コロナウイルスのパンデミックによって、eコマース物流におけるさまざまなトレンドが加速した。出荷量や消費者行動、配送料、越境eコマースおいて、劇的な変化が起きている。ここでは、注目すべき物流の動向を紹介しよう。

 

物流の世界は、常に流動的である。しかし、2020年のコロナウイルスの発生と、現在も継続されているコロナ対策により、変化は一気に加速している。フルフィルメント会社Active AntsのマネージングパートナーであるJeroen Dekker氏に、物流の最新動向について取材した。

 

マーケットプレイス・セラーの台頭

コロナ危機の影響で、ビジネスをオンラインに移行する企業が増加している。一方で、オフラインでビジネス展開していた企業が、オンラインでビジネスチャンスを掴もうとしている。そして、eコマースセクターで生まれたチャンスに飛びつく新規参入者もいる。「特に、さまざまなeコマース・ソフトウェア・プラットフォームがもたらす可能性を考えると、オンライン販売を始めることは小さな一歩にすぎない」と、Dekker氏は言う。

 

ますます増える海外発送

Dekker氏は、マーケットプレイスでチャンスが生まれた結果、必然的に国際配送貨物数が増加するとみている。もちろん越境eコマースは、今に始まったことではない。しかし、輸送業者が配送に関してこれほど多くの要求をすることはなかった。「輸送業者は、サイズが小さくて軽い荷物を好む。彼らが希望する以上のサイズや重さの荷物には手数料が加算される」。

 

「輸送業者の規定以上のサイズの荷物には手数料が加算される」

 

 

ニッチの中のニッチ

以前から、ネットショップの大半は、特定の商品カテゴリに特化していた。しかし、Dekker氏によると、新規参入者においてその専門性がさらに強化されているケースが多いという。多くのスタートアップ企業は、1つまたは数個の商品だけを扱うオンラインストアを立ち上げる。そして、多くの場合、販売商品はレターボックスサイズで発送可能なサイズである。「これにより、配送料を低く抑えることができ、利益率にプラスの効果をもたらしている」。

 

地元へのサポートと持続可能性の実現

 

 ドロップシッピング業者の増加と相反し、「地元を応援しよう」という取り組みが起きている。地元起業家の廃業を防ぎたいという消費者の思いに加え、持続可能性も重要な一因となっている。消費者の大部分は、商品が自宅に届くまでの配送距離が長いことに対し、ますます批判的になっている。

 

「より多くの人が、サステイナブルなロジスティクスを支持」

消費者(および企業)は、生産だけでなく、物流についても批判的な目を向けている。地元に根ざした、持続可能な輸送方法がますます支持されている。Dekker氏は次のように述べている。「私たちは、輸送業者、そして、自分たちに対して、常にグリーンな(環境に配慮した)選択肢を模索している。例えば、自動包装機を使用することにより、必要な包装材や充填材の量を最小限に留めている」。

 

「自動包装機を使用し、最小限の包装材と充填材の利用を実現」

 

 

配送キャパシティへのさらなるプレッシャー

 

さまざまなロックダウンが行われるなか、オンラインショッピングは、商品を入手するのに優れた安全な方法であることが証明された。その結果、小包の数がこれまで以上に増加し、物流会社にさらなるプレッシャーを与えている。さらに物流会社は、届けるのが難しい、あるいは不可能な配送先にも対応しなければならない。その一方で、多くの消費者は、注文した商品ができるだけ迅速に届くことを希望する。

 

 

「複数のデリバリーサービスに注文を分散させる」 

昨年から、ヨーロッパ外宛先への配送には、いわゆるコロナ・フィーが加算されるケースが増えた。さらに一部の配送業者では、持ち込める小包の数に制限を設けている。「そのため、私たちの顧客には、注文を複数の配送業者に分散するようアドバイスしている」と、Dekker氏は話す。

 

切迫した供給不足

物流面での課題には、上記の逆もある。遠方で生産され、ヨーロッパに輸送される製品も、常に遅延の対象となる。以前から優れた在庫管理は重要だったが、今では必須となっている。「今の時代、迅速にスケールアップできない事業者が、ビジネスを続けることはできないのだ」。

 

「今の時代、迅速にスケールアップできない事業者が、ビジネスを続けることはできない」

 

 

ロボット化

しかし、迅速にスケールアップできるかどうかは、オンライン小売事業者にとって重要な問題であるだけではない。フルフィルメント会社もかつてないほど多忙を極めている。ロボットを導入し、注文処理を大幅に自動化することで、簡単にキャパシティを増やすことが可能だ。さらに、プロセスをより効率的にし、ミスを減らし、コストを削減することができる。

 

(大手)eコマース企業も、自社倉庫にロボットを導入するケースが増えている。これは、ロボットが高所作業に適しているため、倉庫スペースの有効活用につながり、必要な倉庫スペースを少なく抑えられるためである。

 

※当記事は欧州メディア「Ecommerce News」の4/26公開の記事を翻訳・補足したものです。