怒りを募らせている顧客をなだめ、より効率的な顧客サービスを提供したいのであれば、大人数の“人間”の担当者の代わりに、対話型のボットの導入を検討してみよう。チャットボット(人工知能を活用した自動会話プログラム)は、顧客を惹きつけ、顧客との関係構築ためのより良いソリューションになり得るのだ。

 

Myplanet(トロントに拠点を置くデジタルエクスペリエンスプラットフォーム作成の専門企業)のCEOであるJason Cottrell氏によると、チャットボットは、ビジネスのアポをとったり、消費者が銀行口座を確認したり、買い物客がピザを注文する方法ですら変化させる可能性があるという。しかし、マーケティング担当者が、チェットボットをビジネスプロセスに統合するベストな方法を模索する中、消費者がチャットボットをどれだけ受け入れられるかについての徹底的な調査が必要である。

 

チャットボットは、2024年までに13億ドルの市場になると予測されている。人工知能(AI)を搭載し、eコマースおよび顧客対応向けウェブサイトに統合されたこれらの対話型ソフトウェアアプリケーションは、情報収集や顧客サービス業務を改善するだけでなく、eコマースや顧客関係管理を処理するための、より優れたツールとなる可能性を秘めている。

 

リサーチャー達は、消費者のさまざまなチャットボット技術に対する受容レベルを調査し、カスタマーサービス、スケジューリング、銀行業務、セラピーにおいて上昇傾向にあると認識している。しかし、消費者の反応は、依然として、チャットボットが提供する全てのサービスを快く歓迎したものではない。

 

消費者は、アポイントメントのスケジューリングやカスタマーサービスなどの単純なタスクにチャットボットを使用することを好む。しかし、セラピーや銀行業務といった個人的なタスクにチャットボットを使用することについては、消費者は、明らかに、より不快に感じているという。例えば、カスタマーサービスにおけるチャットボット対応に対する受容レベルが33%であるのに対し、銀行業務においては18%であった。

 

ビジネスを行う上で、チャットボットを使用することについて消費者を納得させることさえできれば、より高い利便性と効率性を提供できる可能性がある。Gupshup(印、米、英で事業展開するメッセージングサービス企業)のCEOであるBeerud Sheth氏によると、例えば、コールセンターの担当者が電話に出るのを待つよりも、チャットボットはより速く、より簡単に対応できるという。

 

同氏は、「チャットボットは、ユーザーの問い合わせに対し、即座に応答する。これは、チャットボットが適切かつ迅速に解決できる単純なタスクにおいては特に重要なことだ」と語っている。

 

受容の世代的要因

企業によるチャットボット利用は、まだ初期段階ではあるが、チャットボット導入率(特に、米国と欧州において)は、継続的に上昇すると予測される。さらに、Pund-IT(ビジネステクノロジーへのインサイトを提供)の主任アナリストCharles King氏によると、テクノロジー業界のトレンドや取り組みが、チャットボットの開発と採用を後押ししているという。

 

「一般的には、マシンラーニングのような手頃な価格のAI技術の利用が可能となったことが、チャットボットの進化の加速に役立っているのだ。具体的には、Microsoftが最近発表したPower Virtual Agentsのようなソリューションは、組織が個別のビジネスニーズを満たすチャットボットを開発するために必要なツールを提供している」とKing氏は語った。

 

チャットボット導入が成功するかどうかは、人間のインタラクションをうまく模倣する能力に大きく依存していることは注目すべき点だ。この点においては、クオリティの大きな差が生じていると同氏は付け加えた。

 

当然のことながら、企業はコスト節約のために、コールセンターの従業員の代わりとなり、人員削減をすることでコスト削減を可能にするチャットボットテクノロジーを高く評価している。しかしKing氏は、人員削減と、顧客満足度低下による自滅は、紙一重だと警告する。

 

「世代的な要因もあると考えている。基礎技術が向上し、生身の担当者を好む高齢の消費者が減り、バーチャルエージェントとの対話に慣れ親しんでいる若者に入れ替わると、チャットボットは、さまざまな企業や業界全体で一般的になるだろう」とKing氏は述べている。

 

ヒューマンシミュレーション

現在、消費者は、カスタマーサービス、リクエストルーティング、情報収集向けウェブサイト上の対話システムとしてチャットボットがポップアップするのを目にしている。また、買い物客は、カスタマーサービス部門や他のビジネスにダイヤル接続する際にチャットボットを使用している。

 

チャットボットは、テキストまたはテキスト音声合成技術を介してオンラインチャットで会話できる高度に洗練されたソフトウェアアプリケーションだ。それらは、生身の人間のエージェントとの直接的なやり取りに取って代わるものである。

 

また、Sheth氏は、チャットボットは、テクノロジーに対する顧客の不安を和らげることができると示唆した。ウェブサイトやアプリとは異なり、チャットボットはコンピュータが人間のように振る舞うことを可能にするのだ。

 

「チャットボットは、自然に交流することができ、使用するために技術的な専門知識は不要だ。したがって、チャットボットは、テクノロジーを使用することに対する顧客の不安や恐怖心を軽減することができる」と、同氏は説明した。

 

ハイエンドでは、AI駆動のパフォーマンスの背後にあるソフトウェアには、広範な単語分類プロセス、自然言語プロセッサ、高度なAIが含まれる。一般的なキーワードをスキャンし、関連するライブラリやデータベースから取得した一般的なフレーズを使用して応答を生成するャットボットアプリケーションもある。

 

「チャットボットは、ユーザーとの自動チャットを行うことができる特殊なボットである。チャットボットは、ユーザーと人間の担当者とのチャットインタラクションをシミュレートし、カスタマーサポート、販売、マーケティングによく使用される」とSheth氏は述べている。

 

Myplanetの最近の調査は、消費者が、通話中の音声や、ウェブサイト上でのテキストを使用して実行するタスクなど、少なくとも一部ではチャットボットとのやりとりを許容するようになりつつあることを示している。しかし、一般的に、消費者がチャットボットに慣れるまでには、更なる成長要因が必要とされている。

 

Myplanetは、2020年10月に最新の調査を実施した。リサーチャーは、Google Surveys Publisher Networkのウェブサイト上で、18歳から65歳以上の米国の回答者500人に、Google Consumer Surveysを使用して質問を行った。回答者は、人口構成をより正確に反映し、調査サンプルから偏りを排除するため、年齢、性別、地域で重み付けされた。

 

調査では、参加者、さまざまな形態のインタラクティブ・テクノロジーに関する9枚の画像と、簡単な説明が提示された。そして、回答者は、「このテクノロジーとのやりとりは快適だと感じる」というにステートメントにどれだけ強く反対、または同意するかを5段階でランク付けするよう求められた。

 

音声アシスタントが最も好まれる

おそらく、より驚くべき結果の1つは、望ましさという点で、音声アシスタントがテキストチャットボットを上回っていることだ。調査対象となったすべてのチャットボットテクノロジーの中で、電話の音声アシスタントアプリが、チャットボットテクノロジーが平均的な快適度(快適度同意率22%)となったのに対し、著しく望ましい(快適度同意率33%)という評価を得たのである。

 

一般的に、回答者は、音声アシスタントを使用したチャットボットテクノロジーは、テキストベースのチャットボットよりも望ましいと考えている。例えば、本調査では、アポのスケジューリングにおける音声チャットボットかテキストチャットボットかの選択肢について言及している。

 

音声アシスタントを使用したスケジューリングチャットボットは、テキストを使用したスケジューリングチャットボット(快適さレベル20%)と比較して、より望ましい(快適さレベル24%)にランク付けされた。

 

さらに驚くべきことは、チャットボットのインタラクションの受容度向上における女性が果たす役割だ。調査結果では、女性がチャットボット人気の高まりを牽引していることが明らかになったのだ。

 

その他の調査結果

総じて、調査対象となった年齢層、性別、地域によって快適さのレベルに有意な差は見られなかった。しかし、男性回答者と比較して、より多くの女性回答者が、より快適であると回答し、電話音声アシスタントでは、女性37%対男性30%、銀行のチャットボットでは、22%対15%、カスタマーサービスのチャットボットでは、34%対21%となった。

 

こうした最新調査の回答は、チャットボットの受容拡大を示す指標として非常に重要だ。Myplanetの今回の調査結果は、同社の2020での、全体的な好感度の上昇と一致している。

 

10月の調査では、回答者が単純なタスクではチャットボットを好むことが明らかとなった。調査員は、健康や銀行のデータなど、より機密性の高い情報を扱うチャットボットは、カスタマーサービスやスケジューリングを重視したチャットボットほど望まれていないと指摘している。

 

例えば、銀行のチャットボットの快適性が18%であるのに対し、カスタマーサービスのチャットボットに対する快適さは33%という結果を示したのだ。

 

おそらく否定的な回答となったものの一つは、「人間的」な話題に触れるチャットボットである。セラピストのチャットボットは、快適さレベルが15%(自動運転タクシーの快適さのレベルに匹敵)と、非常に望ましくないとランク付けされており、癒しやセラピーのアプリケーションに使用される物理ロボティクスと同様の見解と同じである。

 

アンケート結果全文はここから。

 

インタラクション101

Gupshup社は、開発者がSMS(ショートメッセージサービス)、Twitter、Slack(チームコミュニケーションツール)向けボットを構築するためのAI搭載プラットフォームを開発した。このプラットフォームは、ユーザーへの通知や顧客エンゲージメントにおける開発をサポートする。

 

Sheth氏は、消費者がチャットボットテクノロジーに不快感を抱く特定の要因について、次のように指摘している。チャットボットはAI搭載自然言語機能を持っているが、それらはまだ完璧ではない場合がある。

 

「チャットボットは、ユーザーの質問を理解できず、誤った回答をし、ユーザーを不快にさせたり、失望させたりする可能性がある」と同氏は述べた。「テキストメッセージングのネイティブユーザーである若者は、チャットボットテクノロジーを自然に取り入れることができる」。

Sheth氏によると、企業は、よくある質問を自動化することから、チャットボットの導入を開始できるという。その後、実際のユーザー・クエリに基づき、時間をかけて自動化を追加することができる。

「チャットボットとの会話は、参加者以外には表示されない1対1のプライベートなやり取りであるため、パーソナル機能として最適である」と、Sheth氏は述べる。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の1/15公開の記事を翻訳・補足したものです。