「ここをクリックしてください」は、メールキャンペーンのCall to Action(CTA)としては不適切な手段だ。ここでは、より良いCTAを実現するためのヒントと事例をご紹介しよう。

 

単刀直入にいうと、「送信」や「ここをクリック」は、メールキャンペーンの行動喚起(call to action / CTA)としては効果がない(その理由は数段落先で説明する)。

 

CTAのサンプルをテストしたい場合は、ChatGPTGoogleのBardのような言語モデルが、新しいコピーライティングツールとして最適だ。しかし、良いCTAの価値を認識し、適切に書かれたプロンプトで呼び水をさす必要があるのだ。

 

効果的にリクエストを構成しなければ、「送信」や「ここをクリック」などのバリエーションに終始することになる。これでは振り出しに戻ったようなものだ。

 

例えば、私はChatGPTに、感情に訴える母の日キャンペーンのために、5文字以内の行動喚起のメールを10件依頼した。結果は割愛するが、どれも「ここをクリック」と書かれていた。

 

効果的なCTAへの道程

より良いCTAを実現するためには、行動喚起の意味と、なぜ良いものを作ろうとすると失敗しがちなのかを理解することから始まる。

 

CTA(Call to Action)とは、件名のようなものだ。読者を説得し、あなたが望むことを実行させるような文章を書くにはコツがいる。また、件名と同様に、キャンペーン制作のToDoリストの最後の仕事になってしまうことが多く、際立ったリクエストを作るための考えや創造性がほとんど残されていないのが現状だ。

 

効果的なCTA(Call to Action)は、顧客がクリックしたら何が起こるかを伝えるものだ。これが、「ここをクリック」が不適切なCTAである理由の一つである。

 

そう、あなたは彼らにクリックしてほしいのだ。しかし、もうそれを指示する必要はない。彼らはすでにそれを理解しているのだから。「ここをクリック」は、結果や利益ではなく、クリックするまでのプロセスに焦点を当てている。

 

つまり、当たり前のことを述べるのではなく、クリックすると何が起こるのか、クリックすることでどのようなメリットがあるのかを、さりげなく、あるいは控えめに伝えているのだ。

 

メールメッセージは、コンバージョンへの第一歩に過ぎないことを忘れないでほしい。メールメッセージの目標は、コンバージョンが発生するウェブサイトを訪問するよう顧客を説得することだ。だからこそ、CTAはとても重要なのだ。メッセージの中で唯一のマーケティングコピーではないが、アクションを起こすための神経中枢なのである。

 

より良いCall to Actionのための4つのルール


1
関連する次のステップに焦点を当てる

これにより、あなたのウェブサイトをクリックすると何が起こるかを伝え、なぜその次のステップに進むべきかを示唆する。「ホワイトペーパーをダウンロード」は「ここをクリック」よりは良いが、それはわずかな差だ。ホワイトペーパーを手に入れたら何を学ぶことができるのだろうか?時間のない顧客には、「業務を効率化しよう」とする方が響くかもしれない。

 

「もっと読む」や「もっと学ぶ」も同様だ。これは、出版社やコンテンツマーケターがニュースレターで記事の断片を配信し、ウェブサイト上のフルバージョンに誘導する際によく使われるCTAだ。

 

これらはひどいものではないが、カジュアルな読者に行動を起こさせるような「力強さ」を与えるものでもない。読者の「もっと読みたい」という欲求を刺激する方法を探そう。

 

2さまざまなコンテンツスタイルを試してみる

CTAは長すぎても構わないだろうか?短すぎるのはどうだろう?重要なのは、ブランドにふさわしい声で、パンチの効いた、注目を集めるCTAを書くことだ。このCTAは、コンバージョンへの旅で取るべき次のステップを顧客に伝えつつ、なぜそれをする必要があるのかをさりげなく伝えるものだ。

 

だからこそ、時には台詞を飛ばしてもいいのだ。効果的な文章を書くために、顧客について知っていることを活用してほしい。

 

以下の2つの提案を検討してみてほしい。

 

連続したCTAを使用

1つのメールメッセージに1つのCTAしか使えないと誰が言っただろうか?アクションに特化したCTAとベネフィットに特化したCTAを1つずつ使うことができる。あるいは、1つのCTAが次のCTAに繋がるようにすることもできる。こうすることで、1つのCTAの負担を減らし、読者に続きを読ませることなく、さらに説得力を持たせることが可能になる。

 

CTAの周囲に、説明のコピーや裏付けとなる文章を配置

テンプレートやボタンのスタイルによって文字数や単語数が制限されている場合、CTAを増幅させることができる。コピーで質問を投げかけ、CTAでそれに答えることも可能だ。

 

米国のソフトウェア企業Email on Acidは、最近のニュースレターでこの例をうまく取り上げていた。特集されたブログ記事の再録では、「OK、あなたのメールはGmailのプロモーションタブにランディングします。しかし、それは本当にそれほどに悪いことなのでしょうか?」とあり、下にあるCTAには、「見てみよう」と書かれている。

 

CTAの伝統的な経験則として、CTAは次のような文章を構成する必要がある。「…をしたい」でも構わないが、強引さや人工的な響きにならないように、少し工夫が必要である。

 

CTAには動詞を入れるべきだろうか?その通りだ。しかし、これもコピーライティングのルールであり、絶対的なものではない。動詞は理解できる、あるいは、巧みな代替案で置き換えることができれば、省略することも可能だ。

 

3. お願いする内容に注意する

eメールのCTAがWebサイトで使うものと異なるのは、eメールがプッシュ型のチャネルであるためだ。顧客が見つけてくれるのを待つことなく、メッセージをプッシュすることができる。しかし、それは同時に、検索であなたのウェブサイトにたどり着いた場合よりも、購買ファネルの最上位にいる可能性があり、購入の準備ができていないことを意味する。

 

eメールは通常、あなたの旅の始まりだ。種をまき、欲求を生み出し、増幅させるのだ。だからこそ、「今すぐ購入」のような大きなお願いをメールに書かないように注意する必要がある。購入する前に、細かい字を読んだり、利用可能なすべてのオプションを検索したり、さまざまな業者の価格を比較したりする必要がある顧客は、このような表現に抵抗を感じる可能性がある。

 

例えば、「最高の新しいスタイルを見つけよう」というように、顧客に期待させるものを与える。これは行動を誘い、ベネフィットを提供し、動詞を前面に押し出したもので、私たちの注意を引くセクシーなアクションワードである。

 

顧客がランディングページをクリックしたら、「購入する」という表現に切り替えることができる。彼らは見込み客であることを自覚し、すでに購買ファネルのはるか下にいる。よく練られた製品説明を読んだ後であれば、「今すぐ購入する」という言葉は、より理にかなっている。

 

4. オーディエンスではなく、人に語りかける

最高のCTAは、まるで友人に頼みごとをしているように聞こえるものだ。誰かに本を渡して、”もっと知りたいか “と言うだろうか?

 

B2Bの”B”は”boring(退屈)”を意味することが多いため、B2Bで仕事をしている場合は特に重要である。B2Cのメールでは、話している顧客をイメージするのは簡単だ。B2Bのメールは、人間同士のつながりが希薄なため、「組織と組織」のように聞こえることがある。

 

しかし、あなたは企業にメールを送っているわけではない。あなたが話しているのは、あなたのメールをリクエストした人々であり、あなたが手助けできるニーズや課題を持っている人々なのだ。彼らのモチベーションを高めることができるCTAで話しかけよう。彼らが意思決定者でなくても、インフルエンサーである可能性は高い。

 

 

見習うべきCTAの例


Who Gives A Crap:「TP(トイレットペーパー)はどこで買えますか?」

これは、竹製のトイレットペーパーを供給する消費者ブランドの実際の名前で、CTAゲームに常に勝利している。彼らのeメールは読むのは楽しい。デザインもよく、完全に真剣でありながら、適切なトイレットペーパーのすばらしさを楽しんでいるようである。彼らは、CTAに関するルールについて慎重に検討した上で、アレンジを行っている。これは、「店舗を探す」とするよりもずっと面白いCTAだ。

 

Chipotle「注文して特典をもらおう」

クイックサービスレストランのChipotleブランドは、オンライン注文の促進、ブランドストーリーテリングによるエンゲージメントの構築、リワードプログラムの推進にeメールを活用している。新商品のプロモーションメールに掲載されたこのCTAは、注文を促すと同時に、注文したら特典がもらえることを知らせるという2つの目的を達成している。

 

McDonald’s UK

登録してもっと得をしよう」「アプリでつかおう」「アプリでロックを解除しよう」

McDonald’s UKのメールの多くは、モバイルアプリを宣伝している。この一連の連続したメールは、非ユーザーにアプリのダウンロード、インストール、注文を求めるメールキャンペーンに由来する。最初のCTAはメリットに焦点を当て、フォローアップのCTAはアプリを使用した際の特典を顧客に示している。

 

Pitch(プレゼンテーションソフトウェア)「このテンプレートから始めてください」

私がこのCTAを気に入っているのは、顧客に次のステップに進むよう依頼すると同時に、次のステップのメリットも説明するための教科書的な例だからだ。このB2Bブランドは、CTAに関して、「テンプレートは無料で、ミニマルなデザインであり、そしてユーザーが『完璧なものをこれまで以上に素早く作り上げること』を支援するものである」、というメリットを謳ったコピーを掲載している。このCTAは、論理的な次のステップなのだ。

 

eMarketer(米国の市場調査会社)「Appleの市場支配力についてもっと読む」

eMarketerのニュースレターは、他の出版物と同様に「続きを読む」や「今すぐダウンロード」と書かれたCTAボタンに頼っているが、時々、このようにクリックする理由を示すテキストリンクに切り替えている。このスタイルは、「続きを読む/詳細を見る」の形式を崩すことができない場合に、さらなるエンゲージメントオプションを提供することができる。

 

連続したCTA

クライアント向けのメールキャンペーンや、メールマーケティング担当者向けの月2回発行のニュースレターを作成する際、私たちはCTAに多くの時間を費やしている。

 

当社のニュースレターは、自社ブランドを確立することに重点を置いており、読者に最新のメールマーケティングのニュースやトレンドを伝えるために選んだニュースの全文を読んでもらうために、私たちにとってのちょっとした実験場になっている。私たちは、読者のクリックを促し、ブランドの声を表現し、興味を持たせるために、連続したCTAをよく使用する。

 

クリスマス直前に配信されたあるニュースレターでは、3つのCTAを使った。それぞれのCTAは付随する記事の要約に関連しているが、一緒に取り入れると、遊び心のあるクリスマスのタッチが加わる。

 

  • 「リストを作る」 フォローすべきメール専門家のリストについて
  • 「2回チェックする」 トレンド予測について
  • 「こんなガタガタ音が起きた」  MarTechの寄稿者であるRyan Phelan氏が、ドラゴンクエストタクトの特技「爆砕イオナズン(earth-shattering kabooms)」について語った記事について

 

そう、これらは、前に述べたCall-to-Actionのルールを破っているのだ。しかし、文脈を見れば、これらは理にかなっている。

 

CTAをテストする(全体的なアプローチで)

CTAは、メールメッセージのすべての要素と協調して、最大の効果を発揮し、顧客を説得してクリックさせる必要がある。「今すぐ購入」や「もっと読む」が効果的でないのは、このためだ。たとえそれが目立たないものであっても、あなたのメッセージを増幅させる機会を奪ってしまうのだ。

 

あなたのメールプラットフォームには、1つの要素を別の要素に置き換えるシンプルなA/Bスプリットテストプラットフォームやモジュールが含まれているだろう。しかし、2つのキャンペーンをテストすることで、より多くのことを知ることができる。例えば、一方はコスト削減を、もう一方は緊急性を訴求するのだ。CTAは、キャンペーンのフォーカスを反映して変更する必要がある。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の5/15公開の記事を翻訳・補足したものです。