功に近づいていることを忘れてはいけない。概して、オンラインで製品を販売する場合はできる限り論理的にならなければいけないのだ。eコマースでは、数字は嘘をつかず、忍耐強く持続することが、最終的に成功に結びつくと言えよう。

 

最後になるが、自分自身をより高め、感情をコントロールできるようになる最善の方法は、有料か無料かを問わず、自身のスキルを磨き成功するための新しい方法を学ぶチャンスに投資することである。トピックに関する記事や書籍を読んで、ポッドキャストに耳を傾け、常に自身の考え方やeコマースの能力を向上させることを目指さなければならない。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の9/6公開の記事を翻訳・補足したものです。