カーブサイドピックアップ・サービス(オンラインで注文した商品を専用駐車スペースで降車することなく受け取るサービス)は、今や、米国では企業や消費者が「ニューノーマル」時代を生きていくために利用する一般的な戦略の一つである。消費者はオンラインで注文し、ビジネス拠点に出向き、商品を受け取り、帰宅する。それは関係者全員にとって、非接触で利便性の高い、理想的な体験である。
「多様なユーザーからの道路に対する需要は、ここ数年で増加している」と、パーキング等に関するコンサルタント業務を提供するWalker Consultantsのモビリティ・コンサルタントChrissy Mancini Nichols氏は語る。「人々は自家用車以外での移動も望むようになっており、道路にはUberやLyftのようなライドアプリ、自転車、電動スクーター、輸送車両、自家用車などの競合する乗り物が集まっている」。
COVID-19パンデミックによって、カーブサイドピックアップへの関心が高まった。しかしそれは、もともと消費者が商品を受け取る方法として、COVID-19前にも米国では人気を集めていたものである。
「COVID-19前でも、オンラインやアプリで購入された商品や食品の配達の需要増加によって、カーブサイドピックアップは拡大していた」と、Nichols氏は説明している。
「カーブサイドピックアップが人気なのは、便利でスピーディーな買い物ができるからだ。人々はオンラインで注文し、車から降りたり店舗に入ったりすることなく、商品を受け取ることができる。さらに、食品デリバリーの成長によって、顧客だけでなく配達ドライバーからのニーズも増加している」と同氏。
カーブサイドピックアップ・サービスは、パンデミックの影響で、空車になりがちな駐車場をフル活用する方法にもなる。
「今ビジネスは、消費者のニーズの変化やピックアップへの需要増加に対応するために、長時間の駐車用のパーキングではなく、短時間のピックアップのためにより多くのスペースを必要としている」。
「顧客と配送車のための短時間でのピックアップ用スペースは、ビジネスが再オープン以降、事業を行う上で、引く続き不可欠なライフラインとなるだろう」。
手間のかからないピックアップ
カーブサイドピックアップを成功させるためには、消費者にとって可能な限り迅速かつ容易なサービスを提供しなければならない。その使いやすさの大部分を実現するには、適切な計画と管理が必要となる。
「カーブサイドピックアップを計画する際に、考慮すべき要素がいくつかある」とNichols氏は次のように説明している。「まず、市が企業と協力して、ニーズや需要に対応するための必要なスペースを適切に計画しなければならない。また企業は、顧客が合理的なピックアップができるためのプロセスを作る必要がある。そして、配送ドライバーからの集荷需要に対応する必要性という付加的な要素もあるだろう」。
カーブサイドサービスに最適なエリアを決定することも重要である。
「カーブサイドピックアップ・スペースを計画している市にとって、顧客の路上でのピックアップに最適なエリアは、商業の中心部や近隣の通り、大通裏といった路上駐車場のある場所である」とNichols氏。「適切なピックアップスペースは、隣接する土地利用に応じて、ブロックごとに検討する必要があるだろう」。
最終的には、より流動的でシームレスなカーブサイド・エクスペリエンスによって、顧客のより高い満足度をもたらすのだ。
「シームレスなピックアップ体験を求める顧客の期待は、小売業の勝者と敗者を生み出すだろう」と語るのは、オンラインメッセージングやマーケティング、分析のためのアプリケーションを開発する LivePersonのエリアバイスプレジデントScott Starr氏。
「顧客が車から降りる必要がなく、安全で良く調整された明確なフルフィルメントを提供する企業が、勝者となる。一方で、従業員に注文を処理させるのに苦戦し、顧客を駐車場で混乱させたまま放置する企業は、敗者となるだろう」。
自動化は、シームレスで満足度の高いカーブスサイドピックアップ・エクスペリエンスを生み出す上で非常に大きな助けになるだろう。
「企業にとって重要なのは、SMSやiMessage、Facebook Messenger、WhatsAppなど、顧客がすでに利用しているモバイルネイティブ・チャネルでのカーブサイド・エクスペリエンスを自動化することである」。
「顧客は、これらのメッセージングアプリから、標識のQRコードをスキャンしたり、短い番号を入力したりするだけで、到着時にフルフィルメントの会話を開始することができる」とStarr氏。「これらのメッセージングチャネルは、チャットボットで自動化されており、顧客に挨拶をしたり、注文番号や車両のメーカーやモデルなどの情報を収集したり、ステータスのアップデートを提供したりすることができ、担当者の時間を節約することが可能である」。
全てのカーブサイドサービスにおける重要な要素は、明確かつ定期的なコミュニケーションである。
「電話やウェブベースのソリューションとは異なり、メッセージングの会話は、注文処理中も継続し、会話のスレッドの中に残る。そのため、フィードバック調査やフォローアップオファー、カスタマーサービスの問い合わせなどの自動化によって、顧客をさらにエンゲージする機会が生まれる」。
「ブランドは、カーブサイドピックアップに会話型AIソリューションを採用することで、顧客体験を向上させ、待ち時間を短縮し、フリクションを除外し、効率性を高め、コストを削減することができる」。
未来の道路
カーブサイドピックアップは、現時点ではパンデミックに関連付けられることが多いが、将来の小売業界の一部であり続ける可能性が高い。消費者は、カーブサイドピックアップの容易さと利便性を重視しており、それを期待する傾向にある。そして、多くの企業が、オプションとして引き続き提供する可能性が高いだろう。
コラボレイティブコマース・プラットフォームを提供するVTEXの共同創立者であり、グローバルアカウントのトップである Alex Soncini氏は、「カーブサイドピックアップは、すぐに消えるトレンドではない」と語った。
「顧客のニーズは進化しており、崩壊を最小限に抑えたい企業は、その対応が必須である。企業が高い在庫レベルを維持し続け、消費者のオンライン注文を容易にすれば、効率的なオンラインストアからの注文処理ループを作り出すことができるだろう」と、同氏は付け加えた。
実際に、ビルや駐車場が新しい買い物方法に対応するために進化していく中で、カーブサイドピックアップの普及によって、都市のインフラそのものが変化する可能性がある。
「道路は、都市の中で最も価値のある資産の一つである」と、Walker ConsultantsのNichols氏。「ここ数年で、道路に対する需要が、単なる自家用車用パーキングから、ライドアプリ、商業配送、バイクやスクーターの駐車場へとシフトしてきたことを考えてみてほしい」。市にとっては、道路を収益化し、専用スペース利用に対して料金を徴収する機会が生まれているのである。
「道路の収益化と交通料によって、市の駐車場と交通収入のポートフォリオは多様化し、需要の減少に伴う駐車場収入の損失をカバーすることが可能になる。道路の収益化によって管理コストを補填し、モビリティインフラへの投資に資金を回すことができるようになれば、より効率的な交通アクセスを提供することができるだろう」と、Nichols氏は結論づけている。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の8/13公開の記事を翻訳・補足したものです。