従来のテレビ放送の週間視聴率は、2021年の83%から2022年には79%へと、年間で最大の下落となった。BBC One(英国放送協会BBCの主要チャンネル)は視聴人口の半数以上に毎週リーチしている唯一のチャンネルである。これらはOfcom(英国放送通信庁)によるテレビ、オンライン動画、ラジオ、オーディオ分野の最新年次報告書「2023年版Media Nations」からの2つの重要な調査結果である。

テレビ放送の視聴時間は12%減少している。1日の平均テレビ視聴時間も同様で、2021年の2時間59分から2022年には2時間38分と12%の減少が見られる。今回初めて、「コア」世代である65歳以上の視聴者の1日当たりの平均テレビ視聴時間が前年比8%減、新型コロナウイルス流行前の基準から6%減となった。

また、Ofcomのデータは、ストリーミングサービスの世帯利用率が全体的に頭打ちになっているものの、高齢視聴者の利用と視聴が増加し、多様化していることも示している。例として、Disney+への64歳以上の加入割合は、2022年の7%から2023年は12%へと増加している。

この報告書で、テレビ放送の状況について、もう一つの注目すべき変化が明らかになった。「マス・オーディエンス(大衆)」を引き付ける番組数の急激な減少である。テレビ視聴者数が400万人を超える番組数は、2014年の2,490本から2022年には1,184本へと過去8年間で半減しているのだ。

視聴者数の多い番組は全てのジャンルで減少しているが、この背景には、早朝や深夜の主要ニュース番組の視聴者が減少していることと、同様に3大人気連続ドラマ(Coronation Street、EastEnders、Emmerdale)の視聴者数も着実に減っていることがある。2014年以降、400万人以上が視聴するニュース番組は537本から148本と72%減少、大衆向けドラマは754本から438本と42%減少した。

これと比較して、2022年にストリーミングプラットフォームで平均400万人以上が視聴した番組はわずか48本で、その大半をNetflixが占めている。ストリーミングサービスでの再生回数はライブラリにある何万ものエピソードにまたがっており、視聴環境がいかに細分化されているかを物語っている。

従来のテレビ放送視聴が減り続けているにもかかわらず、依然としてBBC One(20%)とITV1(13%)は、視聴者がテレビを点けたときに最初に視聴するチャンネルのツートップであり、Netflix(6%)が3番手につけている。さらに、放送局のコンテンツ視聴は、ライブ視聴であれ、録画再生、オンデマンド視聴であれ、テレビや録画の視聴に費やす1日の全ての時間のうちで引き続き最大の割合(60%、1日1人あたり2時間41分)を占めている。

視聴者のニーズの変化に合わせて、放送局はサービスをデジタル化しており、BBC iPlayer(BBCが視聴できるストリーミングアプリ)やITVX(ITV が運営する英国のオンラインオンデマンドサービス)のようなオンデマンドサービスの利用は増加し続けている。ITVXは2023年の上半期にITVの総視聴者数の10%を占め、2022年の7%から上昇した。同時期のBBC iPlayerの利用者はBBC総視聴者数の14%から18%に増加した。

この報告書ではまた、子どもや25歳未満の若年成人の1日平均放送視聴時間が、2012年以降73%減少していることも明らかになった。16~24歳の平均視聴時間は1日あたり39分で、4~15歳の子ども世代の41分より、初めて短くなった。データからは、彼らが主にスポーツや人気エンターテインメント番組、リアリティ風番組を1日に1本か2本のみ視聴していることが分かった。

ソーシャルビデオプラットフォームは、依然として若者に人気の日常的なメディア習慣である。2023年3月には、15~24歳の520万人が、1日平均58分TikTokを利用した。以下、Snapchat(52分)、YouTube(48分)、Instagram(25分)と続いている。

10分未満の「気軽に楽しめる」短編動画コンテンツは特に人気だ。15~24歳の10人に7人近く(68%)が毎日短編動画を視聴している、と主張しており、この種のコンテンツではYouTubeが最も人気である。

生放送のラジオは英国で成人の大多数にリーチし続けており、88%がデジタル、アナログ、オンラインプラットフォームを利用して、週平均20時間聴取している。これまではBBCと民放ラジオ局がほぼ均等に聴取されていたが、この1年で民放ラジオが市場リーダーとしての地位を固め、2023年第1四半期のシェアは51.4%となり、BBCを5ポイント引き離した。

ラジオ聴取はオンラインへとシフトし続けており、現在、家庭でのラジオ聴取方法の5分の1(20%)をスマートスピーカーが占めている。成人のオーディオ利用の5分の1(21%)は音楽ストリーミングサービスの利用であるが、15~34歳ではそれが50%に増加する。

成人の約5人に1人(20%)は毎週ポッドキャストを利用しており、その増加は主に25~44歳世代のリスナーがけん引している。しかし、10代後半と若年成人はポッドキャスト離れが進んでおり、15~24歳の週間聴取率は、2023年第1四半期には22%弱にすぎなかった。

「今日の視聴者や聴取者は、放送やオンラインコンテンツを『食べ放題』のビュッフェから選ぶようなもので、我々が注目する競争はかつてないほど激化している」と、Ofcomの戦略および調査グループディレクターであるYih-Choung Teh氏は語った。「従来の放送局は、一般的に忠実な高齢の視聴者を含め、予定されている生放送の視聴率は急低下しており、ドラマやニュース番組はかつてのように大衆を引き寄せる力がない」。

「だがそれにもかかわらず、公共放送は文化やスポーツの重要な瞬間に国民をひとつにまとめるという点で、依然として他の追随を許さない存在である。一方で、オンデマンド放送局は視聴者のニーズに合わせてサービスをデジタル化することで、プラス成長を遂げている」。

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の8/3公開の記事を翻訳・補足したものです。