根強い人気のサブスクリプションコマース(定期購入)の進化と最新事情
定額料金を支払い続けることで、毎月商品を受け取ることができるサブスクリプション。定期購入とも呼ばれ、雑誌からソフトウェアに至るまで様々な分野で定着している販売モデルである。2013年頃に日本でもオンライン上でのサブスクリプションコマースのトレンドがやってきて以降、しばらく経ってから若年層を中心に普及した印象だ。ライフスタイルや価値観が多様化した今、サブスクリプションも単なる定期購入の枠を超えて進化しつつある。今回は国内・海外・事業者向けの各サービスを紹介する中でサブスクリプションコマースの最新事情を掘り下げながら、その進化の流れを追ってみる。
<参考>
【2021年版】サブスクリプションサービスランキング ― サブスクリプションの定義から紐解いた評価軸に基づく、国内25のサブスクリプションサービスの評価
サブスクリプションコマースとは?
サブスクリプションコマースとは、毎月一定額の料金を支払うことで、ネットショップのオススメ商品が届く定期購入型の販売モデルのことである。2011年頃からアメリカを中心に注目を集めるようになり、「サブスクリプション」や「サブスク」とも呼ばれている。しかしながら、国内でも定期購入やリピート通販、頒布会などの名称で以前から存在しており、実は販売モデルとしては別段新しいものではない。考え方自体は前からあったサブスクリプションが、どのように進化し、人々の生活に浸透するに至ったのだろうか。
進化しているサブスクリプションコマース
インターネットが生活の一部となった反面、ECサイトは膨大な数の商品で溢れ、今や自分の嗜好に合う商品を見つけることに苦労する消費者も少なくない。そこで従来の定期購入の枠を越え、「選ぶ苦しみ」から解放されることを主軸に進化を遂げたのが、現在のサブスクリプションコマースである。2011年頃にアメリカで火が付き、翌年には国内でも様々なサービスがスタートした。化粧品から食品まで、その道の目利きたちが厳選した上質で付加価値の高い商品を、定期購入と同様の形で手に入れることが可能となったのだ。
これまでも千趣会やフェリシモなどのカタログ通販事業者が同様のサービスを提供していたが、近年におけるFacebookやTwitterといったSNSの台頭、そしてライフスタイルにこだわりを持つ消費者が増えたことにより、サブスクリプションの仕組みはさらに多様化してきている。例えば、一昔前であれば商品の売買のみでショップと消費者のつながりが保たれていたが、ECサイトが生活に浸透した現在ではSNSを介した参加型イベントなど商品を通してエンゲージメントを高める画期的な試みが広く行われ、商品以外の付加価値も重要視されるようになった。また、信頼できるスペシャリストたちが顧客の趣向を把握した上で商品を選ぶため、ユーザーの期待以上の満足感が得られるという点も、サブスクリプションコマースが進化を遂げた背景のひとつといえるだろう。
サブスクリプションコマースの種類
ライフスタイルや価値観の変化とともにサブスクリプションサービスの内容も多様化し、以前のように定期購入の一言では説明しきれなくなった。Think with Googleの記事では、現在のサブスクリプションは次の9種類に分けられている。
定期購買型
いわゆる従来の定期購入に属するもので、健康食品や化粧品、新聞など、同じ商品が定期的に届くのが特長。再注文の手間を省き一定のサイクルで自動的に家に届くのがメリットで、主に消耗品や日用品で多く用いられる。
キュレーション型
ユーザーが商品を選ぶのではなく、専門家やAIがテーマごとにセレクトした商品が届くのが特長。食品や雑貨などに多く、選ぶ手間なしでプロが選んだトレンド商品が届くため、まだ見ぬ商品との新たな出会いを楽しめるメリットがある。
メンテナンス型
コピー機やウォーターサーバーなどが該当する。繰り返し使用できる本体を無償または安価で貸与し、消耗品にあたる部分を従量課金で販売するものだ。個人でも安価で業務用品質の機材を取り入れられる手軽さがメリットといえる。
長期リース型
車や高級家具などの高額商品を長期間利用できるもの。プロユースの一眼レフやブランド商品などは価格がネックとなり購入に至らないケースも少なくないが、そのような短所を解消し誰でも気軽に使えることを目的としたサービスである。
短期レンタル型
ユーザーが使いたいときに使いたい商品を利用できるもので、洋服や時計などのアイテムだけでなく、シェアオフィスなどの空間も商品として扱われる。規定の範囲内で借り放題・使い放題のサービスが多く、購入・所有することなく必要に応じて利用できるのがメリットだ。
プロモーション型
一般的に想起されるサブスクリプションや定期購入とは異なり、定期的にECサイトなどに誘導してロイヤルティーを高めることを目的とする。特定商品の無料クーポンや期間限定割引クーポンなど、サイトを訪問するごとに特典や割引を受けられるものが多い。
インストアサービス型
インターネット上ではなく、実店舗などで対面にて提供されるサービスが該当する。一例として美容室使い放題や家事代行などがあり、こちらも定額制である。これにより、ユーザーは金額を気にすることなく、好きなだけサービスを利用することができる。
オンラインサービス型
インターネット上で一定期間においてソフトウェアを利用する、レッスンを受けるなどの権利が得られるもの。Adobeのサブスクリプションなどが該当し、サービス内容は随時アップデートされるため、ユーザーは常に最新のサービスを利用することができる。
デジタルコンテンツ型
ECからは少々離れてしまうが、音楽の聴き放題、動画の見放題サービスなどが該当する。ユーザーは事業者が用意した多くのコンテンツを利用できるのがメリットだが、コンテンツ購入ではなくアクセス権を提供するという性質のため、解約するとその権利は失われ、視聴はできなくなる。
国内のサブスクリプションコマース
サブスクリプションとその種類について理解できたところで、国内のサブスクリプションコマースを紹介していく。
subsc
1965年に設立された現代経営技術研究所が提供する「subsc」は、全国のショップが厳選した商品が毎月届くサービス。
Webサイトの「何が届くか、毎月ワクワク」というキャッチコピーが示す通り、Googleの定義でいうところのキュレーション型に該当する。商品カテゴリはご当地グルメやスイーツ、コーヒーやお酒といった食品からホビー、雑貨までと幅広い。ショップや商品の数だけサブスクリプションが存在し、パンなどの日常的な食材が毎月届くものやこだわりのお茶が毎月ランダムで届くものなど、商品のバリエーションが豊富だ。価格帯は商品によって様々だが、1,000円台~5,000円台の商品がメインに取り扱われている。
また、海外のサブスクリプションは現状扱っていないものの、実際に注文した際のレポート記事を写真付きで掲載しており、サプライズを楽しむサブスクリプション自体に興味を持たせるような工夫が凝らされている。
BLOOMBOX
株式会社アイスタイルが提供する「BLOOMBOX」(旧:GLOSSYBOX)は、サンプルサイズの化粧品やコスメが毎月届くサービス。
AVEDA、CRALINS、DECLEOR、Waphytoなど500以上のブランドを取り扱っており、中にはTHE BODY SHOPや資生堂といった大手ブランドも含まれている。一般的な会員情報とは別に美容情報やライフスタイルなどのビューティープロファイルを登録することで、ユーザーに合った商品が選ばれやすくなる仕組みだ。基本となる定期継続会員プランは月々1,650円で、6カ月会員プランが8,800円、12カ月会員プランが16,500円となっている。
化粧品や美容の総合情報サイトである@cosmeと同じ企業が運営しており、会員登録には@cosme共通IDの取得が必要となる。サブスクリプションだけでなく、ECサイトの@cosme SHOPPINGや実店舗の@cosme STOREなど、美容に関する多くの事業が展開されている。
saketaku
日本酒応援団株式会社が提供する「saketaku」は、日本酒が月替わりで楽しめるサービス。
プロが厳選した希少性の高い全国1万5,000種類の日本酒のうち、ソムリエにより毎月1本が選ばれて届くようになっている。日本酒に合うおつまみや鑑定書、作り手について知ることのできる情報誌、初心者向けのウェルカムガイドなど同梱物にもこだわっており、日本酒ファンはもちろん、日本酒に詳しくないユーザーでも楽しめる工夫が凝らされている。毎月6,578円から始めることができ、2回目のお届けで全員にグラスがプレゼントされるなど、継続のフォローも手厚い印象だ。
HATCH
株式会社eightが提供する「HATCH」は、多彩な商品を扱うキュレーションストアだ。
HATCHはサブスクリプションのみを扱うサイトではなく、ECサイトの商品カテゴリの中に定期購入アイテムが存在している。従来の定期購入と一線を画すのが、一つのカテゴリに特化した商品を扱うのではなく、様々なジャンルのプロであるキュレーターが複数在籍し、そのキュレーターがおすすめ商品を提案しているという点だ。取り扱い商品にはユニークなものが多く、米やスパイスなどの食品、CD、さらにはオーダーメイドヘアケアや茶道なども商品としてラインナップされている。価格は商品によって異なり、5,000円台から16万円台とかなり幅広い。
yamory
株式会社R-proが2012年に開始した「yamory」は、非常食の定期宅配サービスだ。
半年に1回のペースで非常食が届く変わり種のサービスだが、非常食で重要となる「切らさない」「忘れない」「無駄にしない」というポイントとサブスクリプションの特長がうまくマッチしている。定期的に届くことからいざという時に賞味期限が切れてしまっているアクシデントを回避でき、趣味嗜好に関する商品が比較的多いサブスクリプションコマースにおいて実用性の高さが目立つ。また、「非常時こそ普段のおいしい食事を」というコンセプトを持ち、味気ないものではなく、普段食べ慣れたレトルト食品で構成されている。ラインナップは大人1人分2日分の2,100円、大人1人3日分の3,240円、大人1人5日分の4,860円の3種類から選ぶことが可能だ。
なお、yamoryは2021年7月現在サービス向上のため全面リニューアルを行っており、一時的にサービスを停止している。
海外のサブスクリプションコマース
引き続き、海外のサブスクリプションコマースを見ていく。
Dollar Shave Club
アメリカ・ロサンゼルスで2012年3月にスタートしたカミソリの定期購入サービス、「Dollar Shave Club(ダラーシェイブクラブ)」。
カミソリと替刃の市場は全世界で約1,280億ドルの規模だが、そのうち8割以上をP&G社のジレット・ブランドを始めとした大手企業が占めている。そこに切り込んだのがDollar Shave Clubだった。共同創設者でCEOのマイケル・デュービンが自らパロディCMに出演し、コメディ的要素を交えながら大手企業の批判をしつつ、自社ビジネスについて紹介。2012年4月にYouTubeで動画が公開されるとたちまち口コミで広がり、わずか1週間で300万回以上も再生された。同社によると、最初の2日間だけで1万2,000件の加入があったそうだ。こうして決して低価格とは言えない大手企業の製品に不満を持っていたユーザーたちは、自社製造によってマージンを省いた低コストのDollar Shave Club製カミソリ刃へと興味を持つようになったのだ。
当初は1ドル、6ドル、9ドルの3種類のカートリッジ通販から始まったDollar Shave Clubだが、現在はカミソリだけでなく男性向けのスキンケアやオーラルケア、ヘアケア商品など、カミソリを中心に多彩な商品を展開している。会員数は2016年時点で320万人にのぼり、売上は200億円以上に達したという
日本でも、株式会社OpenUpによる同様のサービス「TOKYO SHAVE CLUB」が2013年12月にスタートしたものの、2018年5月に撤退している。日本ではDollar Shave Clubのように「大企業のやり方に対抗して業界を変えよう」というメッセージ性を打ち出すこともなく、アメリカとは異なり実店舗でも手軽にカミソリを購入できる環境もあって、国内の消費者の間ではあまり浸透しなかったものと思われる。
My Little Box
フランスやベルギーを中心に、100万人が購読しているというパリ発の高感度な女性向けライフスタイル情報サイト「MY LITTLE PARIS(マイ・リトル・パリ)」。同サイトが2011年から提案しているのが、2021年7月時点で世界で15万人以上が登録しているサブライズボックス「MY LITTLE BOX(マイ・リトル・ボックス)」だ。
毎月テーマに沿ったアイテムが送られてくる定期購入ECで、日本にも2013年10月に上陸。度々メディアなどでも取り上げられているので、ご存知の方も多いのではないだろうか。
ボックスに詰められているのは、「日常にきらめきを与える」というコンセプトのもとで選ばれた雑貨やアクセサリー、コスメ、オリジナルの小冊子など。中身だけでなく、パリで活躍する日本人イラストレーターKanakoによるキュートな絵柄のボックスも人気の理由のひとつだという。雑貨はバッグやポーチ、パスポートケース、ジェルアイパッドといった実用的なものが多く、あると嬉しいアイテムが揃っている。ビューティプロダクトも充実しており、ブルガリ、イヴ・サンローラン、ジバンシイ、ニュクス、カリタ、ロクシタン、クラランス、ロレアル、ケラスターゼ、ゲランといった人気ブランドがラインナップに並ぶ。オリジナルの小冊子には、ボックスに入っているアクセサリーや雑貨の使用例のほか、パリジェンヌおすすめのレストランやショップ情報、インタビュー記事などが掲載されており、読み応え十分だ。価格は税と送料込みで3,350円。毎月ちょっとしたギフトが誰かから送られてくる、そんな感覚に喜びを覚える20~40代前半の女性たちから人気を集めている。
House Plant Box
アメリカ・カリフォルニアでスタートした観葉植物のサブスクリプション、「House Plant Box(ハウスプラントボックス)」。
販売されている観葉植物は日当たりのよいカリフォルニアの土地で栽培され、注文から到着まで最大5営業日と発送も早い。植物のサブスクリプションは土地の豊富なアメリカならではのサービスで、損傷して到着した場合に備えて30日間の保証もついている。
プラスチック製のプランターに入った観葉植物は情報カードとともに箱に収められた状態で届き、すぐに飾ることができる。Facebookのコミュニティも用意されており、植物や栽培に関する疑問などを相談可能なため、栽培初心者でも利用しやすいのが特長だ。サブスクリプションのプランはミニ屋内植物や大型屋内植物といったサイズごと、エアプラントや水生植物、サボテンなどの種類ごとに存在する。また、あらかじめテラコッタポットに鉢植えされた状態で届くものや、種の状態で土と鉢がセットで届くもの、さらには毎月でなく3カ月に1度のペースで届くプランも用意されている。価格帯は15.99ドルから99.99ドルほどで、送料は無料。大型の植物であっても送料を気にせず続けられる点も、メリットのひとつといえるだろう。
サブスクリプションコマースに適した商品とは
定期購入の枠を超え成長を続けるサブスクリプションコマースだが、どんな商材でも活用できるわけではない。基本的には定期的に消費される食品や化粧品などの消耗品と親和性が高いが、キュレーション要素を加味することで、トレンドが重視されるアパレルや雑貨などの非消耗品でも活用されるようになった。今回紹介したサービスやその他の代表的なサービスは、いずれもそのどちらかの要素を持つものに限られている。
サービス内容としては、消耗品を低コストで継続的に提供するものからこだわりの商品をセレクトして届けるものまで、国内外問わず広く展開されている。どのサービスも配達する際のボックスのデザインに力を入れており、「毎月届くちょっとした楽しみ」が演出されているようだ。例えばDollar Shave Clubであれば「毎月新品の清潔なシェーバーが届く楽しみ」、My Little Boxやsubscなら「毎月のサプライズを心待ちにする楽しみ」といった具合である。定期購入の利便性はもちろん、商品を通して消費者の日常にワクワク感を提供し続けられるかどうかが、サブスクリプションコマース成功のカギといえるだろう。
また、月額制をとることが多いファッションレンタルECや食品配達ECも、サブスクリプションコマースの一種と捉えることができる。ファッションレンタルECは他人の着用した洋服に対する抵抗が危惧されたものの、借り続けることで買い取り可能になるなどの方法を採り、「気に入った洋服は自分のものにできる」という方向でうまくメリットに転じている。
<参考>
活気づくファッションレンタルEC市場 - 各サービスはどのように差別化を図り勝機を見出していくのか
食卓のニーズにしっかり応える食品宅配EC - 歴史に裏打ちされた独自配送網と定期購入
事業者向けのサブスクリプションコマースサービス
このような特性を踏まえ、自社でサブスクリプションコマースを展開したい場合は、事業者向けのサービスを利用するのがお薦めだ。ここでは、定期購入やサブスクリプションに適したサービスをいくつか紹介する。
サブスクストア
サブスクリプション支援事業を複数展開しているテモナ株式会社が提供する「サブスクストア」(旧:たまごリピートNext)は、サブスクリプションコマースに特化したクラウドシステム。
細かな購入頻度を設定できる商品管理、定期注文作成や決済を自動化できる受注管理、定期購入に特化したステップメールなど、定期購入に必要な機能が一通り揃っている。広告媒体管理や集計分析も標準装備されており、幅広い業種で対応しやすいのが特長だ。さらに、各種メールをLINE経由で配信可能になるLINEメッセージ連携機能やNP後払いなどのオプションも、必要に応じて追加することができる。料金はスタンダードプランが初期費用69,800円の月額49,800円、専用サーバ+ASPプランのプレミアムプランが初期費用99,800円の月額79,800円となっている。また、同社では、BtoB向けの同サービスサブスクストアB2Bも提供している。
リピートPLUS
w2ソリューション株式会社が提供する「リピートPLUS」は、定期購入特化型のカートシステム。
800以上の機能や決済種別を標準機能として備えており、Webサイトのデザインを自由にカスタマイズできるのが特長だ。通常のLPは注文の際に別のフォームに飛ばすものが多いが、リピートPLUSでは一体型LPを採用しているため、ユーザーの離脱を防止しやすい。サポート体制に力を入れており、システムの使い方や業務に関する疑問を解決しやすい点もメリットだ。価格も手頃で月額9,800円から利用できるが、料金プランの詳細については要問い合わせとなっている。
リピスト
株式会社PRECSが提供する「リピスト」は、定期購入と頒布会に特化したECカートサービス。
リピストも一体化LPを採用しており、特にフォームの最適化に力を入れているのが特長だ。年々スマートフォンからの注文が増えていることを受けて、スマホからの閲覧・注文が快適になるよう設計されている。機能面では業界初となる代理店管理画面を導入しており、実際の受注と広告測定での数値の間に乖離が起きないため、施策などで正確なデータを活用可能だ。料金プランが4種類と豊富で、ライトプランが初期費用29,800円、月額14,800円となっている。事業規模の拡大に応じてプランを順次ランクアップできるので、他サービスへ乗り換える必要がなく継続して使いやすいこともポイントだ。
サブスクリプションコマースはどこまで定着するのか
モノの売り方が多様化した今、プレゼントを受け取るような感覚で、ワクワク感を楽しむためにサブスクリプションコマースを利用する人が増えつつある。商品の激増による消費者の「eコマース疲れ」に目を付け、ニーズに合う商品を消費者が探し続けるのではなく、ショップ側がレコメンドするという視点の切り替えが功を奏した結果といえるだろう。
この販売モデルの歴史は古く、かつては牛乳や新聞、雑誌などが定期購入形態で販売されてきた。そういった意味では、サブスクリプションコマースは明治時代から行われていたともいえる。これが現代のeコマースとなり、市場が成熟して無数の商材を扱うようになり、さらには消費者に代わって商品をセレクトするキュレーターが登場し、キュレーション型のサブスクリプションコマースという概念が確立されるに至った。
しかしながら、このサブスクリプションコマースには問題もある。商品が自動で届くうちに供給と消費のバランスが崩れ、内容にも飽きてくると、開封しないまま山積みになるケースも珍しくない。大量購入と大量消費が根付いているアメリカと比較すると、現在の日本はミニマリストなど無駄な消費を抑える傾向が強いため、不要かつ余る可能性のあるものが次々届くことが気になり、活用しきれなくなる側面もありそうだ。
そして何より、新しい商品が続々と登場するため商品やブランドに対する愛着が長続きしにくい点も、キュレーション型のサブスクリプションコマースが持つ課題といえる。そのような中で顧客を定着させるには、消費者が定期的に商品を使用するライフスタイルを確立しやすい商材であることが基本だ。そして、提案力で飽きさせない工夫や豊富な商品バリエーション、適切な商材の選定と適切な配送頻度の設定がカギとなってくる。ショップ側が適切な設定をするだけでなく、消費者側でも必要に応じて配送頻度や数量、プラン、さらには商品内容を柔軟に変更できることも求められるだろう。サブスクリプションユーザーの中に生まれる些細な違和感を事業者側が汲み取り、どのように乗り越えていくか、今後の進化にも注目していきたい。