かつては10代に人気だといわれていた写真・動画共有アプリSnapchatは、モバイルマーケティングの分野で先駆者として台頭し、ユーザーに対しても広告主に対しても他に類をみない本格的なプラットフォームを提供している。

 

「Snapchatは従来のソーシャルメディアとは設計が異なっており、フォロワー数やいいね数を競うプレッシャーを感じることなく、友人に自分自身を視覚的に表現できる」と語るのはSnapchat UKのビジネスソリューションディレクターであるFintan Gillespie氏である。

 

「Snapchatがニュースフィードよりもカメラに親和性があるのはそのためだ」と、同氏は明かす。

 

Snapchatは2011年にサービスを開始し、現在は20か国以上で13歳~24歳の90%が利用している。広告主はオーディエンスと直接やり取りをし、主要な視聴者層の年齢、性別、地域、興味、行動などの人口統計に基づいて、広告のターゲットを絞ることができる。

 

「我々は、長年に渡って大幅に進化してきた。それはマーケティングツールにもあてはまる」とGillespie氏は述べた。

 

「私たちには、マーケターがエンゲージメントや顧客KPI(重要業績評価指標)を促進するという点で、オーディエンスに効果的にアプローチするためのさまざまなツールや機能がある」。

 

つい最近(2023年10月)Snapchatは、広告主がプラットフォーム上で影響力のあるクリエイターのコミュニティと提携しやすくする「Creator Collab Campaigns」という一連の機能を発表した。

 

同氏は、「Snapchat利用者は、友人や家族とつながるためにSnapchatを使用しているが、彼らはフォローしているクリエイターやコンテンツを求めて閲覧を続ける。これが、Snapchatの広告機能を向上させるカギとなっている」と語った。

 

ARが状況を大きく変える

拡張現実(AR)の技術革新の最前線で、SnapchatはインタラクティブなAR体験を可能にすることで、広告に革命を起こした。

 

Deliveroo(オンライン食料品デリバリーサービス、本社:英国)、Rimmel(化粧品ブランド、本社:英国)、Asos(オンラインファッションブランド、本社:英国)、JD Sports(スポーツファッション小売、本社:英国)などのブランドはすべて、ARを活用してユーザーと積極的に関わり、オーディエンスとより一層つながりを深めたいと考えている。

AI搭載の同社プラットフォームにあるAR試着機能は、ユーザーがバーチャルで衣服を試着できるというような没入型の体験を提供し、コンバージョン率に大きな影響を与え、返品率を下げている、とGillespie氏は主張する。

 

「ARは消費者に没入感をもたらし、広告主にはよりリッチな消費者エンゲージメントを提供する。動画は消費者にリーチする優れた方法であるが、ターゲットのオーディエンスにブランドのレンズを使って遊んでもらうのは次のレベルである」。

 

同氏はさらに、「私たちはARの先駆者として知られており、積極的に双方向の広告と関わることでビジネス上の成果を上げられるような、創造的で魅力的な体験を通して、非常に多くの顧客がターゲットオーディエンスにリーチできるように支援している。このことで、我が社のブランドパートナーの状況は大きく変わりつつある」と付け加えた。

 

「ARとAIの融合がもたらす急速な進化のおかげで、ARはより費用対効果が高いものとなり、タイムリーで便利なツールにするプロセスが変革されることで、飛躍的に導入されるだろう。ARは小売業界全体を新たな次元に引き上げ、ARの助けなしでのショッピングを考えられなくなる日がすぐ来るだろう」。

 

安心、安全な環境を確保するために

Snapchatでは、安全性とプライバシーが重要である。最近では、ペアレンタルコントロールと監視ツールの新しいアップデートを展開した。

 

このツールによって、保護者はプラットフォーム上で子どもの利用環境を監視することが容易になる。

 

Snapchatは、2022年にFamily Centerサービスを開始。これは10代の子どもがアプリ上でやり取りする相手を保護者が確認し、懸念事項をSnapchatの安全対策チームへ内密に報告し、コンテンツ利用を制限することができるツールで、これらすべてが安全性に関する重要な会話を促すのに役立つ。

 

Gillespie氏は、「Snapchatは安全性を念頭に設計されている。有害なコンテンツの拡散を防止する上で中核となり、広告主にとっても安全で安心な環境となっている。私たちは、未審査のパブリッシャーや個人がヘイト、誤った情報、暴力的なコンテンツを流す機会となるオープンなニュースフィードは提供しない」。

 

「また、当社では自動化ツールと人によるレビューを組み合わせて、Spotlight(スポットライト:面白い投稿)、Public Stories(パブリックストーリー:一般に公開している短尺動画)、Maps(スナップマップ:位置情報を公開する投稿)などの公開コンテンツのサーフェスを管理している。これには、機械学習ツールと公開投稿に含まれる不適切な可能性のあるコンテンツをレビューするリアルな人間の専門チームが含まれる」。

 

消えるコンテンツの妥当性

Snapchatの(短時間で)消えるコンテンツという独自の機能は、リアルな世界での会話と同じである、と同氏は言う。

 

「実際の生活での会話は記録されないので、デジタルな会話もリアルな世界の行動を反映すべきであると考えている。消えるコンテンツは、オンラインでの相互交流をより人間らしく、今この瞬間に根差したものと感じさせ、投稿が永久に残ることへのプレッシャーや不安を軽減する」。

 

「広告主はSnapchatのチャット機能で広告を出すことはできないが、この環境が提供するのは安全な場所であり、Snapchat利用者は、完璧でなければならないというプレッシャーを感じることなく、最も素の自分でいられる。これにより、他よりも広告を受け入れやすくなることが証明されており、マーケターにとっては大きなメリットとなる」。

 

今後のモバイルマーケティングのトレン

「2023年はAIが主流になった年として記憶に残るだろう。AIは以前からSnapchatを強化し、パーソナライズされた体験を提供するのに役立ってきた。現在AIは、さらに洗練された高度なAR体験さえも作り出すのに役立っている」と同氏は言う。

 

Gillespie氏は、2024年にはAIがARのトレーニングとコンテンツ開発を加速させるため、より多くのAR体験をより早く人々に提供できるようになると予想している。

 

彼はまた、AIがクリエイター業界をさらに進化させるとも考えている。


現在、2億人以上が自分自身をクリエイターだと考えており、マーケターは2024年のインフルエンサーマーケティングに320億ドル以上を費やすと予想されている。

 

同氏は、「より多くのクリエイターが、クリエイティブやコンテンツ制作、データ処理のためにAIツールを試し始めると考えている」と付け加えた。

 

「AIがインフルエンサーになるというもあるが、AIを代用するのではなく、それを便利なツールとして利用し、人間的なつながりを維持するクリエイターが成功すると考えている」。

 

Gillespie氏は、AIにとどまらず、現在のマクロ経済の変動要因はマーケターにROIを実証するプレッシャーを与え続けるだろうと指摘し、さまざまな顧客とのタッチポイントの価値を追跡して決定するするマルチタッチアトリビューション(顧客とのすべてのタッチポイントでの成果)ソリューションへの移行を予想している。

 

同氏は、「マーケターは、どのプラットフォームが売上とコンバージョンを促進しているかについて、より優れた洞察を得ようとしている」ため、これはeコマースにとって特に重要になると結論づけている。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の2/1公開の記事を翻訳・補足したものです。