AI検索によって、オーディエンスがブランドを発見する方法は変わりつつある。訪問数は減少するが、真正性が求められ、量よりも独創性が評価される、より価値の高い訪問を生み出している。
AIは、オーディエンスがブランドを発見し、関与する方法を変えつつある。検索結果がクリックされる機会は減っているものの、それらはファネルの下流で発生するため、より質が高く、コンバージョンに至る可能性は格段に高い。マーケターにとって、この変化は課題であると同時に、稀有な機会でもある。
「CMO(最高マーケティング責任者)は毎日、脅威と機会の両方を口にしている」と語るのは、米国のビジュアルWebデザインおよびCMS(コンテンツ管理システム)プラットフォームWebflowのチーフエバンジェリスト(ITや最新のテクノロジーをわかりやすく伝え、啓蒙する役割)であるGuy Yalif氏だ。「以前は、SEOといえばトラフィックがすべてだったが、今では時間をかけて作り上げた言葉を再編し、再構築された要素が重要になっている。この変化は、人々がブランドを発見する方法だけでなく、ブランドストーリーを描き出す方法までも変えるのだ」。
大規模言語モデル(LLM)は、すでにサイトのトラフィックを再形成している。Yalif氏は、Webflow上のボットトラフィックの2番目に大きな発生源はLLMであり、検索エンジンに次ぐ規模である、と述べた。一方で、Googleはこの傾向を軽視しているが、Webflowのデータでは「緩やかなトラフィックの減少」を示している。自社や競合サイトの調査、分析ができるSEO対策ツールを提供するSemrushはさらに踏み込んで、AI駆動型検索が3年以内に従来の検索を追い越すと予測している。
本質は、トラフィックの発生源ではなく、何が評価されるかにある。Yalif氏が「E-A-T++」と呼んでいる新しいアルゴリズムの指示は、一次情報に基づく専門知識、独自の視点、本物の体験を好む。これが、フィルタリングされていない会話が交わされる掲示板型コミュニティサイトRedditが、WikipediaとAmazonに次いでGoogleで3番目に引用されるドメインとなった理由を説明している。しかし、マーケターがRedditを利用するには慎重さが求められる。
Redditに潜む危険
米国に本社を置き、AIや機械学習を活用したマーケティング分析コンサルティング会社、TrustInsightのチーフデータサイエンティスト兼共同創業者であるChris Penn氏は、次のように率直に語った。「特にあなたがマーケターで、その意図が見え透いている場合、Redditは非常に容赦のない場所になる可能性がある。Redditは商業目的の投稿を激しく嫌う。これこそAIが頻繁にRedditを情報源として利用する理由の一つなのである。Redditユーザーは概して、我々マーケターを追い払おうとするが、それは正しい判断だ。なぜなら我々の意図は価値を奪うことであって、与えることではないからだ」。
ブランドにとって、これは次の課題が浮き彫りになっている。つまりオーディエンスは、フィルターのかかっていない真正性を求めるチャネルへと移行しており、従来のSEO(検索エンジン最適化)戦略はもはや通用しないのだ。
全体的なトラフィック量は横ばい傾向にある一方、AI検索経由で流入するトラフィックははるかに高い価値を示している。Yalif氏は、Googleの平均的な検索クエリが4語であるのに対し、LLMのプロンプトの平均は現在23語であり、増加傾向にあると指摘した。そのクエリの深さは、より強い文脈とより明確な購買意図を示している。AIの対話的性質により、ユーザーはWebサイトにアクセスする前に自ら学習し、事前に絞り込みを行う。B2B領域ではこの変化がさらに明白で、現在では大多数の購買担当者がベンダーの選定、情報収集、意思決定プロセスの構築に生成AIを活用している。
その効果は劇的だ。Ahrefs(SEO・WEBマーケティング分析ツールを開発、提供する。本社はシンガポール)の報告によると、AI検索からの訪問者のコンバージョン率は、従来のオーガニックトラフィックの23倍である。過去30日間において、AhrefsのAI検索経由の訪問者は1%未満だが、新規登録全体の12%以上を占めている。Semrushの調査でも、AI検索からの訪問者は平均ページ閲覧数が50%多く、その価値は4倍以上高いことが判明している。Webflowでは、既に新規登録の8%がAI検索経由で発生しており、他のどのチャネルをも常に上回る実績を上げている。これはもはや「量」のではなく、「価値」の問題なのだ。
関連性が最も重要
特にB2Bの購買担当者には、リーチより関連性が重要だ。Yalif氏は「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」方式の戦術には警鐘を鳴らしている。Webサイトのようなオウンドメディアでは特に、体験をもっと個別にカスタマイズしなければならないと強調する。
Yalif氏にとって、ブランドの構築、価値の提供、収益の拡大といったマーケティングの仕事は変わっていない。変わったのはツールキットだ。AIはマーケターの仕事に置き換えるのではなく、研ぎ澄ますために使用すべきである。思考を外注することなく、ブランドボイスを洗練させ、アイディアを検証し、迅速に実行する。しかしリスクもある。幻覚、「イエスマン」的回答、正確性の欠如といった問題から守る手段が必要である。最先端のチームはすでに、AIを誠実に機能させるためのプロンプトを強化し始めている。
「課題のひとつは、私たちマーケターが皆、同じようなことを言ってしまうことだ」とYalif氏は語った。「私たちは皆、最高で、最多、最速な、所謂『リーダー』である。しかし、独自の視点、ユニークなデータ、個性的な切り口の価値は、かつてないほど高まっている。そしてブランドは、1年前よりも今日の方がより重要である。なぜなら、それは新たな検索の世界において目立ち、差別化を図る上で大きな要素だからだ」。
だが強調すべきは、変化が叫ばれているにもかかわらず、マーケティングの核心的な仕事は変わらないという点である。結局のところ、見込み客にとって価値ある存在となることで、ブランドを構築し、収益を生み出すことが今もマーケティングの本質である。
まるで一卵性双生児
「SEOやGEO(生成エンジン最適化)は、マーケターの仕事を達成するための新しい機能にすぎない」とYalif氏は語る。「GEOはSEOから根本的に逸脱するものではない。両者は同一のものではないが、かなり似ている」。
Web上にAIが生成したコンテンツを氾濫させたいという誘惑は実際に存在するが、それは誤った考えだ。現在、Googleにインデックスされているコンテンツのうち、完全にAI生成されたものは9%しかない。残りは人間によるものか、人間が助力しているコンテンツである。というのも、独創性、視点、編集上の監督といった要素は依然として重要であるためだ。勝者となるマーケターとは、膨大な処理をこなすAIの力と人間の判断力を組み合わせて、AIが理解でき、なおかつ人間が実際に読みたいと思える質の高いコンテンツを生み出す人たちなのだ。
マーケターの使命はシンプルだ。AIを代替手段としてではなく、増幅器として扱うことだ。勝者は、コンテンツを大量に垂れ流すブランドではなく、AI時代の市場で最も意味のあるコンテンツを創造するブランドなのだ。