消費者が購入商品のさらに迅速な配送を求める時代において、宅配を担うロジスティクスはますます複雑になっている。

 

さらに、持続可能で環境にやさしい取り組みに注力する必要性も生じるなか、ロジスティクス業界は、明らかに前例のない困難に直面している。

 

そこで、ロジスティクスにおける、さらなる持続可能性向上のために何が起きているか、また、持続可能性は地球だけでなく、企業にどのような良い影響を与えるのか、物流分野の多くの専門家に話を聞いた。

 

「最も基本的なレベルでは、持続可能なロジスティクスとは、顧客や投資家などの企業の主要ステークホルダーだけでなく、広く社会に長期的価値を生み出すサプライチェーンを構築することだ」と語るのは、ドイツに本社を置く国際輸送物流会社のDHL Express AmericasのCEOであるMike Parra氏。

 

また、「それは、成長と取引を実行すると同時に、環境を保護し、公正で包括的な労働状況を生み出し、人権を尊重することでもある。持続可能性は多くの分野で推進されているが、今回は、環境における持続可能性について重点的に説明する。つまり、輸送、物流業務全般で発生する排出物を削減することである」と述べた。

 

結果的に、持続可能なロジスティクスは、地球にとっても、顧客にとっても、そして企業自身にとっても有意義なことである。

 

オーストラリアに本社を置く、グローバルな不動産グループGoodman Group USの南西地域ディレクターであるLang Cottrell氏は、「持続可能なロジスティクスとは、ビジネス、顧客、さらに世界全体で経済的、環境的、社会的によりよい結果を導くためのアプローチを実行することである」と語った。さらに「よりサステナブルな世界の実現にむけて積極的に貢献することは、かつてないほど重要になっている」と言う。

 

環境への期待

消費者からの配送期間短縮への要求の高まりが、ロジスティクス業界の負担の一つとなっている。そして、この要求が増す今、配送スピード化がもたらす環境への影響を考慮することが今まで以上に重要となっている。

 

米国のeコマース用ソフトウェアおよびサービスを提供するKaspienのCOO、Mitchell Bailey氏は、「翌日もしくは当日配送へと顧客の要望がシフトするなか、サプライチェーンは、より多くの商品をより速く運ぶために、船舶、鉄道、トラック、航空機のさらなる利用を迫られている」と述べた。

 

さらに、「このように、配送への期待値がますます高まるなか、私たちは、天然資源や環境への影響を最低限に抑えた拡張性のあるロジスティクス戦略でもって、これらの要求に応じなければならない。責任ある配送ロジスティクスは、物流業界の未来と地球のウェルビーイングを確かなものにするために不可欠である」と続けた。

 

スピード配送とは、ラストワンマイルをできる限り地球にやさしくすることに焦点を当てることでもある。

 

カナダに本社を置き、ラストワンマイル配送を行うGoForのCEOであるIan Gardner氏は、「持続可能なロジスティクスはシンプルだ。それは、環境や地域社会に悪影響を及ぼすことなく、荷物を出発地から目的地まで届けることだ」と語った。

 

そして、「全配送車両の電気自動車化、クルマやドライバーの効率化、廃棄物が少なく再利用やリサイクル可能なパッケージや資材の導入など、あらゆる面において、持続可能な視点からラストワンマイル配送やフルフィルメントのプロセスにアプローチすることを意味する」と述べた。

 

買い物客は、商品のスピード配送を望む一方で、持続可能な配送を実現する必要性も意識するようになった。そして、そのような消費者の意識は、ロジスティクス業界のオペレーションを変えつつある。

 

「ロジスティクス業界は、オンライン販売が増加し、さらに、できるだけ速く商品を受け取りたいという消費者の要望が高まる中、商品を手にするまでのコストとキャパシティに関する現実的で重大な課題に直面している」と、米国のeコマースプラットフォームを提供するMivaのプロフェッショナルサービスおよびカスタマーサクセス担当バイスプレジデントであるMegan Stillerman氏は語った。

 

「ロジスティクスと小売業者には、提携のチャンスがある」と同氏は続けた。

 

また、「意識の高い買い物客に、サステナビリティを意識した消費をしてもらい、配送時間やまとめ配送などのトレードオフを受け入れ、どこでどのようにして注文商品が配送されるのかを真剣に考えてもらうことで、地球への負担を軽くするだけでなく、業界自体の存続と成長への変化をもたらすための余裕が生まれる」と述べた。

 

収益性向上のための持続可能性

ロジスティクス業界はトラックや航空機だけでなく、その背後にあるデータセンターや情報インフラで構成されている。これらも、さらなる持続可能性向上への進化が求められている。

 

Fiber Networks at Bulk Infrastructure (ノルウェーのデジタルインフラ大手プロバイダBulk Infrastructureが提供するファイバーネットワーク)のバイスプレジデント、Merete Caubet氏は「持続可能なインフラは、データセンターとファイバーネットワーク業界におけるグリーンな経済成長の構築に不可欠である」と語る。

 

「我が社は、再生可能エネルギー、水力発電、水のリサイクル、地域暖房を活用した持続可能なインフラにおけるリーダーである」とCaubet氏は主張する。さらに、「持続可能な技術ソリューションを可能にする純粋なインフラ、最先端のファイバールート、接続性ソリューションを開発することで、Bulkは持続可能なロジスティクスを推進することができる」と述べた。

 

ブランドは、持続可能性へのコミットメントが高まるにつれ、マーケティング戦略の一環としてこの取り組みを強調するようになるだろう。

 

「消費者は、ますます商品選択にこだわり、その商品の供給方法を意識するようになっている」と語るのは、米国で製品コンテンツソリューションを提供する1WorldSyncのグローバルプロダクトマネジメント部門のバイスプレジデント、Randy Mercer氏。

 

また、「ロジスティクス業界企業が、消費者が求めるこの透明性を活用できる方法の1つは、ブランドから提供される製品の説明、詳細情報、画像を要約したコンテンツをアップデートすることだ」。

 

「昨今、実店舗で購入する人が減少しているため、eコマースナビゲーションは最優先事項だ。WalmartTargetのような有名小売ブランドは、消費者が、製品がサステナビリティに対する自分達のニーズを満たしているかを前もって知ることができるようコンテンツを改善し、Amazonに対抗している」と述べた。

 

代替燃料がより一般的になり、費用対効果が改善されれば、サプライチェーンのすべての企業に持続可能なロジスティクスを徐々に浸透させ、収益に貢献するだろう。

 

米国のカスタマーエンゲージメントソリューションを提供するデジタルサービス企業Avionosの共同創業者兼プリンシパルのDan Neiweem氏は「持続可能性の実現は、業界のエコシステムにメリットをもたらすだけでなく、収益性を高め、燃料費のような基本的なコストの経済的変動を最小限に抑えることを可能にする」という。さらに以下のように語った。「より効率的な代替燃料や電気自動車は、ロジスティクス業界がさらなる持続可能性を追求する上で、重要な焦点である」。

 

「ソフトウェアによって、ルートを最適化し、既存ルート上の潜在的な顧客を見分けることもできる。また、配送ルートを短縮することで、エコシステムへの影響も最小限に抑えることができる」。

 

「再生可能エネルギー効率が向上すれば、倉庫は太陽光発電と風力発電よって、倉庫を完全に稼働することができる。そして自動車は電気で動くようになる。モニタリングや自立走行車によって、走行スピードとブレーキをより細かく制御できるようになるだろう。配送ルートが短くなれば、倉庫間配送はさらにサステナビリティを重視するようになる」。

 

パートナーシップに不可欠なもの

ロジスティクス業界におけるサステナビリティというトレンドは、ますます「ある地点から別の地点に商品を運ぶ」ことが意味するもの、そして、最終的には、21世紀における「ビジネスの実行」と「商品の購入」が意味するものの中核となるだろう。

 

「今後5年間で、ブランドがパートナー企業にも二酸化炭素排出量削減をさらに要求すると予想されるため、サプライチェーン企業にとって持続可能性の優先度はより高くなるだろう」と、米国で企業や倉庫を管理するソフトウェアソリューションを提供するVAI (Vormittag Associates, Inc.)の北アメリカソフトウェアセールスマネージャーであるPete Zimmerman氏は話す。

 

同氏は「将来、さらにサステナブルなビジネスを行い、また、グリーンイニシアチブを満たすために、ロジスティクス業界は、持続可能性の目標に対する実用的なインサイトの獲得を目的としたテクノロジーの導入を継続し、よりグリーンなサプライチェーンを目指していくべきだ」とアドバイスしている。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の7/20公開の記事を翻訳・補足したものです。