スマートフォン×EC 2015年上半期トレンドデータ速報
今年2015年3月末時点での、携帯電話所有者の中のスマートフォン保有率は62.5%(MMD研究所調べ)となり、スマートフォン保有者の65%(博報堂DYホールディングス調べ)がスマートフォンでECを利用していると言われている。また2014年下半期の弊社調べのデータにおいてもECサイトにおけるスマートフォンユーザーの割合は6割を越えるなど、もはやEC運営において最も重要なデバイスとなったスマートフォン。今回も2015年上半期(1月~6月末)のスマートフォンのEC活用のトレンドデータを速報値として、 弊社EC向けアクセス解析~自動課題判定~施策提案ASPサービスSHOPNOTEから確認していきます。
<過去のレポート>
【スマホ×ECトレンドデータまとめ】2014年下半期速報 - スマホユーザーの割合が6割を超える
【スマホ×ECトレンドデータまとめ】2014年上半期速報 - 遂にスマホユーザーの割合が半数を超える
ECにおけるスマホ活用実態を5指標×4切り口の豊富な生データで徹底解剖
ECサイトにおける最も重要なデバイスの地位を昨年PCから奪い取ったスマートフォン。この波が2015年上半期も引き続き伸びているのか。この半年のデータを、来訪者数・ 売上高・転換率・客単価・平均PV数の5つ主要各指標について、4半期毎の時系列・出店形態別(楽天と本店)・売上高レンジ別・取り扱い商品レンジ毎の4 つの切り口から見ていきます。
時系列
既に2014年下半期にスマートフォンユーザーのアクセス割合が60%を超えていたが、新鮮な2015年の1月~6月のデータをみると、アクセスの67%以上がスマートフォンからのものとなっており、ほぼ10人に7人がスマートフォンでECサイトにアクセスをしていることになる。
上の図は売上高(ブルー)とアクセス人数(ピンク)について、全体数に対するスマートフォンユーザーの割合を時系列に並べたものだ。直近の4半期(4月~6月)の売上高は半年前と比べて約4.5ポイント増の46.1%、アクセス人数は同じく半年前と比べてこちらは何と約9.8ポイント増の67.5%となっており、共に大きく伸びていることが分かった。
2015年6月末時点でECサイトの売上の45%強はスマホ経由で行われ、アクセスするユーザーの70%弱はスマホでアクセスしているということを示している。アクセス数は鈍化することなく勢いそのままに伸びてきているが、売上高は少し伸びが鈍化してきているようだ。また売上高とアクセス人数のスマートフォン割合の差は年を追うごとに広がっていることは興味深い。このことはオンラインで購入意思がなくても、実店舗や他の媒体などで気になる商品があっ
た場合に、スマホで商品チェックを行うという行動が浸透しつつあることも無関係ではないだろう。また、スマホでの決済が面倒なため、買い物カゴに入れた商品を決済する際にPCを使う、という購買行動を取るユーザーが増えてきて、スマホとPCのECの購買活動における役割分担が行われているのかもしれない。
このデータから分かるように、ECサイトを運営する際には、PCサイトよりもスマホサイトを優先的に考えたスタイルに今すぐにでも変更する必要があるといえよう。
また、1年前の2014年上半期のデータと比較すると売上高で15%、アクセス人数で28%という増加率でスマートフォンの活用が伸びているが、その増加率は徐々に鈍ってきていることもわかる。
続いて、その他のeコマースの主要指標と言える、コンバージョンレート(CVR・転換率)、客単価、平均PV数を見ていく。こちらは、PCユーザーの値に対するスマートフォンユーザーの値の割合で見ていく。
平均PV数はこの1年間も若干ではあるが増加を続けているが、客単価は横ばい、コンバージョンレートは大きく減少と いう結果となった。直近の4半期(4月~6月)のコンバージョンレートは半年前と比べて約14.8ポイント減の55.3%、平均PV数は同じく半年前と 比べて約2.7ポイント増の95.2%となっている。(この値が分かりにくいかもしれないが、例えばPCユーザーのコンバージョンレートが2.0%のサイ トにおいて、スマートフォンユーザーのコンバージョンレートがその55.3%の1.11%であるということを意味している。)
客単価の割合はほぼ頭打ちの傾向が続いており、PCとスマホではPCの方が客単価が20%程度高いという状態が一般的といえるだろう。平均PV数の割合も増加はしているものの伸びは鈍化しておりPCとスマホではPCの方が5%程度多くのページを見る可能性が高い状態で落ち着いてきているのではないだろうか。逆にコンバージョンレートは2014年の第二四半期をピークに減少傾向が顕著であり、商品の“物色”はスマホで行い購買はPCで行うという住み分けをしていることが推測される。このことが、売上高の比率とアクセス人数の比率の差が拡大している原因となっている。
全体としてみると2015年上半期においてもECサイトにおけるスマートフォン活用は継続的に増加していることとなり、アクセス数は依然として大きく伸び続けている ものの、コンバージョンレートの割合の減少と共に、売上高の伸びは鈍化してきているようだ。弊社による今後の見通しとしては今年の年末までにはそこまで大きな伸びは見込めず、アクセス人数の70%強、売上高の50%弱がスマートフォン経由で行われるのではないだろうか。
出店形態別(楽天と本店)
2015年上半期のデータをいくつかの切り口で見ていく。まずは出店形態による違いを確認するために、楽天か、それ以外の独自店舗(本店)での比較をしていく。本店のデータはGoogle Analyticsが導入されている店舗のデータとなる。
売上高は10.8ポイント、アクセス人数は25.7ポイント、楽天よりも本店の方が良いというデータとなっている。この差は2014年下期の差より共に広がっており、アクセス人数は非常に大きな差となっていることがわかる。ここまでの差が広がると、楽天はスマホユーザーの集客がそれほど上手ではないという結果とも受け取れる。
続いて、コンバージョンレート(CVR・転換率)、客単価、平均PV数を見ていく。
こ ちらも2013年から傾向は変わらず、売上高・アクセス人数とは逆の傾向となり、本店より楽天の方が数値が高くなっていることが分かる。コンバージョンレートは15.7ポイント、客単価は8.1ポイント、平均PV数は16.5イントいずれも楽天の方が高い数値となっている。また、その差は2014年下期よりも広がっている。このことは本店の方が楽天よりスマホでのアクセスが多いものの、スマホ画面は楽天の方が使いやすいため、楽天ではしっかりとスマホでも購買に結び付けることが出来ているといえる。
売上高レンジ別
ショップの売上高レンジ(月間売上高)による違いを見てみよう。2014年下半期のデータと同じ傾向となり、売上高レンジが高くなるにつれて、アクセス人数は大きくなるものの、売上高の比率は徐々に減っている。
売上高の高いショップではスマホでの露出が成功しており、多くのアクセスを獲得することが出来ているが、売上へとそれほど繋がっていないことが読み取れる。
続いて、コンバージョンレート(CVR・転換率)、客単価、平均PV数を見ていく。
客単価についてはそれほど明確な傾向は見られない。しかしコンバージョンレートと平均PV数は売上高レンジの低いショップが最も高い値を示し、徐々に売上高レンジが上がるにつれて低くなっていることがわかる。特に売上高レンジが低いショップについては100%超える値を示しており、PCサイトよりもスマホサイトの方が多くのページを閲覧して購入に至る可能性が高いということを示している。また逆に売上高レンジが高いショップについては、コンバージョンレートは41%と半分以下の成果しか出ていない。これは先ほども述べたが、スマホサイトの対策をしっかりとなされていないわけではなく、スマホサイトの露出もしっかり行われており、物色ユーザーが興味のある商品をパッと確認して帰っていく、という傾向が強いのではないかと推測される。いずれにせよ売上高レンジが低いレンジのショップは、よりスマホサイトへの集客をしっかり行うなどのサイト運営に力をしっかり注いでいくことで、サイト全体の成果に繋がる余地があると考えられる。
取り扱い商品カテゴリ別
最後はショップで取り扱っている商品カテゴリによる違いを見ていく。ここでは、美容・健康、アパレル、食品、その他の商品の4カテゴリに大別した。2013年から引き続き、美容・健康、アパレル商材ではスマホとの親和性が非常に高くなっており、高い値を示している。
アパレル商材では遂にアクセスの80%、売上の60%がスマホユーザーによるものとなっている。しかし一方で値の低い食品とその他の商材についても、前回の調査時と比較しアクセスも売上高も大幅に向上しており、一気にスマホ活用が進んだといえるだろう。
続いて、コンバージョンレート(CVR・転換率)、客単価、平均PV数を見ていく。
客単価、平均PV数には取り扱い商品カテゴリにより違いは見られないが、コンバージョンレートについては、一定の傾向が見られる。2014年下期よりも差は詰まってきているが、引き続き美容健康が高い値となっており、その他商材が一番低い値となっている。
まとめ - ユーザーの67%、売上の46%がスマホ経由に
以上のことから、2015年上半期のスマホ×ECのトレンドは以下のようにまとめられる。
- 依然としてeコマースにおけるスマートフォンの活用は伸び続けているが、伸びは鈍化している。
- ECサイトの売上の45%強はスマホ経由で行われ、アクセスするユーザーの70%弱はスマホでアクセスしている。
- 売上高とアクセス人数のスマートフォン割合の差は年を追うごとに広がっている
- スマホでのコンバージョンレートはPCより減少傾向にあり、ユーザーがスマホは“物色”、PCで購買というような役割を分けている傾向が出てきている
- 今年の年末までにはそこまで大きな伸びは見込めず、アクセス人数の70%強、売上高の50%弱がスマートフォン経由で行われると推定される
- 楽天より独自ドメインの店舗の方が、スマホによる売上・アクセスが大きいが、コンバージョンレート・客単価・平均PV数は楽天の店舗の方が高い値となっている。
- 美容・健康、アパレルではスマホとの親和性が非常に高く、アパレル商材では遂にアクセスの80%、売上の60%がスマホユーザーによるもの
スマホ×ECのトレンドデータは、今年は半年に一回程度の割合で報告していく。