TikTokは、ソーシャルコマースのインフルエンサーを優先するZ世代などの人気アプリとなっている。しかし、データの安全性や監視に対する懸念が高まる米国の議員や市民は、TikTokの利用を禁止するよう議会で働きかけている

一方、TikTokのソーシャルメディアプラットフォームは、その動画リーチとパーソナライズされたメッセージング手法により、消費者に大きな影響力を持っている。

この人気により、マーケティング担当者は、規制が強化され(米国ではすでに多くの政府所有のデバイスでTikTokの利用が禁止されている)、IPO(上場)の可能性が出てくる前にTikTokから利益を上げる機会を得ることができる。政治的な要因が介在しない限り、TikTokは2023年に広告業界と小売業界に新たな局面を開く方向に向かっている。

 

TikTokのB2Bコミュニケーション担当グローバルディレクターのLaura Perez氏は、TikTok Shopでの広告や販売を最大限に活用したいマーケティング担当者は、動画に十分に投資する必要があると指摘している。そのようなアプローチは、ストリームマーケティングと、より従来型の販売戦略との違いを最大限に生かすのに役に立つだろう。

 

「TikTokは、テレビや他のデジタルやソーシャルプラットフォームとは全く異なるプラットフォームだ。私たちは、TikTokコミュニティの価値について、ブランドや企業に啓発を行っている。彼らが作成するコンテンツの種類は、動画フォーマットとして異なるものであり、本物であることの価値に焦点を当てるものだ」と、Perez氏は語っている。

 

Adswerve(Googleの広告テクノロジー製品のクラウドコンサルティング等を提供する米国企業)のリード・メディア・コンサルタントであるMary Kotara氏は、データ収集もTikTokでのマーケティングにおいて重要な役割を果たすと付け加えた。マーケティング担当者は、同プラットフォームにおける消費者の購買データについて、できる限り多くの情報を収集する必要がある。

 

「TikTokは現在、ユーザーに関する非常に多くのデータを追跡しており、現時点でオーディエンスターゲティングは非常に高度なものとなっているが、これはマーケターにとって有益なことだ。将来的には、規制やトラッキングの取り締まりがあっても、マーケターは履歴データを使って意思決定を行うことができる」と、Kotara氏は語る。

 

オンラインショップとは異なる形

TikTokは、ユーザーが何時間も夢中でスクロールし、スワイプするたびに新しいエンターテインメントの可能性を与えてくれるユニークな在庫ソースであるとKotara氏は指摘する。このような状況下では、広告主はクリエイティブについて批判的に考える必要がある。

 

「昨年作成した動画広告を再利用したり、プレロール(起動画面)やYouTube動画を長年特徴付けてきたのと同じスクリプトを使用するのは賢明ではない」と、彼女は警告している。「TikTokでは、優れた動画がなければ、ユーザーはあなたの広告の後に待っている次のドーパミンブーストのためにそれをスキップしてしまうため、あなたはTikTokに全く参加していないのと同じことになるかもしれない」。

 

さらに彼女は、TikTokの新鮮な動画コンテンツに対するこのようなニーズはマーケターがTikTokの資産を他の購入に再利用できるため、広告業界にとってクリエイティブの改善につながるだろうと付け加えた。

 

黎明期のTikTokは、広告主を引き付け、小売のオーディエンスを増やすためのプロセスだった。そのユニークな動画アプローチは、テレビ広告や有名人による推薦に何百万ドルも費やすことに慣れているブランドにとって、自然なものではなかったとPerez氏は述べている。

 

「人々は、自分の好きなクリエイターが、そのブランドや製品に関わる姿を見たいのだ。だからこそ、よりリアルな体験ができる。特に、TikTokで広告を出したり、クリエイターと仕事をしたり、製品を販売したりするさまざまな方法など、新しいソリューションやオファリングで工夫し始めると、それが私たちの継続的な啓発の一部になると思う」と、彼女は続けた。

 

TikTokのコミュニティにとって魅力的な方法でこれを行うことは、常にこのプラットフォームとブランドとの間の会話になり、ブランドはTikTokのユーザーにどのようにアプローチするかを調整する必要があるとPerez氏は指摘している。

 

Z世代を超える成長

ソーシャルメディア調査によると、TikTokのオーディエンス層はZ世代以外にも広がっている。この傾向が続く中、マーケターはより多くのオーディエンスに影響を与える可能性を検証する必要がある。

 

成功するためには、マーケターはどのようなフォーマットでも同じプロセスに従わなければならないとKotara氏は提言する。ブランドのクリエイティブ・コンテンツをそのオーディエンスに合わせて調整し、彼らに語りかけるメッセージングを育成するのだ。そして、ブランドに対する認知度や関心度を測るために、パフォーマンスの結果を確認することだ。

 

「TikTokのオーディエンスにとって、不快な体験にならないように気をつけよう。これらのユーザーは、このプラットフォーム独自の動画スタイルを期待している」と、Perez氏は注意を促している。

 

ブランドの裏側のインサイトを知ることができる動画は、オーディエンスの心をつかめると彼女は提案する。例えば、あるキャンディショップは、店舗や甘いキャンディを宣伝しなかった。その代わりに、地域の人々のもとへ向かうさまざまな荷物を梱包する動画を作成することで、この小さなビジネスを生き生きと表現している。

TikTokのオーディエンスは、彼らがさまざまなお菓子の詰め合わせを箱に入れて人々に発送する様子を気に入ってくれたと、彼女は指摘する。

「それは、人々が共感できる、よりリアルな瞬間だったのだ。だからこそ、ブランドにとって魅力的でユニークだと感じられるビジュアル環境を構築しよう」とPerez氏は勧めている。

 

慎重な競合他社を利用する

TikTokが抱える政治的、セキュリティ的な懸念から、このプラットフォームへの進出を敬遠する広告主もいる。それが障壁となり、売り手が興味を示さず、消費者もショップを利用したがらないのだと、Perez氏は認める。

「地政学的な観点から、米国政府と、彼らの懸念事項のいくつかについて積極的な対話を行っている。これは、私たちのブランドや販売店のパートナーとの間において、非常に透明性のある会話でもある」と続けた。

 

「TikTokの評判をめぐる問題は影響を及ぼす」と、Kotara氏は指摘する。TikTokに広告を出そうとするマーケターの量や種類が制限されるためだ。「同様に、TikTokでリーチ可能なオーディエンスも制限される。自分のデータが誰に公開されるかを気にするユーザーもいる。つまり、需要と供給はそれぞれに影響を受けているのだ」と彼女は述べる。

 

ソーシャルコマースの変革

Katara氏は、有料ソーシャル・エンターテイメント小売は、現在、いくつかの変化を遂げる瞬間を迎えていると考察する。

広告主は、最新の所有権に関する影響やニュースのために、Twitterから大量に離脱している。FacebookAppleのアップデートにより、ユーザーからの信頼とマーケティング担当者からの広告費を失いつつある。Instagramは、バックエンドのアルゴリズムを変更し、インフルエンサーの間で懸念が広がっている。

「ソーシャルエンターテインメントを考えるとき、残るのは誰だろうか?TikTokだ」

そう彼女は断定する。

 

もし同社が米国議会で行われている調査を乗り切れない場合、事態の収拾として、おそらく既存のものを取り込んだ新しいプラットフォームが作られ、TikTokスタイルのソーシャルコマースでこれまでに学んだマーケティングの教訓を適用することになるのだろう。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の1/13公開の記事を翻訳・補足したものです。