広がりを見せるフリマアプリ市場 - 「テーマ型フリマ」で独自のポジションを築く
フリルやメルカリ、ラクマなど多くのサービスがひしめき合っているフリマアプリ市場。日本初のフリマアプリであるフリルの誕生から3年が経過したが、現在も様々なフリマアプリが生き残りをかけてサービス拡大に尽力している。そんな中、一風変わった「テーマ型フリマアプリ」が次々と登場している。特定のテーマやジャンルに特化したテーマ型フリマは、群雄割拠のフリマアプリ市場で独自のポジションを築いていけるのだろうか。それぞれのサービスを紹介しながら詳しく見ていく。
<参考>
フリマアプリで気軽にモノを売る - フリル、メルカリ、STULIOは群雄割拠のC2Cコマースの勝者に成り得るのか
レッドオーシャンと化したフリマアプリ市場へ参入してきた「ラクマ」は生き残ることができるのか
MOTTAINAIマーケット
不要になった物やハンドメイド作品をスマホで簡単に売買できるフリマアプリ「MOTTAINAIマーケット」。
同アプリが数あるフリマアプリと一線を画しているのは、リアルな活動から生まれたサービスだということ。東京近郊で「新しいモノの再循環のカタチ」として毎週末開催されている「MOTTAINAIフリーマーケット」と「MOTTAINAIてづくり市」をもっと気軽に体感してもらうべく、今夏からアプリの提供を始めた。取り扱いアイテムはレディース、メンズ、ベビー/キッズ、インテリア/雑貨、エンタメ/ホビー、ビューティー、家電/AV/カメラ、スポーツ/レジャーなどのカテゴリに分けられており、iPhoneから赤ちゃん用のスタイ、アーティストのツアーグッズまで、あらゆる商品がタイムラインに並ぶ。ハンドメイド品にはハサミのアイコンが付けられているため、利用者はひと目で見分けが付く仕組みだ。アプリ内にはMOTTAINAI公式カテゴリも用意されており、ここではイベント会場に持ち込まれた商品や、MOTTAINAI事務局に送られてきた商品が販売されている。こういった試みも、リアルイベントを母体とする同アプリならではの特徴と言えるだろう。機能的には、お気に入りの出品者をフォローしたり、いいねを付けたり、商品に対するコメントを投稿して出品者とやり取りできるなど、他のフリマアプリとさほど変わらない。また、利用料金に関しても他のフリマアプリと同様で、登録料・出品料・月額費用は無料、商品が売れた時のみ販売価格の10%が販売手数料として徴収される仕組みだ。
もともとは、ノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイ氏が2005年に来日した際に「もったいない」という日本語に感銘を受けたことがきっかけで始まった「MOTTAINAIキャンペーン」。日本では毎日新聞と伊藤忠商事がキャンペーンを運営しており、同アプリの収益の一部はケニアの植林活動に寄付される。
golfpot
今年始めにギークス株式会社がローンチしたゴルフ用品専門フリマアプリ「golfpot(ゴルフポット)」。
競技人口の減少が問題になっているゴルフ業界を再び活性化させたいという思いから開発された同アプリは、ゴルフクラブを中心に、ゴルフウェア、小物類、練習器具などゴルフに関連するあらゆる商品を取り扱う。golfpotの一番の特徴は、衣類などと違って扱いづらいサイズであるゴルフクラブに特化したサービスだろう。例えば、出品する際にはあらかじめ設定された枠内に収まるように撮影するだけで、簡単に見栄えの良いカットが撮れる撮影アシスト機能を設けた。アシスト機能では撮影箇所も指定されるため、購入者が比較したい部分が画像上で確認でき、双方にメリットがあるというわけだ。商品には「初心者向け」や「ハードヒッター向け」といったタグが付けられているので、目的に合った商品が見つけやすくなっている。また最近では、golfpot配送サービスも開始。全国一律料金で配送できる定額配送や(箱付きは2,000円、箱が不要な場合は1,400円)、希望日にゴルフクラブ専用の配送用ボックスを運営側が届けてくれるといった充実の内容となっている。他にも個人情報を開示せずに取引が可能になるなど、利用者の負担が大幅に軽減された。同サービスの責任者はもともとオークションサイトやフリマアプリを利用してゴルフクラブの売買を行っていたそうで、その時に感じたさまざまな経験が生かされているのだろう。サービス開始から2カ月で2,000点以上の出品があり、アプリは6月末時点で1万ダウンロードを突破。同社はゴルフ未経験者における意向比率が最も高いと言われる20代に向けて、今後もさらなるアプローチを行っていく予定だ。
KURURi
電子書籍アプリや家計簿アプリなど、昨今はアプリの提供にも力を入れている大日本印刷が、7月からサービスを開始した「KURURi(クルリ)」。
KURURiはスポーツ用品やアウトドア用品を中心に扱う「趣味を楽しむ大人のためのフリマアプリ」で、買い手が欲しいものを「リクエスト」として投稿し、売り手はそれを参考に自分が売りたい商品を写真や紹介文などを付けて「アピール」する仕組みだ。リクエスト投稿に対して出品者がアピール投稿を行うため、通常のフリマアプリに比べて効率良く売買が成立。仮に欲しいアイテムが決まっていなくても、「登山初心者に必要なアイテムが分からないので、何でもいいのでアピールしてください」といった投稿を行えば、それに対して出品者がさまざまなアドバイスと共に商品提案をしてくれる。売り手がアピールした物は、リクエストをした人以外の利用者も購入が可能。出品は無料で、売買が成立した場合のみ販売価格の10%が手数料として発生する。主な機能はキーワードから商品を検索できる「検索機能」、商品に対するコメントの投稿やお気に入り登録ができる「コミュニケーション機能」、ステータス管理が可能な「マイページ機能」、取引に関する重要情報を通知する「お知らせ機能」などで、通常のフリマアプリに用意されているようなものはすべて揃っている。10月にはアンドロイド版の配信が開始されるKURURi。大日本印刷は、2017年度までの累計で10億円の売上を目指すとしている。
規模を拡大する「テーマ型フリマ」はフリマアプリ市場に根付くことができるのか
多くの既存フリマアプリはヤフオクと対抗すべく「手軽さ」を追求することでシェアを拡大してきた。一方で今回取り上げたテーマ型フリマは、あえて出品できるジャンルを限定することで、他のフリマアプリと違うポジションを確立すべく模索している。
「MOTTAINAIマーケット」は「モノの再循環」というテーマを掲げてリアルのフリーマーケットと連動しながら、ハンドメイドECや古着ECといった要素を含めた新しいフリマアプリの形を提案している。golfpotは中古品のやりとりが難しいゴルフ用品に特化し、取引や配送のサポート体制を用意することでゴルフ専門フリマという新市場を開拓している。KURURiは「趣味を楽しむ大人のためのフリマアプリ」というテーマのもと、出品者と買い手のマッチング機能を導入しながら、スポーツ用品やアウトドア用品に焦点を絞ってサービスを提供している。
このようにこれらのテーマ型アプリは、明確なテーマを提示することによって他のフリマアプリとの差別化を行っている。独自テーマに限定したサービスを展開することで、大手フリマアプリが武器としている利用者数や出品数・手数料の手頃さなどと対抗することができるからだ。いわゆる「隙間産業」的なテーマ型フリマアプリは、そのテーマ次第で今後も新たなニーズを作り出すことが可能だろう。次はどんなユニークなフリマアプリが誕生するのか、そしてそれらは既存のフリマアプリのようにユーザーの指示を集めることができるのか、その動向に注目していきたい。