最近の消費者行動の変化は、今年以降のブランドの売上に大きな影響を与えるだろう。ブランドマーケターは、地球の持続可能性に改めて注力する必要がある。そうしないと、持続可能性に注力するブランドに消費者基盤を奪われるおそれがあるからだ。

 

eコマースのスペシャリストであるAstound Commerceは、デジタルコマースプラットフォームのShopifyと提携し、「Sustainability and Your Customer(持続可能性と顧客)」と題した調査結果を発表した。この新しいレポートは、大西洋の破壊的なハリケーンシーズンからパキスタンにおける集中豪雨と氷河の融解、欧州の約500年ぶりの記録的な高温まで、2022年に発生した記録的な異常気象を受けて発表されたものである。

 

最近のいくつかの調査によると、世界中の消費者は、気候変動が長期的にもたらす脅威について幻想を抱いていないことがわかった。この最新のレポートでは、最近の消費者行動の変化とそれが2023年のブランドに与える影響について詳しく取り上げている。

この調査により、世界中の消費者が、持続可能な製品により多くのお金を支払うという強い意欲があることが明らかになった。同レポートによると、グローバル消費者の5人に3人が、環境問題に対する企業の姿勢に注目しているという。気候変動の取り組みに対する前向きな姿勢は、消費者の購入の意思決定に少なくとも何らかの影響を与えている。

 

Astound Commerceの北米地域担当CEOであるVanessa Cartwright氏は、この調査結果を踏まえ、企業にとって重要なことは、環境を維持するためにかかる追加コストと、ビジネスが存続できない可能性とを比較検討することだと述べている。

「あなたのビジネスの将来にとって重要な存在となるのは、若い世代の顧客であることがわかっている。何か変化を起こさないと、最終的には競争力を失ってしまう」と、Cartwright氏は語る。

 

ショッピングにおける優先順位の変化が調査結果から明らかに

この調査では、米州(カナダ、メキシコ、米国)、欧州(ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、英国)、中東(サウジアラビア、アラブ首長国連邦)のグローバル消費者1,000人を対象に調査が行われた。

質問は、持続可能性に関連する消費者行動がどのように進化してきたか、そしてそれらがどのようにコマースの将来を形成するかを理解することに重点が置かれた。

 

Z世代の消費者は、環境問題に対するブランドの姿勢に最も影響を受けており、その割合は62%に上る。これらの消費者は、購買力を利用して気候変動対策を提唱しており、ブランドには信頼性と透明性のある環境メッセージ戦略が必要であることが示されている。

このレポートから、大部分のミレニアル世代の消費者(70%)は、オンラインショッピングの際にブランドのビジネス慣行を少なくともある程度重要であると考えていることがわかった。

持続性に関するこのレポートは、Astound Commerceにとって最初のレポートであったため、過去のベンチマークはまだ存在しない。しかし、そのデータは、消費者が購入するものに影響を与えるうえで製品が果たす役割について直接的に物語っている。Cartwright氏は、ブランドのサプライチェーンの慣行に対する消費者の意識が、大きな役割を果たしたと述べている。

 

例えば、二酸化炭素の低排出、輸送、リサイクル包装といった要素は、製品の購入によって支持するブランドを決める際に上位にランクインした項目だ。「多くのデータは、製品を効率的に梱包する役割は、顧客に訴えかけることにあるというサプライチェーン側の認識を示すものだった」と同氏。

Cartwright氏はさらに、消費者は購入品が一つにまとめて梱包されているか、それとも個別に別々の荷物として届くかで判断していると説明する。また、その際に使用されるパッケージも消費者にとって非常に重要となる。

 

「これは、消費者の理解が深まっていることを示している」と同氏は述べる。

 

リコマースへの集結

このレポートでは、中古品の再販は、ブランドが製品のライフサイクルを延長し、廃棄物を削減し、持続可能性への取り組みを強化するのに役立つため、環境の持続可能性に取り組む上で重要であることが強調されている。

近年、リコマース市場は大きく成長している。同レポートは、革新的な新興企業や再販サイトがその成長を下支えしていると述べている。

 

同レポートによると、ドイツの統計市場調査プラットフォームStatistaは、中古アパレル市場の規模が今後数年間で2倍以上に拡大し、2026年には2,180億米ドルに達し、アパレルブランドにとっての強力な潜在的収益源になると予測しているという。

また、リコマースは、返品された製品をブランドが再販する機会を増やすことで、世界中の埋立地に廃棄される不要な在庫品を減らすこともできる。消費者はこのソリューションに強い関心を示しており、ミレニアル世代の59%を筆頭に、54%の消費者がこの持続可能なモデルに少なくともある程度は興味があると回答している。

 

関連研究の正当性

Astound Commerceの持続可能性に関する調査結果は、世界経済フォーラム(WEF)が過去2年間に実施した同様の調査と一致している。WEFは、1971年にKlaus Schwab氏によってジュネーブに設立された非営利財団である。

2022年1月に発表された「Global Risks Report(グローバルリスク報告書)第17版」では、近年の経済・環境問題の回復の不均衡がもたらす緊張を明らかにしている。急速に回復している国も、ゆっくり回復している国も、社会的結束を取り戻して雇用を促進し、繁栄するために、経済的・社会的ギャップを乗り越えていく必要がある。

 

WEFの報告書によると、この調査では、気候変動に対する不作為を「今後10年間に地球規模で最大の損害を与える可能性があるリスク」と評価している。行動を起こさないまま気温上昇が続くと、食料システムの混乱、大気質や水質の低下、居住不可能な地域などの形で、人間の健康がこの損害をもろに受けることになる。

消費者はこの危機の重大さを感じており、ブランドに今すぐ行動を起こしてほしいと望んでいる、とAstound Commerceのレポートも引用したWEFの調査結果に同調する。

ブランドは、環境に対する取り組みに加え、デジタルビジネスの実行をも環境目標を前進させる直接的な機会として捉える必要があると、Astound Commerceの持続可能性に関するレポートは指摘する。

重くて、時代遅れの社内インフラを管理したり、非効率的なコーディング手法を採用したり、未使用データを保存したりすることは、エネルギーの浪費、二酸化炭素排出量の増加、ブランドの貴重な時間とリソースの浪費につながると同レポートは警告している。

 

コマースにおける気候変動のネットコスト

Cartwright氏は、同社の調査は消費者の視点を重視し、世界規模で実施されたものであると指摘する。調査結果から、消費者は自身の持続可能性を高めるために企業がどのような行動を取っているかを理解した上で、購入の意思決定をするという大きな変化が起きていることがわかった。

「私が興味深いと思ったのは、このような意思決定の中で、気候の持続可能性がどれほど影響するのか、そして消費者に最も影響を与えるものは何かということだ」と、同氏は述べる。

このデータから、製品そのものも重要だが、消費者は製品の購入に関連する気候変動コストも高く評価していることが明らかになった。

出典:Astound CommerceとShopifyによる「Sustainability and Your Customer」レポート

完全にリサイクル可能な製品やリサイクル素材を使用した製品は、持続可能性に影響を受けて購入を決定する人の割合が高く、世界的に消費者の強い関心を集めていることが調査から明らかになっている。

Cartwright氏は、最終消費者が、一般的に倉庫で何が起こっているのかということや、実際の出荷プロセスについて詳しく知っているとは考えていない。しかし、人々は購入した商品がどこから輸送されてくるかによって購入を決定するようになっていると同氏は考えている。

この商品はどんな輸送手段を使って自分の手元に届けられたのだろうか?遠く離れた場所から、非常に短時間で届くのであれば、船便よりも航空便で輸送される可能性が高く、それは持続可能性が最も低いように思われる、と同氏は分析する。

「人々がこれほど深く考え、そのような選択をしているということは、理解が進化していることを物語っている。ただ単に『ああ、私が買う商品はたまたまリサイクル可能だとか、たまたまリサイクル素材から作られている』ということではなく、そのさらに先を行くものだ」と同氏は述べる。

 

企業が持続可能性を推進する方法

本レポートにおけるAstound CommerceのパートナーであるShopifyは、持続可能性のサポートのために消費者に情報を与え、選択肢を提供している。また、同社は自社ウェブサイトを、地球の持続可能性が必要な理由を示す場として活用している。

Shopifyは2019年、自社ビルや従業員のホームオフィスの冷暖房や電力の供給のために再生可能エネルギーの調達を開始した。同社ウェブサイトのサステナビリティページによると、同社はカナダにおける天然ガスと電力関連の二酸化炭素排出量を考慮した十分なグリーンエネルギーを調達したという。

Cartwright氏は、Goodwill Industries(社会的弱者のための職業訓練等を行う、米国に本部を置く非営利団体)が行っている持続可能性を促進するための取り組みを消費者に知ってもらうために、もう一つの例を挙げた。Goodwill Industriesは、ウェブサイト「GoodwillFinds」で古着などを販売している。

このオンラインストアのおかげで、貧困者に製品を届けるという同団体の使命は、より手が届きやすいものとなった。同団体は、年間30億ポンド以上の中古品を回収しており、それらを埋立地から転換し、第二の人生を歩ませている。

 

「GoodwillFinds」は、同社がどのように持続可能性を提供しているかをウェブサイトでオープンに示している。同社のモットー「Your Choices Matter(あなたの選択が重要だ)」は、「リサイクル」ジーンズを買うことで、1,800ガロン以上の節水が達成され、生活用水から有害物質を排除し、海から何千もの微細な繊維片を排除できるということを述べている。

 

※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の2/21公開の記事を翻訳・補足したものです。