購読者の心に響く「スイートスポット」と、オプトアウトや収益低下の原因となる「ティッピングポイント」を特定することで、マーケティングROIを向上させよう。

 

私たちメールマーケティング担当者は、メールプログラムの「スイートスポット」、つまりメールサイクルの中で、購読者が購入やイベントへの申し込みなど、私たちの望む行動をする可能性が最も高いポイントを探すことがよくある。

 

テストを行うことで、以下のような問いに対する答えを得ることができる。

 

  • どの獲得ソースがより質の高い購読者を獲得できるか
  • 新規購読者をコンバージョンに導くには、オンボーディングシーケンスで何通メールを送るべきか
  • どの件名、画像、コンテンツの組み合わせが最もコンバージョンを獲得できるか

 

このような情報は役に立つが、メールの一面しか示していない。これに加えて、購読者をオプトアウト、スパム苦情、ゴースト化に追い込む可能性が高いのはどのようなメールなのか、「ティッピングポイント」についても知る必要がある。

ここでも、以下のような質問によるテストが役に立つ。

 

  • 購読者を不快にさせる前に、1週間に何通のメールキャンペーンを送ることができるか
  • Gmailでメールがクリッピングされる前に、どのくらいのコンテンツをメールに含めることができるか
  • ダブルオプトインで何人の新規購読者を失うか
  • オンボーディングや放棄のような自動化されたシリーズでは、何通のメールが多すぎるだろうか

 

これらは難しいテーマかもしれない。購読者の気分を害して、購読を解除されたり、スパムとして報告されたり、退会されたりするのは避けたいからだ。だから、私たちは答えを見つけようとしない。しかし、答えがわからないということは、恐怖心からせっかくのチャンスを無駄にしたり、無謀な行動によってリストを台無しにしたりしてしまう可能性があるということだ。

簡単にいえば、メールプログラムの「スイートスポット」を探すことは、「ティッピングポイント」がどこにあるかを知ることよりも受け入れやすいということである。しかし、両方を知っておくことで、プログラムにおける勇気と慎重さのバランスをとることができるのだ。

 

「スイートスポット」と「ティッピングポイント」

私の使い方では、「スイートスポット」とは、顧客や購読者にメールを送る方法によって、私たちが望む行動を取ってもらえるポイントのことをいう。テストを行うことで、「スイートスポット」を特定することができる。そのため、テストを適切に設定して実行することが非常に重要である。

 

母の日のメッセージの最も効果的なアプローチを明らかにしたマルチバリエーションテストや、メールキャンペーンのパフォーマンスを最も正確に把握するロングテールテストなど、誰もが「スイートスポット」について話したがる。私はそれらについて幅広く書いてきたので、ここで詳しく説明するつもりはない。

 

しかし、もう一方の側面、つまりメールの「ティッピングポイント」については、あまり語られることがない。私が考える「ティッピングポイント」とは、メールの戦術が逆効果になることをいう。それはポジティブなアクションを生み出す代わりに、購読者や顧客を配信停止、スパムコメント、ブロック、退会といったネガティブなアクションに導いてしまう。

 

しかし、このような状況について話し合うべきだ。「ティッピングポイント」を知ることで、顧客の行動をよりよく理解することができ、ネガティブな結果で顧客を怒らせないためにどこで線を引くべきかがわかるようになる。

 

あなたの「ティッピングポイント」は?

メール配信のベテランであれば、リスト解約や収益損失、配信率の問題を考えるだけで恐ろしい気持ちになることだろう。それは当然のことである。

 

唯一の問題は、より多くのメールを送ったり、メッセージに重みを加えたり、メッセージのテンプレートを見直したりすることが、「ティッピングポイント」や「スイートスポット」を生み出すのかどうか、はっきりわからないことが多いということである。

 

おそらく、「頻度」が最も一般的な「ティッピングポイント」だろう。しかし、顧客に迷惑をかけ始める前にどこまでできるかをテストする代わりに、私たちは躊躇(ちゅうちゅ)し、過去に私たちを押しとどめた以前の恐怖に屈するのだ。

 

私たちは、放棄されたカートのシーケンスで2つのメールを送信すると、多くの場合、良い結果が得られることをわかっている。では、3通送ったらどうだろうか。もし私たちが3通のメールによって顧客が離れてしまうことを恐れていても、それを確かめるためにテストをしなければ、3通が実際の「ティッピングポイント」なのか「スイートスポット」なのかを知ることなく、そのままにしておくことになるだろう。

 

同じことがオンボーディングメールにも言える。3~5通のメールを連携して送ることは珍しいことではないが、10通や15通のメールを送るブランドも見たことがある。それは多すぎるのか、少なすぎるのか、それともオーディエンスにとってちょうどいいのか。テストしなければ、すべては推測のゲームに過ぎない。

 

テストを行って「ティッピングポイント」を見つける

テストにより、顧客が応答しなくなる場所、より注目を集めるメール、変化をもたらさないか、否定的なやり取りを生み出すメールがわかる。ただし、通常は適切な数値を見つけるためにテストを行い、最適な数値に達したと思った時点でテストを終了する。

 

一方、テストでは、応答がまったく得られなかったり、否定的な応答が得られたりして、行き過ぎかどうかもわかる。繰り返しになるが、ほとんどのマーケティング担当者はこれに不安を感じてしまう。そのため、最適な数値を見つけるために境界線を少し押し広げる代わりに、テストを始める前よりも洞察が深まらないまま手を引いてしまうのだ。

 

「ティッピングポイント」について覚えておくべきことは、すべての状況において正しいものはないということである。「スイートスポット」と同様、ブランド、オーディエンス、製品、状況(たとえば、プロモーションとトランザクション)、リスト上の時間など、他のリストと異なる多くの要因によって異なる。

 

テストを行うことで、ニーズに合った頻度、間隔、シリーズの長さ、つまり「スイートスポット」と、ネガティブな結果への「ティッピングポイント」の両方を示すことができる。すべてはバランスの調整である。

 

「ティッピングポイント」とROI

これまで「ティッピングポイント」とは、メールメッセージが購読者を配信停止、スパムコメント、ゴーストなどのネガティブなアクションに移行させるポイントのことを指してきた。これらは、有料顧客からのメールであれば収益に影響し、送信者の評判、配信可能性、受信箱へのアクセスにも影響しうる。

 

しかし、もう一つの考慮すべき「ティッピングポイント」としては、単純にアクションがないか、またはネガティブな購読者のアクションがメールによってもたらされる収益やコンバージョンを上回っているかに関わらず、配信する価値があるほどのROIが得られなくなった時である。オプトアウトやスパムメールの苦情が急増する必要はない。リターンがないのであれば、なぜメールプログラムを潜在的な損害にさらすリスクを冒すのだろうか。

 

ここで、上述した「バランス」を思い出してみよう。「ティッピングポイント「を知ることで、メールの頻度や配信頻度、配信数について、より詳細な情報を得た上で決定することができる。購読者や顧客の行動を推測したり、わかっていると仮定したりする必要はないのだ。

 

「ティッピングポイント」に注意すべき3つの領域

「メールが多すぎる」ことが、顧客がメールリストの登録を解除したり、非アクティブになったりする主な理由である。しかし、適切なメール頻度を見つけること、そしてネガティブなアクティビティへの「ティッピングポイント」がどこで発生するかを知ることは、メールキャンペーンを1週間に1回送信するか、2回送信するかを決めることよりもはるかに複雑である。

 

「ティッピングポイント」はメールプログラム全体で発生し、また予想外の場所でも発生する。このセクションでは、メールの指標とアクティビティをテストして追跡することで、これらの「ティッピングポイント」を見つけて回避できる3つの領域について説明する。

 

1.頻度

メールの耐性をテストしない場合、無頓着にメールを送信してリストから削除してしまうか、テストもせずに「少なければ少ないほど良い」と思い込んでしまうことになる。どちらの方法も、メールの可能性を最大限に引き出すことはできない。

 

1つのセグメントをテストし、他のリストにも適用できるインサイトを探そう。高い頻度を許容できる人、リスクが高すぎる人を検討しよう。

 

しかし、テスト結果を待つまでもなく、リストとの定期的なコンタクトを維持しつつ、負荷を軽減する方法を探し始める必要がある。まずは、あなたの顧客がどのような方法でメールを受け取っているかを調べてみよう。思っているよりも多くのメールを、さまざまな間隔で受け取っていることに気づくかもしれない。

 

通常のプロモーションメールに加え、トランザクションメール、興味や行動、購入に基づいたトリガーメッセージ、社内の他部署や他部門からのお知らせ、カスタマーサービスからの問い合わせ、当選メールやリエンゲージメントメールなど、マーケティングチームがコントロールできないメッセージが届く可能性がある。

 

コンタクト戦略を設定して、メール送信を管理または制限することができる。たとえば、オンボーディングメールやコンバージョンメールシーケンスでは、購読者や顧客からのBAU(ビジネスアズユージュアル、定型的な)メールを保留にすることができる。また、カート放棄された顧客に対しての閲覧放棄メールを停止することも可能である。

 

あるクライエントが実施したフリークエンシーテストは頻度と収益を増加させるのに役立った。これについては、以前の記事「頻度テスト: 電子メールの収益を増やす鍵」をご覧いただきたい。

 

これらの基準を適用して再活性化プログラムを設定し、解約、失効、休眠した顧客を呼び戻し、もはや収益が見込めなくなる「ティッピングポイント」を見つけることができる。

 

2.メールのクリッピング

これは購読者のせいにはできない。メールサーバーがメールメッセージを最後まで読んでいないのに途中で切ってしまうのだ。これはGmailやOutlookでよく起こる現象で、特にメールのファイルサイズが102KBを超える場合に起こる。これが「ティッピングポイント」なのだ。これには、すべてのテキスト、画像、HTML、その他のコンポーネントが含まれる。

 

クリッピングされたメールでは、通常フッターは消え、トラッキングピクセル、購読解除リンク(世界中のほぼすべての法律で義務付けられている)、米国のCAN-SPAM法(企業、マーケティング担当者などの営利団体や非営利団体からの電子メールおよびその他のメッセージに関するさまざまな要件を規定する法律)で義務付けられているメッセージの識別、さらには3つのモジュールからなるメールの一番下のモジュールのようなプロモーションコンテンツ(それぞれにオファーが記載されている)まで一緒に消えてしまう。

 

購読者は通常、メッセージ上のリンクをクリックすれば、不足しているコンテンツを閲覧することができるが、特に携帯電話やタブレットを使用している場合、そのような余分なステップを踏むとは想定できない。それでも、クリックしてメール全体を読んでもらうか、ランディングページをクリックしてCTAを実行してもらうか、どちらが望ましいだろうか?

 

ESP(メールサービスプロバイター)内、または電子メール事前展開プラットフォームLitmusやメール品質保証 (QA) プラットフォームEmail on Acidのような外部サービスでQAテストを行うことで、メールがクリッピングされるかどうかを予測することができる。最小限のコーディングと強いデザイン階層を持つテンプレートを使用することで、メールに記載する内容を厳選することができる。それにより、最も重要な情報(配信停止リンクを含む)をメールの最上部に配置され、モジュール、画像、書式付きコピーブロックの数が制限される。

 

3.リストの増加

リスト獲得には、特にシングルオプトイン(確認メールをバウンスしない)とダブルオプトインを検討する場合、独自の「ティッピングポイント」がある。リスト獲得における確認オプトインとダブルオプトインのメリットについてここでは触れないが、各プロセスにおいてどこで「ティッピングポイント」が発生するかについては、あまり議論されていない。

 

私たちは通常、COI(確認済オプトイン)とDOI(ダブルオプトイン)のどちらがより質の高いメール購読者(メールを開封し、行動してくれる人)を獲得できるかを測るために、エンゲージメント指標や配信率を用いる。しかし、正確な情報を得るためには、これらの指標にとどまらず、コンバージョンを見る必要がある。

 

オプトイン活動をテストし、追跡することで、「スイートスポット(オプトインが多く、配信率が高く、コンバージョン率が高い)」と「ティッピングポイント(リストの質が低下すると、コンバージョン率や収益が低下する)」を見つけることができる。

 

シングルオプトインでは、問題のあるメールアドレスがリストに登録されるのを自動的に防ぐことはできないため、配信率が悪くなると考えるのが一般的である(多くの場合、それは間違っている)。しかし、自社のリストアクティビティがどのような挙動を示すのか、また「ティッピングポイント」が「スイート」スポットに影を落としていないかどうかを確認するためには、自社のリストアクティビティを研究する必要がある。

 

おわりに: 無謀さではなく、注意と論理的思考が必要

私がメールマーケティング担当者に、購読者の限界点を知るために、購読者を瀬戸際まで追い込むことを容認していると思うかもしれない。しかし、それは間違いである。

 

何が購読者を不安にさせるかを知っていると決めつけるのではなく、顧客とカスタマージャーニーについて知っていることを取り入れ、論理的に考える必要があるのだ。

 

顧客や購読者は常に私たちにシグナルを送っている。私たちは、彼らが言うであろうことを単に想定するのではなく、彼らの言うことにただ耳を傾けるだけでいいのだ。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の6/6公開の記事を翻訳・補足したものです。