米国の自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリ会社Uberは2016年12月5日(月)、人工知能分野のスタートアップGeometric Intelligence社を買収したと発表。自律運転技術分野で業界内の存在感を高める狙いだ。
新しく誕生するAI(人工知能、以下AI)ビジネスのトップには、Geometric Intelligence社CEOのGary Marcus氏が就任予定。最高製品責任者のJeff Holden氏によるとMarcus氏は、人工知能と機械学習を専門に調査をする「Uber AI Labs」を開設するとのこと。
Uber AI LabsにはGeometric Intelligence社の15名が所属し、今後メンバーを追加雇用する方向。
ニューヨーク大学の開発
マンハッタンにあるニューヨーク大学で心理学と神経科学の教授をしていたMarcus氏は2014年、ケンブリッジ大学の機械学習教授Zoubin Ghahramani氏とセントラルフロリダ大学の計算機科学教授Kenneth Stanley氏、ニューヨーク大学の神経言語学科卒業Douglas Bemis博士らと共にGeometric Intelligence社を設立した。これは、Tandon School of EngineeringとNew York City Data Future Labsとのパートナーシップを結ぶニューヨーク大学の新事業創出支援によって生まれたもの。
UberのHolden氏はAIと機械学習について、「自動車のルート検索を始め、レストランのデリバリーサービスUberEATSでの注文や、相乗りサービスUberPOOLの利用など、様々なシーンで企業を支援するだろう」と語る。これらは新しいタイプのロボット開発や、自律走行技術を使って世界を案内する自動運転機、混雑する飛行空域で空路を案内する技術の可能性も。
Uberはこの買収の条件については開示していないが、買収により自律運転技術は更なる進歩を遂げることは明らか。現にピッツバーグでは、自律走行車が実際の状況下でいかに乗客を効率よく運搬できるかのテストを試験的に始めている。
自律運転車の需要
「Uberの究極の目標は、世界市場に向けた巨大な自走車艦隊をつくることだ」と、自動車販売会社Kelley Blue Book社編集長のKarl Brauer氏。「これらの乗りものが集める大量のデータ処理はAIの進歩なしでは不可能」と語る。更に、「機械学習は実際の状況下で自律運転車が走るのに必要な技術。しかしUberは安全性以上のものを追求している」と指摘。
南フロリダ大学の都市交通研究センターでモビリティ対策の研究所長であるSteven Polzin氏はAIを、自律運転車を安全に使うための「重大要素」と言う。交通事故死は1億マイル毎に測定するが、1億マイル当たり死亡者は1全体で1.15人。しかし自律運転技術は、まだまだこのレベルには程遠い。
加えて「Uberは、運転手にサービスの向上を頼るのには限界があると悟っている。ましてや景気が回復し雇用が拡大すれば、運転手を見つけるのがますます難しくなるだろう。」とPolzin氏は語る。
運転手不足は、他の要因による影響も。コロラド州の「レクリエーションを目的としたマリファナ」の合法化により、デンバー市では薬物検査に合格できるバス運転手を見つけることができなかったという事実も無視できない。
UberはCarnegie Mellon大学と共同の自律運転試験センター開発計画を発表していたが、これは失敗に終わった。残された研究者たちが、同社の試験・開発センター支援事業に手を挙げている。
<参考>
フードデリバリー「UberEATS」が新宿・四ツ谷・下北沢などにエリア拡大
【中国】さようなら、旧版“Uber”、こんにちは新“Uber China”
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の12/7公開の記事を翻訳・補足したものです。