この記事はEvan Magliocca氏の寄稿により、小売業者は消費者のロイヤルティにどのようにアプローチするべきかを説明している。その信念、ロイヤルティを得るにはまず「与えること」だ、の真意を解説していく。

マーケティング担当者は、技術プラットフォームの改善やマーケティングキャンペーンによって、ロイヤルティを獲得できると考える。ロイヤルティは高収益を生み出すために不可欠なものであり、手段。しかし、さらにそれよりもずっと重要なものなのだ。ロイヤルティを反復的に向上させることにより、ビジネスのあらゆる面に浸透する理念となる。

 

企業は、顧客からのロイヤルティを求め、熱心にそれを追いかける。しかし、何かを得るためにはまず、「自らが一歩を踏み出さなければならない」ということに気付くマーケティング担当者はほとんどいないだろう。マーケティング担当者は、顧客に見返りを期待する前に、顧客に対するロイヤルティを証明しなければならないのだ。

 

ロイヤルティ獲得は、長い道のりだ。ブランドはロイヤルティを獲得することにより、この10年間、生き残ってきた。ロイヤルティを獲得できたブランドは、40%、50%、60%オフなどの割引価格で商品を販売せずに済んだ。価格を引き上げたければロイヤルティを培えばよい。積極的な顧客を求めるなら、ロイヤルティを育めばよい。着実な顧客基盤を確立するためには、やはりロイヤルティを築くことなのだ。

 

ロイヤルティを獲得していれば、事業が苦しい時を乗り越えることができ、好調な時はさらなる成功を収めることができるだろう。そして着実な顧客基盤を持つことで、シーズン毎の売上の変動を多少なりとも軽減することが可能なのだ。

 

アクションは言葉より多くを語る

「私が言ったように行動し、私がするように行動してはいけない」。これは、多くのブランドリーダーのモットーとなってしまっている。しかし、ロイヤルティを効果的に向上させるには、リーダーによるサポート、後援、積極的な指導が重要となる。有効なロイヤルティ獲得には、ブランドの顧客に対する考え方を変えるための幅広いサポートが必要なのだ。

ブランドは現存するエコシステムであり、そこには常に官僚的制度と派閥は存在する。しかし、改革プログラムの発案者の役職が高ければ高いほど、ロイヤルティ獲得という同じ目標を達成するために社員を一丸にすることができる可能性も高くなる。経営幹部レベルは、ブランドの考え方を変え、組織全体において「顧客を第一に考える」という雰囲気を作り出すためのプログラム実行を優先させなければならない。

 

マーケティング担当者の発想の転換

マーケティング担当者は、数字のみに焦点をあてた部門間の派閥的な発想に引き込まれる。各部門には担当するチャネル毎のKPI(重要業績評価指標)と目標があり、短期間で目標を達成しようと顧客を食い合ったり、顧客に損害を与えてしまったりすることもある。ひどい顧客体験を提供する結果となり、いずれにしてもいかに顧客基盤を軽視するブランドであるかを露呈してしまうことが多い。

割引キャンペーンの適用条件に関する説明は、まるで小説のように長く、顧客サービスの側面で考えるとまるで悪夢のような状態だ。すでに顧客データは取得されているはずだが、これらが顧客の利益のために使われることはない。出荷には時間がかかり、配送料金が高い。このように、顧客に「自分たちが軽視されている」と感じさせてしまう無数の要員が存在する。だが、前述の兆候は、数字の罠に落ちたブランドに頻繁に見られるものであり、彼らは「木を見て森を見ず」(目の前のことに捉われ、全体を見失うこと)である。

各部門が個々のKPIを追求するために生じる問題を避ける簡単な方法の1つは、すべての部門が推進する最重要KPIを設定することだ。四半期ごとに変更しても問題はないが、部門間の摩擦によって顧客体験の質を悪化させるのを避けるため、全部門にわたって一貫した1つのKPIが存在しなければならない。

全部門が一丸となって問題を解決し、特定の顧客体験を向上させ、変化を推進すべきである。

 

店舗は依然として重要

 

現在、顧客体験について論じられる場合は、ほぼデジタル環境についてのみ考えられている。顧客の期待は、顧客が費やす時間や労力、リソースなどの投資次第だ。

デジタル環境では、顧客側はほとんど投資する必要がない。だからこそ誰もが頻繁にネットを閲覧する。しかし実際に店舗へ行くとなると、かなりの時間と労力を必要とする。オンライン体験は非常にシームレスになる一方で、店舗体験はますます遅れをとっているのである。

店舗部門は今までの考えを顧客中心に変え、来店を促すための投資を行うことを検討する必要がある。顧客の来店行動を認知して報酬を提供する店舗には、顧客は繰り返し来店し、顧客のブランド感情を高めるだろう。一方、店舗体験が不満足な場合、または平凡であった場合でさえ、ブランド全体をさらに傷つけることになる。顧客は、デジタルよりも店舗来店プロセスへ多くの投資をしたにも関わらず、期待を裏切られていると感じるためである。

 

顧客中心の文化

大規模な顧客基盤に対応するのは難しい。その点では、小規模専門小売店が有利である。小規模レベルでコントロールする方が簡単だからだ。顧客に焦点をあて、彼らにできる限り最高の体験を提供するために企業文化を変えることを、ブランドの最重要事項としなければなければならない。

顧客の感情やロイヤルティを高めるために必要な体験やキャンペーン、サービスを開発するには、考え方の転換が必要だ。そして、顧客からのロイヤルティを求めるなら、まず顧客に対するロイヤルティを示す必要があるということである。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の6/25公開の記事を翻訳・補足したものです。