マーケターは今年、どのようにメール戦略を改善し、価値を提供して、変化するプライバシー環境に対応していくだろうか。

 

メールは、適切に運用されれば、顧客と直接対話できる効果的で低コストのチャネルとなる。マーケターが2024年にサードパーティCookieの廃止やその他のプライバシーの問題に対処するなかで、このチャネルの重要性は高まるだろう。

 

マーケターは、莫大な利益が得られる可能性があるメール戦略をさらに改善し続けるだろう。メディアテクノロジー企業Adlookが1,000人の消費者を対象に行った新しい調査によると、消費者の58%が購入決定に関するメールから「ポジティブな影響を受けている」と回答している。一方、メールの影響を「ほとんど受けていない」と答えたのはわずか27%、「全く影響を受けていない」と答えた人は16%だった。

 

本記事では、マーケターが今年、メールプログラムを改善するための方法をいくつか紹介しよう。

 

メールにおけるコンテンツ価値が高まる

マーケターは新年には、価値の低いメールではなく、ブランドと顧客の関係を構築する価値のあるコンテンツの送信へと軸足を移すだろう。

 

メールマーケティングエージェンシーCodeCrewの共同設立者であるAndrei Marin氏は、「我々は、ブランドがカスタマージャーニーの早い段階で価値のあるメールを送るという考え方を採用しているのを目にしている」と話す。「これまで、新しいブランド(たとえば日用品ブランド)は、一般的に『50%オフ』といった内容の『一斉広告』メールを送信していた。しかし我々は現在、メール送信のピークがもっと早い段階に来ているのを目の当たりにしている。メール環境の競争が激しくなっていることに気づいたブランドは、より価値のあるコンテンツをより早期に購読者に送るようになる。そして、BOGO(1つ買えば1つ無料/Buy One Get One Free)を上回るオファーを購読者に提供するだろう」。

 

マーケティングテクノロジープラットフォームLiveIntentのCRO(最高売上責任者)であるJon Beck氏は、「今日の慌ただしいオンラインの世界において、メールは、インテンション(意思)とアテンション(関心)の両方を獲得するための鍵として際立っている」と述べる。「メールは、広告スペースが少なく、すっきりと整った体裁であるため、永続的なインパクトとオーディエンスとのつながりを生み出すのに最適な手段である。実際、これが、米国のオンラインプラットフォームSubstackの急成長と米紙The New York Timesのデジタル購読者数900万人突破を支えているものである。そしてそれが、あなたが現在読んでいるすべての出版物に何十ものニュースレターが掲載されている理由なのだ」。

 

ブランドは、特別オファーに関するメッセージの一部を切り捨てることで、コンテンツのためにメールを読むという受信者の関心を得ようとしている。

 

「割引と利益率に関しては、底値を争う競争から脱却しつつある」と、Marin氏は話す。

 

B2Bメールキャンペーン

メールキャンペーンは、B2Cブランドだけを対象としたものではない。これからの1年では、より多くのB2B企業が顧客の関心を引くためにメールに関する取り組みを導入し、実施することが予想される。

 

「B2B関連のメールマーケティングが増えている」とMarin氏。「多くのB2B企業が、メールマーケティングを行うという考えを採用しているが、従来は自社ビジネスについて広く知ってもらうために、営業チーム全員に頼っていた。今、こうした企業は、メールのリードを集め、メールによるアウトリーチを積極的に行っている」。

 

B2Bのユースケースにおいて、メールには忙しい勤務中に見込み客の邪魔をするリスクがない。より受動的なチャネルであるメールは、B2Bの顧客が都合の良い時に読み、行動できるというカスタマージャーニーに関する詳細な情報を提供してくれる。Marin氏によると、これがより多くのB2Bマーケターがメールを利用する大きな理由の一つであるという。

 

ログインチャネルとしてのメールの重要性

「企業は、オウンドメディアのオーディエンスと直接的な関係を構築するために、メールのようなログインチャネルに目を向けるようになるだろう」とBeck氏は話す。「予測不可能なアルゴリズムに依存する他のチャネルとは異なり、メールは、データ消費量の多いウォールド・ガーデン(クローズドプラットフォーム)の外で運用される。そして、それはファーストパーティデータの優れたソースとして台頭している」。

 

「小売業者にとってメールマーケティングの重要性は大幅に高まると予想される。ファーストパーティデータを収集し、Cookieを使用しない、プライバシー重視のマーケティング環境で、パーソナライズされたキャンペーンを推進するために、メールマーケティングはさらに重要になるだろう」と、エンタープライズソフトウェア企業CoveoのシニアプロダクトAIマーケティングマネージャー、Andrea Polonioli氏は述べる。

 

「Googleが2024年にサードパーティCookieを段階的に廃止するのに伴い、マーケティング業界は長年の期待に応えてサードパーティCookieからの移行に備えている。この変化は、マーケターが消費者のプライバシーを尊重しつつ、ファーストパーティデータを効果的に収集・活用するという課題に直面することを意味する」と、Polonioli氏は付け加えた。

 

一括メールのポリシー変更

CodeCrewの共同設立者であるAlexander Melone氏によると、メールマーケターは、メールプロバイダーの一括メールに関する今後のポリシー変更を心配する必要はないという。これらのポリシー変更は、メールマーケターがすでに導入しているべきベストプラクティスを強化するものである。

 

「GoogleやYahooなどの企業がスパムフィルタリングや休眠アカウントに関する新しいポリシーを発表したことで、マーケターによるメールデータの積極的な管理の重要性がさらに高まっている」とメールテクノロジー企業AtDataのCEOであるTom Burke氏は述べる。

 

「メールマーケティングはある程度の飽和点に達するだろうが、消費者はお気に入りのブランドからの高度にパーソナライズされたメールを今後も重視し、高く評価するだろう」と、カスタマーエクスペリエンス企業Newfold Digitalのオンラインマーケティング担当シニアディレクター、Alicia Pringle氏は語る。「ブランドは、パーソナライズに対するこの願望を利用して、メッセージが“その他”や“プロモーション”に分類されるのではなく、“照準を当てた”メールの受信トレイのタブに届く可能性を高める必要がある」。

 

AIによるメールコンテンツプロセスの改善

「AIの話題性は今後も高まり、メール送信者はクリエイティブ、セグメンテーション、トラフィックのルーティング(送信元から宛て先にパケットを送信する際、最適なルートを経由して転送されるようにすること)、スケジュール設定にさらなる機械学習を取り入れることを余儀なくされるだろう」と、アイデンティティ・メール企業Stiristaのメールソリューション担当シニアバイス プレジデントであるArin Reyna氏は述べる。「あるレベルでのAIは、かなり以前からESP(メールサービスプロバイダー)の一部として組み込まれてきたが、今やクリエイティブなデザインやコピーなどの人間的な要素は、AI集団からの攻撃にさらされているかもしれない」。

 

「生成AIは、コンテンツ開発プロセスを強化し、パーソナライズされたマーケティング資料からシームレスなカスタマーサービスまで、あらゆるタッチポイントで消費者に最高のユーザー体験を提供するために必要なツールをマーケターに提供してくれる」と、Webex by Cisco(Web会議やビデオ会議向けアプリケーションを開発・販売する米国企業。Ciscoが2007年にWebexを買収して設立)の上級副社長兼チーフマーケティングおよびカスタマーオフィサーのAruna Ravichandran氏は述べる。「マーケティングチームが広告キャンペーンによるエンゲージメントや開封率、ROIの向上などの成果を実感し始めると、社内チームもその恩恵を享受できるようになる。コンテンツやキャンペーン開発に生成AIを活用することで従業員の自由な時間ができ、彼らはより高度で戦略的なコラボレーションに取り組んだり、イノベーションを起こしたりすることができるようになる」。

 

Ravichandran氏はさらに、「ブランドは、消費者行動に関するさらに深いインサイトを得るために、AIツールに注目するだろう。これを使うことにより、ブランドはさまざまなオーディエンス層の共感を呼び、エンゲージメントを促進するメッセージングやビジュアルをパーソナライズすることができるようになる」と付け加えた。

 

「AIへの関心は大幅な継続を見せており、実際に本格化し始めているように思う」とMelone氏は話す。「とはいえ、それが企業にとって最善かどうかに言及するつもりはない。AIには改善すべき点がまだたくさんある。企業はAI機能の追加を検討する前に、ベストプラクティスが確立されていることを確認する必要がある」。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の1/11公開の記事を翻訳・補足したものです。