Amazonは需要増加に対応すべく、10万人の新規従業員の雇用予定を発表。 

 

まずは本当に新型コロナウイルスがしっかり収束することが前提とはなるが、一部の専門家はすでに、収束後の文化と経済について推測している。変わらないものの中で、変化の可能性があるものとしては、サプライチェーンの多様化やオンライン教育の主流化、在宅勤務を受け入れる企業の増加、(持ち堪えた)レストランやホテル、そして、その他の公共の場所に対するより厳格な衛生ルールなどがある。それに加えて、さらに大きな影響を及ぼすものとしては、オンラインショッピングの増加が考えられる。

 

買い物に劇的な変化が起きようとしている? 

おそらく我々の生活における他の単独の出来事とは異なり、新型コロナウイルスや関連する経済的な2次影響は、米国消費者の購買パターンを大幅に変える可能性がある。ウイルス発生前の数年間、我々は、いわゆる「リテール・アポカリプス」と呼ばれる、実店舗の閉鎖や小売業の破産を目の当たりにしてきた。それは、新型コロナウイルスと、近い将来の景気後退によって悪化が加速するだろう。

 

ほとんどの主要な小売業者(“生活必需品”を販売している小売業者を除く)は現在、“一時的に”店舗を閉鎖している。さらに、米国のショッピングモールの最大の所有・運営者であるSimon Property Group(サイモン・プロパティ・グループ)は、今月末までにすべてのモールとアウトレットを閉鎖すると発表した。WalmartCostocoTarget(米国の小売業者)などの少数の小売業者のみが、食料品やその他の必需品を販売していることから開店し続ける予定だ。

 

一部のオンライン在庫は底をついた 

予見可能な未来において、物理的な世界は、おそらく仮想世界に移行しつつあるのだ。だが、オンラインショッピングは、オフラインストアの代わりを完全に務めることはできない。WholeFoods(米国の食料品スーパーマーケットチェーン)のような店からの食料品の配達は、在庫が不完全になったり、配達にむらが生じたりしやすい。Amazonでは、いくつかの人気商品や家庭必需品が品切れとなった(たとえばトイレットペーパーは、サイトで見かけることはあるが、購入までには至れない。)

 

eコマースの売上げは多くのカテゴリーで増加しており、商品によっては3桁増であるが、他のカテゴリー(旅行など)では減少傾向にある。完全なデータはまだ入手できていないものの、ほとんどのオンライン購買熱の主な受益者は、Amazonであろう。その証拠に、同社は3月16日、「このストレスフルな時期にAmazonのサービスに頼っている人々からの需要の急増に対応するべく、フルフィルメントセンター(物流拠点)および配送ネットワークでフルタイムとパートタイムの従業員を10万人雇用する」と言及している。

 

WalmartTarget Amazonに関連する検索 

出典:Google Trends

 

Google Trendsをざっと見てみると、Amazon、WalmartとTargetに関連する検索が急増していることが分かった。人々は、実店舗が営業しているか、配送と出荷が新型コロナウイルスによってどう影響を受けているかを判断しようとしているからだ。しかしAmazon以外の、プラットフォーム上のサードパーティの売り手は、Amazonが非必需品(必需品以外のすべて)よりも必需品(すなわち、日用必需品や医療用品)を優先させているため、損害を被ることになるだろう

 

 

多くの小売業者はコロナ不況を乗り切ることはできない 

Walmart、Target、Costcoとその他いくつかの老舗大規模小売業者は、このコロナ不況を乗り越え、場合によっては、この期間中に通常時よりも大きな収益を上げるだろう。これは、多くの食料品店にも当てはまる。ディスカウントストアもまた生き延び、多くの専門小売業者と裕福な顧客向けのケータリング業者はおそらく切り抜けることができるだろう。しかし、某百貨店ブランドや、中間層の買い物客に焦点を当てたブランドの多くは、店舗の閉鎖、場合によっては消費者支出の減少や消滅に直面し、損害を被ることにより破綻する可能性がある。

 

2019年初頭のeMarketer(米国の市場調査会社)の推定によると、Amazonは昨年、米国のeコマース総支出の約47%を獲得し、Walmartは4.6%と予測されていた。同社は後に、Amazonのマーケットシェアの見積もりを9ポイント下げ、約38%とした。

 

2023年までの米国 eコマース売上げ予測

 

Google、Facebook、Amazonとその他すべての企業 

Amazonの実際のマーケットシェアがどのようなものであろうと、今現在、そして、近い将来に、そのシェアが増加することはほぼ間違いない。Amazonのeコマースの競合相手には、Walmart.comGoogle Shoppingが含まれる。しかし実際の競合相手は、オフラインの小売業者であり、少なくともそれらの一部は、今後12ヶ月で身動きが取れなくなるか、破綻するだろう。

 

これは、Amazonのトラフィックや販売、マーケットシェアが増加することを意味し、同様に、オーディエンスと忠実なプライム会員が増え続けるにつれ、時間とともに広告収入が増加することを意味する。これにより、他の主要事業者であるGoogleとFacebookの二社とともに、三社によるオンライン広告独占におけるAmazonの地位を高め、強固なものとなる。Googleにとって、Amazonは商品検索を強化しているがゆえに、Facebookよりもさらに手ごわい広告競争相手であることはほぼ間違いないだろう。

 

投資家にとっての米ドルのように、Amazonはオンラインショッパーにとって、安定性の指標なのだ。議論するまでもないことだが、この新型コロナウイルス危機と現在の不安定な小売経済の真っただ中において、主要なオンライン事業における受益者を挙げるとすれば、それはAmazonだろう。同社は、新型コロナウイルス後の不況を、ほとんどの同業他社や競合他社よりも、はるかに力強く切り抜けるだろう。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の3/19公開の記事を翻訳・補足したものです。