Amazonに対して従来の小売業者が持っていた主な強みは、実店舗に商品を保有していること、また(すぐに商品を購入できるという)即時性だった。客は商品を見たり手に取ったりでき、その日に家に持ち帰ることができた。更に返品に関しては、Amazonに返送するよりも実店舗の方が簡単にそれが可能であった。

しかしながらAmazonが徐々に追加してきたPrimeサービスやPrime Now、専用宅配ボックスサービスLockers、プリペイド返品、更にはWhole Foodsの140億ドル近い買収によって、従来の小売の強みを徐々に崩し始めている。高級食料品店Whole FoodsがAmazonの経営支配下に入った初日には、商品価格を40%以上値引きしてEcho端末の販売を始めた。

時代はスマートスピーカー/バーチャルアシスタントの領域争奪戦の真っ只中だが、これに関してもAmazonが勝っている。

Amazon PrimeメンバーにはWhole Foodsで値引きやその他の特典がある。こうした値引きやPrime の特典は、Whole Foodsに新たな客層を取り込み、またPrimeメンバーにも新規会員を加える。こうしてAmazonとWhole Foodsへの顧客ロイヤリティーも強化されていくのだ。

他の食料品店チェーンは、この事態をとてつもなく恐れるべきなのである。

 

<参考>

【米国】AmazonがWhole Foodsを買収した後の影響

【米国】Whole Foodsを137億ドルで買収したAmazonの今後のビジョンを占う

 

Amazonはきっと、Whole FoodsをEchoの販売だけでは無く、他の目的にも利用するだろう。例えば、Whole Foodsの400以上の店舗を簡単にAmazonの返品センターにすることができるし、恐らくそうしていくだろう。

加えてAmazonは今、オムニチャネル戦略で圧倒的な力をつけている。このような施設や流通サービスに対抗できる小売業者やインターネット会社は他に存在しない。GoogleFacebookなどのごく僅かな企業しか、Amazonのブランド力と消費者との密接な関係に対抗することはできないのだ。

Whole Foodsの買収は、小売業者達にとって現実を突き付けられた瞬間だった。それまで彼らは何年もの間、客足の減少や他の問題を嘆いてきたが、いよいよ大胆な手段を取らなければならない。その一例としては、Google AssistantGoogle Homeと提携したWalmartのボイス・コマースがある。これはWalmartにとって攻撃的でも守備的でもある動きであった。

 

<参考>

【米国】Walmart、Googleと提携。Amazon Alexa音声ショッピングに対抗

【米国】Walmartはpick up discountを提供、アマゾンと徹底的に戦う

 

こうした動きは全て、従来の小売業者を大きな何かへと導いている。それは、もっとGoogleとFacebookをパートナーやチャネルとして迎え、Amazonと競争することの大切さを訴えている(いくつかの小売業者は、Amazonを経て販売した方が良いかも知れない)。これで充分では無いが、現時点で必要なことに見える。

GoogleとGoogle Expressは、近い内に小売業者の“親友”になるだろう。Whole FoodsはGoogle Expressに登録中だが、もう長く登録し続ける事は無いかも知れない。

地元の店舗が持つ在庫は、今でも従来の小売業者達が持つAmazonに対抗する大事な武器だ。しかし、その在庫は一様に公開されていない。推察では、GoogleのLocal Inventory Ads(ローカル在庫広告。店舗の周辺で Google 検索を行った買い物客に対して商品と店舗の情報を表示し、Google がホストする店舗の在庫情報や営業時間、道順などを確認できるサービス)を採用する小売業者が増えていくだろう。そして今まで以上に、GoogleとFacebookが提供する幅広い可視性やターゲティングのためのツールを利用するようになるだろう。例として、小売業者達はオンライン広告を店舗の客足につなげるために、店舗訪問分析ツールを利用していくべきだろう。

更に、店舗内でのショッピング体験を向上する他、サービスに重点を置いたり、モバイルサイトやアプリを強化したり、顧客を引き付けるプログラムを提供したりすべきだ。簡単に言えば、繁盛させるどころでは無く生き残りたいと願うならば、従来の小売業者達は強制的に全面的にステップアップしなければならない。

これまで小売業者達は、Googleにデータを託すことについて決めかねていたかも知れないが、現在の彼らに選択肢は少ない。敵の敵は味方である。

Amazonがオンラインから現実世界へ移行する中、小売業者達は躊躇無しに実行する必要がある。今、生き残りをかける時がやって来た。

 

※この記事は「Marketing Land」の8/29の記事を翻訳・補足したものです。