予算の金額がどうであれ、重要なのは、それをどのように使うかである。マーケティングへの投資からより多くの利益を得る方法を学ぼう。

 

マーケティング予算が無限にある状況を想像できるだろうか?そこでは、失敗することはありえず、あなたとあなたのチームはこれまで夢見てきたすべてのことをついに実現できるだろう。

 

だが、残念なことにそんなことは起こり得ない。ほとんどのマーケティングリーダーは、マーケティング予算に使うことができる、あらゆる余分なお金をかき集めようと必死に戦っているのだ。

 

聞き覚えのある話ではないだろうか?予算の金額がどうであれ、重要なのは、それをどのように使うかである。では、どうすればマーケティングに投資するすべての金額から最高のROIと最大の効果を得ることができるだろうか?

 

予算が多ければ、問題も増える

予算管理に関して、すべてのマーケティングリーダーが直面する共通の問題がいくつかある。巨額の予算でないとしても、おそらくこれらの課題の一つ以上に遭遇したことがあるだろう。ここでは、マーケティング予算に関する一般的な問題をいくつか紹介しよう。

 

そのほとんどを無駄にしている

「マーケティングにおける先駆者」ともいわれる米国の経営者、John Wanamaker氏の名言に、「私が広告に費やすお金の半分は無駄になっている。問題は、それがどちらの半分なのか分からないことだ」というものがある。

 

これは控えめな表現であろう。それに気づいているかどうかにかかわらず、マーケティング費用の大半は無駄になっている。マーケティングでは、ある程度の無駄は避けられない。結局のところ、何がうまくいくかは誰にも分からないし、マーケティングの大部分は、何がうまくいくかを確認するために新しいことを試すことなのだ。

 

問題は、我々が日々捨てている金額を特定し、測定し、削減しようとするための努力が十分でないことが多いということだ。予算が多ければ多いほど、より多様な活動に投資することになる。これによって複雑化し、支出の効果を測定することが難しくなり、無駄が発生している場所を明確にすることがより困難になるのだ。

 

予算の増額を要求する前に、「どうしたら今あるものの無駄遣いをなくせるだろうか?」と自身に問いかけてみてほしい。まずは、無駄が生じていることを自覚し、それを見出すことだ。

 

予算は決して正しくない

マーケティング予算を組むことは、瓶の中にジェリービーンズがいくつ入っているかを当てようとするものである。あなたの推測は正しいかもしれないが、間違いなく完全に誤っている。

 

アドバイスは何か?こうしたことでストレスをためないことだ。お金をどう配分するかは変わるものだと認識しよう。どこを削減し、どこを強化するか、リアルタイムで判断できるように準備しておくことだ。

 

予算を最大限に活用するための鍵は、それを少しずつ使い、どこに最大の効果があるのかをリアルタイムで判断することだ。マーケティング予算は、承認された瞬間に陳腐化する。

 

このことは、ほとんどのマーケティングリーダーにとって課題となっている。なぜなら、彼らはマーケティング投資の効果をビジュアル化できていないからだ。マーケティングアトリビューション(コンバージョンへの貢献度)によって、何がうまく機能しているかを明確にすることがさらに難しくなっている。

 

あらゆる戦術やチャネル、投資から得られる利益を理解することは、かけた費用に見合う最大の効果を得るための鍵であり、それを迅速かつ正確に行うことができなければならない。

 

思い込みは間違っている

驚くことに、マーケティング組織が長期にわたって同じアプローチに固執することがとても多い。マーケティングは日々変化し続けているものだ。昨日はうまくいったことでも、明日はうまくいかないかもしれない。

 

そこで、アプローチや戦術、予算をどこに投入するかを常に再評価する必要がある。これまである方法でやってきたからといって、その道を進み続けなければならないというわけではないのだ。

 

オレンジから最後の一滴まで絞り出すことと、もっと大きくてジューシーなオレンジを見つけることは同じではない。ハードにではなく、よりスマートに仕事を進めよう。そして、昔ながらの、長く行われてきたやり方が最も効果的であると思い込まないことだ。

 

より高いROIへの道

予算からより高いROIを得ることは、思っているよりずっと簡単なことだ。ここでは、予算額の大小にかかわらず、予算を最大限に活用するためのいくつかの検討事項を紹介しよう。

 

1.優れたマーケティングはお金がかかるものではない

強力で効果的なマーケティングにはお金がかかると思いがちだが、むしろ優れたマーケティングが高くつくことはほとんどない。

 

私の母が、愛犬が亡くなったのでドッグフードを返品したいとChewy(米国のペット用品通販)にメールを送ったところ、同社はそれを地元の保護施設に寄付するよう母に伝えたうえで、全額を返金してくれた。また、数日後、母は同社から愛犬についての手紙とともに花を受け取った。

 

母(と私)はChewyの生涯にわたるアドボケイト(支持者)になっただけでなく、何百人もの人々にこの話をした。この親切な行いは、同社にとって大きな費用負担ではなかったが、投入した金額の100倍もの利益を簡単にもたらした。だから、同社がこうしたことを続けているのは驚くべきことではなく、私がこの話をするたびに、同じような経験をした人たちからコメントが寄せられる。

 

マーケティングとは、インパクトを与えることだ。そして、そのためには、必ずしも多くの資金が必要となるわけではない。役員をポッドキャストにゲスト出演させたり、チームにLinkedInに定期的に投稿させたりすることは、お金のかからない効果的なマーケティング戦術である。

 

2.予算を削減する

あなたのチームにこう質問してみよう。「もし、予算が半分になったらどうするか?どう別のやり方を取るだろうか?」この問いに対する答えは、非常に明快で、限られた制約の中で成果を最大化するための革新的なアプローチを生み出すことができる。

 

多くの場合、我々は利用できる予算に慣れきってしまうが、 そこには無駄が潜んでいる。新しいより良いアプローチを見出すために、限られたリソースで何ができるかを再評価することは健全(そして有益)なことだ。

 

3.念には念を

マーケティングに費やしたすべての費用が投資に対してプラスの利益を生み出すと100%確信できるとしたら、それは素晴らしいことではないだろうか?投資した金額に対する信頼性を大幅に高める簡単な方法がある。それは、「検証」だ。

 

プールに行ったとき、すぐに深いところへ飛び込むようなことはしない。むしろ、水温を確認するために、ゆっくりと泳ぐことから始める。予算についても同じアプローチを採ってみてはどうだろうか。効果が証明されていないプラットフォームやチャネル、戦術に予算の大半を投じないことだ。その代わり、試験的な運用やテストを行ってその効果を確認し、見落としている点を見つけるようにしよう。

 

「Measure twice, cut once」(「切る前に二回測る」、すなわち「念には念を」の意)という古いことわざがあるが、取り返しのつかない失敗を防ぐことは非常に重要だ。マーケティングにも同じことがいえる。リソースに関して取り返しのつかない決定を下す前に、自身のアプローチを検証し、プールのより深いところに行くために必要な自信を持てるようにしよう。

 

4.マーケティングからより多くの成果を手に入れる

マーケティングの最適化は、予算を最大限に活用するための最も迅速かつ効果的な方法の一つだ。同じマーケティング活動でも、より効果的な方法を見つけることで、投資に対してより高い収益を得ることができる。

 

ほとんどのマーケティングチームには、最適化プログラム(同等、あるいはより少ないリソースでより良い結果を生み出すために継続的な改善努力を行う正式なプロセス)がない。

 

最適化プログラムの構築に投資することは、短期的にはマーケティングのROIを向上させる確実な方法であり、長期的には予算の効果に大きな影響を与えることになる。

 

成功のための予算を組むことはできない

幸いなことに、マーケティングにおける成功は、予算の大きさと相関関係を有するわけではない。マーケティングに使えるお金が多いほど、より多くの選択肢が得られることは間違いない。しかし、最も重要なことは、予算をどのように使って、最短時間で最大の効果を得るかである。

 

マーケティングには要望や要求が殺到し、また日々変化が生じるため、マーケティング予算からより多くの成果を得るためのシンプルかつ効果的な方法を見落としがちになる。

 

より良い結果を得るために、より多くのお金が必要なわけではない。市場予算をどこに、どのように投資しているかを今一度再確認すべきなのだ。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の9/12公開の記事を翻訳・補足したものです。