Appetite Creative (コネクテッドパッケージやデジタル広告キャンペーンなどを専門とする企業向けグローバルデジタルエージェンシー)のマネージングディレクターであるJenny Stanley氏に、コネクテッドエクスペリエンスが年間を通じて消費者エンゲージメントと売上を促進する方法について話を聞いた。

 

マーケティングにおいて、スケジュール帳上の重要な日にちや、ライブイベント、季節のお祝いを活用することは重要である。クリスマスの準備は7月にスタートし、新学期が始まる頃にはハロウィーングッズがあふれ、早くも12月にはイースターのエッグハント(卵探し)をすることができる。スポーツイベントや映画のリリース、ライブイベントのスポンサーシップは、季節のアクティビティとともに広告戦略にしばしば組み込まれている。

 

ハロウィーンから感謝祭、ディワリ(10月末から11月初めにかけて行われるインドの正月)からクリスマスまで、さまざまな祝日が近づく中、ブランドがスポンサーシップやマス広告を超えて季節ごとに主要顧客をターゲットにする良い方法はないだろうか?

 

基本原則

テクノロジー主導のエクスペリエンス全体で同じ基本原則を採用することで、ブランドはブランディングやコンテンツ、アプローチを調整する機会が得られる。そしてそれらを主要なオーディエンスとの関連性が高く、季節に合ったものにすることができる。コネクテッドエクスペリエンスなどの革新的なテクノロジーによって、ファーストパーティデータを通じたより良い消費者理解、マーケティングの最適化、販売促進、顧客教育、そして双方向の顧客コミュニケーションを改善することができるのだ。また、リアルタイムでコンテンツを簡単に適応、更新することも可能だ。

 

コネクテッドエクスペリエンスにアクセスするには、パッケージに記載されている独自のQRコード、NFCチップ、またはバーコードをスキャンする。スマートフォンのカメラでコードをスキャンすると、ユーザーはブラウザベースのアプリにつながり、製品情報、割引コード、コンテスト、インタラクティブなゲームや拡張現実(AR)体験が提供される。

 

通常、エンゲージメント時間は約3分で、ブランドロイヤルティを向上させるだけでなく、消費者との双方向の対話ができる。これにより、ブランドはより強力なブランドプレゼンスを確立し、貴重なインサイトを収集し、製品エンゲージメントを高める強化されたユーザーエクスペリエンスを生み出すことができるのだ。

 

インドの市場調査会社Market Research Future (MRFR)は、スマートパッケージング(センサー技術が組み込まれたパッケージングシステム)市場が2027年までに619億1,000万米ドル(546億5,000万ポンド)に達すると予測している。2020年の市場規模は398億2,000万ドルであった。重要なのは、コネクテッドエクスペリエンスが売上と高い消費者エンゲージメントを促進することだ。Tetra Pak(食品用紙容器の開発・製造企業)は、コネクテッドエクスペリエンスによって売上が20%増加すると主張している

 

では、コネクテッドエクスペリエンスを季節のイベントやライブスポーツイベントとうまく組み合わせるにはどうすればよいだろうか?

 

 

英国に本拠を置くアルコール飲料メーカーのHalewood Artisanal Spiritsは昨年、ハロウィーンに合わせて、型破りなスパイスラムブランド「Dead Man’s Fingers」で不気味なアプリゲームを立ち上げた。この「スロットマシン」アプリベースのコネクテッドエクスペリエンスは、ハロウィーン期間中にウェブサイトのトラフィックと購入を促進した。このゲームは、お気に入りのラムフレーバーの木製カクテルスターラーにあるQRコードからアクセスして参加する。ユーザーは、ブランドのキャップやTシャツ、ビーチタオル、ストラップなどのインスタント賞品を手に入れることができ、英国内の700以上のパブで利用可能な、恐ろしくもインタラクティブな楽しみを顧客に提供した。これにより、リピート購入が促進され、ユーザーの2回目のゲーム参加と当選が促された結果、ユーザーあたりの再スキャン率は2.4回となった。

 

我々は人気の乳製品・飲料ブランドと協力し、9月に家族が学校やオフィスに戻るのに合わせて、牛乳とフルーツ飲料の認知度を高めようと検討した。このゲームは、休暇明けに顧客と再びつながりをもつことで、顧客がヘルシーで健康的な飲料をランチの定番にしてくれるよう促すことを目的としたものだった。

インタラクティブなコネクテッドエクスペリエンスには、家族全員が楽しめる楽しいゲームが含まれている。3D拡張現実(AR)の3レベルジャンプゲーム「What’s in my Lunchbox」にアクセスするためには、2Dのレースゲーム「School Run」をコンプリートする必要があり、これらのアプリで使用するARセルフィーフィルターやリーダーボードで、プレイヤーの競争心を燃やすことができる。

 

Webベースのアプリは、ブランドがマーケティングを最適化できるように、スキャンされたフレーバー、平均エンゲージメント時間、場所、スキャンレート、訪問者数、リピーター、ソーシャルメディアでのシェアなど、リアルタイムでのインタラクションを追跡した。

結果は、97,000回以上のスキャンと9,900件の登録という素晴らしいものだった。エンゲージメントした人のうち、8,500人以上がセルフィーを撮影し、3,200人がそれをソーシャルメディアでシェアした。最も人気のあるシェア先はWhatsAppで、チャンネル全体で67%のシェアが確認された。平均利用時間は2分半以上となり、直帰率は1%未満 (通常は30%以上)で、顧客がエクスペリエンスを楽しんだことは明らかだ。これは、ほとんどのユーザーがアプリに関与していることを示し、実際に、70%のエンゲージメント率を達成した。ゲームの評判が広まり、ユーザー数は9月から10月にかけて倍増した。実際、コネクテッドエクスペリエンスアプリへのリンクは3,200回以上共有され、驚くほどの口コミと、ソーシャルメディアキャンペーンがもたらすポジティブな影響を示した。

 

コネクテッドパッケージングキャンペーンでは、定期的に14%のスキャン/クリックスルー率(CTR)を生み出し、通常0.01%程度のCTRであるデジタル広告キャンペーンよりもはるかに高い数値を示している。インパクトがあるだけでなく、費用対効果も高い。デジタル広告のクリックあたりの平均コストは1.50ポンドだが、パッケージングの「クリック」やスキャンは技術的には「無料」であり、これがブランドにとって、コネクテッドパッケージを使用する説得力のある理由となっている。

 

コネクテッドエクスペリエンスを通じて得られる機会は無限大である。製品の使用期間中、コミュニケーションをとり続けるのがマーケティングだ。パッケージを「スマート」あるいは「コネクテッド」にすることで、他のメディアチャネルに比べてシェルフライフ(品質保持期限)がはるかに長くなり、シーズン、イベント、新製品の発売、スポンサーシップキャンペーン、プロモーションなどによってリアルタイムで対応することができるようになる。今こそ間違いなく、よりスマートな季節的アプローチを広告に採用すべき時なのだ。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の9/23公開の記事を翻訳・補足したものです。