eコマースは、買い物客や小売業者にとって大きな変化をもたらしたが、それにはデメリットもある。確かに、販売量とパーソナライゼーションを大規模に提供する能力は、オンラインショッピング体験に革命をもたらした。しかし、消費者の現在のショッピング方法は、企業に物流面でのプレッシャーやコスト増を生じさせている。
問題は、主に返品に関係している。
顧客は当然のように、少しでも興味のある商品を購入し、注文した商品を試着したり試したりして、気に入らないものは返品する。消費者にとっては、こういったエクスペリエンスはフリクションレス且つシームレスであり、送料は通常、注文代金に含まれている。しかし、こうした物流手数料は、結局のところ小売業者の収益から捻出されることになる。
このようなコストはすぐに膨れ上がり、結局多くの場合、小売業者は返品を防ぐために店舗ポリシーを変更することになる。こうした変更は必要なことではあるものの、小売業者のWebサイトに起因する返品は、顧客の不満を招くだけでなく、ブランドの長期的な信用やロイヤリティにダメージを与えかねないので注意したい。商品ページの欠陥を修正することで、ブランドは不十分な商品情報による返品率を下げることができるのだ。
返品がもたらす本当の影響
消費者としては、返品にかかるコストを理解するのは難しい。企業が使い勝手のよい返品プログラムを提供している場合、我々が購入する商品の価格にそのコストがすでに含まれていると考えるからだ。しかし、企業にとっては、返品処理、倉庫保管、返品詐欺、返品配送、販売不可能な在庫、返品処理に関連する人件費などのコストは、収益の大きな妨げとなる。
ある調査によると、2022年のオンライン小売売上高1兆2,900億ドルのうち、消費者は2,120億ドル相当の商品を返品しているといい、その返品率は16.4%である。この数字は、2021年の最高返品率20%から減少しているものの、2020年の返品率10.6%から依然として大幅に、そして継続的に上昇している。
この16.4%という返品率も、あくまでも平均値である。特に衣料品など、一部の小売業者では、返品率が40%にも達する。たとえば、一件の返品処理に25ドルのコストがかかるとすると、4万件の返品処理を行う企業の年間返品コストは100万ドルに達する可能性があるということだこれは、20万件の取引を20%の返品率で処理している企業であれば、簡単に到達してしまう数字である。
多くの企業が、返品率を下げ、返品に伴う収益損失を軽減するための戦略やポリシーを積極的に模索している。多くの人気eコマース小売企業は、返品可能期間を厳しくしたり、手数料を導入したりして、こうした損失に対処している。
しかし、ブランドはこのようなポリシーを導入する際には注意が必要である。
最近の消費者調査によると、63%の顧客は、オンラインや店舗で返品を有料化するブランドに対して否定的な感情を抱いているという。そのため、このようなポリシーは短期的には収益に貢献するかもしれないが、リピーターやロイヤリティの取組みに問題を引き起こす可能性があるのだ。
コストと返品に対する顧客の期待とのバランスを取る
返品は、さまざまな理由で発生する。たとえば、顧客が試着や試用のためだけに商品を購入した場合や、返品を希望する不要な贈り物を受け取った場合などだ。
こうした返品の原因の多くは、小売業者がコントロールできないものである。それでも、返品にかかるコストが減るわけではない。もし企業の返品ポリシーが、一定期間内であれば柔軟に返品できるようになっているのであれば、販売者は顧客によるそのポリシーの利用を見込むべきである。
取り組むべき主な問題は、返品を求め、それが小売業者の責任であると主張する顧客である。いくつかの試算によると、小売業者のミスによる返品は全体の3分の2を占めるという。
こうしたミスは、顧客が間違った商品を受け取った(23%)、不正確な商品説明(22%)、商品の破損(20%)など多岐にわたる。さらに、54%の顧客が、小売業者のウェブサイトに誤った情報が掲載されていたために商品を返品している。 防げるはずの返品が大量に発生しており、この問題は顧客のロイヤリティやリテンション(維持)の取り組みに長期的な影響を与える。購入する商品がオンラインで見たものと同じであると信じられなければ、顧客は同じ小売店に再び足を運ぶ可能性は低くなるのだ。
賢い小売業者は商品情報システムに投資する
すべての小売企業の目標は、自社が管理するシステムやチャネルに起因する返品を最小限に抑えることであり、そのすべては商品ページから始まる。
商品情報管理(PIM)と商品体験管理(PXM)のシステムを導入することで、ブランドは、コンバージョンに必要な、説得力のあるセールスコピーを無駄にすることなく、サイト上のすべての商品情報が正確且つ最新であることを確信することができる。
これらのシステムは、絶えず変化する商品ラインアップを持つような大規模な小売業者にとって、特に効果的である。そして、一千点の商品数を扱う企業にとっても、一万点の商品数を扱う企業にとっても、同様に価値があるものである。PIM/PXMシステムは、自動化を活用することで、商品詳細の一括編集やソート(並べ替え)、グループ化など、手作業ではミスが発生しやすい面倒な作業を可能にするのだ。
オンライン小売業者は、PIM/PXMシステムを使用して、商品全体をスキャン・分析して完全性を確認することもできる。商品に重要な情報や写真が欠けているかが即座に分かるため、顧客に提供する準備が整っていることを確認するために、手作業のテストをしたり、個々の商品ページのQA(品質保証)を行ったりする必要がなくなるのだ。
最後に、うまく機能するPIM/PXMシステムは、重要な検証モードを提供することができる。これは、商品の仕様と説明を自動的にスキャンして社内の信頼できる情報源と相互参照し、顧客が遭遇しうる情報の矛盾にフラグを立てるものである。 商品ページ群にこうした特別な目を向けることで、小売業者は各ページがメーカー提供のドキュメントと可能な限り一致していることについて、確信を得ることができる。
商品情報システムは返品を減らし、信頼関係を強化する
商品情報システムのメリットは大きい。これらのシステムの導入後、一部の小売業者は返品率が大幅に低減しただけでなく、基本的な商品ページの情報構築を自動化することで、マーケティングチームや商品チームが、リッチで魅力的なコンテンツによる商品の販売という、最も得意とすることに集中することができるようになったのだ。
小売企業が返品ポリシーの見直しを検討する際には、自社でコントロール可能な理由による返品率を下げるために、できる限りのことをしなければならない。返品の原因を理解し、正確な商品情報を保証するシステムの導入が重要な第一歩となる。こうした取り組みによって、返品率を大幅に低下させ、ブランドの信頼性を維持し、顧客の信頼を醸成することができるのだ。
現代の小売業界には、特に返品の管理に関して多くの課題がある。しかし、これらの課題は、改善と革新のチャンスでもある。商品情報システムへの投資は賢いだけでなく、コストのかかる返品を最小限に抑え、消費者との長期的な信頼関係の構築を目指す小売企業にとって不可欠なものである。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の9/12公開の記事を翻訳・補足したものです。