コンバージョンって何?
コンバージョン(Conversion、CV)とは、変換、転換、交換といった意味を持つ英単語である。マーケティングの分野においてはCVとも略され、ECサイト上で獲得できる最終的な成果のことを指す言葉である。
ECサイト(ネットショップ)を運営している人であれば誰もが耳にするものだが、サイトの種類によって示す内容が変わってくるため、いまいち把握しづらい用語でもある。コマース基本用語解説の第2回目は、この「コンバージョン(CV)」について紹介していく。第1回の「eコマース」についてはこちらの記事を参考にしてほしい。
用語解説
コンバージョン(Conversion、CV)とは先述の通り、変換、転換、交換といった意味の英単語だが、インターネットのマーケティング分野で使う場合は「Webサイトで獲得できる成果」を指す用語となる。つまり、最終的な成果であるコンバージョンをどう定義するかによって、その意味や内容が変わってくるのだ。一般的には、サイトの種類によって成果も異なるため、何をコンバージョンとするかは様々である。例えば、ECサイトでは商品購入、情報提供サイトやコミュニティサイトでは会員登録、企業サイトや商品情報サイトでは問い合わせなどがコンバージョンにあたる。
広告出稿の視点に立つと、広告をクリックしたこと自体をコンバージョンという少し間違った使い方をする場合もあれば、広告が掲載されているサイトを基点とし、そこで広告をクリックし上記のサイトの目的を達成した最終的なユーザーのことをコンバージョンというケースもある。この場合は、ユーザーの基点を広告を掲載しているサイトと見るのか、自社サイトと見るのかにより、コンバージョンの指すものが異なる。今回はECサイト内におけるコンバージョン、そしてコンバージョン率について紹介する。
コンバージョン(CV)の種類
サイトの成果を何に定義するかによって意味が変わってくる「コンバージョン」だが、その施策の内容や、ユーザーの行動によっても関連用語が複数派生的に存在している。いくつか代表的なコンバージョンの種類を示す用語についても見ていこう。(ECサイトのコンバージョンについての概要が知りたい方は、このセクションは少し難解な用語が続くためスキップして2つ先のセクションを読むことをおすすめする。)
直接コンバージョン
一般的にサイトを運用して多くのユーザーに来訪して欲しいと考える場合、広告施策を行うことになる。直接コンバージョンとは、その広告施策を行いサイトに来訪(ランディング)したユーザーが、そのままそのタイミングで、サイトの成果として定義されている商品購入や、会員登録、問い合わせなどを行うことを指す。直接コンバージョン数となるとその件数を指し、直接コンバージョン率となるとその割合を指すことになる。
間接コンバージョン(アシストコンバージョン)
一方、間接コンバージョンは、広告施策を行いサイトに来訪したユーザーが、その時点ではコンバージョンしなかったが、再度何らかのきっかけで来訪しコンバージョンを行うことを指す。間接コンバージョンと表現する以外にも、アクセス解析ツールのGoogle Analytics上ではアシストコンバージョンと表現されていることもあり、アシストコンバージョンと表現するケースも増えてきている。この間接コンバージョンは、最近ではしっかり確認することが多くなってきている。その背景には、SNSの台頭も無関係ではない。皆さんも実際に商品を購入する際に自然と行っていると思うが、InstagramやTwitterなどで気になった商品を最初に見つけ、さらっとサイトを見に行きまずは興味を持つ。その後、他のサイトなどを閲覧している最中に別の広告経由で再度サイトを訪問し、よし買おうか、という流れで購入に至るケースが増えてきている。その際、SNSが購入に与えた影響はかなり無視できないものとなっているが、直接コンバージョンのみの計測ではSNSの影響を過小評価することになりかねない。そのため、間接コンバージョンも含めた形で広告施策のパフォーマンスを評価することが増えてきているのだ。
総コンバージョン・ユニークコンバージョン
さらにまた別の論点でコンバージョンについて定義が必要になったものがこの総コンバージョンとユニークコンバージョンだ。これは同義ではなく別の意味を持つ言葉だ。Aさんが広告を経由して2回商品購入をした場合、総コンバージョン数は2、ユニークコンバージョンは1となる。すなわち、総コンバージョン数は、コンバージョンされた回数を単純に積んでいったもの。ユニークコンバージョン数はコンバージョンした人数を求めたもの、となる。この2つの定義はサイトの目的によってどちらか片方の数値を追っていくべきものだ。商品購入などは総コンバージョン数に意味があるが、会員登録では1人が複数回登録することに意味がないためユニークコンバージョン数を確認するべき、という考え方になる。
クリックスルーコンバージョン・ビュースルーコンバージョン
今度は広告に対してどのようにアクションをしたのかによる違いを指す言葉だ。こちらのクリックスルーコンバージョンとビュースルーコンバージョンも別の意味を持つ言葉となる。広告に対してクリックしてサイトを来訪し、直接でも間接でも構わないのでコンバージョンしたものをクリックスルーコンバージョンと言う。また、(画像や動画など、テキスト以外の)広告を閲覧し、同じく直接でも間接でもコンバージョンしたものをビュースルーコンバージョンと言う。実際にここまでのキーワードの使い分けが発生するケースは、かなり細かく広告施策を行ってパフォーマンスを確認するケースに限られていると考えていいだろう。
マイクロコンバージョンとは
前述したコンバージョンの種類とは別に、最終的なコンバージョンに至るまでのユーザーの行動をいくつかの段階に分けて考える際に使用する「マイクロコンバージョン」というものが存在する。(前項と同様このセクションは少し踏み込んだ内容が続くため、ECサイトのコンバージョンの概要が知りたい方はスキップして次のセクションを読むことをおすすめする。)
コンバージョンとの違い
マイクロコンバージョンは、売上を伸ばすためのマーケティング戦略の中で活用されることが多い。コンバージョンが最終目的なら、それを達成するまでの道のりにある中間目標がマイクロコンバージョンというわけだ。そのため、何をマイクロコンバージョンとするかはさまざまであり、商品特性や施策内容によって内容が大きく変わる性質を持つ。一例として、最終的なコンバージョンを「注文・購入ボタンのクリック」とした場合、マイクロコンバージョンは「商品ページの閲覧」「カートへの追加」「フォームでの情報入力」のように、ユーザーの行動ごとに段階を踏んで設定される。
マイクロコンバージョンのメリット
最終目標となるコンバージョンをもとに、そこに到達するまでのユーザーの行動をいくつかのステップに分けマイクロコンバージョンとして設定することで、測定可能なデータを増やす。それによりユーザーの行動やECサイトの持つ課題を把握しやすくなり、売上を伸ばすための有効な施策立案に役立てられるのが、マイクロコンバージョンのメリットである。
マイクロコンバージョン活用のポイント
マイクロコンバージョンは、コンバージョンとの相関性が高く、なおかつある程度の計測量が見込める箇所に複数設置するのが望ましい。それによりコンバージョンしていないユーザー、つまり購入に至っていない見込み客がどこで離脱しているのかを分析しやすくなるからだ。ただし、HTML内の計測箇所に埋め込むコンバージョンタグがマイクロコンバージョンの数だけ必要になるため、管理の手間が増える点は覚えておきたい。
ECサイトにおける「コンバージョン(CV)」
ECサイトにおいてはコンバージョンといった場合、コンバージョン率のことをさす場合が多くなり、よりわかりにくさを増しているのではないだろうか。あなたがショップを立ち上げたとき、いくらサイトに人が来てくれても実際に商品が売れなければ意味がない。つまり、訪問者数に対して実際に商品を購入した人の割合を上げなくては本当に成功しているサイトとは言えないのである。このように、購入に至った人たちを「コンバージョンした」と言い、その割合をコンバージョン率(コンバージョンレート、CVR、転換率とも言う)と言う。例えば、70人の訪問者のうち7人と取引が成功した場合、コンバージョン数は7となり、コンバージョン率は10%という計算となる。
実際のコンバージョン率の「値」
実際に世の中に存在しているECサイトのコンバージョン率はどの程度になっているのだろうか。コンバージョン率はサイトに掲載されている商品数や取り扱う商材によって大きく値は変わってくるが、通常1%程度が一般的と言われている。非常に有名なブランド店で3%程度、お得感のあるセール期間中などは10%以上にアップすることもある。
eコマース黎明期では、コンバージョン率が40%というような値もあったと言われているが、eコマースが多角化し、消費者の日常に溶け込んでいる現在では、そのような値はほぼ出ないものとなっている。弊社の保有している数百社以上のデータを分析すると、ショップの売上高レンジによって値に1.6%~3.2%と幅はあるものの、全体平均で2.45%というデータとなっている。
コンバージョン(CV)の例
コンバージョンについて一通り理解できたところで、サイトの種別に代表例をいくつか見ていこう。
ECサイト(ネットショップ)
商品を購入してもらうことが目標なので、コンバージョンの定義は商品購入となる。取り扱う商材がサービスである場合は、問い合わせや資料請求をコンバージョンとすることも多いだろう。高額商品などは購入そのものが発生しづらいため、マイクロコンバージョンとして中間ポイントを定義し、適切な検証を繰り返しながらコンバージョンにつなげていく必要がある。また、平均コンバージョン率はBtoCよりもBtoBの方が高くなりやすい傾向にある。
情報提供サイト・コミュニティサイト
会員数を増やすことが目標なので、コンバージョンの定義は会員登録となる。ECサイトの商品購入と比較すれば会員登録はそれほどハードルの高いものではないため、ライトコンバージョンと呼ばれることもある。メールマガジンの場合も同様、メルマガ登録がコンバージョンとなるが、商品販促の意味合いが強いものはメルマガ登録自体がマイクロコンバージョンとして扱われるケースもある。また、サービスによってはイベントや見学会などへの参加申し込みをコンバージョンとするものも多く存在する。
企業サイト・商品情報サイト
採用が目的であれば採用への応募、商品紹介がメインであれば問い合わせや資料請求がコンバージョンとなる。特定の商品のみを紹介するランディングページであれば、製品の試用版や無料サンプル、見積もりの申し込みをコンバージョンとすることも多い。企業サイトは直接的な商品の販売だけが目的とは限らないため、最終的に何を達成したいのかという目標を明確にし、それに沿ってコンバージョンを設定することが重要である。
いずれの場合も、なぜコンバージョンに至らないのかをデータから推測し検証を繰り返すことがポイントとなるため、次で紹介するロジックツリーを用いた思考を身に付け、状況に応じて適切なアクションを取れるようにしたい。
ECサイトの「コンバージョン」率向上のために
コンバージョンの定義は商品やサイトの種別によって大きく変わってくるので、コンバージョン率を向上させるための方法も一定ではない。ここでは、どんな場合でも共通して活用できる「ロジックツリー」という思考法を紹介する。
ロジックツリーとは、物事を論理的に分解して要素を深堀りすることで、目標設定や問題解決などに役立てることのできるフレームワークだ。一つの要素から二つ、三つと枝分かれするように分解していくのが特徴で、例えば「商品の宣伝」であれば次のように分解できる。
この図はサンプルのため一部のみをピックアップしているが、これにより方法や手段が一覧できるようになる。「商品を宣伝したい」という漠然とした目的が細分化され、枝分かれするにつれてより具体的になっていく。例えば、右側でリストアップされた要素に対して過去データを参照し、それを元に施策を練るというのもいいだろう。また、「商品の宣伝」の部分を「売上が伸びない」などの課題に置き換え、問題点となりうる要素に分解していくことで、原因究明の手助けとしても活用できる。
ECサイトの売上を上げるためにはコンバージョン率を上げることが重要な課題であり、様々な方法でこの値を向上させるための取り組みが日夜、各ショップで行われている。コンバージョン率の向上をテーマにしたサービスやセミナーの開催は数多くある。また、ECサイトのコンバージョン率を上げるためのサービスも市場には数多く提供されており、その手法も多岐にわたっている。
ECサイトのコンバージョン率向上のためには、様々なアプローチがあるが、商品画像は商品を購買するか否かの重要な判断材料となる。特に定番商品でないアパレルや季節商品などのジャンルでは商品画像の重要性は年々高まっている。
また、ユーザー情報をリアルタイムで収集し、オンライン上でAIや人間が対応することで購買意欲を高める施策をECサイト上で行うことで、コンバージョン率を高めるための「Web接客サービス」が注目を浴びている。
上記のようなサービスは、ただ闇雲に運用しただけではむしろ費用対効果が悪くなるケースも珍しくない。数あるサービスをどのように活用し、各ECサイトの特徴を活かした販促活動を行っていくかがコンバージョン率向上の鍵となる。
重要な指標となるコンバージョン(CV)
このように、コンバージョン率はWebサイトの投資対効果を計る上でも重要な指標であり、ECサイトの実態を知る上でも重要な指標といえるだろう。皆さんが運営しているサイトのコンバージョン率を知らない方は、ぜひ把握するような取り組みを行うべきだろう。ただし、あくまで取り扱っている商材、取扱い商品数、商品の単価、時期、モールや独自ドメインなどによっても大きく異なってくる数字となるため、値だけをもって他社と比較することは意味が無いという点も注意が必要である。
何となく不安を持ちながら「コンバージョンがね、」と使っている方も、この記事を読むことで不安を解消し、気持ちよく使えるのではないだろうか。またどこかで「コンバージョンが、」という話を聞いたら、きちんとその話の場合の成果の定義を考え、分からなければ、きちんと確認するようにしたい。
eコマース業界は現在も毎年のように伸び続けているが、ユーザーの目もそれに応じて鋭くなってきている。今後もECサイトにおけるコンバージョン率を上げていく取り組みやサービスは、様々な形で提供され続けていくだろう。