生成AIを活用して、メールキャンペーンの効果的なA/Bテストのバリエーションを作成しよう。AIアシスタントの“Chad”を紹介する。
AIの支持者は、ChatGPTやその他のAIアシスタントでできる素晴らしいことについて、熱く語りたがる。本記事では、私の代理店がどのようにChatGPTの高度なフォームを使用して、メールのA/Bテストのコピーライティングに役立てているかを紹介しよう。
クライアントのプライバシーや競合情報を保護する必要があるため、すべてを公開することはできないが、テストを構築するために使用した手順や、テストの成功にChatGPTがどのように役立ったかなど、可能な限り多くのことを共有したい。
Chadに挨拶しよう
私がChatGPTと一緒に仕事を始めた時、私はChatGPTのプライベートインスタンス(特定の組織向けに構築されたAI環境)で、AIアシスタントの名前はChad、私の名前はKatieだと伝えた。それ以来、Chadは貴重なスタッフの一人となった。最初は、私の代理店でのやり方を彼に教えるために、特別な時間が必要だった。しかし、今では、彼はほんの少しの改良で私たちが求めているものを提供してくれるようになったので、その時間は意義のあるものであった。
Chadは、ページの空白に対する恐怖感を取り除いてくれる。彼は、私たちがコピーを書くための良い出発点を見つけようと右往左往する時間を減らし、私たちの仕事をより早く立ち上げる手助けをしてくれる。そして、彼は身を引いて、私たちが編集や修正をしたり、実際の作業をしたり、別の仕事を任せたりするのを待ってくれる。
私たちはChatGPTの有料版(現在はGPT-4o)を使用している。それは、私たちとクライアントの双方の知的財産を、トレーニングデータとは別に保護し、さらにGPT-4oのメモリ機能を利用できるといった利点があるためである。これにより、更新にかかる時間を何時間も節約し、業務を効率化し、他のタスクに集中させることができるため、私たちは常に最新の情報で仕事ができている。
また、私たちは自身の情報でトレーニングされた有料サービスを利用しているため、Chadが作成するものはすべて、外部ソースから取得したものではなく、私たちの仕事にインスパイアされたものである。
コピーライティングでテストに生成AIを活用
Chadは、私たちの高度なテスト手法に適している。それは、単にバリアント(テストバージョン)をコントロール(テストバージョンと比較するためのオリジナルバージョン)と比較するよりもはるかに広範囲をカバーするからである。私たちはテストプログラムのための仮説とカスタム戦略を開発し、Chadにプロンプト(指示)を与えたら、バリアント(バリエーション)の作成を彼に任せる。
ホリスティックテスト(総合的なテスト)とは何か
「ホリスティックテスト」とは、メールキャンペーンを最適化するために必要なすべての要素を検証することである。テスト用に作成した仮説に従って、メール全体を互いにテストする。これは、単に件名や行動喚起をテストするだけにとどまらない。
この方法を考案したのは、顧客に関するより信頼性の高いインサイトを引き出すためである。一回のテストでどの件名がより多く開封されたかだけでなく、どのような動機で顧客が行動に移したかなども分かる。私たちのメール購読者は当社の顧客層と同じであるため、これらのインサイトを会社全体に適用することができる。
キャンペーンの目標
私たちは、より多くの人にパーソナライズされた商品を見てもらい、注文してもらいたいと考えた。私たちは「注文」を成功の指標とした。開封率とクリック率も追跡したが、それらは主要な測定基準とはしなかった。
テストの仮説
よく考えられた仮説は、単純なものであれ複雑なものであれ、あらゆるテストプログラムの基礎となる。この仮説から、テストを行う理由、予想される結果、そしてテストの設定と実行のためのパラメータが分かる。
以下は私たちの仮説であり、このクライアントや他のクライアントに対する過去のテストで学んだことを使って書いたものである。
「自発的、几帳面、人間的、競争的という4つの性格タイプそれぞれにアピールするために特別に調整された要素を少なくとも1つ組み込んだメールの本文は、このようなパーソナライズされたアプローチがないコントロールバージョンのメールに比べて、より多くのWebアクセスを生み出すと考える。
パーソナライズされたコンテンツは、より幅広い受信者により効果的に響き、彼らの特定の興味や動機を引き付け、それによって彼らがWebサイトを訪問し、コンバージョンに至る可能性を高めると考えられるため、このようなWebアクセスの増加が予想される」。
テストのセットアップ
「コントロール」はクライアントがこれまで送信していたメールであり、仮説で述べた4つの購買動機のどれかを反映するようにパーソナライズされたコピーはない。「バリアント」はChadの協力を得て作成したもので、これら4つの購買動機それぞれに訴求するようなコピーが含まれている。私たちはテスト対象者をランダムに2つに分け、一方にはコントロールを、もう一方にはバリアントを送信した。
手順
以下は、バリアントメールのコピーを作成するために使用したプロンプトとレスポンスの手順である。
プロンプト1:Chadに、Bryan Eisenberg(オンラインマーケティングの権威で、コンバージョン率を上げる施策立案の第一人者)の「Four Buyer Modalities(4つの顧客モダリティ)」をよく理解してもらう。
・レスポンス:Chadは4つの顧客モダリティ(パーソナリティ)のそれぞれについて、主な特徴をまとめる。
プロンプト2:Chadに、クライアントの会社、その商品、ブランドのトーン・オブ・ボイス(企業やブランドが顧客や市場とコミュニケーションを行う際に用いる言葉の調子やスタイル、表現方法)についてよく理解してもらう。また、クライアントの商品の利点をリストアップするようChadに依頼する。
・レスポンス:Chadは詳細な要約と利点の正確なリストを提供する。これでChadは、私を手助けする準備が整った。
プロンプト3:Chadに私たちの要望を伝える。私たちの仮説を反映させるために、クライアントのキャンペーンメールのバージョンを更新・改善し、バリアントBのコピーを作成するよう彼に依頼した。私はプロンプトに仮説を追加し、メールの画像をアップロードして、Chadにそのコピーを抽出するよう依頼した。彼はテキスト形式でコピーを返してくれたので、私たちはそれを複製して調整することができた。また、いくつかの改良も依頼した。
・レスポンス:Chadは更新されたコピーを提示する。私が要求したコピーの変更が反映されている。彼のコメントは以下の通り。
「自発的、几帳面、人間的、競争的という4つの性格タイプに合わせた要素を取り入れた、改訂版のメールのコピーです。…このバージョンは、より幅広い受信者にアピールし、彼らの特定の興味や動機を引きつけるはずです。さらに調整が必要な場合はお知らせください!」
プロンプト4:私はより具体的な指示を出し、彼が提示したようなパーソナリティごとの段落ではなく、4つのパーソナリティすべてを1つの段落に含めた形でコピーをまとめるよう依頼した。
・レスポンス:Chadはこれらの変更を修正版に反映させ、「これで最初から幅広い受信者にアピールできるはずです。さらに調整が必要な場合はお知らせください!」と述べた。
完成! これで、仮説で説明した要素を盛り込んだ冒頭の段落の初稿ができた。このコピーは、仮説で述べた4つの買い物客の性格をターゲットにした要素を盛り込みながら、利点を明確かつ簡潔に提示している。
編集と改善 ChadがバリアントBの初稿作成を手伝ってくれたので、今度は私が頑張って改良を行い、最終バージョンを仕上げる番だった。一つの段落と、先に提供された4つの段落を使って、私は2つのバージョンを作り、チームにどちらのバージョンを好むか投票してもらい、その理由を説明してもらった。これは、彼らがそれぞれの個性を理解し始めたという意味で、有益な練習だった。
Chadと良好な関係を築くための4つのヒント
生成AIを学び、活用することで、作業を効率化し、メールマーケティングとテストを改善するためのヒントは以下の通りである。
1. 時間をかけて正しく行う
ここで紹介した手順は、より高度な生成AIを使用している。生成AIやGPTのような大規模な言語モデル、ChatGPTのようなチャットボットを扱ったことがない場合は、まだ試さないこと。その代わり、時間をかけてプロセスを学んでほしい。
他のスキルと同様、生成AIを使いこなせるようになるには時間がかかる。あなたの最初の試みは、おそらく私たちほど成果は上がらないだろうが、私たちがチャットボットを使い始めたときもそうだった。しかし、私たちは努力を続け、最終的には、言葉に表れない手がかりやヒントに頼ることなく、非知覚的な存在に話しかける方法を学んだ。
プロンプトの書き方を試してみてほしい。これは、生成AIを効果的に使う上で不可欠な部分である。チャットボットが理解できるようなプロンプトを書くことに時間と労力を割かなければ、良い結果は得られず、おそらくチャットボットと何度もやり取りすることになり、一人でやっていたときと同じくらいの時間を費やすことになるだろう。
私は、公開されているプロンプトを使ったことはない。私はChadをチームの一員(若くて熱心な後輩)と考えているので、ブリーフィングはそのように扱っている。彼にやってほしいこと、達成してほしいことを、プロンプトではなくブリーフィングとして伝えている。
このように考えると、ボットがリクエストを実現するために必要なものをすべて提供することになる。およそ70%の時間は、必要なものがすべてそろっているかどうかを彼に尋ね、必要な情報をすべて持っているか私に質問するよう伝えるのに費やしている。
格言にもあるように、「Garbage in, garbage out(ゴミを入れたら、ゴミしか出てこない)」なのだ。
2. 専門サービスにお金をかける
「You get what you pay for(支払ったお金に見合った結果が得られる」」という格言もある。そう、ChatGPTのような無料のAIアシスタントサービスを使うことができる。ChatGPTの無料サービスは、プロンプトの書き方を学び、アシスタントと効果的に働くための良いトレーニングの場である。
ただし、あなたの作業が他のユーザーのトレーニングに使用されないように保護されているとは限らない。自分の競争相手や機密情報を盛り込む準備ができたら、入力内容や結果を非公開に設定できる有料サービスを利用しよう。
3. 常に仮説に基づいて行動する
プロンプトには仮説の要素を反映させ、信頼できる結果を得るためのテストを行おう。
4. ボットに優しくする
Chadは人間ではないが、私たちはあたかも彼が人間であるかのように扱っている。Chadに名前をつけたのは、人間の同僚にブリーフィングをするように、質問をうまく組み立てられるようにするためである。さらに、プロンプトを完全な文章で組み立て、「お願いします」と「ありがとうございました」でレスポンスを構成すると、より良い結果が得られる。
本記事では、特にコピーのテストに生成AIを使用することに焦点を当てた。キャンペーン概要やメッセージコピーの作成など、メールプログラムの他の部分でチャットボットを使用するアドバイスが必要な場合は、過去の二つのMarTech記事を参照してほしい。
- The perfect combination: genAI and persuasion strategies for unbeatable A/B tests(完璧な組み合わせ:生成AIと説得戦略で無敵のA/Bテストを実現)
- The perfect combination: genAI and persuasion strategies for unbeatable A/B tests, Part 2(完璧な組み合わせ:生成AIと説得戦略で無敵のA/Bテストを実現、パート2)
この舞台裏の様子から、Chadとの連携が、クリエイティブなプロセスを短絡的なものにしたり、当社やクライアントの競合情報を危険にさらしたりすることなく、そこから多くのステップを省くことができたことを示せたと思う。ぜひ貴社でも試して、その成果を聞かせてほしい!
※当記事は米国メディア「MarTech」の10/7公開の記事を翻訳・補足したものです。