スマートフォン×EC 2015年下半期トレンドデータ速報
昨年2015年10月時点での、携帯電話所有者の中のスマートフォン保有率は63.9%(MMD研究所調べ)となり、スマートフォン保有者の65%(博報堂DYホールディングス調べ)がスマートフォンでECを利用していると言われている。また2015年上半期の弊社調べのデータに おいてもECサイトにおけるスマートフォンユーザーの割合は65%を越えるなど、もはやEC運営において最も重要なデバイスとなったスマートフォン。今回も2015年下半期(7月~12月末)のスマートフォンのEC活用のトレンドデータを速報値として、 弊社EC向けアクセス解析~自動課題判定~施策提案ASPサービスSHOPNOTEから確認していく。
<過去のレポート>
【スマホ×ECトレンドデータまとめ】2015年上半期速報 - ユーザーの67%、売上の46%がスマホ経由に
【スマホ×ECトレンドデータまとめ】2014年下半期速報 - スマホユーザーの割合が6割を超える
【スマホ×ECトレンドデータまとめ】2014年上半期速報 - 遂にスマホユーザーの割合が半数を超える
ECにおけるスマホ活用実態を5指標×4切り口の豊富な生データで徹底解剖
ECサイトにおける最も重要なデバイスの地位を一昨年PCから奪い取り完全にデジタルデバイスの主役に躍り出たスマートフォン。この波が2015年下半期も引き続き伸びているのか。この半年のデータを、来訪者数・ 売上高・転換率・客単価・平均PV数の5つ主要各指標について、4半期毎の時系列・出店形態別(楽天と本店)・売上高レンジ別・取り扱い商品レンジ毎の4つの切り口から見ていく。
時系列
既に2014年下半期にスマートフォンユーザーのアクセス割合が60%を超えていたが、新鮮な2015年の7月~12月のデータをみると、アクセスの71%以上がスマートフォンからのものとなっており、10人に7人以上がスマートフォンでECサイトにアクセスをしていることになる。
上の図は売上高(ブルー)とアクセス人数(ピンク)について、全体数に対するスマートフォンユーザーの割合を時系列に並べたものだ。直近の4半期(10月~12月)の売上高は2015年の最初の4半期(1月~3月)と比べて約5.5ポイント増の49.2%、アクセス人数は同じく半年前と比べて約6.3ポイント増の71.8%となっており、共に引き続き伸びていることが分かった。
2015年12月末時点でECサイトの売上の50%弱はスマホ経由で行われ、アクセスするユーザーの70%強はスマホでアクセスしている。また売上高とアクセス人数のスマートフォン割合の差も僅かではあるが2015年の最初の4半期よりも広がっていることは興味深い。このことは日常的にスマホを使って情報収集を行い、ECサイトが提供するコンテンツを消費する傾向は強まっているものの、オンラインでそのまま購入に繋がらないというケースが増えてきているのではないだろうか。しかしこのことは悲観的に捉えるべきではなく、消費者とECサイトとの接点が増えたと好意的に受け取るべき事象かもしれない。
また、1年前の2014年下半期のデータと比較すると売上高で14%、アクセス人数で18%という増加率でスマートフォンの活用が伸びているが、その増加率は徐々に鈍ってきているようだ。
続いて、その他のeコマースの主要指標と言える、コンバージョンレート(CVR・転換率)、客単価、平均PV数を見ていく。こちらは、PCユーザーの値に対するスマートフォンユーザーの値の割合で見ていく。
平均PV数は横ばいだが、客単価とコンバージョンレートは減少傾向と いう結果となった。直近の4半期(10月~12月)のコンバージョンレートは2015年の最初の4半期(1月~3月)と比べて約7.7ポイント減の52.8%、客単価は同じく半年前と 比べて約8.5ポイント減の72.3%となっている。(この値が分かりにくいかもしれないが、例えばPCユーザーのコンバージョンレートが2.0%のサイ トにおいて、スマートフォンユーザーのコンバージョンレートがその52.8%の1.06%であるということを意味している。)
コンバージョンレートが減少している傾向は半年前の調査でもあったが、平均PV数は増加傾向が収束し横ばいとなり、客単価は横ばい傾向から減少に転じているようだ。
客単価と平均PV数は流動的な傾向が見られているが、コンバージョンレートは2014年の第2四半期をピークに減少傾向が継続しており、商品の“物色”や情報収集はスマホで行い購買はPCで行うという住み分けをしていることが推測される。このことが、売上高の比率とアクセス人数の比率の差が拡大している原因となっている。
全体としてみると2015年下半期においてもECサイトにおけるスマートフォン活用は継続的に増加していることとなり、アクセス数は依然として大きく伸び続けているものの、コンバージョンレートの割合の減少と共に、売上高の伸びは鈍化してきているようだ。弊社による今後の見通しとしては今年の6月末頃までには大きな伸びは見込めず、アクセス人数の75%前後、売上高の52~54%がスマートフォン経由で行われるのではないだろうか。いずれにしても、売上高でPCから名実共に主役の座を奪うタイミング(50%を越えるタイミング)が数ヶ月以内に訪れることになるだろう。
出店形態別(楽天と本店)
2015年下半期のデータをいくつかの切り口で見ていく。まずは出店形態による違いを確認するために、楽天か、それ以外の独自店舗(本店)での比較をしていく。本店のデータはGoogle Analyticsが導入されている店舗のデータとなる。
売上高は3.5ポイント、アクセス人数は19.9ポイント、楽天よりも本店の方が良いというデータとなっている。この差は2015年上期の差より共に縮小しており、楽天のスマホ向け対策に改善傾向が見られる。
続いて、コンバージョンレート(CVR・転換率)、客単価、平均PV数を見ていく。
こちらも2013年から傾向は変わらず、売上高・アクセス人数とは逆の傾向となり、本店より楽天の方が数値が高くなっていることが分かる。コンバージョンレートはなんと過去最大の47.4ポイント、客単価は10.3ポイント、平均PV数は14.9イントいずれも楽天の方が高い数値となっている。また、その差は2015年上期よりもコンバージョンレートと客単価については広がっている。このことは本店の方が楽天よりスマホでのアクセスが多いものの、画面のUIの統一性やスマホ向け販促活動の強化などにより楽天ではしっかりとスマホでも購買に結び付けることが出来ているといえる。また、多くのユーザーがAmazonに流れているようだが、楽天で購入経験が無いユーザーも少ないため、PC・スマホにおいてアカウント情報が残っていることで、スマホでの購入もそれほどハードルが高くないことが原因として挙げられる。
売上高レンジ別
ショップの売上高レンジ(月間売上高)による違いを見てみよう。2015年上半期のデータと同じ傾向となり、売上高レンジが高くなるにつれて、アクセス人数は大きくなっている。一方で売上高の比率は以前は減少傾向が見られたが、ほぼ横ばいに近い傾向が今期については見られる。
売上高の高いショップではスマホでの露出が成功しており、多くのアクセスを獲得することが出来ているのは間違いないようだ。
続いて、コンバージョンレート(CVR・転換率)、客単価、平均PV数を見ていく。
全般的に売上高レンジの低いショップが最も高い値を示し、徐々に売上高レンジが上がるにつれて低くなっていることがわかる。売上高レンジが低いショップについては、一度来訪してしまえば、PCサイトよりもスマホサイトの方が多くのページを閲覧して購入に至る可能性が高いということを示している。また逆に売上高レンジが高いショップについては、コンバージョンレートは47%と最も売上高レンジが低いショップの6割程度の成果しか出ていない。これはスマホサイトの対策をしっかりとしていないわけではなく、スマホサイトの露出がそれ以上にしっかり行われており、物色ユーザーが興味のある商品をパッと確認して帰っていく、という傾向が強いのではないかと推測される。いずれにせよ売上高レンジが低いショップは、よりスマホサイトへの集客をしっかり行うなどのサイト運営に力をしっかり注いでいくことで、サイト全体の成果に繋がる余地があると考えられる。
取り扱い商品カテゴリ別
最後はショップで取り扱っている商品カテゴリによる違いを見ていく。ここでは、美容・健康、アパレル、食品、その他の商品の4カテゴリに大別した。2013年から引き続き、美容・健康、アパレル商材ではスマホとの親和性が非常に高くなっており、高い値を示している。
アパレル商材では引き続きアクセスの80%弱、売上の65%弱がスマホユーザーによるものとなっている。しかし一方で値の低い食品とその他の商材についても、前回の調査時と比較し5ポイント程度アクセスも売上高も向上しており、スマホ活用は順調に浸透していっているといえるだろう。
続いて、コンバージョンレート(CVR・転換率)、客単価、平均PV数を見ていく。
客単価、平均PV数には取り扱い商品カテゴリにより違いは見られないが、コンバージョンレートについては、一定の傾向が見られる。2015年上期よりも差は詰まってきているが、引き続き美容健康が高い値となっており、その他商材が一番低い値となっている。また、半年前と比較し、美容健康は7.1ポイント、食品では11ポイント改善したものの、アパレルでは7.8ポイント減少しているようだ。
まとめ - ユーザーの71%、売上の49%がスマホ経由に
以上のことから、2015年下半期のスマホ×ECのトレンドは以下のようにまとめられる。
- 依然としてeコマースにおけるスマートフォンの活用は半年前と比較し、売上高で14%、アクセス人数で18%という割合で伸びているが、伸びは鈍化している。
- ECサイトの売上の50%弱はスマホ経由で行われ、アクセスするユーザーの70%強はスマホでアクセスしている。
- 売上高とアクセス人数のスマートフォン割合の差は年を追うごとに僅かではあるが広がっている
- スマホでのコンバージョンレートはPCより減少傾向にあり、売上を稼ぐ店舗におけるサイトの役割がモノを売るだけでなくコンテンツを提供するというスタイルにシフトしつつある傾向が出てきている
- 今年の6月末頃までにはそこまで大きな伸びは見込めず、アクセス人数の75%前後、売上高の52~54%程度がスマートフォン経由で行われると推定される
- 楽天より独自ドメインの店舗の方が、スマホによる売上・アクセスが大きいが、コンバージョンレート・客単価・平均PV数は楽天の店舗の方が高い値となっているが、楽天のスマホ向け対策に改善傾向が見られる
- 美容・健康、アパレルではスマホとの親和性が非常に高く、アパレル商材では引き続きアクセスの80%弱、売上の65%弱がスマホユーザーによるもの
スマホ×ECのトレンドデータは、今年は半年に一回程度の割合で報告していく。